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寿美子と修
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「俺と結婚してください!」
そう言うだけ言って寿美子を見つめたまま、目を見開き口をポカンと開けて、顔を真っ赤にしているのは、半年ほど前からお付き合いをしている修さんだ。
今日は、少しだけ遠出して桜の名所と呼ばれる場所にやってきた寿美子と修のふたり。ほんの少し満開を過ぎた桜はその花をハラハラと散り続けている。そしてその薄紅の花びらを、時折強く吹く風が、深く澄んだ青空に吹雪のように舞い上げていた。
きれいだな・・・
手に持ったオニギリを食べることも忘れ、その様子に目を奪われていた寿美子は、修からの突然のプロポーズに驚き、そのオニギリをボトリと落とした。落ちたオニギリを見てハッと我に返った修は、慌ててそのオニギリを拾う。
「はっあ、あぁ!すみません寿美子さん!急に変なこと言ってしまって!」
「・・えっ?あ!いえいえこちらこそぼおっとしちゃって」
「いやぁあはは。なんだか桜吹雪の中にいる寿美子さんに見惚れてしまって!思わず口走ってました!」
そう言いながら修は、寿美子が落としたオニギリをムシャムシャとあっという間に平らげると、すかさず寿美子の両手を握りしめて、真剣な面持ちで寿美子を見つめた。
「いや!思わずってのは間違いです!ホントは俺・・・俺、寿美子さんにプロポーズするためにここに誘ったんです!」
「あの、・・・改めてですが!・・・寿美子さん!俺と・・・結婚してください!」
さっきよりもぽかんとした顔の寿美子。
そんな寿美子を真っ赤な顔で見つめる修。
ゴオ・・・・・・
強い風が、積もった花びらまでも舞い上げて、ふたりを包んだ。
風が止み、ハラハラと散る花びらが、ふたりに降りつもった頃。
「・・・・・・あ・・えっと・・ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします。」
「あ・・ああ!やったぁ!絶対に幸せにします!」
そういうと、修は寿美子を抱きしめた。
「・・・むぅ・・・・・・修ちゃん・・苦しい・・・・・・・・・」
「あ!ごめん!つい嬉しくて」
「ふふっ」
「えへへ」
寿美子と修。
桜が舞い散るその中で、ふたりは手を取り合い、顔を真っ赤にしながら微笑みあった。
コロオン、カラアン!
「おや、どうしました?」
「・・・・・・ぁ・・マスター?」
「随分泣いてますね。玉ねぎでも切ってたんですか?」
そう言ってマスターは戸棚からタオルを出して持ってきてくれた。
「いや・・・今僕寝てたみたい?で・・・夢を見てた・・・みたいです。」
「立ったまま寝るとは器用な。しかし夢・・・ですか。それはどんな?」
「はぁ・・・えっと・・・・・・夢の中で僕は知らない女の人になってて。すごく桜がきれいな場所で。桜吹雪?がきれいで見惚れてたら『結婚してください!』って言われて・・・」
「・・・・・・」
「すごく・・・・・そう。ずっと好きだったひとからそう言われて・・・すごく幸せで。幸せ過ぎて泣いてしまって」
「・・・・・・そう・・・ですか。」
そう呟いたマスターの横顔は、なんだか少し寂しそうに見えた。
そう言うだけ言って寿美子を見つめたまま、目を見開き口をポカンと開けて、顔を真っ赤にしているのは、半年ほど前からお付き合いをしている修さんだ。
今日は、少しだけ遠出して桜の名所と呼ばれる場所にやってきた寿美子と修のふたり。ほんの少し満開を過ぎた桜はその花をハラハラと散り続けている。そしてその薄紅の花びらを、時折強く吹く風が、深く澄んだ青空に吹雪のように舞い上げていた。
きれいだな・・・
手に持ったオニギリを食べることも忘れ、その様子に目を奪われていた寿美子は、修からの突然のプロポーズに驚き、そのオニギリをボトリと落とした。落ちたオニギリを見てハッと我に返った修は、慌ててそのオニギリを拾う。
「はっあ、あぁ!すみません寿美子さん!急に変なこと言ってしまって!」
「・・えっ?あ!いえいえこちらこそぼおっとしちゃって」
「いやぁあはは。なんだか桜吹雪の中にいる寿美子さんに見惚れてしまって!思わず口走ってました!」
そう言いながら修は、寿美子が落としたオニギリをムシャムシャとあっという間に平らげると、すかさず寿美子の両手を握りしめて、真剣な面持ちで寿美子を見つめた。
「いや!思わずってのは間違いです!ホントは俺・・・俺、寿美子さんにプロポーズするためにここに誘ったんです!」
「あの、・・・改めてですが!・・・寿美子さん!俺と・・・結婚してください!」
さっきよりもぽかんとした顔の寿美子。
そんな寿美子を真っ赤な顔で見つめる修。
ゴオ・・・・・・
強い風が、積もった花びらまでも舞い上げて、ふたりを包んだ。
風が止み、ハラハラと散る花びらが、ふたりに降りつもった頃。
「・・・・・・あ・・えっと・・ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします。」
「あ・・ああ!やったぁ!絶対に幸せにします!」
そういうと、修は寿美子を抱きしめた。
「・・・むぅ・・・・・・修ちゃん・・苦しい・・・・・・・・・」
「あ!ごめん!つい嬉しくて」
「ふふっ」
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「随分泣いてますね。玉ねぎでも切ってたんですか?」
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「・・・・・・」
「すごく・・・・・そう。ずっと好きだったひとからそう言われて・・・すごく幸せで。幸せ過ぎて泣いてしまって」
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