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71.街歩き
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あれからシャイナーにレオと共にこれまでの流れを説明し、先程の打合せにあったブルーグレイのシャメルを使用しつつ進めていくという話をすると、ふむふむと言った感じで話を聞いてくれ、途中途中で質問を挟みながら確認をしてこれからのアンシャンテへのレールをどのあたりを経由するルートで敷いていくのかという話まで詰めることができた。
既に間にある二国にも話はしてくれているらしく、余程上手く言い包めたのか特におかしなことは言われなかったらしい。
流石の手腕だ。
その後、シャイナーから庭園を案内してもらえないかと言われたので皆で庭園へと向かい、ちょうど見頃を迎えた花々を見ながらミラルカの花畑の話や鉱山ホテルに植える花の話などもした。
それに付随して香水の話なんかもしたのでそこそこ話は弾んだように思う。
そうしているうちに兄を呼びに来る補佐官がいたので兄とはそこで別れることに。
どうやら休憩時間は終わってしまったようだ。
それを凄く残念に思っていたら、残った二人が気分転換に外に行かないかと誘ってくれたので街に出てみることにした。
シャイナーと二人ではないし、きっと大丈夫だろう。
でもリヒターに兄のフォローを任せようとしたら『同伴する』の一点張りだった。
まあいいかと思って買い物に出たのだけど────。
「レオはいつの間にはぐれたんだろう…」
「本当にしょうがないな」
気づけば何故かレオの姿がなくて、シャイナーと二人になっていた。
勿論レオにも護衛はついているから安心ではあるけれど、流石にこのまま放置はできない。
シャイナーはすぐに見つかるだろうと安心させるように言ってくれたけど、来た道を戻ってみてもレオの姿は見つからなかった。
「困ったな…」
でもそう呟いたらシャイナーが陰に探させるからそう心配するなと言ってくれて、すぐさま手配をしてくれる。
でもこちらとしても動かざるを得ないので、一番信頼できるリヒターに探しに行ってもらうことにした。
リヒターなら俺の位置も把握できるから合流もしやすい。
これでどちらかが見つけてくれればいいんだけど。
「ほら、合流できるまで噴水のところで待とう。あそこなら目立つし、すぐにわかるだろう?」
確かに。
そう思ったので、促されるままにシャイナーと連れ立って噴水広場へと向かう。
その道すがら、シャイナーは物珍し気に屋台を見ながら歩き、いくつか目についた美味しそうな物を購入していた。
「ロキ。ほら、口を開けてみろ。美味しいぞ」
そして噴水の側に合ったベンチに腰を下ろしてレオを待っていると、シャイナーが徐に俺の口元へと菓子を運んできた。
少し塩気も利いた菓子で、確かに甘すぎず美味しい。
「美味しいか?」
「ええ。初めて食べました」
「そうか。じゃあもっと食べるといい」
そう言いながらニコニコと俺の口元へと菓子を運んでくる。
「ん…でも俺ばっかりだとシャイナーの分が…」
「それなら俺にも食べさせてくれないか?」
「いいですよ」
なんとなくそういうものなのかなと思い、同じように食べさせてみたら何故かそのままパクッと指まで口に含まれてペロッと舐められてしまった。
「ロキに食べさせてもらうのは最高だな」
食べられたと思ったものの、そんな事を言いながら悪戯っぽく笑うシャイナーに毒気を抜かれてしまう。
「ほら」
そう言いながらシャイナーがまた俺の口元へと菓子を運んできたので、そのまま食べてまたお返しに菓子を口元へと運び返した。
なんだか嬉しそうにまたパクッと口に含まれ指を舐められたので、もしかして遊びたいのかなと思ってそのまま指を増やして唾液を絡めるように舌を弄びくちゅくちゅと虐めてやった。
シャイナーは最初は驚いたような顔をしていたけど、気づけばされるがままだ。
頬を紅潮させ舌を出してうっとり俺の指に翻弄されている。
(レオ、早く来ないかな…)
暇だしいいかと思いながらそうやって手持ち無沙汰にシャイナーを嬲っていたら、気づけばマーシャルはじめ護衛騎士達が壁になって周囲からの視線を隠してくれていた。
「ん…んんぅ…」
「シャイナー?これに懲りたらあまり困らせないでくださいね?」
そろそろやめてあげようかなと思ってそう言ったら、何故か恍惚としたような表情で熱く見つめられて、もっとと言わんばかりに腕を掴まれてしまう。
「もっと?」
そう尋ねたらコクリと頷かれたので仕方がないなと思って溜息を吐いたら、『そこまで!』と言わんばかりにレオがリヒターと一緒に駆けつけてきた。
「こんな目立つ場所で何やってるの?!」
「え?お菓子の食べさせ合い?」
「……え?」
『本当に?』と首を傾げられたけど、別に嘘は吐いていない。
「後はシャイナーがふざけてきたから、ちょっとお仕置きしてただけですよ?それよりレオ。無事に合流できて良かった」
「……そうだな。先にリヒターに会えたら良かったんだけど、誰かさんの暗部と先に合流しちゃってさ?物凄く遠回りさせられたような気がしないでもないけど、結果的に合流できてよかったと言うべきなのかな?」
どこか冷ややかな声でそう言いながらシャイナーを睨みつけるレオ。
それに対しシャイナーはそっと口元を拭って笑みを取り繕うと、サラリと『合流できてよかった』とだけ言った。
「じゃあ、レオも合流できたことだし、他に行きたいところは?」
「あ、俺その香水に使ってる『孤高の王子』っていうバラを見たいんだけど、咲いてる場所はあるかな?」
ちょうどそんな話を城の庭園でした事を思い出したのか、レオがそんな風に提案してくる。
きっと鉱山ホテルの庭に植える花の候補にしたいんだろう。
「ええ。この間温室で見たので案内しますね」
方角は時計塔の位置から把握できるし、大体の位置もちゃんとまだ覚えている。
それにリヒターもいるから道を間違えたら教えてもらえるだろう。
そう思いながら連れ立って歩き、やがて以前来たバラ園へと辿り着いた。
「まだ咲いてるといいけど」
そう言いながらリヒターと見たあたりに足を運ぶと、だいぶ花は減ってはいたがまだちゃんと咲いていた。
「これがその『孤高の王子』です」
「へぇ…。ああ、確かにロキの香水と同じ香りだ。それに花も凛としてて綺麗だな」
「これはいいな。俺も城の庭に植えさせようか」
どうやら二人とも気に入ってくれたらしい。
それから一通りバラを見て回り、そろそろ帰る時間だからとレオが言ってきたので一度皆で城に戻ることに。
「シャイナーは帰らないのか?」
レオがどこか胡乱気な目で見遣りながらそう尋ねると、シャイナーは機嫌よく『折角だし今日は街の宿に泊まる』と言い出した。
どうやらガヴァムの街をもう少し楽しみたかったらしい。
「そう。街の宿に」
ならよかったとレオは言うけど、流石に隣国の王をそんな場所に泊らせるのもどうかと思い、一応声を掛けてみる。
「シャイナー。もし宿にこだわりがないなら城に泊って行かれては?その方がまだ警備も少しはマシだと思うので」
頼りにならない騎士ばかりだから無理にとは言わないけれどと口にしたら、『好意を是非有り難く受け取らせて欲しい』と言って承諾してもらえた。
レオは止めに入ったけど、厳重に警備させるからと一応言っておいた。
「本当に…レオにそんなに心配されるなんて、よっぽど騎士の信用が低いのかな」
「ロキ?俺が心配してるのは騎士の実力じゃ…いや、それも心配だけど」
「やっぱり。また抜き打ちで指導しに行かないと」
「うん。頑張って…ってそうじゃないから!ロキが心配なんだ!」
「俺が?」
「そう!」
「大丈夫だ、レオ。騎士が不甲斐ないならロキは俺が側で守るから」
「論点をわざとずらさないでくれるかな?それに一番危険な相手にそれを言われてもね?」
バチバチと火花が散ってるけど、いい加減兄のところに帰りたいしやめてほしい。
「早く兄上のところに帰りたいので、揉めないでくださいね?」
「どうしてそんなに人ごとっぽいかな?!」
レオが『深窓の令嬢じゃないんだからもっと警戒心を持とう?!』って言ってきたけど、深窓の令嬢は暇だからって人の口に指突っ込んで嬲らないと思うんだけどな?
客間は自室からも離れてるし、どうしてそこまで心配されるのか全くわからないから後でリヒターに聞いてみよう。
そんなことを考えながら皆で城へと戻り、ワイバーンで帰るレオを見送ってからシャイナーに部屋を案内し終わったので、ホッと息を吐いてソファで寛いでいたらリヒターに叱られてしまった。
「ロキ陛下?マーシャルからも聞きましたよ?何をやってるんですか!貴方は!」
「え?」
「先程の、シャイナー陛下を安易に城に招いたことといい、探しに行っていた間のことといい、迂闊にも程があります!」
「迂闊?」
でも他国の王の安全確保は特におかしいとは思わないし、心配があるとしたら騎士のレベルが心配ということくらいだから警備をしっかりするよう手配すればいいと思ったんだけど…。
待ってる間のことだって、シャイナーがふざけてきたからちょっと構ってただけで他意はない。
あれで反省してもうしてこないと思うし、いっそ良かったんじゃないかと思ってたくらいなんだけど…。
「そもそも、シャイナー陛下はロキ陛下がカリン陛下を抱いているところを見て惚れたんですよ?」
わかってますかと問われ、そう言えばそんなことも言っていたなと思い出す。
「つまり、彼はロキ陛下に嬲られたいんですよ?!」
確かにそう言われてみればその通りなのかもしれない。
(そう言えばあの時も、もっとって手を掴まれたな)
しまった。お遊びでもお仕置きでもなくご褒美になってしまったのかと今更ながら気づいてしまった。
でもそんなこともすっかり忘れてしまう程、シャイナーの攻め方はこれまで正攻法とも言えるものだったのだ。
「…確かに迂闊だったな」
「わかって頂けましたか?」
好意を示し、会話で親しくなり、巧みに行きたい場所へと誘導する。
多分彼は女性に凄くモテるタイプだろうとすぐにわかるほど、全てがスマートだった。
こちらに全く警戒心を抱かせないし、懐に入るのも上手で、常にリードしてくれて対応も的確。
嫌いになる女性などどこにもいないはず。
それこそ俺とは大違いだ。
だからこそ逆に俺なんかに本気とは思い難かったし、攫ったことは気の迷いで今は単にそれを挽回して国王同士仲良くしたいだけなんだろう程度に思っていた。
これまで全く嬲られたいと思っているように見えなかったから、俺はすっかり失念していたのだ。
「誠実でまともな人だと思っていたけど…中身は適度に変態要素が詰まったロールキャベツのような人だったのか…」
それはそれで初めて会うタイプで面白くはあるけど、やっと油断するなと言われた意味が分かった。
「…陛下の言っている意味が半分ほどしかわかりませんが、まあこれまで以上に警戒してくださるなら構いません。どうかご油断なく」
「わかった」
それならそれで対処法も一応思いつく。
要するにシャイナーと俺の攻防戦が始まっているのだと判断していいはず。
(これからは調教用の道具でも懐に忍ばせておくか)
そう思いながら俺はそっとほくそ笑んだのだった。
****************
※ロキの思考回路がわかる人ってどれくらいいるんだろうと思う今日この頃。
カリン以外との恋愛など全く頭になく、SとMの攻防戦が始まるのかとウキウキなロキと、ロキと恋愛関係になって可愛がって欲しいシャイナーのおかしなすれ違いが発生。
相変わらず明後日の方向にいってしまうロキにカリンはどう対処するのか…。
※次回はシャイナー視点です。
宜しくお願いします。
既に間にある二国にも話はしてくれているらしく、余程上手く言い包めたのか特におかしなことは言われなかったらしい。
流石の手腕だ。
その後、シャイナーから庭園を案内してもらえないかと言われたので皆で庭園へと向かい、ちょうど見頃を迎えた花々を見ながらミラルカの花畑の話や鉱山ホテルに植える花の話などもした。
それに付随して香水の話なんかもしたのでそこそこ話は弾んだように思う。
そうしているうちに兄を呼びに来る補佐官がいたので兄とはそこで別れることに。
どうやら休憩時間は終わってしまったようだ。
それを凄く残念に思っていたら、残った二人が気分転換に外に行かないかと誘ってくれたので街に出てみることにした。
シャイナーと二人ではないし、きっと大丈夫だろう。
でもリヒターに兄のフォローを任せようとしたら『同伴する』の一点張りだった。
まあいいかと思って買い物に出たのだけど────。
「レオはいつの間にはぐれたんだろう…」
「本当にしょうがないな」
気づけば何故かレオの姿がなくて、シャイナーと二人になっていた。
勿論レオにも護衛はついているから安心ではあるけれど、流石にこのまま放置はできない。
シャイナーはすぐに見つかるだろうと安心させるように言ってくれたけど、来た道を戻ってみてもレオの姿は見つからなかった。
「困ったな…」
でもそう呟いたらシャイナーが陰に探させるからそう心配するなと言ってくれて、すぐさま手配をしてくれる。
でもこちらとしても動かざるを得ないので、一番信頼できるリヒターに探しに行ってもらうことにした。
リヒターなら俺の位置も把握できるから合流もしやすい。
これでどちらかが見つけてくれればいいんだけど。
「ほら、合流できるまで噴水のところで待とう。あそこなら目立つし、すぐにわかるだろう?」
確かに。
そう思ったので、促されるままにシャイナーと連れ立って噴水広場へと向かう。
その道すがら、シャイナーは物珍し気に屋台を見ながら歩き、いくつか目についた美味しそうな物を購入していた。
「ロキ。ほら、口を開けてみろ。美味しいぞ」
そして噴水の側に合ったベンチに腰を下ろしてレオを待っていると、シャイナーが徐に俺の口元へと菓子を運んできた。
少し塩気も利いた菓子で、確かに甘すぎず美味しい。
「美味しいか?」
「ええ。初めて食べました」
「そうか。じゃあもっと食べるといい」
そう言いながらニコニコと俺の口元へと菓子を運んでくる。
「ん…でも俺ばっかりだとシャイナーの分が…」
「それなら俺にも食べさせてくれないか?」
「いいですよ」
なんとなくそういうものなのかなと思い、同じように食べさせてみたら何故かそのままパクッと指まで口に含まれてペロッと舐められてしまった。
「ロキに食べさせてもらうのは最高だな」
食べられたと思ったものの、そんな事を言いながら悪戯っぽく笑うシャイナーに毒気を抜かれてしまう。
「ほら」
そう言いながらシャイナーがまた俺の口元へと菓子を運んできたので、そのまま食べてまたお返しに菓子を口元へと運び返した。
なんだか嬉しそうにまたパクッと口に含まれ指を舐められたので、もしかして遊びたいのかなと思ってそのまま指を増やして唾液を絡めるように舌を弄びくちゅくちゅと虐めてやった。
シャイナーは最初は驚いたような顔をしていたけど、気づけばされるがままだ。
頬を紅潮させ舌を出してうっとり俺の指に翻弄されている。
(レオ、早く来ないかな…)
暇だしいいかと思いながらそうやって手持ち無沙汰にシャイナーを嬲っていたら、気づけばマーシャルはじめ護衛騎士達が壁になって周囲からの視線を隠してくれていた。
「ん…んんぅ…」
「シャイナー?これに懲りたらあまり困らせないでくださいね?」
そろそろやめてあげようかなと思ってそう言ったら、何故か恍惚としたような表情で熱く見つめられて、もっとと言わんばかりに腕を掴まれてしまう。
「もっと?」
そう尋ねたらコクリと頷かれたので仕方がないなと思って溜息を吐いたら、『そこまで!』と言わんばかりにレオがリヒターと一緒に駆けつけてきた。
「こんな目立つ場所で何やってるの?!」
「え?お菓子の食べさせ合い?」
「……え?」
『本当に?』と首を傾げられたけど、別に嘘は吐いていない。
「後はシャイナーがふざけてきたから、ちょっとお仕置きしてただけですよ?それよりレオ。無事に合流できて良かった」
「……そうだな。先にリヒターに会えたら良かったんだけど、誰かさんの暗部と先に合流しちゃってさ?物凄く遠回りさせられたような気がしないでもないけど、結果的に合流できてよかったと言うべきなのかな?」
どこか冷ややかな声でそう言いながらシャイナーを睨みつけるレオ。
それに対しシャイナーはそっと口元を拭って笑みを取り繕うと、サラリと『合流できてよかった』とだけ言った。
「じゃあ、レオも合流できたことだし、他に行きたいところは?」
「あ、俺その香水に使ってる『孤高の王子』っていうバラを見たいんだけど、咲いてる場所はあるかな?」
ちょうどそんな話を城の庭園でした事を思い出したのか、レオがそんな風に提案してくる。
きっと鉱山ホテルの庭に植える花の候補にしたいんだろう。
「ええ。この間温室で見たので案内しますね」
方角は時計塔の位置から把握できるし、大体の位置もちゃんとまだ覚えている。
それにリヒターもいるから道を間違えたら教えてもらえるだろう。
そう思いながら連れ立って歩き、やがて以前来たバラ園へと辿り着いた。
「まだ咲いてるといいけど」
そう言いながらリヒターと見たあたりに足を運ぶと、だいぶ花は減ってはいたがまだちゃんと咲いていた。
「これがその『孤高の王子』です」
「へぇ…。ああ、確かにロキの香水と同じ香りだ。それに花も凛としてて綺麗だな」
「これはいいな。俺も城の庭に植えさせようか」
どうやら二人とも気に入ってくれたらしい。
それから一通りバラを見て回り、そろそろ帰る時間だからとレオが言ってきたので一度皆で城に戻ることに。
「シャイナーは帰らないのか?」
レオがどこか胡乱気な目で見遣りながらそう尋ねると、シャイナーは機嫌よく『折角だし今日は街の宿に泊まる』と言い出した。
どうやらガヴァムの街をもう少し楽しみたかったらしい。
「そう。街の宿に」
ならよかったとレオは言うけど、流石に隣国の王をそんな場所に泊らせるのもどうかと思い、一応声を掛けてみる。
「シャイナー。もし宿にこだわりがないなら城に泊って行かれては?その方がまだ警備も少しはマシだと思うので」
頼りにならない騎士ばかりだから無理にとは言わないけれどと口にしたら、『好意を是非有り難く受け取らせて欲しい』と言って承諾してもらえた。
レオは止めに入ったけど、厳重に警備させるからと一応言っておいた。
「本当に…レオにそんなに心配されるなんて、よっぽど騎士の信用が低いのかな」
「ロキ?俺が心配してるのは騎士の実力じゃ…いや、それも心配だけど」
「やっぱり。また抜き打ちで指導しに行かないと」
「うん。頑張って…ってそうじゃないから!ロキが心配なんだ!」
「俺が?」
「そう!」
「大丈夫だ、レオ。騎士が不甲斐ないならロキは俺が側で守るから」
「論点をわざとずらさないでくれるかな?それに一番危険な相手にそれを言われてもね?」
バチバチと火花が散ってるけど、いい加減兄のところに帰りたいしやめてほしい。
「早く兄上のところに帰りたいので、揉めないでくださいね?」
「どうしてそんなに人ごとっぽいかな?!」
レオが『深窓の令嬢じゃないんだからもっと警戒心を持とう?!』って言ってきたけど、深窓の令嬢は暇だからって人の口に指突っ込んで嬲らないと思うんだけどな?
客間は自室からも離れてるし、どうしてそこまで心配されるのか全くわからないから後でリヒターに聞いてみよう。
そんなことを考えながら皆で城へと戻り、ワイバーンで帰るレオを見送ってからシャイナーに部屋を案内し終わったので、ホッと息を吐いてソファで寛いでいたらリヒターに叱られてしまった。
「ロキ陛下?マーシャルからも聞きましたよ?何をやってるんですか!貴方は!」
「え?」
「先程の、シャイナー陛下を安易に城に招いたことといい、探しに行っていた間のことといい、迂闊にも程があります!」
「迂闊?」
でも他国の王の安全確保は特におかしいとは思わないし、心配があるとしたら騎士のレベルが心配ということくらいだから警備をしっかりするよう手配すればいいと思ったんだけど…。
待ってる間のことだって、シャイナーがふざけてきたからちょっと構ってただけで他意はない。
あれで反省してもうしてこないと思うし、いっそ良かったんじゃないかと思ってたくらいなんだけど…。
「そもそも、シャイナー陛下はロキ陛下がカリン陛下を抱いているところを見て惚れたんですよ?」
わかってますかと問われ、そう言えばそんなことも言っていたなと思い出す。
「つまり、彼はロキ陛下に嬲られたいんですよ?!」
確かにそう言われてみればその通りなのかもしれない。
(そう言えばあの時も、もっとって手を掴まれたな)
しまった。お遊びでもお仕置きでもなくご褒美になってしまったのかと今更ながら気づいてしまった。
でもそんなこともすっかり忘れてしまう程、シャイナーの攻め方はこれまで正攻法とも言えるものだったのだ。
「…確かに迂闊だったな」
「わかって頂けましたか?」
好意を示し、会話で親しくなり、巧みに行きたい場所へと誘導する。
多分彼は女性に凄くモテるタイプだろうとすぐにわかるほど、全てがスマートだった。
こちらに全く警戒心を抱かせないし、懐に入るのも上手で、常にリードしてくれて対応も的確。
嫌いになる女性などどこにもいないはず。
それこそ俺とは大違いだ。
だからこそ逆に俺なんかに本気とは思い難かったし、攫ったことは気の迷いで今は単にそれを挽回して国王同士仲良くしたいだけなんだろう程度に思っていた。
これまで全く嬲られたいと思っているように見えなかったから、俺はすっかり失念していたのだ。
「誠実でまともな人だと思っていたけど…中身は適度に変態要素が詰まったロールキャベツのような人だったのか…」
それはそれで初めて会うタイプで面白くはあるけど、やっと油断するなと言われた意味が分かった。
「…陛下の言っている意味が半分ほどしかわかりませんが、まあこれまで以上に警戒してくださるなら構いません。どうかご油断なく」
「わかった」
それならそれで対処法も一応思いつく。
要するにシャイナーと俺の攻防戦が始まっているのだと判断していいはず。
(これからは調教用の道具でも懐に忍ばせておくか)
そう思いながら俺はそっとほくそ笑んだのだった。
****************
※ロキの思考回路がわかる人ってどれくらいいるんだろうと思う今日この頃。
カリン以外との恋愛など全く頭になく、SとMの攻防戦が始まるのかとウキウキなロキと、ロキと恋愛関係になって可愛がって欲しいシャイナーのおかしなすれ違いが発生。
相変わらず明後日の方向にいってしまうロキにカリンはどう対処するのか…。
※次回はシャイナー視点です。
宜しくお願いします。
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