どけ!私が白馬の王子様だ!〜百戦錬磨の乙女ゲーマーがお姫様(男)を全員攻略していく話〜

すいか

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第一章 王弟コーディ

回想2(コーディ視点)

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 それからずいぶん月日が経って、お兄さまは王に、俺は教師になった。いくら五色持ちだと言ったって、王族は学園に入る必要がないのに。問い詰めてみたら、第二王子がお兄さまに嫌われていて学園に入らなければならなくなったからだった。あの子も可哀想な子だよな。

 お兄さまの命令で強制的になった教師だけれど、意外となかなか良かった。子どもたちの目を壇上で浴びるのも、それはそれでいいものだ。そして俺は女の子、メアリに会った。
 メアリは最初、ちょっと嫌な子だった。顔が俺と同じくらい良いし、俺が先生って呼んでいいよ、って言ったのに殿下って呼ぶし。殿下って呼ばれるとほかの兄弟も指すから嫌なんだけど。
 苛ついた。それで息できなくなれば俺の言うこと聞くかな、と思った。でも気絶する前には辞めてあげようと思ってたよ? もし何かあっても俺は治療魔法使えるから治せるんだけど、まあ一応生徒だしさ。

 ただ、まあ、ちょっとやり過ぎたかな、とは思ったんだ。だから校長からのお願いも引き受けた。そこで誤算が起きた。
 あの子、俺のこと真面目って言ったんだ。俺は今までたくさん褒められてきたけど、みんな俺の能力なんて天性のものだと思ってたのにさ。変な子。

「ねえあなた、今日はなんだか調子が良くていらっしゃるのね」

 いつもの場所でいつもの彼女は俺にそう言った。もう何度も仮面舞踏会に出てる常連ともなると限られてくるから、もう全員大体顔なじみになってしまっている。

「……あー、そう?」

「そうですわ。何か良いことでもあったんでしょう、例えば……そうね、お父さまに__」

「__いやな冗談だね、その続きは聞きたくないな」

 俺は遮ったが、彼女はなおも続けた。

「ああ、ごめんなさいね。ただあなたいつもその話をなさるものだから。怒らないで? 今のあなたは、そう」

「名前も知らない貴族の誰か、ね。そうだよ。……ああでも、君が何でこんなにカリカリしてるのか分かったよ。君は逆に何か嫌なことがあった。例えばそうだな、君の遠征中の旦那様が」

「わたくしの前でその名前を出さないで!」

「……そういうことだよ。分かった?」

 俺が吐き捨てれば、彼女は上気した頬を今度は恥じ入るように紅く染め、うつむいた。

「ごめんなさい……」

「別にいいけどね。君も俺も今は__正気じゃないし」

 その言葉と共に会場を見渡せば、紫の雲がゆらりとたなびいているのが見えた。隣国から入手したこの国でまだ規制されていない新薬、だっけ? ここに俺という優秀な浄化魔法使いがいなければ全員残り香と後遺症で即座に捕まる。主催も大胆なことだ。

「そう? でもそれではわたくしの気が済まないわ……」

 彼女が俺の腕にしなだれかかる。心なしか艶っぽい声。ああ、最初からこれを狙っていたんだな。気付けなくて悪かった。いいよ行こうか、そう囁いて薄絹の向こうにエスコートする。日はまだ昇らなかった。



 目覚めれば朝で、俺のほかには誰もいなかった。あの後延長戦を家でやったはずなんだけどな。そこまで考えたところでいつもの吐き気が訪れて、俺はあきらめて今日は休むことにした。
 今日は駄目な日だった。大丈夫な日と駄目な日があるんだ。一回駄目な日にも行ったんだけど、そうしたらまあ……思い出したくないことが起こったのでそういう日は遠隔で自宅から授業するようにしている。人の目が気持ち悪くて仕方なくなるんだ。馬鹿みたいだよな。

 一人で家にいるとだんだん自分が本当に嫌になって来る。なんで自分はこんなことも出来ないんだろう。どうして他の人が当たり前にできている、毎日職場に行く程度のことができないんだろう。どうして品行方正に生きられないんだろう。お兄さまと同じ血を分けたはずなのに。全部俺が悪いんだけど、知ってるんだけど、でもまだ死ねずにいる。本当に甘えている。あーあ、気持ち悪。
 控え目に言っても最悪な気分の時、ノッカーが鳴った。昨日の彼女かな。もう夕方だけど、今日は俺の夜を独占したい気分なんだろう。そういう日は俺たちの間にはよくあることだし。それなら今馬鹿になりたかったから、ちょうどいいな。

 俺はドアを開けた。そしてそれからは……君も知ってるだろ?
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