126 / 189
第7章 砂漠の国
第194話 ウェイクボード
しおりを挟む
第194話 ウェイクボード
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
女王が差し出したロープは不思議な形でした。
1本の太く長いロープが、途中から9つに分かれているのです。
ロープの端、9つに分かれている方には輪が取り付けられており、持ち手になっていました。
9つに別れているロープは途中から1本に束ねられ、さらにその先の端には無数の釣り針がついています。
キャッツ「……えーと、つまりこれは」
マリア「私たちはこのロープをしっかり握ってて、何かに引っ張ってもらいながら、この板で砂漠を滑走していくんですね?」
女王「ほぅ、なかなか察しが良いな」
ブラド「いやウェイクボードやん」
女王「……ま、まぁ何やらよくわからんが、しっかり握っておけ。一度転ぶと二度と立ち上がれず、砂漠を引きずり回されることになるぞ。砂で窒息死か、岩に激突死ということにもなりかねん」
マリン「待ってよ!危なすぎんでしょうが!」
女王「慌てるな。慣れてないお主らが特別な準備をしなければそうなる、という意味じゃ……サリーや」
サリー「は、はい!」
女王「浮遊石とやらがあるんじゃろ?全員に浮遊の術をかるーくかけておけ。ロープが全員分繋がっておるから全員にかけられるし、転んでもなんとか立て直せるじゃろ」
サリー「な、なるほど!わかりました」
ジャンヌ「で、その『私たちを引っ張って行ってくれる何か』をおびきよせるためのエサが、そのトカゲの尻尾なんですね?その『何か』が現れたときに、縄の反対側の釣り針を引っ掛けて、私たちを引いてもらう、と」
女王「そういうことじゃ。お主らを引いてくれるロック鳥は、昨日のうちに王宮近くの岩山に飛んできているのを確認した」
キャッツ「ロ、ロック……鳥?ロック鳥って、あのロック鳥?」
女王「どのロック鳥かは知らんが……カギづめで象1頭つかんで巣まで持ち帰ることができるほど巨大なロック鳥じゃ」
ローズ「それって、おとぎ話でしか聞いたことない……そんなのほんとにいたんだ……」
フィスト「そ、そんなのが、今もう、この近くに?」
リーフ「そっか、だから昨日、王宮から使者が」
女王「この時期、ロック鳥は大まかなルートを巡回するように飛ぶ。そしてロック鳥はお主らの次の目的地のすぐ近くの岩山に巣を作っておるんじゃ……よかったな」
ブラド「まぁ……言われてみれば、これしかないって方法やね」
女王「これを逃せば、次にロック鳥が来てくれるのはひと月後じゃ……さぁ、そろそろロック鳥がトカゲの傷の匂いを嗅ぎ付けてやってくるぞ……」
マリア「な、なんで嬉しそうなんですか?」
衛兵がトカゲを殺させないために、町の中に連れて入っていきました。
砂地の上ではトカゲの尻尾がまだ小さく跳ねています。
女王「ロック鳥に針を引っ掛けるのは衛兵がやる。奴の羽は複雑に絡み合っとるからな……針はすぐにひっかかり、簡単には外れん。今度ロック鳥がこの辺りに来たときにでも外して……ん?」
女王は言葉を途中で切ると、町の中の小さな人影に目をやりました。
シイー「みんな!元気でねー!」
アラー「また来てねー!」
ハカー「……バ……バイバイ!」
女王「しょうのない子らじゃ」
9人は目を合わせて微笑むと、3人の子どもたちに大きな声で応え、手を振りました。
衛兵のひとりが緊迫した声を上げます。
衛兵「き、きました!」
その瞬間、辺りが暗くなりました。
その場にいる全員が、空を見上げます。
ロック鳥の巨体が日を隠していたのです。
その大きな体に見合わず、すばやい動きで砂地に着地降り立ちました。
トカゲの尻尾をカギづめでしっかりとつかむとすぐに飛び立ちます。
衛兵がロープの端をロック鳥の背に投げつけると、ロープはピンと張り、9人を引っ張っていきました。
ジャンヌ「お……きたきた……」
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
女王が差し出したロープは不思議な形でした。
1本の太く長いロープが、途中から9つに分かれているのです。
ロープの端、9つに分かれている方には輪が取り付けられており、持ち手になっていました。
9つに別れているロープは途中から1本に束ねられ、さらにその先の端には無数の釣り針がついています。
キャッツ「……えーと、つまりこれは」
マリア「私たちはこのロープをしっかり握ってて、何かに引っ張ってもらいながら、この板で砂漠を滑走していくんですね?」
女王「ほぅ、なかなか察しが良いな」
ブラド「いやウェイクボードやん」
女王「……ま、まぁ何やらよくわからんが、しっかり握っておけ。一度転ぶと二度と立ち上がれず、砂漠を引きずり回されることになるぞ。砂で窒息死か、岩に激突死ということにもなりかねん」
マリン「待ってよ!危なすぎんでしょうが!」
女王「慌てるな。慣れてないお主らが特別な準備をしなければそうなる、という意味じゃ……サリーや」
サリー「は、はい!」
女王「浮遊石とやらがあるんじゃろ?全員に浮遊の術をかるーくかけておけ。ロープが全員分繋がっておるから全員にかけられるし、転んでもなんとか立て直せるじゃろ」
サリー「な、なるほど!わかりました」
ジャンヌ「で、その『私たちを引っ張って行ってくれる何か』をおびきよせるためのエサが、そのトカゲの尻尾なんですね?その『何か』が現れたときに、縄の反対側の釣り針を引っ掛けて、私たちを引いてもらう、と」
女王「そういうことじゃ。お主らを引いてくれるロック鳥は、昨日のうちに王宮近くの岩山に飛んできているのを確認した」
キャッツ「ロ、ロック……鳥?ロック鳥って、あのロック鳥?」
女王「どのロック鳥かは知らんが……カギづめで象1頭つかんで巣まで持ち帰ることができるほど巨大なロック鳥じゃ」
ローズ「それって、おとぎ話でしか聞いたことない……そんなのほんとにいたんだ……」
フィスト「そ、そんなのが、今もう、この近くに?」
リーフ「そっか、だから昨日、王宮から使者が」
女王「この時期、ロック鳥は大まかなルートを巡回するように飛ぶ。そしてロック鳥はお主らの次の目的地のすぐ近くの岩山に巣を作っておるんじゃ……よかったな」
ブラド「まぁ……言われてみれば、これしかないって方法やね」
女王「これを逃せば、次にロック鳥が来てくれるのはひと月後じゃ……さぁ、そろそろロック鳥がトカゲの傷の匂いを嗅ぎ付けてやってくるぞ……」
マリア「な、なんで嬉しそうなんですか?」
衛兵がトカゲを殺させないために、町の中に連れて入っていきました。
砂地の上ではトカゲの尻尾がまだ小さく跳ねています。
女王「ロック鳥に針を引っ掛けるのは衛兵がやる。奴の羽は複雑に絡み合っとるからな……針はすぐにひっかかり、簡単には外れん。今度ロック鳥がこの辺りに来たときにでも外して……ん?」
女王は言葉を途中で切ると、町の中の小さな人影に目をやりました。
シイー「みんな!元気でねー!」
アラー「また来てねー!」
ハカー「……バ……バイバイ!」
女王「しょうのない子らじゃ」
9人は目を合わせて微笑むと、3人の子どもたちに大きな声で応え、手を振りました。
衛兵のひとりが緊迫した声を上げます。
衛兵「き、きました!」
その瞬間、辺りが暗くなりました。
その場にいる全員が、空を見上げます。
ロック鳥の巨体が日を隠していたのです。
その大きな体に見合わず、すばやい動きで砂地に着地降り立ちました。
トカゲの尻尾をカギづめでしっかりとつかむとすぐに飛び立ちます。
衛兵がロープの端をロック鳥の背に投げつけると、ロープはピンと張り、9人を引っ張っていきました。
ジャンヌ「お……きたきた……」
0
あなたにおすすめの小説
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる