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再臨譚
31、短い顔合わせ
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光が土御門神社を訪問し、調査局からの協力要請に応じることにした護と月美だったが。
「だが、実際に俺らにできることはあるのか?結構、時間も限られているが」
「そういう時期なのか?」
「学年末試験や進路相談とか、そういう諸々が迫ってますね」
護の言葉を聞いて首をかしげる光に、月美があっさりと返した。
月美の言葉に、今度は光と翼が納得した様子でうなずき。
「そういえば、そんな時期だったな」
「あぁ、世間ではそんな時期か。高校に通っていないから、すっかり失念していた」
と、まるですっかり忘れていたかのような態度で口を開いた。
光の事情は知らないし、深く突っ込むつもりがないため、とりあえず彼女の言葉は軽く聞き流したが、さすがに翼の言葉はそうもいかない。
「いや、父さん。あんた、自分の息子と預かってる客人のことだってのにいいのかよ、そんなんで」
「雪美が把握しているから問題はない。第一、母親だけでなく父親からも口出しされてお前はいい気分にならんだろ」
「まぁ、そうかもしれないけど、もうちょっと心配しているってアピールくらいしてくれても」
「なんだかんだ自分で決める癖によく言う。まったく、誰に似たのやら」
護がもう少し気にかけてほしいようなことを話したが、翼はまったく意に介さず、むしろ父親としての気遣いだ、とでもいわんばかりの態度だった。
いや、無関心というわけではないのだろう。
護が土御門神社の後継となった時のために必要となる知識を与えてきたのも、翼だ。
というよりも、跡継ぎにする心づもりであるためか、護の進路についてはあまり心配していないのだろう。
「まぁ、それはともかくとして」
このままこのことを話していても埒が明かないと思ったのか、光が話題を切り替えようと、声をかけてきた。
「むろん、君たちに調査を手伝ってもらうなんてことはできない。だから、いつぞやの研究施設の時のように突入の際の助っ人を依頼したい」
いつぞやの研究施設の時というのは、護と月美、光の三人が初めて顔を合わせることとなった事件の黒幕が潜んでいた研究施設のことだ。
すでに十か月以上も前のことで、護も月美も、そのことを思い出すまで少しばかり時間を有した。
「なるほど。それなら大丈夫かな」
「そうね。突入まで時間はかかるだろうし」
「あぁ、そこについては問題ない。早くても三月頭になる予定だ」
三月頭ということは、あと一か月もない。
だが、今月の終わりには護たちは学年末試験に入る。
それまではどうしても試験対策に時間を割きたくなってしまう。
そのため、突入が試験終了後を予定していることは、二人にとってありがたいことだった。
「あぁ、だったら大丈夫だ」
「うん。大丈夫、けれど、光さんたちは大丈夫なんですか?」
「問題ない。むしろ、ようやく一歩前進したところだしな」
月美の問いかけにそう答えた瞬間、携帯のバイブレーションが聞こえてきた。
その場にいる全員が一斉に自分の持つ携帯をしまっているポケットのあたりを触れる。
すると、光の携帯が鳴っていたらしく。
「申し訳ない」
翼たちに謝罪をしながら、携帯を開く。
「もしもし?あぁ、ジョンさん。どうなさったんで?……え?挨拶を?わかりました、少し、お待ちください」
どうやら、先ほど話に出ていた協力者のジョンから電話がかかってきたようだ。
そのジョンが、自分たちとも話をしたいらしい。
「さっき話していたジョンさんから、あなた方にあいさつをしたいと連絡が来ているんだが、構わないだろうか?」
「まぁ、私は構わないが」
そう返して、翼は護と月美に視線を向けた。
多少、改善されてきたとはいえ、月美は今でも見知らぬ人間と話すことをあまり好まない。
護に至っては、改善しているのかしていないのかわからないほど、今でも人間が嫌いだ。
携帯を通じてとはいえ、今までまったく関わってこなかった人間と言葉を交わすことができるだろうか。
そんな不安があったが。
「わ、わかりました」
「了解」
どうやら、一緒に仕事をするということも手伝って、話をすることにしたらしい。
「大丈夫のようだ」
「わかりました。スピーカーにします」
翼の言葉にうなずき、光はスピーカーモードに切り替えた。
『初めまして、日本の術者の皆さん。音声のみで恐縮ですが、私はバチカン市国から来ました、エクソシストのジョン=グレースです。どうぞ、よろしくお願いいたします』
「ご丁寧にありがとうございます。今回、調査局職員の賀茂光さんより協力要請を受けました、土御門翼と申します」
「同じく、土御門護です」
「私は風森月美です。よろしくお願いいたします」
『こちらこそ、よろしくお願いいたします。とはいえ、実際にお会いできるのは、突入のタイミングになってしまいそうですが』
残念そうな声色で、ジョンがそう話す。
単に実際に会って話がしたかったのか、それとも、日本の呪術に興味があったのか。
それは定かではないが、本当はジョンもこの場に居合わせたかったようだ。
『では、私はこれで。光さん、お時間いただきありがとうございました』
「いえ。ではこれで」
『はい、後ほど』
ジョンの言葉で、光は通話を切る。
こうして護と月美の、エクソシストとの初対面は終了した。
「だが、実際に俺らにできることはあるのか?結構、時間も限られているが」
「そういう時期なのか?」
「学年末試験や進路相談とか、そういう諸々が迫ってますね」
護の言葉を聞いて首をかしげる光に、月美があっさりと返した。
月美の言葉に、今度は光と翼が納得した様子でうなずき。
「そういえば、そんな時期だったな」
「あぁ、世間ではそんな時期か。高校に通っていないから、すっかり失念していた」
と、まるですっかり忘れていたかのような態度で口を開いた。
光の事情は知らないし、深く突っ込むつもりがないため、とりあえず彼女の言葉は軽く聞き流したが、さすがに翼の言葉はそうもいかない。
「いや、父さん。あんた、自分の息子と預かってる客人のことだってのにいいのかよ、そんなんで」
「雪美が把握しているから問題はない。第一、母親だけでなく父親からも口出しされてお前はいい気分にならんだろ」
「まぁ、そうかもしれないけど、もうちょっと心配しているってアピールくらいしてくれても」
「なんだかんだ自分で決める癖によく言う。まったく、誰に似たのやら」
護がもう少し気にかけてほしいようなことを話したが、翼はまったく意に介さず、むしろ父親としての気遣いだ、とでもいわんばかりの態度だった。
いや、無関心というわけではないのだろう。
護が土御門神社の後継となった時のために必要となる知識を与えてきたのも、翼だ。
というよりも、跡継ぎにする心づもりであるためか、護の進路についてはあまり心配していないのだろう。
「まぁ、それはともかくとして」
このままこのことを話していても埒が明かないと思ったのか、光が話題を切り替えようと、声をかけてきた。
「むろん、君たちに調査を手伝ってもらうなんてことはできない。だから、いつぞやの研究施設の時のように突入の際の助っ人を依頼したい」
いつぞやの研究施設の時というのは、護と月美、光の三人が初めて顔を合わせることとなった事件の黒幕が潜んでいた研究施設のことだ。
すでに十か月以上も前のことで、護も月美も、そのことを思い出すまで少しばかり時間を有した。
「なるほど。それなら大丈夫かな」
「そうね。突入まで時間はかかるだろうし」
「あぁ、そこについては問題ない。早くても三月頭になる予定だ」
三月頭ということは、あと一か月もない。
だが、今月の終わりには護たちは学年末試験に入る。
それまではどうしても試験対策に時間を割きたくなってしまう。
そのため、突入が試験終了後を予定していることは、二人にとってありがたいことだった。
「あぁ、だったら大丈夫だ」
「うん。大丈夫、けれど、光さんたちは大丈夫なんですか?」
「問題ない。むしろ、ようやく一歩前進したところだしな」
月美の問いかけにそう答えた瞬間、携帯のバイブレーションが聞こえてきた。
その場にいる全員が一斉に自分の持つ携帯をしまっているポケットのあたりを触れる。
すると、光の携帯が鳴っていたらしく。
「申し訳ない」
翼たちに謝罪をしながら、携帯を開く。
「もしもし?あぁ、ジョンさん。どうなさったんで?……え?挨拶を?わかりました、少し、お待ちください」
どうやら、先ほど話に出ていた協力者のジョンから電話がかかってきたようだ。
そのジョンが、自分たちとも話をしたいらしい。
「さっき話していたジョンさんから、あなた方にあいさつをしたいと連絡が来ているんだが、構わないだろうか?」
「まぁ、私は構わないが」
そう返して、翼は護と月美に視線を向けた。
多少、改善されてきたとはいえ、月美は今でも見知らぬ人間と話すことをあまり好まない。
護に至っては、改善しているのかしていないのかわからないほど、今でも人間が嫌いだ。
携帯を通じてとはいえ、今までまったく関わってこなかった人間と言葉を交わすことができるだろうか。
そんな不安があったが。
「わ、わかりました」
「了解」
どうやら、一緒に仕事をするということも手伝って、話をすることにしたらしい。
「大丈夫のようだ」
「わかりました。スピーカーにします」
翼の言葉にうなずき、光はスピーカーモードに切り替えた。
『初めまして、日本の術者の皆さん。音声のみで恐縮ですが、私はバチカン市国から来ました、エクソシストのジョン=グレースです。どうぞ、よろしくお願いいたします』
「ご丁寧にありがとうございます。今回、調査局職員の賀茂光さんより協力要請を受けました、土御門翼と申します」
「同じく、土御門護です」
「私は風森月美です。よろしくお願いいたします」
『こちらこそ、よろしくお願いいたします。とはいえ、実際にお会いできるのは、突入のタイミングになってしまいそうですが』
残念そうな声色で、ジョンがそう話す。
単に実際に会って話がしたかったのか、それとも、日本の呪術に興味があったのか。
それは定かではないが、本当はジョンもこの場に居合わせたかったようだ。
『では、私はこれで。光さん、お時間いただきありがとうございました』
「いえ。ではこれで」
『はい、後ほど』
ジョンの言葉で、光は通話を切る。
こうして護と月美の、エクソシストとの初対面は終了した。
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