1 / 28
第一話 柚葉視点
しおりを挟むピンク色が好きだった。
女の子なら誰もが一度は憧れる色。
でもその色は私じゃない。いつだってあの子の色だった。
私たちは双子で両親でさえ容姿で見分けがつかなかった。
だから物心ついた時には、洋服の色で判断されていた。
「ピンクは桃花だから柚葉は水色ね」
母からはいつも水色の服や髪飾りがあてがわれた。
「柚葉もピンクがいい!」
何度も強請ってみたものの、
「桃花がピンクじゃなきゃ嫌って言うから」
「お姉ちゃんでしょ!」
と言われて、結局水色の洋服を着ていた。
それにピンクの洋服や髪飾りを付けた桃花はすごく可愛い。
いつしかピンクは私には似合わない色だと決め込んで、キラキラ光る桃花の横で引き立てるのが柚葉の役目だった。
一度だけ…
大好きな祖母が遊びに来てくれた時、母と桃花が買い物に祖母と私は留守番した事があった。
祖母はバックの中からピンクのリボンを取り出すと私の髪を結ってくれた。
とても可愛いと喜んでくれて、私は嬉しくなりクルクルと祖母の周りを回った。
そんな時にインターホンが鳴る。すぐに母だと分かった私はリビングから走り出して玄関先まで行った。
「あらぁ、可愛いわね。柚葉、良かったわね。」
ピンクのリボンに結われた柚葉を見て母は褒めてくれたが、桃花はリビングへ走り出して再び私の元へやってきた。
「ジャキッ」
ハサミの音だと分かった瞬間、ピンクのリボンがヒラヒラと舞った。
皆んなが呆気にとられていると、ハサミを持った桃花が泣きながら叫び出した。
「なんで柚葉がピンクをつけるの!」
「ピンクは桃花でしょ!」
桃花は癇癪を起こし、私に刃先を向けた。怖くて動けなくなった私と桃花の間に入ったのは祖母だった。
結果、祖母は病院で何針か縫うことになり、私はその時の桃花の豹変がトラウマになった。
何年経っても自分の思い通りにならないと私や家族にまで危害を与える桃花にウンザリした。
ピンクは桃花の色で私じゃない。
それでもピンク色を纏う姿に、キラキラ舞う世界に憧れた。
0
あなたにおすすめの小説
冷淡姫の恋心
玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。
そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。
我慢すれば済む、それは本当に?
貴族らしくある、そればかりに目を向けていない?
不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。
※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
伯爵令嬢の婚約解消理由
七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。
婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。
そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。
しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。
一体何があったのかというと、それは……
これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。
*本編は8話+番外編を載せる予定です。
*小説家になろうに同時掲載しております。
*なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。
偽りのの誓い
柴田はつみ
恋愛
会社社長の御曹司である高見沢翔は、女性に言い寄られるのが面倒で仕方なく、幼馴染の令嬢三島カレンに一年間の偽装結婚を依頼する
人前で完璧な夫婦を演じるよう翔にうるさく言われ、騒がしい日々が始まる
私と彼の恋愛攻防戦
真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。
「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。
でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。
だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。
彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる