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朝だ。
眩しいくらいの朝陽が眼に痛い。
ノロノロと準備をして、僕はギルバート様の部屋へと向かった。
シーツはこっそり洗って、僕の部屋に干してある。
後で洗濯物に紛れ込ませて、干してもらおうと画策している。
上手くいくだろうか。
とにかく、ドロドロのグシャグシャになったシーツは新しいのに変えたし、絨毯の汚れもなんとか拭った。
後は……ギルバート様がちゃんと戻られていることを祈るだけだ。
「アレクです。失礼します」
いつものようにコンコンとノックをして一呼吸置いてから、僕は部屋のドアを開けた。
そこにギルバート様の姿があることをドキドキしながら願う。
「あっ! ギルバート様っ」
ギルバート様はいらっしゃった。
いつものように、もう既に服もお着替えになっていた。
僕がお世話したいと思うのに、いつも着替えた後なんだ。
今日の服は白いシャツに白い脚衣と、いつもと変わらない清潔さを感じる。
そして、その瞳は今日も綺麗に澄んでいる。
「ギルバート様、ギルバート様っ」
思わず僕はギルバート様の側に駆け寄った。
「ギルバートさまぁ~っ」
ガバッとひれ伏し、ギルバート様の膝に縋る。
「……何をしているんですか」
問われて、僕は顔を上げた。
「ギルバート様がご無事でよかったです。僕……僕……」
あんなことしちゃったけど、無駄じゃなかった。
思い出すだけで、恥ずかしくて堪らないけど……
ギルバート様に怪我もなさそうだし、ホッとした。
「君はどうして泣いているのですか?」
「えっ、あっ…ああっ! すみませんっ」
僕は慌てて袖口で涙を拭った。
「安心したら涙が零れてしまって……ギルバート様、本当にご無事でよかったです」
僕はギルバート様に笑顔を向けた。
「……どうして、君は」
ギルバート様は苦渋を顔に浮かばせた。
僕の態度が気に障ったんだろうか。
「申し訳ありません」
床に額を擦りつける勢いで、僕は平伏した。
「あんまり嬉しくて……お許しください」
謝ったけど、ギルバート様からの言葉はない。
そろと顔を上げると、ギルバート様は困った顔をしていた。
正に困っているという感じだ。
あまり感情を表に出さない人だけに、たとえ困った顔だとしても、眼にすることができて嬉しいと思ってしまう。
あ、いや、困らせているのは僕なんだろうか。
それとも、銀の薔薇にひどいことをされたんだろうか。
「まっ、まさか、銀の薔薇に犯され……あわわっ」
そんなことあるわけないよな。
あんな辱めを受けたなら、ギルバート様なら寝込んでしまうだろう。
「銀の薔薇……ですか」
「ええっと、昨夜、ギルバート様は銀の薔薇に攫われたんですよね」
ギルバート様はうんともすんとも言ってくれない。
思い出したくもない屈辱だったんだろう。
「あっ、すみませんっ。思い出さなくていいです。でも、どこか怪我してないかだけ、教えてもらえませんか」
僕の不安を取り除いてほしいとばかりに、懇願する。
ギルバート様は僕の真剣な目を受けて、ふうっと溜め息を吐いた。
「怪我はないです」
ギルバート様の口からちゃんと答えが聞けた。
嬉しくて顔が緩むのを、止められない。
「良かった。ギルバート様、これからは僕がちゃんとお守りします」
「君の役目ではないでしょう」
「でも、お守りしたいんです」
つい大きな声を出してしまって、ギルバート様が眉を顰めた。
「……すみません」
「君はどうして……どうして、僕を助けようとしたんですか?」
そんなことを訊かれるとは思わなくて、動揺した。
どうして?
自分の気持ちが口にできるだろうか。
そんなの無理だ。
「僕はギルバート様つきの小姓です。使用人がご主人様をお助けしたいと思うのは当然です」
なんとか無難に答えたけど、ギルバート様は納得しなかった。
「雇われているにすぎないでしょう。益してや、君は代々この家に仕えているというわけではないのですから」
そんな風に攻められても困るんだ。
だって、僕の気持ちは伝えられない。
もし、過去のことを口にしたとして、ギルバート様は許してくれないだろう。
「でも、僕にとってギルバート様は、生涯お仕えしたいと思う人なんです。だから……」
ふと気づく。
ギルバート様がそんなことをお聞きになるのは、銀の薔薇から僕を辱めたと聞いたからなんだろうか。
もし、あのことを知られていたら……
「君は僕のことが好きなんですか」
ドキンと鼓動が跳ねた。
顔が真っ赤になっていくのがわかる。
「すっ、好きですよっ。だって、僕のご主人様ですから」
「僕にはよくわかりません」
ギルバート様はフイッとそっぽを向いた。
いつものことだけど、胸が痛かった。
僕の気持なんか、やっぱりギルバート様にはどうでもいいことだったんだ。
「……ギルバート様、とにかくご無事でよかったです。あ、直ぐに朝食の支度をしますね」
僕は立ち上がって、ぺこりとお辞儀をした。
部屋を出て行こうとしたとき、ふらりと足下がよろけた。
「わっ、たっ…たっ」
ベチャッと無様にこけてしまって、恥ずかしい。
すぐに立ち上がろうとしたけど、腰の奥がズーンと重くて、ゆっくりしか無理だった。
なんとか踏ん張って、くるりと振り返る。
「お騒がせしました」
そう謝ると、ギルバート様は意外にも僕のことを驚いた顔で見ていた。
何かびっくりするようなことをしたかな。
首を傾げながらも、僕は軽くお辞儀をして部屋を出た。
ギルバート様のことが心配で、ずっと気を張っていたから、なんとか持っていたんだ。
初めての性行為は、かなり身体に負担を与えていたようだ。
薬のせいかもしれないけど……
後遺症とかあったりするのかな。
少し怖いと思ったけど、お休みするわけにはいかない。
その日、僕はいつもの仕事を気力でこなそうとしていた。
ギルバート様は時折、何か言いたそうに口を開くも、すぐに黙ってしまって態度が変だった。
余程、銀の薔薇のことがショックだったに違いない。
次の機会なんてないって言ったけど、文句を言うために会ってもいいと思えた。
僕の大切なギルバート様を、あんな風に困らせるなんて……
「アレク、ここにいたのか」
図書室で本を探していると、キースさんに声を掛けられた。
「あ、キースさん、お疲れさまです」
ぺこりとお辞儀をして挨拶する。
キースさんも、僕に挨拶を返してくれた。
「アレク、昨夜のことだが」
そう切り出されて心臓が飛び出そうになる。
まさか、キースさんにバレた?
「馬が盗まれたと言っただろう」
あ、そっちか。
ひとまず安堵する。
けど、安心してもいられない。
「あの……お給金で……なんて無理ですよね。お金が借りられないか、知り合いを当たってみます」
馬一頭は相当値が張る。
当てと言えばオーガストさんくらいだけど……
「アレク、そういう話じゃない。馬はちゃんと厩に戻っていた。だから、本当に盗まれたのかを知りたくてな」
「戻ってきたんですか! どうして?」
びっくりする僕の顔を見て、キースさんが何やら考えこむような仕草をした。
「あの……僕、酒場の前に馬を繋いでおいたんです。本当です。店に入って出てきたら、馬がいなくなっていて」
また何かを疑われてるのだったら、悲しい。
そう思った矢先、キースさんが「すまない」と謝ってきた。
「えっ…と、謝るのは僕の方ですけど……」
「いや、馬のことはもういい。邪魔したな」
キースさんはそう言って、部屋を出ようとした。
けど、何かを思い出したのか、僕の元まで戻ってきた。
「まだ何か?」
キースさんは答えず、じっと僕の顔を見つめてくる。
なんだろうと思っていると、キースさんの顔が近づいてきた。
キスされるってくらい至近距離に眼を丸くする。
まさか?
と思っていたら、こつんと額が合わさった。
「熱があるな」
キースさんは顔を離すと、僕の首筋に手を這わせてきた。
「風邪というわけでもなさそうだが……」
次いで、僕の手首を掴んでくる。
「脈も早いな。アレク、無理をせずに休むといい」
僕のことを心配してくれてるんだろうか。
「大丈夫です。ありがとうございます」
頭を下げると、キースさんは複雑な表情を浮かべていた。
顔色からはその真意はつかめない。
「キースさん、僕、本当に大丈夫ですよ」
もう一度口にすると、キースさんはいきなり頭を下げた。
「すまなかった」
「えっ?」
「お前を疑って冷たく当たったことを許して欲しい」
そんなに冷たくもなかったと思う。
困っていたら助けてくれるのは、いつもキースさんだ。
「冷たくされましたっけ?」
「……アレク、お前は本当に善い子だな」
善い子って……ちょっと子供扱いだな。
でも、キースさんからしたら、僕なんかまだまだ子供なのかもしれない。
「ギルバート様にもよく尽くしてくれていると思う。だが、体調が悪い時に無理しなくてもいい。俺からギルバート様に話しておくよ。で、何の本を探していたんだ」
問われて、ブンブンと首を振る。
「駄目です。これは僕がギルバート様から頼まれた仕事なんです」
イヤイヤと首を振る。
ギルバート様のお世話は僕がするんだ。
「そうか。でも、無理はするなよ」
「はい。大丈夫です。僕、元気だけが取り柄ですから」
にっこり笑って答えると、キースさんも笑ってくれた。
久しぶりに見たキースさんの笑顔はとても優しかった。
僕のこと、認めてくれたのかな。
だったら、嬉しい。
ギルバート様にも……いや、ギルバート様には何も求めたりしない。
ただ、ずっとお側に置いてもらえたらそれでいい。
考えちゃ駄目なんだ。
あんなこと。
ブンブンと首を振ると、頭がくらっとした。
やっぱり熱があるんだろうか。
でも、後もうちょっと頑張らないと――
眩しいくらいの朝陽が眼に痛い。
ノロノロと準備をして、僕はギルバート様の部屋へと向かった。
シーツはこっそり洗って、僕の部屋に干してある。
後で洗濯物に紛れ込ませて、干してもらおうと画策している。
上手くいくだろうか。
とにかく、ドロドロのグシャグシャになったシーツは新しいのに変えたし、絨毯の汚れもなんとか拭った。
後は……ギルバート様がちゃんと戻られていることを祈るだけだ。
「アレクです。失礼します」
いつものようにコンコンとノックをして一呼吸置いてから、僕は部屋のドアを開けた。
そこにギルバート様の姿があることをドキドキしながら願う。
「あっ! ギルバート様っ」
ギルバート様はいらっしゃった。
いつものように、もう既に服もお着替えになっていた。
僕がお世話したいと思うのに、いつも着替えた後なんだ。
今日の服は白いシャツに白い脚衣と、いつもと変わらない清潔さを感じる。
そして、その瞳は今日も綺麗に澄んでいる。
「ギルバート様、ギルバート様っ」
思わず僕はギルバート様の側に駆け寄った。
「ギルバートさまぁ~っ」
ガバッとひれ伏し、ギルバート様の膝に縋る。
「……何をしているんですか」
問われて、僕は顔を上げた。
「ギルバート様がご無事でよかったです。僕……僕……」
あんなことしちゃったけど、無駄じゃなかった。
思い出すだけで、恥ずかしくて堪らないけど……
ギルバート様に怪我もなさそうだし、ホッとした。
「君はどうして泣いているのですか?」
「えっ、あっ…ああっ! すみませんっ」
僕は慌てて袖口で涙を拭った。
「安心したら涙が零れてしまって……ギルバート様、本当にご無事でよかったです」
僕はギルバート様に笑顔を向けた。
「……どうして、君は」
ギルバート様は苦渋を顔に浮かばせた。
僕の態度が気に障ったんだろうか。
「申し訳ありません」
床に額を擦りつける勢いで、僕は平伏した。
「あんまり嬉しくて……お許しください」
謝ったけど、ギルバート様からの言葉はない。
そろと顔を上げると、ギルバート様は困った顔をしていた。
正に困っているという感じだ。
あまり感情を表に出さない人だけに、たとえ困った顔だとしても、眼にすることができて嬉しいと思ってしまう。
あ、いや、困らせているのは僕なんだろうか。
それとも、銀の薔薇にひどいことをされたんだろうか。
「まっ、まさか、銀の薔薇に犯され……あわわっ」
そんなことあるわけないよな。
あんな辱めを受けたなら、ギルバート様なら寝込んでしまうだろう。
「銀の薔薇……ですか」
「ええっと、昨夜、ギルバート様は銀の薔薇に攫われたんですよね」
ギルバート様はうんともすんとも言ってくれない。
思い出したくもない屈辱だったんだろう。
「あっ、すみませんっ。思い出さなくていいです。でも、どこか怪我してないかだけ、教えてもらえませんか」
僕の不安を取り除いてほしいとばかりに、懇願する。
ギルバート様は僕の真剣な目を受けて、ふうっと溜め息を吐いた。
「怪我はないです」
ギルバート様の口からちゃんと答えが聞けた。
嬉しくて顔が緩むのを、止められない。
「良かった。ギルバート様、これからは僕がちゃんとお守りします」
「君の役目ではないでしょう」
「でも、お守りしたいんです」
つい大きな声を出してしまって、ギルバート様が眉を顰めた。
「……すみません」
「君はどうして……どうして、僕を助けようとしたんですか?」
そんなことを訊かれるとは思わなくて、動揺した。
どうして?
自分の気持ちが口にできるだろうか。
そんなの無理だ。
「僕はギルバート様つきの小姓です。使用人がご主人様をお助けしたいと思うのは当然です」
なんとか無難に答えたけど、ギルバート様は納得しなかった。
「雇われているにすぎないでしょう。益してや、君は代々この家に仕えているというわけではないのですから」
そんな風に攻められても困るんだ。
だって、僕の気持ちは伝えられない。
もし、過去のことを口にしたとして、ギルバート様は許してくれないだろう。
「でも、僕にとってギルバート様は、生涯お仕えしたいと思う人なんです。だから……」
ふと気づく。
ギルバート様がそんなことをお聞きになるのは、銀の薔薇から僕を辱めたと聞いたからなんだろうか。
もし、あのことを知られていたら……
「君は僕のことが好きなんですか」
ドキンと鼓動が跳ねた。
顔が真っ赤になっていくのがわかる。
「すっ、好きですよっ。だって、僕のご主人様ですから」
「僕にはよくわかりません」
ギルバート様はフイッとそっぽを向いた。
いつものことだけど、胸が痛かった。
僕の気持なんか、やっぱりギルバート様にはどうでもいいことだったんだ。
「……ギルバート様、とにかくご無事でよかったです。あ、直ぐに朝食の支度をしますね」
僕は立ち上がって、ぺこりとお辞儀をした。
部屋を出て行こうとしたとき、ふらりと足下がよろけた。
「わっ、たっ…たっ」
ベチャッと無様にこけてしまって、恥ずかしい。
すぐに立ち上がろうとしたけど、腰の奥がズーンと重くて、ゆっくりしか無理だった。
なんとか踏ん張って、くるりと振り返る。
「お騒がせしました」
そう謝ると、ギルバート様は意外にも僕のことを驚いた顔で見ていた。
何かびっくりするようなことをしたかな。
首を傾げながらも、僕は軽くお辞儀をして部屋を出た。
ギルバート様のことが心配で、ずっと気を張っていたから、なんとか持っていたんだ。
初めての性行為は、かなり身体に負担を与えていたようだ。
薬のせいかもしれないけど……
後遺症とかあったりするのかな。
少し怖いと思ったけど、お休みするわけにはいかない。
その日、僕はいつもの仕事を気力でこなそうとしていた。
ギルバート様は時折、何か言いたそうに口を開くも、すぐに黙ってしまって態度が変だった。
余程、銀の薔薇のことがショックだったに違いない。
次の機会なんてないって言ったけど、文句を言うために会ってもいいと思えた。
僕の大切なギルバート様を、あんな風に困らせるなんて……
「アレク、ここにいたのか」
図書室で本を探していると、キースさんに声を掛けられた。
「あ、キースさん、お疲れさまです」
ぺこりとお辞儀をして挨拶する。
キースさんも、僕に挨拶を返してくれた。
「アレク、昨夜のことだが」
そう切り出されて心臓が飛び出そうになる。
まさか、キースさんにバレた?
「馬が盗まれたと言っただろう」
あ、そっちか。
ひとまず安堵する。
けど、安心してもいられない。
「あの……お給金で……なんて無理ですよね。お金が借りられないか、知り合いを当たってみます」
馬一頭は相当値が張る。
当てと言えばオーガストさんくらいだけど……
「アレク、そういう話じゃない。馬はちゃんと厩に戻っていた。だから、本当に盗まれたのかを知りたくてな」
「戻ってきたんですか! どうして?」
びっくりする僕の顔を見て、キースさんが何やら考えこむような仕草をした。
「あの……僕、酒場の前に馬を繋いでおいたんです。本当です。店に入って出てきたら、馬がいなくなっていて」
また何かを疑われてるのだったら、悲しい。
そう思った矢先、キースさんが「すまない」と謝ってきた。
「えっ…と、謝るのは僕の方ですけど……」
「いや、馬のことはもういい。邪魔したな」
キースさんはそう言って、部屋を出ようとした。
けど、何かを思い出したのか、僕の元まで戻ってきた。
「まだ何か?」
キースさんは答えず、じっと僕の顔を見つめてくる。
なんだろうと思っていると、キースさんの顔が近づいてきた。
キスされるってくらい至近距離に眼を丸くする。
まさか?
と思っていたら、こつんと額が合わさった。
「熱があるな」
キースさんは顔を離すと、僕の首筋に手を這わせてきた。
「風邪というわけでもなさそうだが……」
次いで、僕の手首を掴んでくる。
「脈も早いな。アレク、無理をせずに休むといい」
僕のことを心配してくれてるんだろうか。
「大丈夫です。ありがとうございます」
頭を下げると、キースさんは複雑な表情を浮かべていた。
顔色からはその真意はつかめない。
「キースさん、僕、本当に大丈夫ですよ」
もう一度口にすると、キースさんはいきなり頭を下げた。
「すまなかった」
「えっ?」
「お前を疑って冷たく当たったことを許して欲しい」
そんなに冷たくもなかったと思う。
困っていたら助けてくれるのは、いつもキースさんだ。
「冷たくされましたっけ?」
「……アレク、お前は本当に善い子だな」
善い子って……ちょっと子供扱いだな。
でも、キースさんからしたら、僕なんかまだまだ子供なのかもしれない。
「ギルバート様にもよく尽くしてくれていると思う。だが、体調が悪い時に無理しなくてもいい。俺からギルバート様に話しておくよ。で、何の本を探していたんだ」
問われて、ブンブンと首を振る。
「駄目です。これは僕がギルバート様から頼まれた仕事なんです」
イヤイヤと首を振る。
ギルバート様のお世話は僕がするんだ。
「そうか。でも、無理はするなよ」
「はい。大丈夫です。僕、元気だけが取り柄ですから」
にっこり笑って答えると、キースさんも笑ってくれた。
久しぶりに見たキースさんの笑顔はとても優しかった。
僕のこと、認めてくれたのかな。
だったら、嬉しい。
ギルバート様にも……いや、ギルバート様には何も求めたりしない。
ただ、ずっとお側に置いてもらえたらそれでいい。
考えちゃ駄目なんだ。
あんなこと。
ブンブンと首を振ると、頭がくらっとした。
やっぱり熱があるんだろうか。
でも、後もうちょっと頑張らないと――
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