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第一章 王弟コーディ
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数十分後。コーディの様子は気になる。気になる、が、まだ好感度の低い状態で後をつけても怪しまれるだけだろう。というわけで、私は寮に戻ってきていた。
「あ、マリちゃんだ!」
部屋に入れば、ベッドに腰かけ足を揺らしていたリズがふわふわと飛んできた。勢いを殺すようにくるりと一周私を囲むように回り、それから私に抱き着いてくる。
「リズ……! 会いたかったです、朝別れてから何かありませんでしたか?」
「うん、大丈夫! 昨日の夜マリちゃんにぎゅってしてもらってから、なんだか調子がいいんだー」
かっ、可愛い。元気そうで良かった。その二つの感情が私の顔に溢れるのを感じた。私はたまらずリズを抱きしめつつ、椅子に座った。リズは膝の上で嬉しそうににこにこしている。昨晩の涙の痕跡もすっかり消えたようで、本当に何よりだ。
「そうだ、マリちゃん。私、いろんな情報集めてきたの! 大体全部、攻略対象にまつわるものなんだけどね」
急にこちらを振り向いたリズに私は少し面喰いつつ、聞かせてくださいとねだった。この寮に戻るまでの道中、箒の上でこっそり学園長に貰ったパンフレットを開いてみたのだが、昼休みに確認した基本情報以外は載っていなかったのだ。まあ確かにあれ以上は個人情報に引っ掛かりそうだったと思う。この世界に個人情報保護の観念があるかは別として、だが。
リズは頬をほころばせた。
「うん! えっとね、まずは第二王子殿下に関するものなんだけど……彼は今十一年生、つまり十七歳。私たちの一学年上だね。でも、この人は最初に接触するにはあんまり良くないかな。実は、殿下の婚約者が同じ十一年生にいるらしいの」
「えっそれってつまり、私たちがその人を落とすなら、人様の婚約者さんを奪わなくちゃならないってことですか?」
「そうなるかも? でも、なんかおかしいんだよね」
リズの言葉に私は首を傾げた。というと?
「その婚約者さん本人やその周りが言う『殿下』像と、第二王子殿下の人物像が一致しないの。でも、他に年が近い殿下はいないはず。王太子殿下は婚約者持ちらしいけど、私たちよりも十七歳上、今三十四歳だよ。さすがにあり得ないと思うんだけど……」
「うーん……確かに他に殿下と言ったら王弟殿下と王妹殿下くらいしかいませんけど、彼らはもうとっくに結婚してるか、婚約者もいないかのどちらかでしたよね……おかしいな」
実のところ、現代日本においては十も二十も年が離れたカップルなどザラにいる。しかし、この一人一人の寿命がそれほど長くない中世ヨーロッパ風世界の、それも重税逃れのため子沢山な貴族の中で、わざわざ年の離れた少女を嫁にすることはまずない。
「なんか殿下が魔法で二重人格になっているとかですかね」
「そんなことあるかな……」
二人で首を傾げるが、答えは分からなかった。その時リズが、あ、と小さく叫んだ。
「そうだ、王弟で思い出したんだけど、マリちゃんの担任ってコーディ先生だよね? あの人のことですっごく気をつけておかなきゃいけないことがあったの!」
私はそこでピンとくるものがあった。
「それって、殿下って呼ばれるのが嫌いってことですか?」
「あ、マリちゃんだ!」
部屋に入れば、ベッドに腰かけ足を揺らしていたリズがふわふわと飛んできた。勢いを殺すようにくるりと一周私を囲むように回り、それから私に抱き着いてくる。
「リズ……! 会いたかったです、朝別れてから何かありませんでしたか?」
「うん、大丈夫! 昨日の夜マリちゃんにぎゅってしてもらってから、なんだか調子がいいんだー」
かっ、可愛い。元気そうで良かった。その二つの感情が私の顔に溢れるのを感じた。私はたまらずリズを抱きしめつつ、椅子に座った。リズは膝の上で嬉しそうににこにこしている。昨晩の涙の痕跡もすっかり消えたようで、本当に何よりだ。
「そうだ、マリちゃん。私、いろんな情報集めてきたの! 大体全部、攻略対象にまつわるものなんだけどね」
急にこちらを振り向いたリズに私は少し面喰いつつ、聞かせてくださいとねだった。この寮に戻るまでの道中、箒の上でこっそり学園長に貰ったパンフレットを開いてみたのだが、昼休みに確認した基本情報以外は載っていなかったのだ。まあ確かにあれ以上は個人情報に引っ掛かりそうだったと思う。この世界に個人情報保護の観念があるかは別として、だが。
リズは頬をほころばせた。
「うん! えっとね、まずは第二王子殿下に関するものなんだけど……彼は今十一年生、つまり十七歳。私たちの一学年上だね。でも、この人は最初に接触するにはあんまり良くないかな。実は、殿下の婚約者が同じ十一年生にいるらしいの」
「えっそれってつまり、私たちがその人を落とすなら、人様の婚約者さんを奪わなくちゃならないってことですか?」
「そうなるかも? でも、なんかおかしいんだよね」
リズの言葉に私は首を傾げた。というと?
「その婚約者さん本人やその周りが言う『殿下』像と、第二王子殿下の人物像が一致しないの。でも、他に年が近い殿下はいないはず。王太子殿下は婚約者持ちらしいけど、私たちよりも十七歳上、今三十四歳だよ。さすがにあり得ないと思うんだけど……」
「うーん……確かに他に殿下と言ったら王弟殿下と王妹殿下くらいしかいませんけど、彼らはもうとっくに結婚してるか、婚約者もいないかのどちらかでしたよね……おかしいな」
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「そんなことあるかな……」
二人で首を傾げるが、答えは分からなかった。その時リズが、あ、と小さく叫んだ。
「そうだ、王弟で思い出したんだけど、マリちゃんの担任ってコーディ先生だよね? あの人のことですっごく気をつけておかなきゃいけないことがあったの!」
私はそこでピンとくるものがあった。
「それって、殿下って呼ばれるのが嫌いってことですか?」
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