初恋を諦めたら、2度目の恋が始まった

suguri

文字の大きさ
10 / 28

閑話 奏視点

しおりを挟む
15歳 初夏

「なぁ、裕介と佐々木が付き合い出したぞ。」

「えー!マジか。」

 いい感じだったもんな。と話題が弾んでいく。中学3年の男子の話題となれば、スマゲーか女の子の話と決まっている。よく飽きないもんかと思うけどこれはこれで楽しい。奏がスマホを見ながら耳を傾けて聞いてると誰かがこう切り出す。

「うちの中学の女子だとトップ3は誰だと思う?」

 男子たちがうーんと思案した後、やっぱり栗原だろとなる。奏からしてみれば当然聞き捨てならない問題だ。途端に背筋が伸びて、立派な姿勢で聞き耳をたてる。

「栗原はあの甘い感じがいいんだよ。」

「わかる。あのニコニコした上目遣いがたまらん。」

 良かった。柚葉じゃない。柚葉は野郎たちにニコニコなんて絶対しない。奏が思った通り、彼らはやれ桃花と付き合いたいだの、ヤリたいだの妄想を膨らませて楽しんでいる。奏はホッとして、桃花と付き合うってお前ら苦労するぞと心の中で彼らにアドバイスを送ってやった。その時に。

「俺、柚葉ちゃんの方がいいと思うんだけど。」

 今度は耳だけじゃなく、首が高速で横を向く。声の主を確認して、奏は瞬時に立ち上がる。

「柚葉ー!消しゴム貸して!」

 大声で言ってしまった。柚葉は自分の席で友達と談笑していた。柚葉の席まで駆け寄って消しゴムを借りに行く。消しゴムなんて持ってるし、普通隣にいる奴に借りればいいだけだけど。何となくアイツらの視界に柚葉を入れたくない。
 とくに木下、アイツは絶対ダメだ。声の主は木下だ。木下はモテるし、父親は医者だし、木下自身もサッカー部のキャプテンだ。奏は木下から柚葉が見えないように牽制した。
 柚葉の席に行くと進路調査書の紙が目に入った。奏は迷いなく柚葉の進路調査書を覗き込む。第一志望校、藤の宮高校。

「柚葉は藤の宮高校に行くの?」

「……うん。友達みんな受けるって言うから。」

 奏はてっきりもっと上の進学校に行くと思っていた。柚葉の学力ならそれが可能だったから。奏は自分の席に戻ると一度木下をチェックした。木下達はすでに違う話題で盛り上がっている。机の上に自分の進路調査書を取り出し第一志望校の空白に藤の宮高校と書き込んだ。

 進路調査書を提出した日の放課後、奏は担任に職員室まで呼び出された。

「進路変えたのか?もう少し内心を上げるのと、テストの結果次第になるからな、努力が必要だぞ。」

「はい。これから塾にも通って頑張ります。」

 家に帰って、夕食中に塾に通いたいと願い出ると、なぜか奏の両親は大喜びして。お祭り騒ぎになってしまったその日は父親がビールの瓶を2本空けた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました

Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。 必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。 ──目を覚まして気付く。 私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰? “私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。 こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。 だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。 彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!? そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

冷淡姫の恋心

玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。 そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。 我慢すれば済む、それは本当に? 貴族らしくある、そればかりに目を向けていない? 不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。 ※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています

偽りのの誓い

柴田はつみ
恋愛
会社社長の御曹司である高見沢翔は、女性に言い寄られるのが面倒で仕方なく、幼馴染の令嬢三島カレンに一年間の偽装結婚を依頼する 人前で完璧な夫婦を演じるよう翔にうるさく言われ、騒がしい日々が始まる

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

処理中です...