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第一章 王弟コーディ
噂
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私の予測に、しかしリズは煮え切らない表情をした。
「あ、うん、それもあるけど……それよりもっと重要なの」
あれより……? 私は眉を寄せた。それ以外なら……あ。もしかして、訓練終わりの、例の「用事」のことかな。
「えっと、実はねあの人、かなり酷い噂がいくつもあるの」
それによれば、一つ目、私生活が荒れ放題である。
二つ目、良くない薬をやっている。
三つ目、仮面舞踏会に毎晩通っている。
リズは三つ目について語る時、特に深刻そうな顔をした。しかし、私には分からない。
「あの、リズ。仮面舞踏会って、何が悪いんです?」
私が訊ねると、リズの顔に驚愕が浮かんだ。
「え……もしかしてマリちゃんの世界だと、別の物なの?」
ちょっとマリちゃんの世界での意味を教えて、というリズに、私は記憶をたどった。
「確か、貴族が仮面をつけ、互いの顔や身分を悟られないようにした状態でする舞踏会で……普段の立場から解放される喜びを味わう、みたいな……」
リズはそれを聞き、ほっとしたように肩を下ろした。
「なるほどね。えっと、あのねマリちゃん、私たちの世界ではその……仮面舞踏会って、人と付き合うための会っていうか、その、知らない人とそういうことをするための場所っていうか……察してほしいな」
頬を赤らめるリズ。私は後悔の念に包まれた。ごめんなさいリズ……私の察しが悪いせいでそんなことを言わせてしまって。つまるところ、仮面舞踏会とは合コンか出会い系サークル、或いはさらに風紀を乱すようなものなのだろう。まあ、行きずりの人と一晩の恋を楽しむ、というのはよく聞く話だ。
「あの、すみません、分かりましたリズ。それは確かに教師が行くようなものではありませんね。いやまあプライベートくらい、と思わなくもないですが、よしんば教師が良くとも王族が行くのはあまり……」
私はリズに謝りつつ、考える。毎晩、というからには今日の用事というのもそれだったのだろう。全くお盛んなことである。ことである、が。それで済ますにしてはあの、何かに取り憑かれた様な表情が気にかかる。
うーん……。
「あの人、本当に行きたくて行ってるのかな……」
私は首を捻り、ぼそりと呟いた。
「それって、どういうこと?」
疑問を顔に浮かべるリズに、私は朝首にペンを押し付けられたことだけ伏せて今日起きた出来事を話した。
なんで朝のことは言わないのかって? リズは暴力にトラウマがあるからである。ちなみに大声にもトラウマがあるため、私は基本的に攻略対象と会うときはリズを連れて行かないと決めている。というか今決めた。
今日の攻略対象情報を思い出す限り、攻略はかなり難儀しそうだ。時には大声も出すだろうし、殴り合いにも刀傷沙汰にもなるだろう。乙女ゲームの過酷な経験がそう告げている。
私の決意をよそに、リズは考え込んだ。
「うーん。確かにちょっと様子がおかしい、かも……? これからはその人について重点的に調べてみるね」
「ありがとうございます。頼りにしてますよ、リズ」
私の言葉に、リズは大きく頷いた。
「情報収集は任せてね! 実際の攻略はマリちゃんに任せることになっちゃうかもだけど……でも、ほんとに何かまずいことしちゃったら呼んで。後始末は全部どうにかするから」
リズはそう言いながらウインクし、とん、と軽く自分の胸を叩いた。頼もしい。私は苦笑しつつ頷いた。
「あ、うん、それもあるけど……それよりもっと重要なの」
あれより……? 私は眉を寄せた。それ以外なら……あ。もしかして、訓練終わりの、例の「用事」のことかな。
「えっと、実はねあの人、かなり酷い噂がいくつもあるの」
それによれば、一つ目、私生活が荒れ放題である。
二つ目、良くない薬をやっている。
三つ目、仮面舞踏会に毎晩通っている。
リズは三つ目について語る時、特に深刻そうな顔をした。しかし、私には分からない。
「あの、リズ。仮面舞踏会って、何が悪いんです?」
私が訊ねると、リズの顔に驚愕が浮かんだ。
「え……もしかしてマリちゃんの世界だと、別の物なの?」
ちょっとマリちゃんの世界での意味を教えて、というリズに、私は記憶をたどった。
「確か、貴族が仮面をつけ、互いの顔や身分を悟られないようにした状態でする舞踏会で……普段の立場から解放される喜びを味わう、みたいな……」
リズはそれを聞き、ほっとしたように肩を下ろした。
「なるほどね。えっと、あのねマリちゃん、私たちの世界ではその……仮面舞踏会って、人と付き合うための会っていうか、その、知らない人とそういうことをするための場所っていうか……察してほしいな」
頬を赤らめるリズ。私は後悔の念に包まれた。ごめんなさいリズ……私の察しが悪いせいでそんなことを言わせてしまって。つまるところ、仮面舞踏会とは合コンか出会い系サークル、或いはさらに風紀を乱すようなものなのだろう。まあ、行きずりの人と一晩の恋を楽しむ、というのはよく聞く話だ。
「あの、すみません、分かりましたリズ。それは確かに教師が行くようなものではありませんね。いやまあプライベートくらい、と思わなくもないですが、よしんば教師が良くとも王族が行くのはあまり……」
私はリズに謝りつつ、考える。毎晩、というからには今日の用事というのもそれだったのだろう。全くお盛んなことである。ことである、が。それで済ますにしてはあの、何かに取り憑かれた様な表情が気にかかる。
うーん……。
「あの人、本当に行きたくて行ってるのかな……」
私は首を捻り、ぼそりと呟いた。
「それって、どういうこと?」
疑問を顔に浮かべるリズに、私は朝首にペンを押し付けられたことだけ伏せて今日起きた出来事を話した。
なんで朝のことは言わないのかって? リズは暴力にトラウマがあるからである。ちなみに大声にもトラウマがあるため、私は基本的に攻略対象と会うときはリズを連れて行かないと決めている。というか今決めた。
今日の攻略対象情報を思い出す限り、攻略はかなり難儀しそうだ。時には大声も出すだろうし、殴り合いにも刀傷沙汰にもなるだろう。乙女ゲームの過酷な経験がそう告げている。
私の決意をよそに、リズは考え込んだ。
「うーん。確かにちょっと様子がおかしい、かも……? これからはその人について重点的に調べてみるね」
「ありがとうございます。頼りにしてますよ、リズ」
私の言葉に、リズは大きく頷いた。
「情報収集は任せてね! 実際の攻略はマリちゃんに任せることになっちゃうかもだけど……でも、ほんとに何かまずいことしちゃったら呼んで。後始末は全部どうにかするから」
リズはそう言いながらウインクし、とん、と軽く自分の胸を叩いた。頼もしい。私は苦笑しつつ頷いた。
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