【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

文字の大きさ
62 / 215
【アルフレッドの家出】

54.アルフレッドの家出⑫

しおりを挟む
時間的に昼食時だったから、トルセン夫妻と食事をしながら話を聞くことになった。

トルセンの奥さんに会うのは実は初めて。
幼な妻っていうのか?結構年下っぽい可愛らしい奥さんだ。
戦いで疲れてたトルセンが癒しを求めたのがよくわかる。

「アルフレッド様!お会いできて光栄ですわ」

花開くように可愛らしく笑ったトルセンの奥さんはマリアンヌという名前らしく、トルセンからはマリーと呼ばれていた。

「マリー。こっちがアルフレッドで、そちらがアルフレッドの夫のセドリック王子だ」
「まあ!貴方が噂のアルフレッド様を溺愛されているという王子様ですね!熱烈にアルフレッド様を愛されているからなかなか紹介できないんだって夫が言うので、是非その思いの丈をお聞かせしてほしかったんです!」

(…………テンションたっか!)

如何にも若い女の子って感じで場にいるだけで華やぐなぁとは思ったけど、俺の苦手なタイプだ。
まだ姫くらいの方がいい。
でもセドの方は違ったらしく、どちらかというと新鮮って顔をしてた。
確かにセドに対してこんな風に明るく元気に話してくる相手ってなかなかいないもんな。
だからなのかなんなのか、珍しくセドがにこやかに惚気話をし始めた。
それをマリアンヌは嬉しそうに笑いながら聞いてるんだけど────。

(…………なんだろう。もやもやする)

セドの惚気も嫌だったけど、それよりも何よりもマリアンヌと楽しげに話している姿に何となく疎外感を覚えて、なんだか急に剣が振りたくなった。

(さっさと食べて無心で剣振りたい……)

「…………えっと、惚気はその辺にして、姫についての相談がしたいんだけど…」

こうなったらさっさと話を聞くだけ聞いて離脱だ!
そうだそうしようとばかりに話を振ると、マリアンヌは親切に色々教えてくれて、セドも興味津々で話を聞いていた。

妊娠中のしていいこととダメなこと。
このあたりは奥さんも子供ができたら気をつけようと思ってることばかりだから実経験じゃなくて申し訳ないけれどと言われたが、参考になることばかりだった。
そしてお勧めの土産物。
王族なら宝飾品は沢山持っているだろうし、お土産として買うなら貝殻を使って飾り付けられた宝石箱などはどうかと勧められた。
種類も豊富で可愛いものが多いからきっと気に入ってもらえると思うと笑顔で言われたので、セドもいいんじゃないかと俺に言ってきた。
確かにこれなら姫も喜んでくれるかもしれない。

そういった話を聞くのは実に有意義な時間であるはずなのに────どうしてだろう?

(うぅぅ…なんだこれ、なんだこれ……)

別におかしなことは何もないのに、何故か時間が過ぎれば過ぎるほどもやもやが増していくような気がする。
俺、何か悪いものでも食べたっけ?
特に胸焼けするようなものはなかったと思うんだけど…。

「アルフレッド、どうかしたか?」

ちらちらとセドの方を見ていたからか、流石に気になったのか向こうの方からそんな風に訊いてきた。
でも俺にだって原因がわからないからどうしようもない。

「いや。ちょっと剣振りたいな~って」

だからそれだけ言ったのに、セドの方は何か勘違いしたのか殺気を飛ばしてきた。

「そんなにオーガストと早く打ち合いたいのか?」
「え?違うけど」

オーガストと打ち合いたいのは打ち合いたいけど、今はそんなこと全く頭になかった。
どちらかというと別のことで頭が混乱中って感じ?
セドは和気藹々と楽しそうにしてるのに、何故か俺だけおかしいなっていう、ただそれだけのことで……。

「アル…?」

滅茶苦茶睨まれて余計に居心地が悪くなってしまった。

(俺、本当に何がしたいんだろう?)

多分セドが一緒に来てなかったら普通にトルセンやマリアンヌと話だけして何の問題もなく終わったと思う。
だから……多分このもやもやはセドがここにいるからこそなのだろう。
でもその原因がわからない。

「はぁ…なんだこれ」

(知恵熱出そう…)

「セド…………今日は一人寝していいか?」

ちょっとちゃんと考えたいなって思ってそんなことを口走ったら、更なる殺気が飛んできたけど今の俺には逆効果。

(あ~セドの殺気好きだな、やっぱ)

ちょっとだけもやもや解消できたかも~とか思ってたら、慌てたように横からトルセンの待ったが入った。

「待て待て待て!いきなりここで夫婦喧嘩をするな!」
「え?してないけど?」
「どこからどう見てもしてるだろ?!王子が滅茶苦茶キレてるじゃないか!お前の目は節穴か!」
「え?セドのこれは愛情表現だから、気にしなくていいって」

何を今更ときょとんとして言ってやったらトルセンがテーブルに突っ伏して撃沈していた。
どうも俺の感覚がおかしいらしく、これにはマリアンヌの方も困惑顔だ。
でもこの奥さん、やけに強いな。
セドの殺気を間近で感じても全く顔色変えてないし。
そこだけは本気で凄いって思った。
姫だったらきっと気を失ってるレベルだぞ?
メンタル強いところが流石トルセンの嫁って感じ?

「ああ、わかりましたわ!アルフレッド様ったら、本当にセドリック王子にべた惚れなんですね。微笑ましいです」

しかも不意にそんなことをにっこり笑いながら言うものだからたまらない。

「何を…」
「まあまあ。隠さなくてもよろしいのに。先程から王子が私と話すたびにちらちらと所在なさげに王子をご覧になっていたでしょう?嫉妬してらしたんですよね?食事もほぼ終わりましたし、ちょうどそろそろ切り上げた方がいいのかと思っていたところでしたのよ?」

王子の気を惹きたくて一人寝なんて言い出したのでしょう?とコロコロと笑われてなんだか物凄く居た堪れない気持ちに襲われてしまう。

「ふふふっ。王子には誤解されてしまったようですけど、私にはちゃんとわかっていますわ。アルフレッド様。恋のお悩みができましたら、是非私にお手紙下さいませね。夫よりも的確なお答えをお送りいたしますわ」

実に楽し気にされたけど、そんなんじゃないから!!
勝手に顔が熱くなるのも、見当違いのことを言われて恥ずかしくなっただけだから!!

そう思って勢いよく席を立ったら、殺気を引っ込めたセドにまで揶揄われた。

「アルフレッド…可愛いな。トルセンに引き続き、奥方にまで嫉妬してくれたのか?」
「ち、違うから!俺は、そう!オーガストと早く剣を合わせたかっただけだからっ…!」
「ククッ…この状況で言っても言い訳にしか聞こえないな。剣なら俺が相手をしてやるから、好きなだけ打ち込んでこい」

そして、行こうかって言いながら俺の腰を抱いてトルセン夫婦に笑顔で礼を言ってからその場から離脱してしまった。

(くそっ…なんだこの敗北感……!)

こんな気持ちになったのは初めてだ!
俺らしくない、俺らしくないぞ!

そんな気持ちに襲われながら、それでもセドと剣を合わせて、次いでオーガストとも剣を合わせて調子を取り戻しその日を終えた。

その日の夜は何故か物凄く濃厚に甘く愛されたけど、もやもやするのを誤魔化すようにちょっと積極的に口でしてみたり、いつも以上にセドを求めてしまったりとかしてしまった気がするから記憶から消去してしまいたい気持ちでいっぱいだ。
嬉しそうなセドには悪いけど、俺はそんなキャラじゃない!
頼むからサッサと寝て忘れてほしい。

ついでにセドから明後日の朝には帰るから、やり残したことがあったら明日やっておくようにと言われた。
それならそれでオーガストと本気で打ち合いたいななんて思いながら、俺はすやすやとセドの腕の中で眠りに落ちたのだった。

しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...