虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第7章 砂漠の国

第194話 ウェイクボード

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第194話 ウェイクボード
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********


女王が差し出したロープは不思議な形でした。
1本の太く長いロープが、途中から9つに分かれているのです。

ロープの端、9つに分かれている方には輪が取り付けられており、持ち手になっていました。
9つに別れているロープは途中から1本に束ねられ、さらにその先の端には無数の釣り針がついています。

キャッツ「……えーと、つまりこれは」

マリア「私たちはこのロープをしっかり握ってて、何かに引っ張ってもらいながら、この板で砂漠を滑走していくんですね?」

女王「ほぅ、なかなか察しが良いな」

ブラド「いやウェイクボードやん」

女王「……ま、まぁ何やらよくわからんが、しっかり握っておけ。一度転ぶと二度と立ち上がれず、砂漠を引きずり回されることになるぞ。砂で窒息死か、岩に激突死ということにもなりかねん」

マリン「待ってよ!危なすぎんでしょうが!」

女王「慌てるな。慣れてないお主らが特別な準備をしなければそうなる、という意味じゃ……サリーや」

サリー「は、はい!」

女王「浮遊石とやらがあるんじゃろ?全員に浮遊の術をかるーくかけておけ。ロープが全員分繋がっておるから全員にかけられるし、転んでもなんとか立て直せるじゃろ」

サリー「な、なるほど!わかりました」

ジャンヌ「で、その『私たちを引っ張って行ってくれる何か』をおびきよせるためのエサが、そのトカゲの尻尾なんですね?その『何か』が現れたときに、縄の反対側の釣り針を引っ掛けて、私たちを引いてもらう、と」

女王「そういうことじゃ。お主らを引いてくれるロック鳥は、昨日のうちに王宮近くの岩山に飛んできているのを確認した」

キャッツ「ロ、ロック……鳥?ロック鳥って、あのロック鳥?」

女王「どのロック鳥かは知らんが……カギづめで象1頭つかんで巣まで持ち帰ることができるほど巨大なロック鳥じゃ」

ローズ「それって、おとぎ話でしか聞いたことない……そんなのほんとにいたんだ……」

フィスト「そ、そんなのが、今もう、この近くに?」

リーフ「そっか、だから昨日、王宮から使者が」

女王「この時期、ロック鳥は大まかなルートを巡回するように飛ぶ。そしてロック鳥はお主らの次の目的地のすぐ近くの岩山に巣を作っておるんじゃ……よかったな」

ブラド「まぁ……言われてみれば、これしかないって方法やね」

女王「これを逃せば、次にロック鳥が来てくれるのはひと月後じゃ……さぁ、そろそろロック鳥がトカゲの傷の匂いを嗅ぎ付けてやってくるぞ……」

マリア「な、なんで嬉しそうなんですか?」

衛兵がトカゲを殺させないために、町の中に連れて入っていきました。
砂地の上ではトカゲの尻尾がまだ小さく跳ねています。

女王「ロック鳥に針を引っ掛けるのは衛兵がやる。奴の羽は複雑に絡み合っとるからな……針はすぐにひっかかり、簡単には外れん。今度ロック鳥がこの辺りに来たときにでも外して……ん?」

女王は言葉を途中で切ると、町の中の小さな人影に目をやりました。

シイー「みんな!元気でねー!」

アラー「また来てねー!」

ハカー「……バ……バイバイ!」

女王「しょうのない子らじゃ」

9人は目を合わせて微笑むと、3人の子どもたちに大きな声で応え、手を振りました。

衛兵のひとりが緊迫した声を上げます。

衛兵「き、きました!」

その瞬間、辺りが暗くなりました。
その場にいる全員が、空を見上げます。

ロック鳥の巨体が日を隠していたのです。
その大きな体に見合わず、すばやい動きで砂地に着地降り立ちました。
トカゲの尻尾をカギづめでしっかりとつかむとすぐに飛び立ちます。

衛兵がロープの端をロック鳥の背に投げつけると、ロープはピンと張り、9人を引っ張っていきました。

ジャンヌ「お……きたきた……」
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