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御礼のサイドストーリー

1.親友の息子…ああ、あいつか。

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思いつき作品にも関わらず沢山の方に見て頂けて嬉しいです。
訪問、ブクマしてくださった方にせめてものお礼を。
蓮さんサイドのお話です。
良かったらどうぞ。

────────────────

俺は加賀 蓮。享年25才。
結婚することもなく、友達と遊んでいることが多かった普通の社会人だった。
その日はちょうど帰省の時期で、たまには夜行バスでも乗ってみようかな~なんて思ったのが運の尽き。
気づけば事故か何かで死んだのか、賽の河原らしき場所のすぐ横の草地にいた。
周囲には俺と同じバスに乗っていた人達もいるし、まあまず間違いはないだろう。
ああ、死んだのかと思って周囲を観察すると、どこかやる気のなさそうな死神風の男がいたので話しかけてみることにした。

その男はやはり死神で、ここは魂の休息地であり、所定数の魂がここに集まったら転生作業を行うのだと言った。
どうやらちょうど俺達の前に転生作業を行ってしまったらしく、暫く待たないといけないとのこと。

(ま、仕方がないか)

その時はまさか10年も待たないといけないなんて思いもよらなかった。
少しずつ少しずつやってくる魂たち。
それも50人を超えたらそろそろかなって期待もする。
でも死神はまだまだだと口にするばかり。
じゃあ一体何人集まったら転生できるんだと尋ねた人がいた。
それに対してこの男はあっけらかんとこう言い放ったのだ。

「ん~…100人くらいかな~」

どうやら随分ものぐさな死神だったようだ。
しかもほとんどの時間をここで過ごしているから、魂たちは細々としか集まらない。
これじゃあ5年どころか10年はかかるんじゃないだろうか?
そう思った。

けれどまさか本当に10年かかるとは────。




「はい、97、98、99人目~」

そんな言葉と共に三人の魂が補充され、やっとあと一人となったところで皆の期待が高まっていく。

(あと一人だ!)

来い来い来い来い!

皆の心の中はその言葉でいっぱいだったことだろう。
俺もあと一人でやっと転生できるのだと思うと嬉しい気持ちでいっぱいになった。

「はい、100人目~!」

そして待ちに待った最後の一人がやってきて、死神がじゃあちょっと準備してくるからなんて言いながら席を外す。
それにホッとした皆は各々それはもう明るい顔で死神を待っていた。

俺はというと、最後にやってきた少年の姿に実は密かに心を痛めていた。
最初でこそみんなと同じように喜んだものの、よく見れば少年はどう見ても高校生くらいに思えたからだ。
こんなに若いのに可哀想に……そう思った。
しかもなかなか目を覚まさない。
心配で心配で────気づけばそっと声を掛けている自分がいた。

「おい!しっかりしろ!」

何度か呼び掛けると少年がそっと目を開いたので安心する。
けれどその顔はどことなく見たことがあるような雰囲気を漂わせていて、こんな知り合いいたかなと少し考えこんだ。
もしかしたら気のせいかもしれない。そう結論を出そうとしたところでその少年の口から自分の名前が飛び出した。

「蓮…さん?」

どうやら本当に知り合いらしい。
でもいくら考えても誰なのかが思い出せそうにない。
だからどうして名前を知っているのかと尋ねたら、あっさりと相手のことが判明した。
この少年は────俺の親友、有村 健太の息子、康太だったのだ。
俺が死んでからすでに10年────あいつは元気にしているだろうか?
健太は親子の名前を併せると『健康』になるから長生きできそうでいいだろう────なんて名づけの時笑って言っていたけど、まさか息子がこんなに早く亡くなるなんて思いもしなかっただろうなと思ってまたズキッと心が痛んだ。
とは言え死んでしまったものはもうどうしようもない。
せめてあいつの近くの誰かのところに生まれ変われるといいなと思った。
正直それくらいしか願ってやれない。

それから康太に死神のことと転生のことについて簡単に話してやった。
最初は驚いたようだったが、若いからかすぐに適応してくれ、そういうこともあるのか~と頷いていた。

そうこうしているうちに準備に行っていた死神が戻ってくるのが目の端に移る。

これで────やっと転生できる。

そう思ったらやっぱり胸がいっぱいになって、ついそのまま口にしてしまった。
けれどそれを聞いた康太がどこか楽し気にしながらニコッと笑ってくる。

「転生先、一緒だったらいいね」

そんな言葉にそうだなと思ったところで不意に唇に温かなものが触れた。

(これって…………キス?)

あまりにも突然のことに驚きながら康太を見たが、どうしてしたのかとか、そういうことを聞く前にあっという間に白い光に包み込まれて……気づけば赤子として転生している自分がいた。



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