【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

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【恋の自覚なんてしたくない】

34.恋の自覚なんてしたくない①

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※アルフレッドの恋自覚話をリクエスト頂いていたので、遅くなりましたがアップさせて頂きます。
全8話になります。宜しくお願いします。

****************


ブルーグレイ王国と隣り合う友好国、ガヴァム王国。
その王宮で一人の王子がとある話題に興味を惹かれていた。

「この報告書に間違いはないのか?」
「はい。カリン殿下」

そこに書かれてあったのは隣国ブルーグレイ王国のセドリック王子についての近況報告だ。
一国を滅ぼした危険な王子なので定期的に動向を探らせているのだが、今回の報告書では側妃の件に終始していた。
正妃については大々的に各国の者が招待されて挙式したこともあり有名だが、側妃については全く耳に入ってはいなかった。
しかもあろうことか王子は正妃をそっちのけにしてその側妃を溺愛しているらしい。

*報告1.側妃は姫の護衛騎士の一人であり男である。

これだけ見るとただの誤報だろう。

*報告2.側妃アルフレッドと王子は毎日剣を交え合う仲である。

これだって普通に訓練だろと言いたい。

*報告3.側妃アルフレッドは城の皆から祝福されている。

正直これも虚偽の報告だと思う。
ブルーグレイ王国は同性婚は認められていないし、男が相手なら嫌悪はされても祝福されるはずはないからだ。

*報告4.王子は視察に側妃アルフレッドを同行させるほどの寵愛ぶり。

これに関しても単純に視察に護衛として同行させたに過ぎないだろう。
けれど興味を惹かれたのは次のものだった。

*報告5.王子は家出した側妃アルフレッドをすぐさま追いかけ、自ら捕まえに行くほど溺愛している。

*報告6.側妃アルフレッドの囲い込みは城だけではなく街にまで及んでおり、最早彼はブルーグレイ王国から逃げるのは難しいだろう。

最初はその男がスパイか何かで、城で何か重大な罪を犯して逃げたから総出で捕まえに行ったとかそんなところかと思った。
けれど街ぐるみの囲い込みとなると話は別だ。
それだけ逃がしたくない何かがその側妃にはあるのだろうか?
その後側妃が牢に入れられたという報告もないし、それどころか仲睦まじく王子と街デートを楽しんでいたとの報告も入ってきた。(報告7.)
これは俄然興味も湧いてくるというもの。絶対に何かある。
そうこうしているうちに最新の報告が飛び込んできた。

*報告8.側妃アルフレッドはゴッドハルトの英雄トルセンの片腕だった男である。

(これか…!)

囲い込みたい理由はこれだったのだと確信し、それと共に納得がいった。
そんな相手を囲い込めれば軍事強化が容易に可能になる。

「一度会ってみたいものだな……」

できればこちらへと引き抜きたい人物でもある。
ブルーグレイ王国に行く使節に紛れて一度顔を拝んでやるかとニヤリと笑い、王子はすぐさま父王の元へと向かった。


***


「ガヴァム王国からの使節団にあっちの王子が?」
「そうよ。だから私もセドリック王子の正妃として王太子妃のお仕事をしないといけないの。具体的にはお客様の接待ね!」
「なかなか大変ですね」
「そう思うでしょう?だから、アルフレッドも護衛としてできるだけ傍に居てちょうだいね?場合によってはフォローをしてくれたら嬉しいわ」
「本来の仕事ですね。勿論です」
「じゃあ、この資料を一緒に覚えてくれるかしら」
「いいですよ」

今回の使節に来る面々の名前から始め、ガヴァム王国のことについての詳細な情報を渡されて一通り目を通す。

「意外ね。アルフレッド」
「何かおかしいですか?」
「いいえ。早いなと思って。ちゃんと読んでる?」
「読んでますよ。もう覚えたんで問題ないです」
「本当に覚えたの?」
「覚えましたよ。トルセンの補佐をしてたって知ってるでしょう?」
「知ってるけど……脳筋だからこういうのは苦手だと思っていたわ」
「早く覚えないと剣の稽古ができないんですから、さっさと覚えるに決まってるでしょう?それに動体視力はいいんで読むのが速くても別におかしくはないです」
「あ、わかったわ。アルフレッドはどこまでいってもアルフレッドだったわ」

トルセンがなんだかんだ重用したのが分かったと姫から言われた。
脳筋と言うより筋金入りの剣バカなのね、とも。何故だ。
そんな姫に溜息を吐いて、当日のスケジュールを確認する。

「あ、そうだ。姫、使節が来る間俺に護衛を全部任せる感じですか?」
「ええ。そのつもりよ」
「じゃあ王子が俺の件で何か言ってきても全部断ってくださいね。抱き潰されでもしたら仕事になりませんから」
「なっ…ななな…っ?!自分で言いなさいよ!」
「何か企まれて事後報告とかだったら俺には何もできないんで。宜しくお願いしますね?」

取り敢えず使節団が帰るまで夜は全部断っておきますとだけ口にして姫を慄かせた後、俺はすぐさま姫の護衛騎士達を全員集めてこの件を周知しておいた。

「全員姫に全面的に協力をすること!」

「「「はいっ!」」」

「使節団の方々に失礼のないように行動すること!」

「「「はいっ!」」」

「問題が生じたら王子か俺か姫に必ず話を通すこと!」

「「「はいっ!」」」

「使節団の滞在期間中、王子が何を言ってきても俺は職務中と言うこと!」

「「「?!…………無理です!」」」

(なっ?!)

「そこは『はい』だろ?!」

「「「無理です!」」」

「なんで無理なんだよ?!」

「騎士長が思うよりも王子はヤバいです!」

「あの方は騎士長が絡むと悪魔よりも怖いと思います!」

「命大事に!」

「「「命大事に!」」」

「なんだその掛け声?!もういいっ!俺から王子にはちゃんと話しておくから!」




『全く!』と怒りながら王子の元に行くと、そこには王子の側近がいて打ち合わせをしていたので少し待つ。
でも王子がすぐにこちらに気づいたので、そっちの話をやめてこちらに話を振ってきてしまった。

「アル。どうした?」
「アルメリア姫から先程ガヴァム王国の使節団の件で護衛を任されましたので報告に来ました」
「そうか。使節団のもてなしは本当は王妃の役割だから母上がいればそちらに丸投げできたのだが…すまないと伝えておいてくれ」
「了解しました」
「頼んだ。ああ、アル。ちょっとこちらに来てくれないか?」
「……お断りしても?」

何となく嫌な予感がしたからサラッと断ろうとしたのに、ここで側近のノヴァがきらりと眼鏡を光らせる。

「アルフレッド殿。護衛のお仕事も大切ですが、側妃のお仕事もきちんとなさっていただきたい」
「俺は認めてないし、男なんですけど?」
「王子が望まれているのでよいのですよ。王子は貴方をお呼びです。さあ、こちらへどうぞ」

ここまで言われたら逃げるわけにもいかなくて渋々そちらへと向かう。
でもちゃんと逃げられる距離は保ってるからギリギリ大丈夫のはず。
そんな俺に当然王子も気づくわけで……。

「なんだ、アル。随分警戒しているな。どうかしたのか?」
「いえ。ただ…」
「ただ?」
「使節団の件では姫の護衛とフォローを一手に引き受けることになりそうなので、王子の相手が一切できなくなる旨は今この場でお伝えしておきます」

皆には俺から言うって言ったんだからとちゃんとはっきり言葉にすると、たちまちその場に殺気が満ちた。
どうやらかなり不服のようだ。

「アルフレッド。それは勿論昼間のみのことだな?」
「いいえ。勿論夜も含めてのことです」
「……夕方の剣の手合わせはどうだ?」
「そちらも残念ながら使節団の方々が帰るまでは控えようと思ってます」

これは本当はやめたくないけど、なし崩し的に抱かれそうだから安全を見て却下だ!
その代わり自主鍛錬に力を入れよう。ちょうどやってみたい訓練を思いついたことだし、良さそうなら他の護衛騎士達にもさせてみようと思ってる。
これで皆が強くなってくれたら俺も王子との手合わせばかりを楽しみにしなくて済むようになるし、一石二鳥だ。
そんなことを考えていると────。

「…………ノヴァ。使節団の滞在はどれくらいだ?」
「はい。今回はあちらの王子がいるので短期での滞在をということでしたが、交渉が長引く可能性もあるので期間としては約ひと月ほどかと」
「ひと月は短期ではないな。一週間にしろ。交渉はそれで十分だ」
「…………調整は掛けてみます」
「は…?」

ひと月を一週間にするなんて何を考えてるんだろう?

(どう考えても無理だろ?!)

そんな驚愕のやり取りを目の前にして俺はツッコミを入れざるを得なかったのだが、あらかじめ向こうの要望は聞いているし、先に王と王子、外務大臣で内容を詰めておけば問題はないと言い切られた。

「それよりもお前をひと月も抱けない方が問題だ」
「いやいやいやっ?!どう考えても外交の方が大事だろ?!」

いきなり何を言ってるんだと俺はドン引きしてしまう。
過去にひと月抱かなかったことだってあるんだし、それくらい我慢しろと言ってやりたい。
仕事は意外にもきっちりやる王子だが、この辺の考え方は全く理解できなかった。
どれだけ俺に執着してるんだと言ってやりたい。

「三日で終わらせてやる。それでいいな?」
「何が?!」
「交渉だ。後はどうせもてなしだのなんだのと言った些事ばかりだろう。お前がフォローする場はない。姫の護衛は他の者に任せれば済む話だ。お前を抱き潰しても何の問題もなかろう。姫には三日だけお前を貸してやると言っておけ」
「な…っ?!」

王子の言葉にはただただ驚かされるばかりだ。
本当にそんな事ができるのか?いや、できるはずがない。
相手は何と言っても他国からの使節団だ。
そんなに上手く事が運ぶとは思えなかった。
だから俺は乾いた唇をそっと湿らせて、笑顔で「頑張ってください」と言って職務を全うしようとした。
したのだが────。

気づけばグイッと手を引かれすっぽりと王子の腕の中へと引き込まれていた。

「アル……使節団が来るまで忙しくはなりそうだが、夜だけはお前のためにあけておくからな」
「え?いらないけど…?」
「そうか。夜じゃなく昼に抱かれたいなら調整しておこう」
「どうしてそうなる?!」
「可愛い側妃のわがままだ。ちゃんと聞いてやらないとな」
「いらない!いらないから!」
「隙間時間の活用…だったか?休憩時間を使って上手くやりくりしてやるからな」
「いやいやいやっ?!本当にいらない!昼は護衛だけじゃなく鍛錬もしてるから絶対嫌だ!」
「ではお前の休憩時間に合わせよう」
「休憩なんてしないし!」
「…………嘘は良くないな。お前の行動は逐一報告が上がってるぞ?」
「ストーカー?!」
「人聞きが悪いな。側妃が逃げ出さないように皆で監視しているだけだ」
「怖っ!」

どうやら俺は本気で巨大な牢獄に閉じ込められているらしい。

「馬鹿だな、アル。好きに剣が振れる環境なんだからお前にとって別に悪くはないだろう?」

そう言われればそうかもしれないが、実質軟禁だよなと思って遠い目になってしまった。
もちろん本気を出せばそんな監視達は振り切って逃げられるけど、非常に面倒臭いし疲れそうだから好んでやりたくはない。
それにどうせここを出ても街では更に多くの目があるのだからやるだけ無駄だろう。

「今夜は特別に可愛がってやるから、間違っても寝室に鍵をかけるなよ?」

そう言ってにっこり笑った王子に俺はただただ乾いた笑みを返したのだった。


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