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プロローグ又は共通ルート
馬車の中
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「私、あんなこと言われたことなかった」
馬車の中でリズが言った。はい、と私は頷いた。
「お父さんも、私が神託をもらうまでは、私を愛してくれてたのかな。……わからないんだ。全然、覚えてないの」
私はリズを膝に乗せた態勢で話を聞いている。リズは自分で自分の重量を操作できる。あと愛されている実感が欲しいらしく、スキンシップが好きだ。基本的に他人に怪しまれないところでは実体化し、私に触れている。
「私が覚えてるのは、神託と、その後の痛かったことだけなの。なんで、こんなのばっかりしか私の記憶にはないんだろう。……くるしい。苦しい。辛いよ。ねえ、助けてマリちゃん。痛かったことも、嫌だったことも、全部忘れさせて。それくらい、もっとどろどろに愛して。愛してよ……」
ぐす、ぐす、と本格的に泣きが入ったリズを抱きしめ、軽く揺らす。
「リズ。リズ。愛してます。あなたは素敵です。世界で一番」
「……もっと」
「可愛い。綺麗です、リズ。ちょっとおてんばなところも、意外と大胆なところも。愛されたがりなところも好き。スキンシップが多くてかわいい。好きです。大好きですよ」
「うん……」
「リズは頑張り屋さんです。誰が否定しようとも、私だけはあなたを肯定します。ずっと味方です。あなたと約束したあの日から、この世界における私の命はあなたのためにあります」
リズの望む言葉を吐く。まぎれもない本心だ。私はリズのために生きている。あの日から。
「本当に味方? 一生離れない?」
問うてくるリズの目にハイライトはない。いつものことだ。
「……はい。離れません」
私は頷いた。
ついについたぞ王都!
馬車の揺れで痛めた腰とはもはやおさらば。これからはシティーガールとしての一歩を踏み出すのである。地上に降り、私は感動していた。
「マリちゃん、嬉しそうだね!」
リズも空中でくるくると回った。正直に言えば、飛行機を降りたときの何倍もの感動を私は味わっている。ウルトラハッピー!! 地面ってこんなにも素敵なものだったんだ!
「では、メアリお嬢様。お元気で!」
学園には使用人を連れていけないため、ここまでついてきてくれたメイドや御者や私兵たちとはここでお別れである。
「ええ、貴方たちも体には気をつけるのよ!」
爽やかに手を振り、私は門のほうへ足を踏み出した。
学園。知識では知っていた。しかし、実際に訪れたのはこれが初めてだ。当然授業への興味はあふれているが、そうではなく。
「ここに、五色の証を持った__私たちに恋をさせなきゃいけない五人が、通っているんだね」
リズの言葉に、私は頷く。そうなのだ。実は、攻略対象__とここでは便宜上そう呼ぶが__たちも皆、神託を受け取っていたらしい。その内容がこうだ。
「お前のその証は、世界を左右する力を持つという証だ。しかし、その力は善にも悪にもなり得る__心して使え」
……どうしてリズにはたぶらかすとか酷い言葉を使ったんだ? 不公平だ。リズももっと運命の人と恋に落ちるとかにしてくれたら、ずっといい暮らしができただろうに、と私は怒ったが、リズは気にしていないと言ったのでひとまず収めた。本人がそういうのに、無理に蒸し返すのは良くない。
ともかく、そんなお告げを受けたのだ。即座に彼らは将来の学園入りを決定づけられた。うち一人は平民だったが、学園に通うため爵位まで授けられたらしい。……それはそれで、辛い気がするが。
つまり全攻略対象はこの箱庭のどこかにいるわけだ。まずはそれを探すところからだな、と私は結論付けた。
馬車の中でリズが言った。はい、と私は頷いた。
「お父さんも、私が神託をもらうまでは、私を愛してくれてたのかな。……わからないんだ。全然、覚えてないの」
私はリズを膝に乗せた態勢で話を聞いている。リズは自分で自分の重量を操作できる。あと愛されている実感が欲しいらしく、スキンシップが好きだ。基本的に他人に怪しまれないところでは実体化し、私に触れている。
「私が覚えてるのは、神託と、その後の痛かったことだけなの。なんで、こんなのばっかりしか私の記憶にはないんだろう。……くるしい。苦しい。辛いよ。ねえ、助けてマリちゃん。痛かったことも、嫌だったことも、全部忘れさせて。それくらい、もっとどろどろに愛して。愛してよ……」
ぐす、ぐす、と本格的に泣きが入ったリズを抱きしめ、軽く揺らす。
「リズ。リズ。愛してます。あなたは素敵です。世界で一番」
「……もっと」
「可愛い。綺麗です、リズ。ちょっとおてんばなところも、意外と大胆なところも。愛されたがりなところも好き。スキンシップが多くてかわいい。好きです。大好きですよ」
「うん……」
「リズは頑張り屋さんです。誰が否定しようとも、私だけはあなたを肯定します。ずっと味方です。あなたと約束したあの日から、この世界における私の命はあなたのためにあります」
リズの望む言葉を吐く。まぎれもない本心だ。私はリズのために生きている。あの日から。
「本当に味方? 一生離れない?」
問うてくるリズの目にハイライトはない。いつものことだ。
「……はい。離れません」
私は頷いた。
ついについたぞ王都!
馬車の揺れで痛めた腰とはもはやおさらば。これからはシティーガールとしての一歩を踏み出すのである。地上に降り、私は感動していた。
「マリちゃん、嬉しそうだね!」
リズも空中でくるくると回った。正直に言えば、飛行機を降りたときの何倍もの感動を私は味わっている。ウルトラハッピー!! 地面ってこんなにも素敵なものだったんだ!
「では、メアリお嬢様。お元気で!」
学園には使用人を連れていけないため、ここまでついてきてくれたメイドや御者や私兵たちとはここでお別れである。
「ええ、貴方たちも体には気をつけるのよ!」
爽やかに手を振り、私は門のほうへ足を踏み出した。
学園。知識では知っていた。しかし、実際に訪れたのはこれが初めてだ。当然授業への興味はあふれているが、そうではなく。
「ここに、五色の証を持った__私たちに恋をさせなきゃいけない五人が、通っているんだね」
リズの言葉に、私は頷く。そうなのだ。実は、攻略対象__とここでは便宜上そう呼ぶが__たちも皆、神託を受け取っていたらしい。その内容がこうだ。
「お前のその証は、世界を左右する力を持つという証だ。しかし、その力は善にも悪にもなり得る__心して使え」
……どうしてリズにはたぶらかすとか酷い言葉を使ったんだ? 不公平だ。リズももっと運命の人と恋に落ちるとかにしてくれたら、ずっといい暮らしができただろうに、と私は怒ったが、リズは気にしていないと言ったのでひとまず収めた。本人がそういうのに、無理に蒸し返すのは良くない。
ともかく、そんなお告げを受けたのだ。即座に彼らは将来の学園入りを決定づけられた。うち一人は平民だったが、学園に通うため爵位まで授けられたらしい。……それはそれで、辛い気がするが。
つまり全攻略対象はこの箱庭のどこかにいるわけだ。まずはそれを探すところからだな、と私は結論付けた。
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