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秘境
真・自分 弐部 「秘境」
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真・自分
壱部
「四辺ノ町」 「冷寒ノ地」 「弛温ノ領」
弐部
参部
弐部
「 」
◯ 海の藻屑付近
闇さえ明るいわ
沈む片乙
大きな生物が近づいてくる?
サメか? クジラか? 食べられる? 私、美味しいのかな?
服とかどうするんだろう? 魚の骨みたいにペッて避けるのかな?
死亡した人体だとしても、死後わずかしばらくの間であれば、
寝ているときも大きな音がすると起きるように、
無意識でありながらも周囲のことは、わかっていたのかもしれない。
◯
?
肌に優しい光を感じる。死んだのだろうか。
おぼろげな視界。
肺にお腹に、空気を入ってす~ 戻しては~
呼吸していることに気付く。
ベッドの上で寝ている私。
代わりに風通しの良い織物を羽織っていた。
紅く染まり海水に浸かったボロボロの服は、ハンガーに掛けられていた。
左腕をあげると、肘から先がない。
足も、左足の脹脛から先がない。
やはりあのとき、
包帯はないけど傷口は閉じられ、ジェルで覆われ丁寧に止血されている。
片手片足を失ったものの、どうやら、
今は生きているはずだけど、あのときは死んでいた? 死んだはずなのに生きている?
? ? 寝惚けてる?
とりあえず、
私は、生きているらしい。
ほっとする安堵と、少しのがっかり感と、不思議な気持ちだった。
不思議な気持ち、死んだ気持ちをよそに、
下にあるのはフカフカのベッド。
根拠はないもののフワフワの安心感にもフヤフヤと包まれ、
気持ちいい。
まさに二度死んだように二度寝する。
◯ ログハウス 室内
横になっていたベッドがあまりに気持ち良く、つい深く寝入っていた。
やがて睡眠欲も収まり、ふやけた怠情も枯れてきた頃、
不自由な半身を起こしてみる。
あたりを見回してみる。
知っている部屋ではなかった。
ベッド。
ボロボロになるまで共に生きてきた服は、穏やかなハンガーに掛かっている。
風と遊ぶように揺れている白いカーテン。
昼のよう。窓の隙間からは空が見える。
タンスなどの収納。水回りのキッチンや風呂トイレ。なんとテレビまである。
料理しやすい食品も用意されている。
いつの間にか着ていたこの織物も含め、
この部屋には、生活に必要な設備はひと通り揃っているようだ。
誰が用意したのだろうか?
どこだろう? と思いはするものの、危険な雰囲気は感じなかった。
ふわり。
そよ風よりもふわふわと、爽やかな香りに撫でてもらう。
トントン。
「・・はい・・・?」
扉を開け、鳥と猫が入ってきた。
方や、ポットを持ち水栓を開け汲み、紅茶を淹れる。
方や、タンスを開け、衣類を器用に収納している。
鳥と猫は部屋の世話をしながら、
今日の紅茶の味はどうだとか、新作の服がどうだとか話している。人間の言葉だ。
その状況は、鳥と猫が言葉を喋っている。
そして人間の生活物資を慣れた手つき、普通に器用に扱っている。
普通なら驚くリアクションをするところだろうが、まだ寝ぼけた感じが残っているためか、うまく言葉が出てこない。
なにより動物が喋っているのは、現実ではあり得ない。幻覚か?
やっぱり私は死んでいるのかもしれない。
朱雀『・・・具合はどうかな?』
白虎『・・・辛い、よね・・・』
見返してやろう、今度は勝ちに行くよ、みたいなことも気軽な雰囲気を醸しながら、
眉を斜めにニガみっぽい顔をしながら、私の内情を汲もうとしているのか。
同情のつもりか?、共感のつもりか?
お前らに何がわかる。
辛い経験、苦しい経験のことを一瞬でもブリ思い返すと、制御しようにも気持ちが逆立つ。
私にあるのは殊勝に見返すとか、勝ちたいなどではなく、
純然に炎焔と沸る殺意があるのだ。
・・・あった、かな、
今は一方で、
なんとか火が灯っていた弱々しい蝋燭は、海の水深へと、火水と消えた。
沸る復讐の炎も、鎮火と虚しく消える。
残りあるとしたらポイ捨てゴミ、使い古しの蝋燭、虚無感。
ん?、んん?
それはともかく、
動物が喋っている?
さらにいうと、目の前にいる2体が朱雀と白虎だと、なぜ私は知っているんだ?
ひと通り部屋の世話を区切ると、朱雀と白虎は外へ行った。
部屋にあった松葉杖とスリッパを借り、2体が行き来していた扉から外に出てみる。
一歩外に出るとそこは、
◯ 森の中
足元は木造ベランダ。
私は丸太を器用に組んだ、ログハウスの部屋にいたようだ。
知らない森の中、いってしまうと樹海の遭難者とも例えられそうだが、
迷子感はあっても、閉塞感は感じない。
知らない場所に急に放り込まれたかたちではあるものの、不思議と不安は感じなかった。
木々がなにか言ってるように、サラサラと揺れる。
目が届く範囲だけだとしても、フカフカ芝る草木と、力強い土壌が土地を支えている。
弐部
「秘境」
◯ 秘境
ここは動物達が暮らす秘境。
動物界。
生い茂るジャングルとサバンナ、大草原。清流の先には大海原。
彩るは多様な動植物。
見たことがあるとしたら、TV番組なども含めた二次創作の世界。
一言で説明すると、ファンタジーだ。
片手片足を捥がれて満身創痍ではある。
休養も必要。
にしても毎日静かに寝ているだけというのも、退屈になってきた。
そこらの枝を松葉杖2本目に、軽く歩いてみる。
正直、旅行で行く観光地よりも新鮮な気分だった。
空気が美味しい。
周りの動物達はモノ珍しそうに、人間の私を見ている。
慣れている動物とは、軽い挨拶くらいはするようになっていた。
そんな話せる動物の2体、
翼のある空飛ぶ蛇、髭が尾へと立派な亀、
青竜と、玄武だ。
片乙『私は、どうして・・・?』
「どうして動物界にいるのか?」、
「どうして生きているのか?」、「どうして助かったのか?」、
矢継ぎ早に聞きたいことはあるが、どう言えばいいものか、整理できず尻込みの、消沈、
青竜が答えてくれた。
私が海へと落ちたあのとき、
水生動物達から、「膿」を抱えた人間が落ちてきたと、一斉に連絡があった。
「膿」を感知した青竜が近くにいたこともあって、素早く救助できた。
死の間際、夢のように見えた大きな生物は、実際に存在している青竜だった。
◯ 救助の四神
青竜、海中で私を飲み込み緊急救助、すぐに感覚を共有する四神。
朱雀、飛来し止血、傷をふさぐ。
白虎、動物達へ伝達して走って回り、人間用の生活物資を調達、奔走する。
玄武、他四神の行動をそれぞれ繋ぎ、擦り合わせる。
四神それぞれの連携もあり、このログハウスへと救助してくれたらしい。
青竜の大きさは、めいめい人間の子供くらい。
他3体のサイズ感も、似たようなものだ。
私を丸呑みにして助けるにしては小さいサイズだけど、
ああ、サイズは自在に変えられるんだなと、そこはやはり神様なのかも。
スムーズに納得した。
状況もわかってきた。
私は、青竜、朱雀、白虎、玄武によって救出、
動物界は秘境へと運び込まれ、手当てしてもらっていた。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 ライフー
◯ ログハウス近郊
秘境の生活から数日。
玄武『御主に人間の味方はおらぬ。あまりに不憫じゃ』
そういう理由もあって、同情もあって、保護してもらったわけか。
「・・・そっかぁ・・・ありがとう」
玄武の親身になった助言に、ほぼ雰囲気だけでどうにか応える。
毛ほどのか細い声で礼を言うのが精一杯だった。
私に人間の味方はいなかった。
どこかで、わかっていた。
頭のどこかでわかっていたことかもしれないが、これまで仕返しとか復讐をどうするかといった事で、考えも目も回り、頭がいっぱいになっていた。
味方なんていないもの、が前提だったし、余裕もなかった。
逆方向に寝返り、くしゃりそうな顔を我慢、今度のは、いつかの慟哭泣きではない。
残酷だけど真実の答え合わせ。自然と涙がでて、声も無くすすり泣く。
のちに玄武からの捕捉では、
私の周りにいた人間は3種類。
・無関心の人間。
・苛めっ子の人間。
・そして私。
私がその場その場で、
なにをどう訴えたところで、どう転んだところで、
周りの人間達と手を携えて、協力して物事に取り組む?
そんなことは完全にできない環境にいた。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 リセットー
◯ 呪いの祓い そして真名
秘境の生活から幾数日。
玄武『その名は誰に名付けられたものだ』
それは多分親が、
と応じようとしたところで、ザラリと、口に砂が混じるような違和感を覚えた。
玄武『(片乙)か、御主のその名は呪われている』
玄武は、その呪物を処する包みに残さず収め、包み消すように、(片乙)を扱った。
玄武『呪われている。なにもできなくなる不便が宿る名前じゃ』
その名は呪われている。
本体そのものに宿る名前というものは、言霊以上に影響があるらしい。
名付けられた名前次第で、宿る能力の有無、好運も悲運も運命も、
如何様にも変わっていくというのだ。
私が名付けられた瞬間の記憶などないが、変な名前として、思い当たるところはある。
片乙。
(カタオツ)まるで「型落ち」のような名前で、自分の身体でありながらも、
不思議とどうにも実力が発揮できていない、制限がかかっているような身体。
変な名前の自覚みたいなところも、あった。
玄武『人間らしく畏れた者の誰かが、御主の能力を封じるための楔としたのだろう』
ひょっとしたら、その時点で黒社が私の細胞となる男と女に、
私の名前を言伝していた?
だとしたら本来は男と女も黒社派閥だったかもしれないが、黒社の闇をもどこかで感じていた男と女。
黒社の監視を最小限にしようと考え、
せめて、関わらない、無関心を装っていた?
真相は不明だ。ともあれ、
呪われた名前による縛りは、想像以上に負荷となっていたようだ。
比喩ではあるが、ロープで身体中を縛られているようなものでもある。
身動き自体を封じられているのだから、勝つどころか、同等の生活自体が難しい。
自分の意思がどれだけあっても、身動きひとつできない状態に縛られている。
この状態ではどんな目標だとしても、まともな行動ひとつも無理だ。
玄武『ただでさえ「膿」により身重になっておった。そのうえ呪われた名前とは、不利も不利じゃ』
呪われた名を捨て、改めて名付けよう。
◯ 名を命ずる
セジス
ひたむきに続けた真摯者の名よ
セジス
「・・・・・・・・・・・・」
謎の静寂がしばらく。
名前が変わった瞬間、
ぶわーーっ と髪が逆立ち、力が溢れて、
ぶわーーっ とバチバチとオーラを放つ自分を妄想したが、
髪はそのまま。オーラも出ていない。
体調も、気にならないほど、つい先刻の瞬間となにも変わらなく、普通に自然だ。
指を閉じ開き、ちょっとゆらゆら動き、肘を曲げ、片足をやや浮かせ軽めの屈伸。
ふと、片手片足が失われていることに、残念さと怒りが混ざる複雑な心境もある。
変わったところはなさそうだ。
セジスよ、と続ける玄武。
玄武『セジス、これでようやっと彼奴らと互角じゃ。御主は以前のように、必要以上の「膿」を孕むことはあるまい』
その、と言いにくそうに続ける玄武。
玄武『その、拙者らの超能を以てしても、失った時間は戻してやれぬ』
名前変えはあっさり済んだ。けど、
散々苛められて辛かった38年、という人間の長い時間、は、もう戻らない。
辛気の記憶はそのままに。
私はセジス。
元の名前、片乙の名残りも欠片も無い、まったく新しい名前に、少々の戸惑いを感じる。
そういえば苗字も下の名前もなくなっている。動物界の名前もそうだよね。
セジス。
玄武から新しい名前を貰い、いわば本来の能力を発揮できるといわれる、真名。
少し身体を慣らしてみようか。
といっても本当に名前を変えただけで、身体は、別に、そのまま。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 ネームー
◯ 新たな手足
セジスの名を貰って変な沈黙を共有していると、気丈夫な風音が流れる。
白虎もやってきた。
白虎『セジス 良い名前だね。真名祝いを持ってきたよ』
義手と義足を持ってきてくれた。
動物界の技術者達が、私のために作ってくれたようだ。
私の、義手と義足。
私の、新しい手足。
自分でも目がキラキラしているのを自覚できるほど、照れながらも、とても嬉しかった。
セジス『すごい・・・ありがとう』
早速装着してみる。
シリコン製にも似た接合部はするりと肌に吸い付いた。
あまりに肌触りが良いためか、くすぐったいくらいだ。
一見するとゴテゴテあって板金が目立つ、無骨な外見、
その本質は、精密と頑丈さの融合だ。
人間の感覚でいうと、動物たちには作れるわけがない、
が、この代物は、むしろ人間達の技術よりも更に高次元、高度な技術で作成されている代物であることがわかる。
私の失われた左手左足に、動物界製技術の込められた義手義足が装着された。
かつての片乙には、1人の人間には到底抱えきれない量の「膿」を吸収しながらも、
一応の生活はできていた丈夫さがあった。
そう。その「膿」に関して、話があると。
でもその前に、
白虎『ゆっくり休むといいよ』
玄武『義肢も慣らしてみよう』
ライフプロセス
ー動物界にて休養 レギュラーー
46 ー 一般人の運 ー
この世にいる人間の多くは、一般人に該当するだろう。
一般人を構成するためには、一般的な運も作用している。
まったくの不運非運の人間が、一般人にはなれない。
一般人は個々に、多少の多かれ少なかれはあれど、一定量の良運幸運に恵まれている。
運は、
人間と人間との質の良い出会いや、先天的な能力を授かることなどに作用している。
一般人に、自身の運がどれほどの量か、自覚がある人間は少ないだろう。
では、運が、
まったく、運が、無い者。
あるいは極めて運が少ない者、がいるとしたら。
その者は一般人がいうところの、弱者にあたる。
運の塊。
運の塊、運の総量、
運の全体総量が決まっていると仮定しよう。
運塊は、各人間へと少しずつ取り分け、運として配布される。
取り分けた運が、うっかり多かったりして、極端に少なかったりして、
見方を変えると、
運がなかった弱者とは、
一般人へと運を配布するため、自分の取り分のはずの運がなかった状態ともいえる。
一般人とは弱者の犠牲を元として、一般人が出来るように、させてもらっている。
考えたこともなかったかな?
では弱者は只々、下賎で哀れな存在なだけなのだろうか?
それではあまりにも不憫だ。
どこかのタイミングで、これまで運に恵まれなかった分も含めて、
どこかで上方調整があってもいいだろう。
セジスの場合は、四神との出会いが上方調整であった。
片乙が海に落とされたとき、片乙自身はなにもしていない。
ドライな言い方をすると、
運由来により、青竜が向こうから勝手にやってきて、勝手に片乙を助けた。
結果、
片乙は命を取り留め、セジスとして名を改めた。
この一連の流れで、片乙は、セジスは、なにもしていない。
運とはそういうものだ。
本人の努力も、実力も毛ほども作用していない事象により、危機を脱した。
よくわかんないけどラッキー。
運とはそういうものだ。
運とは、アンタの実力ではない。
完全に、「何者か」から贈呈してもらえただけのもの。
運とはそういうものだ。
◯ 四神と動物界
セジス『でもなんで四神がこんなに集まって、動物界の偉い(人)? なんでしょう?』
四神や生活を手伝ってくれる動物達と、何気ない会話、雑談、
秘境あるある話、いろいろなことを教わった。
青竜『人間界で言う神は、偉大で祀るような存在なんだったね。でも動物界では神の意味は特別ないよ』
白虎『神も人間が害虫と嫌うゴキブリも、位としては同じなんだ』
玄武『どうしても「膿」を解消するという役目があるから、そのための目印かの』
朱雀『動物界の神様は働き者なんだよ。偉いでしょ』
朱雀がパタパタと戯けてみせている。
伝説の獣の1体なんだけど、こうして懐き、目の前で話している。
かわいい鳥だ。
つまり四神も虫類も、動物界において大小上下関係はなく、上位も下位もないという。
誰であっても分け隔てなく、フラットに、平等に、付き合えている。
人間達は、
口ではどう言おうとも到底不可能に近い概念が、ここ動物界では成立していた。
◯ 動物界と人間界
元々動物界があって、分岐し派生したものが人間界だという。
おおもとを辿ると、人間も動物界の一種族だった。
子供の頃など、冗談半分で人間も動物のひとつと考えていたことは、まさしく真理だった。
人間の目で見えている動物の姿は、本来の動物の姿ではないこと。
私は動物界で休養しているけど、目は人間なので、変わらず猫は猫に見えている。
人間の生活文明も高度だが、本来の動物達がもっている文明は、人間達のそれとはまた異なる方向性の文明を築いているようだ。
そして、動物界は人間界に介入しないこともルールとしてあった。
動物界を守るため、人間界を混乱させないためのルールだった。
もし動物達が本来の姿や文明を持ち出し人間界に介入していれば、
人間は技術でも意識でも、すぐに負ける。
負けを自覚した人間達は、
恐れ惑い、真相を見ようともせず、迎撃しようと、躍起になるかもしれない。
一般人のやることだ。ありえるなとも思う。
四神が実在していることや、動物界に築かれている人類以上の文明など、
これまでの私の感覚を改たにする知見だった。
◯ 四神の役目
穢れを追う四神。
四神には、「膿」を除去する超能属性があった。
また生物が死亡した際に器がなくなり漏れ出す「膿」など、
世に発生する「膿」を浄化することを、四神自らの役目と課していた。
「輪」つまりは地域、あるいはひとつのグループ単位。
穢れた「輪」には、見過ごせない「膿」も集まる。
その世、その時代において、穢れた「輪」へ順に赴き、
四神の各超能を以って、「膿」を浄化する役目だという。
弛温ノ領の一角が特別濃い「膿」を発生していたことも、
片乙を素早く救助できた要因だった。
そのまま、
片乙が抱えすぎていた「膿」も、救助、手当ての際に浄化していた。
◯ 自然な姿
なんだかあっさりと、
心身の休養のためにも、動物界で静養、生活することを受け入れてもらえた。
あとで気付いたことだが、
私が「そこ」に受け入れられたのは、初めての体験のような気がした。
最初こそ人間が動物界で静養している様子を物珍しそうに遠目で観ていた動物達も、
やがてリハビリを手伝ってくれるようになった。
動物界の生活は、かわいい、驚き、が交互に訪れ、
静かに爽やかに穏やかな環境でいられた。
例えば、
鳥が小包みを持ってきた。
ピッピヨと言っている。
どうやらおやつを持ってきてくれたようだ。
髪が伸びればカマキリがさっぱり散髪してくれた。
服を洗うには洗濯機もあるけど、そこは清流、アライグマやコアラも常連だ。
着替えや交換の衣類も、最初から数着あるものの、
新着をサル達が遊びながら並べている。
最初は軽めの運動から。
ナマケモノも隣で歩き、義手足を慣らせる。
トンボの道案内、
馬の背中に乗せてもらい、
取っておいたケーキをハイエナに食べられ、
トラやライオンと走って駆けた。
イルカと泳いだ。
キリンと身体測定。
ゾウやゴリラは稽古の相手をしてくれた。
カラスと帰路についた。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 オトノミー
◯ 重要な否定
いつしか冬になる。
炎のような羽毛をもつ朱雀。
暖炉の薪を交換しに外に出ると、義手義足の、肌面の境目が少し冷たい。
寒そうにしている様子を、千枝の隙間から眺めていたようだ。
朱雀『暖めようか?』
暖めるの言葉の割には、いくつかの火玉をクルクルと詠んでいる。
まるで建屋ごと燃やしそうな姿勢、暖めるを通り越し、延焼しそうだ。
滞空しながらパタパタ踊るようにおどけて見せる。
剽軽な鳥だ。
セジス『部屋を燃やさないでね』
冗談だとはわかっているが、やんわり遠慮した。
朱雀に見守られる顔色もあり、
ぱっと気付く。私は今、遠慮した。
振り切る言い方をすると、
断った。
否定してしまった。
これまで言われた事があれば、すべて受領し、誠心誠意それに応えていた。
たまにであればいいが、
毎度毎度すべて抱え込んでいては、それは過労する。
朱雀『セジス、君はゲームキャラだよ。だから人間の法律も、論外も論外』
朱雀『本当の両親は「伝説」の誰かかな? 飼ってもらう動物としては、ちょっと嫉妬するかも』
朱雀はバサバサと羽ばたいて行った。
朱雀の翼のおこす風は、ふかふかの布団のような風に包まれた。
◯ 心意気
青竜が訪ねてきた。
青竜『勝ちたいか』
自分の中だけで燻らせていた思いを急に見通され、反射的に表情が俯く。
私が1人でやらないとと思っていたことだから、動物であれ他者にバレたくはない後ろめたさもあった。
もちろん悔しいから殊勝に勝ちたいなどという思いではなく、純粋な復讐心だった。
そんなことはとうに見通されている。
あんのクソ黒社派閥の連中にも、当然のように見通されていた。
四神はもちろん。動物界のみんなにも見通されている。
完全な殺意と、純粋な復讐心。
そんなことは青竜も当然わかっている。
むしろ、私の中の完全な殺意と純粋な復讐心が、まだ消えていないことへの、確認のつもりの話し掛けだったようだ。
青竜『お裾分け。具合を見てまた食べてみて』
納得した顔の青竜は、「秘境名物・四神弁当」を差し入れてくれた。
食事は自然と命が尽きる動物を、生者のための食糧として各地点に揚がってくる独自の仕組みが、動物界にあるようだ。
調味料となる風味や雑穀なども、そこらの植物からたくさん採れた。
そして、いかにも人間用のインスタント食品を作る技術も、普通にある。
私は人間でありながら、動物界の衣食住に適応できた。
むしろ人間界は動物界からの分岐で派生した界要。
おおもとに還ったと考えると、
人間が動物界に適応することも、それほど不思議な話ではない。
そして至る、大事な「膿」の話の日
ライフプロセス
ー動物界にて休養 アクセプトー
◯ 救助の理由
片乙を救助したのは、
四神にとってもかつての出来事に忸怩たる思い、後悔の念も残していたため。
そのときの四神は同じように「膿」を浄化こそしたものの、
人間界の事だからと介入することはなかった。
私は、その者と似た雰囲気を感じるというのだ。
前世来世があるのであれば、同一の人物なのかもしれないと。
セジスと似た人物が、かつて、いた。
私には、その者と似た雰囲気を感じるというのだ。
青竜、朱雀、白虎、玄武が揃い踏みしている。
そろそろ真面目な話をする雰囲気になってくる。
◯ 前世の出来事?
ビジョンが映る。
かつて、片乙の頃の私と、似たような人間がいた。
同じく黒社に似た巨躯と、その当時の派閥に弄ばれ、悲惨な最期を迎えた人間がいた。
私の前世は、ひとつの仕事に真面目に仕えている。
その場に留まり、長く永く続けてきた真面目な人だったかもしれない。
ひとつの仕事を、只々身を粉にして仕え続ける。並大抵の事ではない。
虐められつつも、直向きに、辛かっただろうに、大丈夫だと自分に言い聞かせ、
長い永い時間を、辛く苦く、前世の身体には「膿」が溜まっている様子が伺える。
私もあのまま仕事を続けていたとしたら、さらに30年40年、続けていたのだろうか?
だとしたら更に長い年数を苛められ、過酷、本当に気が狂い死ぬ。
自己判断だとしても、限界を超えていたことが、思い返す今も、はっきりとわかる。
前世は、
そんな永遠にも感じる長い期間を、虐められ、「膿」を吸収し、
ただただ、直向きに、耐え凌いだ。
ものの、最期には、棄てられた。
経験した年数こそ少ないものの、私とまったく同じといっていい体験をしてきていた。
私に前世の記憶はないけど、話を聞くと他人事でもないなと思った。
そのときの四神は同じように役目として「膿」を浄化こそしたものの、
人間界の事だからと介入、救助による介入まではすることがなかった。
前世はそのまま亡くなってしまったが、
四神にとっても動物界のルールに則った行動、でありながら、葛藤もあり、
遺憾の出来事として、心に残っていた。
経緯があり、意図ぜずとはいえ見捨てるような結果になっていたことを、どこかで引っ掛かる感覚を共有していた四神。
今回は私が「膿」を抱えたまま海に落ちたので、「膿」を浄化する役目はもちろんのこと、
かつての未練、後悔の訓もあり、私という人間を助けてくれた。
前世さん。
私は貴方にも救われたことになるのか。
◯ 黒社の正体
セジス『ん? かつての当時? 黒社がいた?』
前世のビジョンで視た巨躯は、顔、体格、それらから黒社と同一人物といわれれば、そのまま納得のいく姿形をしていた。
ビジョンで当たり前のように黒社と認識、視ていた存在は、
500年前か100年前かは不明だとしても、遥か昔に今の黒社と同一人物が存在していた?
ありえない。人は赤ん坊から老人まで、容姿も変わっていく。
人間1人がどれだけ強くとも、100年と同じ姿を保つ? そんなことは無理だ。
左様、
古来より此ノ場に君臨してきた、人間以上の人間、
人間としての絶対強者、人間としての支配者。
それが黒社だった。
青竜『黒社。あの者は普通の人間ではない』
以前からその異様な威圧感もあり、そんな気はしていたけど、いざ青竜からも説を肯定する言葉をもらえるとは、一体どういう?
黒社が人間以上の人間となり、君臨できていた背景にいる存在、亢龍。
亢龍。
青竜、朱雀、白虎、玄武の四神。
それに類する、第五の神。亢龍。
亢龍は、動物界の神の役を保ちつつ、人間界を領土としている。
白虎『黒社。あの者から亢龍の属性を強く感じる』
黒社が絶対強者として成り存在していたのは、黒社人間個人の強さのほかに、
亢龍の超能属性をも濃く宿しているため。
人外の魔人を相手にしていた。
どうあっても、人間1人の力では、黒社には勝てない。
まして亢龍を宿している黒社に1人で勝つなど、到底無理な話だった。
異質な威圧感があったのはそういうことかと、納得できる。
◯ 亢龍と穢れ 同調する「膿」
亢龍とは、穢れを属性とする超能存在。
依り処となる「膿」
四神の見識を以ってなお、実体を掴めていない存在、亢龍。
その正体は、
穢れを属性としていることから、
「膿」の発生源ではないかとも目されている。
◯ 「膿」
人は誰しも1人1人、「膿」を抱えている。
「膿」はあまり良いモノではないが、かといって人間が人間として生を送るうえで、切り離せないモノである。という側面もある。
「膿」とは本来、増殖と消化を繰り返しながら、人間個々にて調整するべきモノ。
◯ 重い「膿」
「膿」は事実、重く、人間の身体にて、持ち続けるのも、辛い。
「膿」を重く感じた人間は、自らをラクにするため、自らの「膿」をどうにか軽くしよう、無くそうとする方法を考えた。
自らの「膿」を他人に持たせてしまおう、と考える人間も現れた。
自身1人の「膿」量自体、抱えられない者、
欲の赴くまま、「膿」を軽くしようとする者、
最初から「膿」を抱える気もなく、他者へ撒き散らす者、
他人の「膿」を押し付けられた側は、「膿」+「膿」となる。
人間1人の抱える「膿」が2人分、2倍の重さとなり、さらに重くなる状態。
これが苛めの、1個単位。
◯ 加重の「膿」
多重の「膿」により、動きにくい身体は、さらに苛められやすくなり、、
10人から「膿」を押し付けられた者は、
その者は常人の10倍の「膿」の重さを抱えることになる。
普通はまともではいられない。
亢龍は穢れや「膿」といった属性の核的存在だったとしても、
人間も、「膿」という属性を内包していて、
自己制御できなくなった連中が、苛めっ子となり周囲を巻き込み、
穢れや「膿」そのものが周囲の同属性を助長させ、
さらに苛めがエスカレートする。
◯ 質の良い「膿」
ときに、「質の良い膿」というモノも発生した。
人間個々の「膿」を、引き離そうとさせる心理の働く、「質の良い膿」
多くの人間は「質の良い膿」を持つ人間の近くにいると、自らの「膿」が軽くなる心理となるため、気持ち的にもラクで快適だ。
ラクで快適になりたい人間は、「質の良い膿」人間を中心として集まりやすく、
やがて「質の良い膿」を中核として、「輪」が形成される。
派閥、贔屓、集団心理もまた、「膿」の集合体。
◯ 「膿」の「輪」
だが実際は、「輪」に集まった人間達も、「膿」を誰かに押し付けているだけ。
どういうわけか「輪」の外側にいたり、
どういうわけか自らの「膿」を制御していたりする人間は、
派閥や集団心理に属する他者から押し付けられる「膿」を、一身に受けてしまう。
この他者から受け、際限なく増え続ける「膿」の重さは、セジスもよく知っている。
「質の良い膿」というモノは、つまりのところ、タチの悪い奴。
苛めっ子グループの中核にいるような奴こそ、「質の良い膿」
黒社とは、「質のとても良い膿」を持つ者。タチのとても悪い奴。
そして、「膿」と亢龍の穢れ属性は、相性が良い。
まして「質の良い膿」は、亢龍にとって格好の依り処。
亢龍は人間の「膿」が大好物だ。
なるほど。
◯ 感情の「膿」
人間の感情の仕組みの真相。
セジスは以前自分で空想した仮説ではあるが、十分に的を捉えているなと思った。
◯ 亢龍の存在
亢龍が黒社に宿っているのか。
であれば確かに、あの人間離れした異様な威圧感も納得がいく。
まさしく人外の存在を感じていたことになる。
あるいは黒社が、肥えた脂肪のひとつとして、亢龍も取り込んでいるのかもしれない。
黒社が、500年前か100年前かの昔から変わらず存在している理由も、
亢龍の超能に由来しているとしたら納得もいく。
そして古くから人間界に定着、
介入しながら常態化している亢龍は、人間界のバランスブレイカーにもなっていた。
動物界のルールに則ると、違反になる行為となる。
四神は亢龍を動物界に引き戻そうと考えていたが、
亢龍はその対象が、一個体なのか、あるいは複数体が存在する可能性もあった。
ルールはともかく、四神にとっては「膿」を浄化する役目として各地を追うと、
同義として、亢龍のことも追うことになる。
追ってはいるが煙に巻かれ、実態が掴めないながらも、如何にか引き戻そうとしていた。
もしどうしても無理なら、やむなく、討伐も視野に入れたうえで。
人間が個々、個人単位で「膿」を抱えているように、
人間界、界単位における「膿」もあるかもしれない。
動物界にもあてはまり、こちらの界単位の「膿」が、亢龍として顕現している説もある。
界単位の「膿」そのものだとしたら、それこそとんでもない超存在だ。
セジスを助けた理由はもうひとつあり、
まさしく亢龍捕獲に協力者が欲しかったためだ。
動物界は人間界に干渉しないルールがあり、四神も動物としてルールに則っている。
それでも亢龍のことはなんとかしたい。
そこで、
人間であるセジスに黒社を倒してもらい、亢龍を引き戻したいという考えだった。
◯ 最強と最弱
黒社は最強といえる存在。
一方怯えていた片乙は、最弱の存在。
周回の円グラフ。
最強が一歩前に行き過ぎれば?、最弱が一歩後ろに下がると?
紙一重、
最強も最弱も、その実、概念的立ち位置は、とても近い。
バランスに僅かでも変化が起きれば、ひっくり返りかねない。
セジスはかつて、1人の人間では到底抱えきれない量の「膿」を抱えながらも、
一応の生活ができていた事態とは、素体の丈夫な器を持っている証拠だった。
その潜在的な器からくるタフネスさは、
亢龍を捕獲する強力な入れ物になりえる可能性もあった。
思わず自嘲してしまう。
セジス『私、また入れ物?』
朱雀『ちゃんとサポートするよ』
青竜『同じ竜族が迷惑かけてる、すまね』
ハッハッハと、場の雰囲気に一服入れる談笑。
亢龍はともかく、黒社への復讐はするつもりでいた。
黒社に亢龍が宿っているのであれば、それごと退治すればいいだろうし、
仮に亢龍が宿っていなかったとしても、黒社はクズ人種だろうなと思う。
セジスにとって、亢龍はついで。
それでもいい、
黒社への復讐のプランが立ち始めていた。
私が苛められていることが常態化して以来、どこかでずっと考えていた復讐が、
現実味となるプランが、形となりつつある。
◯ 苛めの清算
黒社派閥の「膿」をいいように押し付けられ、「膿」のゴミ箱かとオモチャ扱い、
苛められていた、片乙。
派閥面々にとっては「膿」が軽くなりラクになっていた。
そのかわり私は「膿」を重く多重に抱え、辛くなっていたわけだ。
私は派閥連中へ、仕事内容以前に、
「膿」処理という、最高のサービスをご提供できていたわけだ。
その清算はしなくては。
セジス『でもなんで私だったんだろ?』
なぜ黒社が、片乙に目を付けたのかは、わからない。
黒社は亢龍の見通しもあり、片乙があの家に産まれることを予知していた。
玩具店に並ぶオモチャのように、
無造作にひとつ選んで、遊ぶターゲットにされていたのかもしれない。
片乙はターゲットと刻印され、派閥に囲まれる異端となった。
亢龍の超能も扱いながら、
黒社は片乙の行動の一部を制限し、洗脳のように片乙の次の行動を操作していた。
各地の配下へと誘導、
片乙は苛めに遭い苦しむ、その様子を黒社は娯楽や暇潰しとして愉しむために。
片乙は自分の判断で行動、各地を逃げて、引っ越し、転々と転職をしていたことも、
黒社によって、仕組まれた操りだった。
黒社が飽きれば捨て、また誰かがターゲットになる。
何度繰り返したのか、
おそらく前世もターゲットとなり、黒社のオモチャにされ亡くなった1人。
なにを以ってしても、片乙のままでは黒社に、まして派閥の1人にも勝てない状況。
絶対に自分達に勝てない片乙を、
派閥達もまた、黒社という絶対的後ろ盾のもと、愉しんでいた。
ときには黒社の指示で、ときには各自思い思いに苛めて、娯楽としていた。
派閥の各々が、ときには苛める内容をプレゼンターのように、黒社に伝えることもあったかもしれない。
黒社との同調のため、また元々クズ同士のため、
黒社と波長が合っていたことで形成された、派閥の要塞。
働く役目がある、仕事ある社会人だからといって、
あきらかな不利、異質を感じながら、吐き出しそうな「膿」恨みを押し閉じ殺し、
盲目的に仕えていたとは、「はぁ」とため息。
不利どころか、絶対に勝てない「輪」の中にいた。
そして最終的には、「あきた捨て」黒社の一言で海に捨てられた。
ともあれ四神から真相の答え合わせはできた。
「膿」は、用法容量を守り、正しく適切に扱いましょう。
肥大化した「膿」を制御、浄化するため、
セジスと四神の共同作戦。
クエスト「黒社派閥を討つ、そして亢龍を捕獲」ミーティングをひと通り。
といったところで、
別に必須クエストというわけでもない。
セジスは動物達の仲間となり、平和で静かな隠れ家ログハウスもある。
以降、幸せに暮らしましたとさ。
ちゃんちゃん。
ー「 完 」ー
となると物語として、締まりがつかないからな。
最後のステージに行こうか。
47 ー 主人公 ー
気付いているかな?
片乙もセジスも、男性か女性かを明記していない。
別に男女平等とか、ポリコレを意識してのことではない。
作者の望む小説のストーリーとして、
望む主人公として、主観的立ち位置の人物が必要だった。
読者には、
この主人公を自分に置き換えて、文字並びの奥にある絵を、それぞれ視てほしい。
男性であってもいい。
女性であってもいい。
男性か女性かを曖昧にするから、フルネームでなくてもいい。
ネームメイクとして男性女性、どちらでも適応する名前はいる。
キャラクターモデル、自分がゲームで共に駆ける主人公をキャラメイクできるゲーム。
もあったりする。あれに近い感覚だ。
作者がセジスとしての主人公の服装を想像すると、
布地厚めの、Yシャツ。
ややオーバーサイズの、カーゴパンツ。
作りの丈夫な靴、そうね、頑丈な作りの革製登山靴みたいなの。
動物界で造ってもらった義手義足。
主人公の服装にしては、ラフだろうか。作者癖のイメージとしては、こんな感じ。
キャラクターモデル、キャラメイク、
性別や服装など、
想像も変化するし、変えようと思えば、何度でも変わっていく。
これらを明記していないので、
その時その気分で変えれることも、小説の媒体の良いところ。
48 ー 繰り返し ー
良い方法を考えた。
現実では復讐できない。
やったとしても、1回限り。
すぐ犯人特定。国家権力がよってたかって捕獲。死ぬまで死刑。
今度は海捨てではなく、確実な死亡捨て。これが結末。になるかもな。
だいたい、
1回復讐したくらいでは満足できない恨ミの量なのだ。
100歳人生、死んだあとも、指折り、恨ミを数えられる。
死後の世界でも問い詰め、責め立て、蔑み、戒め、糾弾、非難、嗤笑、嘲弄、凌辱、愚弄、
細胞、遺伝、後継、歴史、世相、風潮、気配、影、雰囲気、意思、思念、名残、遺りも、
精神も心も霊魂も、潰し消し潰し消し潰し消し潰し消し、
消滅し尽くし潰してくれよう。
ハッ、二度と下衆が湧かないよう、蓋する文献だけは残るのか。
こういった二次創作界内であれば、
何回でも、
何度でも、
あわよくば後世にわたって、復讐できる。
この世界であれば、何度でも、復讐できる。
◇ 活かす
この小説、物語を活かす、一番おもしろい媒体は、ゲームだと思う。
漫画やアニメにすると、どうしても前半は鬱展開だけになってしまう。
その点、
ゲームであればフリータイムのLVupやアイテム諸々で、
気分を誤魔化すこともできる。
◯ 復讐対象
その対象となる敵は、おおきく分けて3つ。
1 派閥の連中。
生身の人間が単に集まった連中ではあるものの、
一致団結し、私をいいように苛めていた連中。
ただの人間1人の加虐心という「膿」が集まり、「膿」を吐き出し続ける、怪物。
派閥そのものが、集団心理そのものが、「敵」のひとつ。
派閥の奴らに言わせれば、私は苛められるだけの、ただの弱者。
弱い弱い私に太刀打ちできるわけがない、要塞。
見物だな。
粉々に粉砕してみせよう。
2 亢龍。
私の復讐に関して、直接的な恨みがあるわけじゃないけど、人間界の「膿」を助長する存在なのだとしたら、放ってもおけないだろう。
四神及び動物達は、命の恩人だ。
彼らからの協力依頼のあった対象だから、亢龍の捕獲に尽くすことも必要だ。
そして、黒社に宿っている存在であるならば、自然と同時に対峙、退治することにもなる。
3 黒社。
あのクソデブめ。
人の人生を弄びやがって、
絶対に吹っ飛ばしてやる。
黒社が亢龍を宿しているように、私自身に四神を宿すこともできたようだ。
でもそれだと、一瞬で片が付いてしまう。
一応復讐は達成できるけど、あまりに呆気ない。
◯ 年月
何を目標とするかにもよるが、
準備とは一朝一夕にできるものではない。
今は動物達と静かに楽しい、安心安全を感じられる毎日だったとしても、
深い傷を身体に、心に刻まれていることも、事実なのだ。
◯ 日程
どこで突入するか、日程を考えていた。
これは以前ヘトヘトになっていた片乙の頃から仕返し、復讐として考えていたことで、
夕方とか深夜とかと、行ったり来たり、悩ませ考えていたこともあった。
いざ実際に突入出来る体制になった今、
日程と、時間帯、決行の日程の目星はついていた。
人間界の一地点、特別その日だけ、穢れの属性が濃くなる日。亢龍だろう。
そして「膿」の数も、多数。
一網打尽にできる。
◯ やりたくない
決行するとしたら、次の相手は人外の第五神、亢龍。
もちろん四神がサポートしてくれることはわかっている。
ほとんど相手にならない片乙の頃と違い、今度ははっきりと抵抗に合うだろう。
動物達と日々トレーニングもしている。十分な自信も備わってきている感覚もある。
それでも黒社の強力さ、派閥の要塞には、届くだろうか?
急に恐怖に絡まれることもある。
なんとかして逃げられないだろうか?
誰か代わってくれないか?
もうやりたくない。
これはセジスが人間個人として、「膿」と向き合っているからこその現象。
「私よ、私1人分の「膿」など、余裕だろ?」
セジスはひたむきに己が身体と心に向き合った。
焦らず。長く。ゆっくりと。真摯に。
10年が経とうとしていた。
命を救われ、十分な休養を過ごすことができた。
私自身を封じていた呪われた名を捨て、
本来あった能力を解放してもらい、精巧な義肢も貰って、馴染んだ。
動物達に感謝している。
別の感情として、
恨みの心も、消えることはなかった。
◯ 悪となるのか?
私はこれから復讐という名目で、
暴力を以て、犯罪を以て、人間達を蹂躙する。
人間達が糾弾主張する、こういうときにピッタリの称号があった。
テロリスト。
もちろん元々望んだものではない。
それでも、
損にしかならない苦渋を集めさせられた過去、犠牲となった過去、「もったいない」の重み、
長く永く蓄積してきた、仕返し、恨み、復讐の、心。
考えない?
思い出さない?
できるわけないだろ。
捨てても消しても、消えない、心。
◯ 復讐
復讐。
突入の心は整った。
準備。
整った。
心の準備も。
セジス『苛められ、辛かった心を、復讐を以て、清算する』
言葉足らずながら、一言一言噛み締めながらの、セジスの言葉に、動物達も応える。
青竜『よろしく。僕らも一緒に行くよ』
49 ー NOW LOADING ー
先述のキャラメイクは済んだだろうか?
読者の好きな性癖で、主人公を彩ってほしい。
このあとセジスは出掛ける。
セジスは再び人間界へと出発する。
人間達が最っともストレスとなる、事ある事件の元凶となる、人間関係。
個々の大小強弱の歪みが露わとなる、仕事環境。
片乙1人だけでは、討てない。
人間の味方が誰1人いなかったのであれば、別の存在を味方にするしかない。
青竜、朱雀、白虎、玄武。
セジスと成った。ずいぶん遅れたけど、細胞は本来の能力を取り戻す。
運命と云われれば、運命だ。
だけど何でもかんでも、運命だ宿命だで片付けられると、本人はたまったものではない。
仕方ないから、運命宿命に向き合う。
復讐クエストを開始するテロリスト、見参。
さあ、突入だ。
この場面は、作者の文字では現せなかった。
良い感じのBGM、よろしく。
予告
名乗ることもあるまい。お前らがよく知っている人物だ。
やはり変わらない。
覇気はない。
譲歩したい。届けたい。
壱部
「四辺ノ町」 「冷寒ノ地」 「弛温ノ領」
弐部
参部
弐部
「 」
◯ 海の藻屑付近
闇さえ明るいわ
沈む片乙
大きな生物が近づいてくる?
サメか? クジラか? 食べられる? 私、美味しいのかな?
服とかどうするんだろう? 魚の骨みたいにペッて避けるのかな?
死亡した人体だとしても、死後わずかしばらくの間であれば、
寝ているときも大きな音がすると起きるように、
無意識でありながらも周囲のことは、わかっていたのかもしれない。
◯
?
肌に優しい光を感じる。死んだのだろうか。
おぼろげな視界。
肺にお腹に、空気を入ってす~ 戻しては~
呼吸していることに気付く。
ベッドの上で寝ている私。
代わりに風通しの良い織物を羽織っていた。
紅く染まり海水に浸かったボロボロの服は、ハンガーに掛けられていた。
左腕をあげると、肘から先がない。
足も、左足の脹脛から先がない。
やはりあのとき、
包帯はないけど傷口は閉じられ、ジェルで覆われ丁寧に止血されている。
片手片足を失ったものの、どうやら、
今は生きているはずだけど、あのときは死んでいた? 死んだはずなのに生きている?
? ? 寝惚けてる?
とりあえず、
私は、生きているらしい。
ほっとする安堵と、少しのがっかり感と、不思議な気持ちだった。
不思議な気持ち、死んだ気持ちをよそに、
下にあるのはフカフカのベッド。
根拠はないもののフワフワの安心感にもフヤフヤと包まれ、
気持ちいい。
まさに二度死んだように二度寝する。
◯ ログハウス 室内
横になっていたベッドがあまりに気持ち良く、つい深く寝入っていた。
やがて睡眠欲も収まり、ふやけた怠情も枯れてきた頃、
不自由な半身を起こしてみる。
あたりを見回してみる。
知っている部屋ではなかった。
ベッド。
ボロボロになるまで共に生きてきた服は、穏やかなハンガーに掛かっている。
風と遊ぶように揺れている白いカーテン。
昼のよう。窓の隙間からは空が見える。
タンスなどの収納。水回りのキッチンや風呂トイレ。なんとテレビまである。
料理しやすい食品も用意されている。
いつの間にか着ていたこの織物も含め、
この部屋には、生活に必要な設備はひと通り揃っているようだ。
誰が用意したのだろうか?
どこだろう? と思いはするものの、危険な雰囲気は感じなかった。
ふわり。
そよ風よりもふわふわと、爽やかな香りに撫でてもらう。
トントン。
「・・はい・・・?」
扉を開け、鳥と猫が入ってきた。
方や、ポットを持ち水栓を開け汲み、紅茶を淹れる。
方や、タンスを開け、衣類を器用に収納している。
鳥と猫は部屋の世話をしながら、
今日の紅茶の味はどうだとか、新作の服がどうだとか話している。人間の言葉だ。
その状況は、鳥と猫が言葉を喋っている。
そして人間の生活物資を慣れた手つき、普通に器用に扱っている。
普通なら驚くリアクションをするところだろうが、まだ寝ぼけた感じが残っているためか、うまく言葉が出てこない。
なにより動物が喋っているのは、現実ではあり得ない。幻覚か?
やっぱり私は死んでいるのかもしれない。
朱雀『・・・具合はどうかな?』
白虎『・・・辛い、よね・・・』
見返してやろう、今度は勝ちに行くよ、みたいなことも気軽な雰囲気を醸しながら、
眉を斜めにニガみっぽい顔をしながら、私の内情を汲もうとしているのか。
同情のつもりか?、共感のつもりか?
お前らに何がわかる。
辛い経験、苦しい経験のことを一瞬でもブリ思い返すと、制御しようにも気持ちが逆立つ。
私にあるのは殊勝に見返すとか、勝ちたいなどではなく、
純然に炎焔と沸る殺意があるのだ。
・・・あった、かな、
今は一方で、
なんとか火が灯っていた弱々しい蝋燭は、海の水深へと、火水と消えた。
沸る復讐の炎も、鎮火と虚しく消える。
残りあるとしたらポイ捨てゴミ、使い古しの蝋燭、虚無感。
ん?、んん?
それはともかく、
動物が喋っている?
さらにいうと、目の前にいる2体が朱雀と白虎だと、なぜ私は知っているんだ?
ひと通り部屋の世話を区切ると、朱雀と白虎は外へ行った。
部屋にあった松葉杖とスリッパを借り、2体が行き来していた扉から外に出てみる。
一歩外に出るとそこは、
◯ 森の中
足元は木造ベランダ。
私は丸太を器用に組んだ、ログハウスの部屋にいたようだ。
知らない森の中、いってしまうと樹海の遭難者とも例えられそうだが、
迷子感はあっても、閉塞感は感じない。
知らない場所に急に放り込まれたかたちではあるものの、不思議と不安は感じなかった。
木々がなにか言ってるように、サラサラと揺れる。
目が届く範囲だけだとしても、フカフカ芝る草木と、力強い土壌が土地を支えている。
弐部
「秘境」
◯ 秘境
ここは動物達が暮らす秘境。
動物界。
生い茂るジャングルとサバンナ、大草原。清流の先には大海原。
彩るは多様な動植物。
見たことがあるとしたら、TV番組なども含めた二次創作の世界。
一言で説明すると、ファンタジーだ。
片手片足を捥がれて満身創痍ではある。
休養も必要。
にしても毎日静かに寝ているだけというのも、退屈になってきた。
そこらの枝を松葉杖2本目に、軽く歩いてみる。
正直、旅行で行く観光地よりも新鮮な気分だった。
空気が美味しい。
周りの動物達はモノ珍しそうに、人間の私を見ている。
慣れている動物とは、軽い挨拶くらいはするようになっていた。
そんな話せる動物の2体、
翼のある空飛ぶ蛇、髭が尾へと立派な亀、
青竜と、玄武だ。
片乙『私は、どうして・・・?』
「どうして動物界にいるのか?」、
「どうして生きているのか?」、「どうして助かったのか?」、
矢継ぎ早に聞きたいことはあるが、どう言えばいいものか、整理できず尻込みの、消沈、
青竜が答えてくれた。
私が海へと落ちたあのとき、
水生動物達から、「膿」を抱えた人間が落ちてきたと、一斉に連絡があった。
「膿」を感知した青竜が近くにいたこともあって、素早く救助できた。
死の間際、夢のように見えた大きな生物は、実際に存在している青竜だった。
◯ 救助の四神
青竜、海中で私を飲み込み緊急救助、すぐに感覚を共有する四神。
朱雀、飛来し止血、傷をふさぐ。
白虎、動物達へ伝達して走って回り、人間用の生活物資を調達、奔走する。
玄武、他四神の行動をそれぞれ繋ぎ、擦り合わせる。
四神それぞれの連携もあり、このログハウスへと救助してくれたらしい。
青竜の大きさは、めいめい人間の子供くらい。
他3体のサイズ感も、似たようなものだ。
私を丸呑みにして助けるにしては小さいサイズだけど、
ああ、サイズは自在に変えられるんだなと、そこはやはり神様なのかも。
スムーズに納得した。
状況もわかってきた。
私は、青竜、朱雀、白虎、玄武によって救出、
動物界は秘境へと運び込まれ、手当てしてもらっていた。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 ライフー
◯ ログハウス近郊
秘境の生活から数日。
玄武『御主に人間の味方はおらぬ。あまりに不憫じゃ』
そういう理由もあって、同情もあって、保護してもらったわけか。
「・・・そっかぁ・・・ありがとう」
玄武の親身になった助言に、ほぼ雰囲気だけでどうにか応える。
毛ほどのか細い声で礼を言うのが精一杯だった。
私に人間の味方はいなかった。
どこかで、わかっていた。
頭のどこかでわかっていたことかもしれないが、これまで仕返しとか復讐をどうするかといった事で、考えも目も回り、頭がいっぱいになっていた。
味方なんていないもの、が前提だったし、余裕もなかった。
逆方向に寝返り、くしゃりそうな顔を我慢、今度のは、いつかの慟哭泣きではない。
残酷だけど真実の答え合わせ。自然と涙がでて、声も無くすすり泣く。
のちに玄武からの捕捉では、
私の周りにいた人間は3種類。
・無関心の人間。
・苛めっ子の人間。
・そして私。
私がその場その場で、
なにをどう訴えたところで、どう転んだところで、
周りの人間達と手を携えて、協力して物事に取り組む?
そんなことは完全にできない環境にいた。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 リセットー
◯ 呪いの祓い そして真名
秘境の生活から幾数日。
玄武『その名は誰に名付けられたものだ』
それは多分親が、
と応じようとしたところで、ザラリと、口に砂が混じるような違和感を覚えた。
玄武『(片乙)か、御主のその名は呪われている』
玄武は、その呪物を処する包みに残さず収め、包み消すように、(片乙)を扱った。
玄武『呪われている。なにもできなくなる不便が宿る名前じゃ』
その名は呪われている。
本体そのものに宿る名前というものは、言霊以上に影響があるらしい。
名付けられた名前次第で、宿る能力の有無、好運も悲運も運命も、
如何様にも変わっていくというのだ。
私が名付けられた瞬間の記憶などないが、変な名前として、思い当たるところはある。
片乙。
(カタオツ)まるで「型落ち」のような名前で、自分の身体でありながらも、
不思議とどうにも実力が発揮できていない、制限がかかっているような身体。
変な名前の自覚みたいなところも、あった。
玄武『人間らしく畏れた者の誰かが、御主の能力を封じるための楔としたのだろう』
ひょっとしたら、その時点で黒社が私の細胞となる男と女に、
私の名前を言伝していた?
だとしたら本来は男と女も黒社派閥だったかもしれないが、黒社の闇をもどこかで感じていた男と女。
黒社の監視を最小限にしようと考え、
せめて、関わらない、無関心を装っていた?
真相は不明だ。ともあれ、
呪われた名前による縛りは、想像以上に負荷となっていたようだ。
比喩ではあるが、ロープで身体中を縛られているようなものでもある。
身動き自体を封じられているのだから、勝つどころか、同等の生活自体が難しい。
自分の意思がどれだけあっても、身動きひとつできない状態に縛られている。
この状態ではどんな目標だとしても、まともな行動ひとつも無理だ。
玄武『ただでさえ「膿」により身重になっておった。そのうえ呪われた名前とは、不利も不利じゃ』
呪われた名を捨て、改めて名付けよう。
◯ 名を命ずる
セジス
ひたむきに続けた真摯者の名よ
セジス
「・・・・・・・・・・・・」
謎の静寂がしばらく。
名前が変わった瞬間、
ぶわーーっ と髪が逆立ち、力が溢れて、
ぶわーーっ とバチバチとオーラを放つ自分を妄想したが、
髪はそのまま。オーラも出ていない。
体調も、気にならないほど、つい先刻の瞬間となにも変わらなく、普通に自然だ。
指を閉じ開き、ちょっとゆらゆら動き、肘を曲げ、片足をやや浮かせ軽めの屈伸。
ふと、片手片足が失われていることに、残念さと怒りが混ざる複雑な心境もある。
変わったところはなさそうだ。
セジスよ、と続ける玄武。
玄武『セジス、これでようやっと彼奴らと互角じゃ。御主は以前のように、必要以上の「膿」を孕むことはあるまい』
その、と言いにくそうに続ける玄武。
玄武『その、拙者らの超能を以てしても、失った時間は戻してやれぬ』
名前変えはあっさり済んだ。けど、
散々苛められて辛かった38年、という人間の長い時間、は、もう戻らない。
辛気の記憶はそのままに。
私はセジス。
元の名前、片乙の名残りも欠片も無い、まったく新しい名前に、少々の戸惑いを感じる。
そういえば苗字も下の名前もなくなっている。動物界の名前もそうだよね。
セジス。
玄武から新しい名前を貰い、いわば本来の能力を発揮できるといわれる、真名。
少し身体を慣らしてみようか。
といっても本当に名前を変えただけで、身体は、別に、そのまま。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 ネームー
◯ 新たな手足
セジスの名を貰って変な沈黙を共有していると、気丈夫な風音が流れる。
白虎もやってきた。
白虎『セジス 良い名前だね。真名祝いを持ってきたよ』
義手と義足を持ってきてくれた。
動物界の技術者達が、私のために作ってくれたようだ。
私の、義手と義足。
私の、新しい手足。
自分でも目がキラキラしているのを自覚できるほど、照れながらも、とても嬉しかった。
セジス『すごい・・・ありがとう』
早速装着してみる。
シリコン製にも似た接合部はするりと肌に吸い付いた。
あまりに肌触りが良いためか、くすぐったいくらいだ。
一見するとゴテゴテあって板金が目立つ、無骨な外見、
その本質は、精密と頑丈さの融合だ。
人間の感覚でいうと、動物たちには作れるわけがない、
が、この代物は、むしろ人間達の技術よりも更に高次元、高度な技術で作成されている代物であることがわかる。
私の失われた左手左足に、動物界製技術の込められた義手義足が装着された。
かつての片乙には、1人の人間には到底抱えきれない量の「膿」を吸収しながらも、
一応の生活はできていた丈夫さがあった。
そう。その「膿」に関して、話があると。
でもその前に、
白虎『ゆっくり休むといいよ』
玄武『義肢も慣らしてみよう』
ライフプロセス
ー動物界にて休養 レギュラーー
46 ー 一般人の運 ー
この世にいる人間の多くは、一般人に該当するだろう。
一般人を構成するためには、一般的な運も作用している。
まったくの不運非運の人間が、一般人にはなれない。
一般人は個々に、多少の多かれ少なかれはあれど、一定量の良運幸運に恵まれている。
運は、
人間と人間との質の良い出会いや、先天的な能力を授かることなどに作用している。
一般人に、自身の運がどれほどの量か、自覚がある人間は少ないだろう。
では、運が、
まったく、運が、無い者。
あるいは極めて運が少ない者、がいるとしたら。
その者は一般人がいうところの、弱者にあたる。
運の塊。
運の塊、運の総量、
運の全体総量が決まっていると仮定しよう。
運塊は、各人間へと少しずつ取り分け、運として配布される。
取り分けた運が、うっかり多かったりして、極端に少なかったりして、
見方を変えると、
運がなかった弱者とは、
一般人へと運を配布するため、自分の取り分のはずの運がなかった状態ともいえる。
一般人とは弱者の犠牲を元として、一般人が出来るように、させてもらっている。
考えたこともなかったかな?
では弱者は只々、下賎で哀れな存在なだけなのだろうか?
それではあまりにも不憫だ。
どこかのタイミングで、これまで運に恵まれなかった分も含めて、
どこかで上方調整があってもいいだろう。
セジスの場合は、四神との出会いが上方調整であった。
片乙が海に落とされたとき、片乙自身はなにもしていない。
ドライな言い方をすると、
運由来により、青竜が向こうから勝手にやってきて、勝手に片乙を助けた。
結果、
片乙は命を取り留め、セジスとして名を改めた。
この一連の流れで、片乙は、セジスは、なにもしていない。
運とはそういうものだ。
本人の努力も、実力も毛ほども作用していない事象により、危機を脱した。
よくわかんないけどラッキー。
運とはそういうものだ。
運とは、アンタの実力ではない。
完全に、「何者か」から贈呈してもらえただけのもの。
運とはそういうものだ。
◯ 四神と動物界
セジス『でもなんで四神がこんなに集まって、動物界の偉い(人)? なんでしょう?』
四神や生活を手伝ってくれる動物達と、何気ない会話、雑談、
秘境あるある話、いろいろなことを教わった。
青竜『人間界で言う神は、偉大で祀るような存在なんだったね。でも動物界では神の意味は特別ないよ』
白虎『神も人間が害虫と嫌うゴキブリも、位としては同じなんだ』
玄武『どうしても「膿」を解消するという役目があるから、そのための目印かの』
朱雀『動物界の神様は働き者なんだよ。偉いでしょ』
朱雀がパタパタと戯けてみせている。
伝説の獣の1体なんだけど、こうして懐き、目の前で話している。
かわいい鳥だ。
つまり四神も虫類も、動物界において大小上下関係はなく、上位も下位もないという。
誰であっても分け隔てなく、フラットに、平等に、付き合えている。
人間達は、
口ではどう言おうとも到底不可能に近い概念が、ここ動物界では成立していた。
◯ 動物界と人間界
元々動物界があって、分岐し派生したものが人間界だという。
おおもとを辿ると、人間も動物界の一種族だった。
子供の頃など、冗談半分で人間も動物のひとつと考えていたことは、まさしく真理だった。
人間の目で見えている動物の姿は、本来の動物の姿ではないこと。
私は動物界で休養しているけど、目は人間なので、変わらず猫は猫に見えている。
人間の生活文明も高度だが、本来の動物達がもっている文明は、人間達のそれとはまた異なる方向性の文明を築いているようだ。
そして、動物界は人間界に介入しないこともルールとしてあった。
動物界を守るため、人間界を混乱させないためのルールだった。
もし動物達が本来の姿や文明を持ち出し人間界に介入していれば、
人間は技術でも意識でも、すぐに負ける。
負けを自覚した人間達は、
恐れ惑い、真相を見ようともせず、迎撃しようと、躍起になるかもしれない。
一般人のやることだ。ありえるなとも思う。
四神が実在していることや、動物界に築かれている人類以上の文明など、
これまでの私の感覚を改たにする知見だった。
◯ 四神の役目
穢れを追う四神。
四神には、「膿」を除去する超能属性があった。
また生物が死亡した際に器がなくなり漏れ出す「膿」など、
世に発生する「膿」を浄化することを、四神自らの役目と課していた。
「輪」つまりは地域、あるいはひとつのグループ単位。
穢れた「輪」には、見過ごせない「膿」も集まる。
その世、その時代において、穢れた「輪」へ順に赴き、
四神の各超能を以って、「膿」を浄化する役目だという。
弛温ノ領の一角が特別濃い「膿」を発生していたことも、
片乙を素早く救助できた要因だった。
そのまま、
片乙が抱えすぎていた「膿」も、救助、手当ての際に浄化していた。
◯ 自然な姿
なんだかあっさりと、
心身の休養のためにも、動物界で静養、生活することを受け入れてもらえた。
あとで気付いたことだが、
私が「そこ」に受け入れられたのは、初めての体験のような気がした。
最初こそ人間が動物界で静養している様子を物珍しそうに遠目で観ていた動物達も、
やがてリハビリを手伝ってくれるようになった。
動物界の生活は、かわいい、驚き、が交互に訪れ、
静かに爽やかに穏やかな環境でいられた。
例えば、
鳥が小包みを持ってきた。
ピッピヨと言っている。
どうやらおやつを持ってきてくれたようだ。
髪が伸びればカマキリがさっぱり散髪してくれた。
服を洗うには洗濯機もあるけど、そこは清流、アライグマやコアラも常連だ。
着替えや交換の衣類も、最初から数着あるものの、
新着をサル達が遊びながら並べている。
最初は軽めの運動から。
ナマケモノも隣で歩き、義手足を慣らせる。
トンボの道案内、
馬の背中に乗せてもらい、
取っておいたケーキをハイエナに食べられ、
トラやライオンと走って駆けた。
イルカと泳いだ。
キリンと身体測定。
ゾウやゴリラは稽古の相手をしてくれた。
カラスと帰路についた。
ライフプロセス
ー動物界にて休養 オトノミー
◯ 重要な否定
いつしか冬になる。
炎のような羽毛をもつ朱雀。
暖炉の薪を交換しに外に出ると、義手義足の、肌面の境目が少し冷たい。
寒そうにしている様子を、千枝の隙間から眺めていたようだ。
朱雀『暖めようか?』
暖めるの言葉の割には、いくつかの火玉をクルクルと詠んでいる。
まるで建屋ごと燃やしそうな姿勢、暖めるを通り越し、延焼しそうだ。
滞空しながらパタパタ踊るようにおどけて見せる。
剽軽な鳥だ。
セジス『部屋を燃やさないでね』
冗談だとはわかっているが、やんわり遠慮した。
朱雀に見守られる顔色もあり、
ぱっと気付く。私は今、遠慮した。
振り切る言い方をすると、
断った。
否定してしまった。
これまで言われた事があれば、すべて受領し、誠心誠意それに応えていた。
たまにであればいいが、
毎度毎度すべて抱え込んでいては、それは過労する。
朱雀『セジス、君はゲームキャラだよ。だから人間の法律も、論外も論外』
朱雀『本当の両親は「伝説」の誰かかな? 飼ってもらう動物としては、ちょっと嫉妬するかも』
朱雀はバサバサと羽ばたいて行った。
朱雀の翼のおこす風は、ふかふかの布団のような風に包まれた。
◯ 心意気
青竜が訪ねてきた。
青竜『勝ちたいか』
自分の中だけで燻らせていた思いを急に見通され、反射的に表情が俯く。
私が1人でやらないとと思っていたことだから、動物であれ他者にバレたくはない後ろめたさもあった。
もちろん悔しいから殊勝に勝ちたいなどという思いではなく、純粋な復讐心だった。
そんなことはとうに見通されている。
あんのクソ黒社派閥の連中にも、当然のように見通されていた。
四神はもちろん。動物界のみんなにも見通されている。
完全な殺意と、純粋な復讐心。
そんなことは青竜も当然わかっている。
むしろ、私の中の完全な殺意と純粋な復讐心が、まだ消えていないことへの、確認のつもりの話し掛けだったようだ。
青竜『お裾分け。具合を見てまた食べてみて』
納得した顔の青竜は、「秘境名物・四神弁当」を差し入れてくれた。
食事は自然と命が尽きる動物を、生者のための食糧として各地点に揚がってくる独自の仕組みが、動物界にあるようだ。
調味料となる風味や雑穀なども、そこらの植物からたくさん採れた。
そして、いかにも人間用のインスタント食品を作る技術も、普通にある。
私は人間でありながら、動物界の衣食住に適応できた。
むしろ人間界は動物界からの分岐で派生した界要。
おおもとに還ったと考えると、
人間が動物界に適応することも、それほど不思議な話ではない。
そして至る、大事な「膿」の話の日
ライフプロセス
ー動物界にて休養 アクセプトー
◯ 救助の理由
片乙を救助したのは、
四神にとってもかつての出来事に忸怩たる思い、後悔の念も残していたため。
そのときの四神は同じように「膿」を浄化こそしたものの、
人間界の事だからと介入することはなかった。
私は、その者と似た雰囲気を感じるというのだ。
前世来世があるのであれば、同一の人物なのかもしれないと。
セジスと似た人物が、かつて、いた。
私には、その者と似た雰囲気を感じるというのだ。
青竜、朱雀、白虎、玄武が揃い踏みしている。
そろそろ真面目な話をする雰囲気になってくる。
◯ 前世の出来事?
ビジョンが映る。
かつて、片乙の頃の私と、似たような人間がいた。
同じく黒社に似た巨躯と、その当時の派閥に弄ばれ、悲惨な最期を迎えた人間がいた。
私の前世は、ひとつの仕事に真面目に仕えている。
その場に留まり、長く永く続けてきた真面目な人だったかもしれない。
ひとつの仕事を、只々身を粉にして仕え続ける。並大抵の事ではない。
虐められつつも、直向きに、辛かっただろうに、大丈夫だと自分に言い聞かせ、
長い永い時間を、辛く苦く、前世の身体には「膿」が溜まっている様子が伺える。
私もあのまま仕事を続けていたとしたら、さらに30年40年、続けていたのだろうか?
だとしたら更に長い年数を苛められ、過酷、本当に気が狂い死ぬ。
自己判断だとしても、限界を超えていたことが、思い返す今も、はっきりとわかる。
前世は、
そんな永遠にも感じる長い期間を、虐められ、「膿」を吸収し、
ただただ、直向きに、耐え凌いだ。
ものの、最期には、棄てられた。
経験した年数こそ少ないものの、私とまったく同じといっていい体験をしてきていた。
私に前世の記憶はないけど、話を聞くと他人事でもないなと思った。
そのときの四神は同じように役目として「膿」を浄化こそしたものの、
人間界の事だからと介入、救助による介入まではすることがなかった。
前世はそのまま亡くなってしまったが、
四神にとっても動物界のルールに則った行動、でありながら、葛藤もあり、
遺憾の出来事として、心に残っていた。
経緯があり、意図ぜずとはいえ見捨てるような結果になっていたことを、どこかで引っ掛かる感覚を共有していた四神。
今回は私が「膿」を抱えたまま海に落ちたので、「膿」を浄化する役目はもちろんのこと、
かつての未練、後悔の訓もあり、私という人間を助けてくれた。
前世さん。
私は貴方にも救われたことになるのか。
◯ 黒社の正体
セジス『ん? かつての当時? 黒社がいた?』
前世のビジョンで視た巨躯は、顔、体格、それらから黒社と同一人物といわれれば、そのまま納得のいく姿形をしていた。
ビジョンで当たり前のように黒社と認識、視ていた存在は、
500年前か100年前かは不明だとしても、遥か昔に今の黒社と同一人物が存在していた?
ありえない。人は赤ん坊から老人まで、容姿も変わっていく。
人間1人がどれだけ強くとも、100年と同じ姿を保つ? そんなことは無理だ。
左様、
古来より此ノ場に君臨してきた、人間以上の人間、
人間としての絶対強者、人間としての支配者。
それが黒社だった。
青竜『黒社。あの者は普通の人間ではない』
以前からその異様な威圧感もあり、そんな気はしていたけど、いざ青竜からも説を肯定する言葉をもらえるとは、一体どういう?
黒社が人間以上の人間となり、君臨できていた背景にいる存在、亢龍。
亢龍。
青竜、朱雀、白虎、玄武の四神。
それに類する、第五の神。亢龍。
亢龍は、動物界の神の役を保ちつつ、人間界を領土としている。
白虎『黒社。あの者から亢龍の属性を強く感じる』
黒社が絶対強者として成り存在していたのは、黒社人間個人の強さのほかに、
亢龍の超能属性をも濃く宿しているため。
人外の魔人を相手にしていた。
どうあっても、人間1人の力では、黒社には勝てない。
まして亢龍を宿している黒社に1人で勝つなど、到底無理な話だった。
異質な威圧感があったのはそういうことかと、納得できる。
◯ 亢龍と穢れ 同調する「膿」
亢龍とは、穢れを属性とする超能存在。
依り処となる「膿」
四神の見識を以ってなお、実体を掴めていない存在、亢龍。
その正体は、
穢れを属性としていることから、
「膿」の発生源ではないかとも目されている。
◯ 「膿」
人は誰しも1人1人、「膿」を抱えている。
「膿」はあまり良いモノではないが、かといって人間が人間として生を送るうえで、切り離せないモノである。という側面もある。
「膿」とは本来、増殖と消化を繰り返しながら、人間個々にて調整するべきモノ。
◯ 重い「膿」
「膿」は事実、重く、人間の身体にて、持ち続けるのも、辛い。
「膿」を重く感じた人間は、自らをラクにするため、自らの「膿」をどうにか軽くしよう、無くそうとする方法を考えた。
自らの「膿」を他人に持たせてしまおう、と考える人間も現れた。
自身1人の「膿」量自体、抱えられない者、
欲の赴くまま、「膿」を軽くしようとする者、
最初から「膿」を抱える気もなく、他者へ撒き散らす者、
他人の「膿」を押し付けられた側は、「膿」+「膿」となる。
人間1人の抱える「膿」が2人分、2倍の重さとなり、さらに重くなる状態。
これが苛めの、1個単位。
◯ 加重の「膿」
多重の「膿」により、動きにくい身体は、さらに苛められやすくなり、、
10人から「膿」を押し付けられた者は、
その者は常人の10倍の「膿」の重さを抱えることになる。
普通はまともではいられない。
亢龍は穢れや「膿」といった属性の核的存在だったとしても、
人間も、「膿」という属性を内包していて、
自己制御できなくなった連中が、苛めっ子となり周囲を巻き込み、
穢れや「膿」そのものが周囲の同属性を助長させ、
さらに苛めがエスカレートする。
◯ 質の良い「膿」
ときに、「質の良い膿」というモノも発生した。
人間個々の「膿」を、引き離そうとさせる心理の働く、「質の良い膿」
多くの人間は「質の良い膿」を持つ人間の近くにいると、自らの「膿」が軽くなる心理となるため、気持ち的にもラクで快適だ。
ラクで快適になりたい人間は、「質の良い膿」人間を中心として集まりやすく、
やがて「質の良い膿」を中核として、「輪」が形成される。
派閥、贔屓、集団心理もまた、「膿」の集合体。
◯ 「膿」の「輪」
だが実際は、「輪」に集まった人間達も、「膿」を誰かに押し付けているだけ。
どういうわけか「輪」の外側にいたり、
どういうわけか自らの「膿」を制御していたりする人間は、
派閥や集団心理に属する他者から押し付けられる「膿」を、一身に受けてしまう。
この他者から受け、際限なく増え続ける「膿」の重さは、セジスもよく知っている。
「質の良い膿」というモノは、つまりのところ、タチの悪い奴。
苛めっ子グループの中核にいるような奴こそ、「質の良い膿」
黒社とは、「質のとても良い膿」を持つ者。タチのとても悪い奴。
そして、「膿」と亢龍の穢れ属性は、相性が良い。
まして「質の良い膿」は、亢龍にとって格好の依り処。
亢龍は人間の「膿」が大好物だ。
なるほど。
◯ 感情の「膿」
人間の感情の仕組みの真相。
セジスは以前自分で空想した仮説ではあるが、十分に的を捉えているなと思った。
◯ 亢龍の存在
亢龍が黒社に宿っているのか。
であれば確かに、あの人間離れした異様な威圧感も納得がいく。
まさしく人外の存在を感じていたことになる。
あるいは黒社が、肥えた脂肪のひとつとして、亢龍も取り込んでいるのかもしれない。
黒社が、500年前か100年前かの昔から変わらず存在している理由も、
亢龍の超能に由来しているとしたら納得もいく。
そして古くから人間界に定着、
介入しながら常態化している亢龍は、人間界のバランスブレイカーにもなっていた。
動物界のルールに則ると、違反になる行為となる。
四神は亢龍を動物界に引き戻そうと考えていたが、
亢龍はその対象が、一個体なのか、あるいは複数体が存在する可能性もあった。
ルールはともかく、四神にとっては「膿」を浄化する役目として各地を追うと、
同義として、亢龍のことも追うことになる。
追ってはいるが煙に巻かれ、実態が掴めないながらも、如何にか引き戻そうとしていた。
もしどうしても無理なら、やむなく、討伐も視野に入れたうえで。
人間が個々、個人単位で「膿」を抱えているように、
人間界、界単位における「膿」もあるかもしれない。
動物界にもあてはまり、こちらの界単位の「膿」が、亢龍として顕現している説もある。
界単位の「膿」そのものだとしたら、それこそとんでもない超存在だ。
セジスを助けた理由はもうひとつあり、
まさしく亢龍捕獲に協力者が欲しかったためだ。
動物界は人間界に干渉しないルールがあり、四神も動物としてルールに則っている。
それでも亢龍のことはなんとかしたい。
そこで、
人間であるセジスに黒社を倒してもらい、亢龍を引き戻したいという考えだった。
◯ 最強と最弱
黒社は最強といえる存在。
一方怯えていた片乙は、最弱の存在。
周回の円グラフ。
最強が一歩前に行き過ぎれば?、最弱が一歩後ろに下がると?
紙一重、
最強も最弱も、その実、概念的立ち位置は、とても近い。
バランスに僅かでも変化が起きれば、ひっくり返りかねない。
セジスはかつて、1人の人間では到底抱えきれない量の「膿」を抱えながらも、
一応の生活ができていた事態とは、素体の丈夫な器を持っている証拠だった。
その潜在的な器からくるタフネスさは、
亢龍を捕獲する強力な入れ物になりえる可能性もあった。
思わず自嘲してしまう。
セジス『私、また入れ物?』
朱雀『ちゃんとサポートするよ』
青竜『同じ竜族が迷惑かけてる、すまね』
ハッハッハと、場の雰囲気に一服入れる談笑。
亢龍はともかく、黒社への復讐はするつもりでいた。
黒社に亢龍が宿っているのであれば、それごと退治すればいいだろうし、
仮に亢龍が宿っていなかったとしても、黒社はクズ人種だろうなと思う。
セジスにとって、亢龍はついで。
それでもいい、
黒社への復讐のプランが立ち始めていた。
私が苛められていることが常態化して以来、どこかでずっと考えていた復讐が、
現実味となるプランが、形となりつつある。
◯ 苛めの清算
黒社派閥の「膿」をいいように押し付けられ、「膿」のゴミ箱かとオモチャ扱い、
苛められていた、片乙。
派閥面々にとっては「膿」が軽くなりラクになっていた。
そのかわり私は「膿」を重く多重に抱え、辛くなっていたわけだ。
私は派閥連中へ、仕事内容以前に、
「膿」処理という、最高のサービスをご提供できていたわけだ。
その清算はしなくては。
セジス『でもなんで私だったんだろ?』
なぜ黒社が、片乙に目を付けたのかは、わからない。
黒社は亢龍の見通しもあり、片乙があの家に産まれることを予知していた。
玩具店に並ぶオモチャのように、
無造作にひとつ選んで、遊ぶターゲットにされていたのかもしれない。
片乙はターゲットと刻印され、派閥に囲まれる異端となった。
亢龍の超能も扱いながら、
黒社は片乙の行動の一部を制限し、洗脳のように片乙の次の行動を操作していた。
各地の配下へと誘導、
片乙は苛めに遭い苦しむ、その様子を黒社は娯楽や暇潰しとして愉しむために。
片乙は自分の判断で行動、各地を逃げて、引っ越し、転々と転職をしていたことも、
黒社によって、仕組まれた操りだった。
黒社が飽きれば捨て、また誰かがターゲットになる。
何度繰り返したのか、
おそらく前世もターゲットとなり、黒社のオモチャにされ亡くなった1人。
なにを以ってしても、片乙のままでは黒社に、まして派閥の1人にも勝てない状況。
絶対に自分達に勝てない片乙を、
派閥達もまた、黒社という絶対的後ろ盾のもと、愉しんでいた。
ときには黒社の指示で、ときには各自思い思いに苛めて、娯楽としていた。
派閥の各々が、ときには苛める内容をプレゼンターのように、黒社に伝えることもあったかもしれない。
黒社との同調のため、また元々クズ同士のため、
黒社と波長が合っていたことで形成された、派閥の要塞。
働く役目がある、仕事ある社会人だからといって、
あきらかな不利、異質を感じながら、吐き出しそうな「膿」恨みを押し閉じ殺し、
盲目的に仕えていたとは、「はぁ」とため息。
不利どころか、絶対に勝てない「輪」の中にいた。
そして最終的には、「あきた捨て」黒社の一言で海に捨てられた。
ともあれ四神から真相の答え合わせはできた。
「膿」は、用法容量を守り、正しく適切に扱いましょう。
肥大化した「膿」を制御、浄化するため、
セジスと四神の共同作戦。
クエスト「黒社派閥を討つ、そして亢龍を捕獲」ミーティングをひと通り。
といったところで、
別に必須クエストというわけでもない。
セジスは動物達の仲間となり、平和で静かな隠れ家ログハウスもある。
以降、幸せに暮らしましたとさ。
ちゃんちゃん。
ー「 完 」ー
となると物語として、締まりがつかないからな。
最後のステージに行こうか。
47 ー 主人公 ー
気付いているかな?
片乙もセジスも、男性か女性かを明記していない。
別に男女平等とか、ポリコレを意識してのことではない。
作者の望む小説のストーリーとして、
望む主人公として、主観的立ち位置の人物が必要だった。
読者には、
この主人公を自分に置き換えて、文字並びの奥にある絵を、それぞれ視てほしい。
男性であってもいい。
女性であってもいい。
男性か女性かを曖昧にするから、フルネームでなくてもいい。
ネームメイクとして男性女性、どちらでも適応する名前はいる。
キャラクターモデル、自分がゲームで共に駆ける主人公をキャラメイクできるゲーム。
もあったりする。あれに近い感覚だ。
作者がセジスとしての主人公の服装を想像すると、
布地厚めの、Yシャツ。
ややオーバーサイズの、カーゴパンツ。
作りの丈夫な靴、そうね、頑丈な作りの革製登山靴みたいなの。
動物界で造ってもらった義手義足。
主人公の服装にしては、ラフだろうか。作者癖のイメージとしては、こんな感じ。
キャラクターモデル、キャラメイク、
性別や服装など、
想像も変化するし、変えようと思えば、何度でも変わっていく。
これらを明記していないので、
その時その気分で変えれることも、小説の媒体の良いところ。
48 ー 繰り返し ー
良い方法を考えた。
現実では復讐できない。
やったとしても、1回限り。
すぐ犯人特定。国家権力がよってたかって捕獲。死ぬまで死刑。
今度は海捨てではなく、確実な死亡捨て。これが結末。になるかもな。
だいたい、
1回復讐したくらいでは満足できない恨ミの量なのだ。
100歳人生、死んだあとも、指折り、恨ミを数えられる。
死後の世界でも問い詰め、責め立て、蔑み、戒め、糾弾、非難、嗤笑、嘲弄、凌辱、愚弄、
細胞、遺伝、後継、歴史、世相、風潮、気配、影、雰囲気、意思、思念、名残、遺りも、
精神も心も霊魂も、潰し消し潰し消し潰し消し潰し消し、
消滅し尽くし潰してくれよう。
ハッ、二度と下衆が湧かないよう、蓋する文献だけは残るのか。
こういった二次創作界内であれば、
何回でも、
何度でも、
あわよくば後世にわたって、復讐できる。
この世界であれば、何度でも、復讐できる。
◇ 活かす
この小説、物語を活かす、一番おもしろい媒体は、ゲームだと思う。
漫画やアニメにすると、どうしても前半は鬱展開だけになってしまう。
その点、
ゲームであればフリータイムのLVupやアイテム諸々で、
気分を誤魔化すこともできる。
◯ 復讐対象
その対象となる敵は、おおきく分けて3つ。
1 派閥の連中。
生身の人間が単に集まった連中ではあるものの、
一致団結し、私をいいように苛めていた連中。
ただの人間1人の加虐心という「膿」が集まり、「膿」を吐き出し続ける、怪物。
派閥そのものが、集団心理そのものが、「敵」のひとつ。
派閥の奴らに言わせれば、私は苛められるだけの、ただの弱者。
弱い弱い私に太刀打ちできるわけがない、要塞。
見物だな。
粉々に粉砕してみせよう。
2 亢龍。
私の復讐に関して、直接的な恨みがあるわけじゃないけど、人間界の「膿」を助長する存在なのだとしたら、放ってもおけないだろう。
四神及び動物達は、命の恩人だ。
彼らからの協力依頼のあった対象だから、亢龍の捕獲に尽くすことも必要だ。
そして、黒社に宿っている存在であるならば、自然と同時に対峙、退治することにもなる。
3 黒社。
あのクソデブめ。
人の人生を弄びやがって、
絶対に吹っ飛ばしてやる。
黒社が亢龍を宿しているように、私自身に四神を宿すこともできたようだ。
でもそれだと、一瞬で片が付いてしまう。
一応復讐は達成できるけど、あまりに呆気ない。
◯ 年月
何を目標とするかにもよるが、
準備とは一朝一夕にできるものではない。
今は動物達と静かに楽しい、安心安全を感じられる毎日だったとしても、
深い傷を身体に、心に刻まれていることも、事実なのだ。
◯ 日程
どこで突入するか、日程を考えていた。
これは以前ヘトヘトになっていた片乙の頃から仕返し、復讐として考えていたことで、
夕方とか深夜とかと、行ったり来たり、悩ませ考えていたこともあった。
いざ実際に突入出来る体制になった今、
日程と、時間帯、決行の日程の目星はついていた。
人間界の一地点、特別その日だけ、穢れの属性が濃くなる日。亢龍だろう。
そして「膿」の数も、多数。
一網打尽にできる。
◯ やりたくない
決行するとしたら、次の相手は人外の第五神、亢龍。
もちろん四神がサポートしてくれることはわかっている。
ほとんど相手にならない片乙の頃と違い、今度ははっきりと抵抗に合うだろう。
動物達と日々トレーニングもしている。十分な自信も備わってきている感覚もある。
それでも黒社の強力さ、派閥の要塞には、届くだろうか?
急に恐怖に絡まれることもある。
なんとかして逃げられないだろうか?
誰か代わってくれないか?
もうやりたくない。
これはセジスが人間個人として、「膿」と向き合っているからこその現象。
「私よ、私1人分の「膿」など、余裕だろ?」
セジスはひたむきに己が身体と心に向き合った。
焦らず。長く。ゆっくりと。真摯に。
10年が経とうとしていた。
命を救われ、十分な休養を過ごすことができた。
私自身を封じていた呪われた名を捨て、
本来あった能力を解放してもらい、精巧な義肢も貰って、馴染んだ。
動物達に感謝している。
別の感情として、
恨みの心も、消えることはなかった。
◯ 悪となるのか?
私はこれから復讐という名目で、
暴力を以て、犯罪を以て、人間達を蹂躙する。
人間達が糾弾主張する、こういうときにピッタリの称号があった。
テロリスト。
もちろん元々望んだものではない。
それでも、
損にしかならない苦渋を集めさせられた過去、犠牲となった過去、「もったいない」の重み、
長く永く蓄積してきた、仕返し、恨み、復讐の、心。
考えない?
思い出さない?
できるわけないだろ。
捨てても消しても、消えない、心。
◯ 復讐
復讐。
突入の心は整った。
準備。
整った。
心の準備も。
セジス『苛められ、辛かった心を、復讐を以て、清算する』
言葉足らずながら、一言一言噛み締めながらの、セジスの言葉に、動物達も応える。
青竜『よろしく。僕らも一緒に行くよ』
49 ー NOW LOADING ー
先述のキャラメイクは済んだだろうか?
読者の好きな性癖で、主人公を彩ってほしい。
このあとセジスは出掛ける。
セジスは再び人間界へと出発する。
人間達が最っともストレスとなる、事ある事件の元凶となる、人間関係。
個々の大小強弱の歪みが露わとなる、仕事環境。
片乙1人だけでは、討てない。
人間の味方が誰1人いなかったのであれば、別の存在を味方にするしかない。
青竜、朱雀、白虎、玄武。
セジスと成った。ずいぶん遅れたけど、細胞は本来の能力を取り戻す。
運命と云われれば、運命だ。
だけど何でもかんでも、運命だ宿命だで片付けられると、本人はたまったものではない。
仕方ないから、運命宿命に向き合う。
復讐クエストを開始するテロリスト、見参。
さあ、突入だ。
この場面は、作者の文字では現せなかった。
良い感じのBGM、よろしく。
予告
名乗ることもあるまい。お前らがよく知っている人物だ。
やはり変わらない。
覇気はない。
譲歩したい。届けたい。
0
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