虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第9章 魔界

第233話 ななつめ

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第233話 ななつめ
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ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
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ブラドが混乱の中流した涙が、ムラサキハッカの丸い胞子だまりに落ちました。
胞子だまりはまるでシャボン玉のように、表面に触れた水滴を一瞬で全体に広げていきました。

胞子だまりの表面の風合いが、少し変わったように見えました。
表面は透明のままですが、その質感が薄い膜からガラス玉のように変わったのです。

ブラド「……ど、どうかな?」

マリン「なんか、変わったっぽいけどね」

ビフロンス「拾いあげてみるかい?」

マリア「ブラド、やってみて」

ブラド「う、うん……」

ブラドは地面に置かれた、と言っても元々は自生していた植物の一部なので、地面に生えていたものですが、その球体に、そっと触れました。

球体は弾けません。
ブラドは両手でゆっくりと持ち上げました。
それは、彼女たちが今まで集めてきた8つのオーブと、形も大きさもそっくりでした。

キャッツ「パープルオーブ、ってとこかな?」

グシオン「……それで、そのオーブに託された心。この地に必要な心は、なんだったのだね?」

ジャンヌ「それはもちろん……ね?ブラド」

ブラド「うん……『決めつけない心』」

ブラドがそう言った瞬間に、オーブに変化が現れました。
球体を保っていたオーブが、液体のように、オーブを抱え持っていたブラドの手のひらに吸い込まれていったのです。

ブラド「えっ!?ちょっと!」

紫色のオーブはブラドの手の中で溶けてなくなってしまいました。
代わりに、ブラドの全身が紫色の光で包まれています。
そしてその紫色の光は、ブラドがフッと息を吐いた瞬間に、呼気の流れとともにブラドの首から下げたキューブに吸い込まれていきました。

ブラドの全身を覆っていた紫色の光はなくなり、代わりにキューブが紫色の光を湛えています。

ブラド「で、できたの、かな?」

マリン「多分大丈夫ね」

リーフ「すごいね!ブラドちゃん!」

ブラド「え?わ、私がすごいんかな?」

サリー「悪魔は怖いって決めつけない……オーブはひとつしかないって決めつけない……オーブはすでにこの地に存在してるって決めつけない……全部決めつけなかったから、オーブが手に入ったんだよね」

マリア「じゃ、私たちみんながすごかったんだね」

ブラド「う、うん!そうだね!」

フィスト「これで、7つ全部そろったわけね」

ローズ「あ、そうだよね。確か、7つ全部そろったら……」

ローズが言い終える前に、サリーの首から下げられたキューブが強く輝きはじめました

マリン「な、なに!?」

ジャンヌ「なにじゃないでしょ、旅立ちの塔で『声』が言ってたこと、忘れたの?」

サリー「えっと、確か、『7つのオーブを集めたら、塔に戻るための魔法が発動する』だっけ」

サリーのキューブから、光の玉が浮かび出てきました。
旅立ちの塔で『声』に託されたときと、同じ輝きです。

マリア「え、ちょっと待って!この服で戻るの?」

フィスト「それは嫌だわー」

リーフ「嫌って……え?待ってもらえるの?」

キャッツ「サリー、それいったん、引っ込めちゃってくれる?」

サリー「え……えーと」

サリーが目を閉じて念じると、光体はサリーのキューブに戻りました。

サリー「えっと……待っててくれるみたい」

フィスト「あーよかったー」

マリン「この格好じゃ、さすがにちょっと、ねぇ?」

キャッツ「着替えなきゃいけないのはさみしいけどねー」

ビフロンス「ま、お前さんがたがここでのんびりできないのはわかった。とりあえずさっきの場所に戻って、腹いっぱい食ってから行きな」

ジャンヌ「そうだよ!チキン!」

キャッツ「誰も取らないわよ」

ジャンヌ「そんなのわかんないじゃん!あ!マリン!走ってる!」

ローズ「え!?なくなるの?だめー!」

9人は先ほどまでいたパーティー会場に走って戻りました。
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