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158.他国からの客人㉔ Side.ロキ&カリン
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「ロキ!」
レオがユーフェミア王女達と一緒に挨拶へとやってきた。
ユーフェミア王女とカール王子はこの後従者の三人含めてレトロンへと帰国し、レトロン王へと今回の件を直接説明しに行ってくれるのだとか。
クスリの持ち込みの件での謝罪は書状でもらったものの、その後の暗殺者への対応が心配ではある。
けれどこれについてはレオがサクッと解決してくれた。
「実は昨日悪いとは思ったんだけど、テリーを狙って入り込んだ鼠を勝手に処分させてもらったんだ。ロキやユフィにまで危害を加えられたらたまったものじゃないし」
流石レオ。こう言う時もフットワークが軽い。
シャイナーもそうだけど、行動力があるって凄いなぁと思ってしまう。
面倒臭がり屋の俺には絶対に無理だ。
「ありがとう。でもそれなら帰りは別行動で?」
「いや。折角だし皆と一緒に『ヴァレトミュラ』で帰ろうと思って。ユフィはワイバーン移動が苦手だし、俺もこれを機にしっかり乗っておきたいから」
「なるほど。じゃあ気を付けて」
因みにガヴァムからミラルカに伸びているレールを走る車両は三ヵ国で話し合って『ヴァレトミュラ』と名付けられている。
名前の由来?凄く単純だ。
ガヴァムの『ヴァドラシア』、レトロンの『レトロン』、ミラルカの『ミュラーシア』。
それら三つの国の王族の名から頭文字を取って名付けられた。
普通に国名から取ることも考えられたが、『語呂が悪い』とあれこれ意見がまとまらず、最終的にレオの思い付きでそうなった。
表向きは末永く三ヵ国が手を取り合えますようにと決められたと公表されているし、まあ問題はないだろう。
因みにレオが自分と俺の苗字が似てるのに目をつけ、『ロレラシア』でもいいよと言っていたけど、それだとレトロンが入らないから却下と言っておいた。
『レ』も『ロ』も入ってるから大丈夫と言っていたけど、絶対にあれはロキの『ロ』とレオの『レ』だと思う。
冗談でもああいうのはやめてほしい。
あんなレオの婚約者になれるなんて本当にユーフェミア王女は凄い。
だいぶ振り回されるかもしれないけど、頑張ってほしいものだ。
「ロキ陛下!またすぐにこちらに来ますので、その際はよろしくお願いします!」
カール王子が物凄く好意的な眼差しで俺にそんなことを言ってきたけれど、別に来なくていい。
ここもしっかりお断りしておこう。
「暫く情勢不安になるかもしれないので、遊びに行くならミラルカにして下さいね。安全第一ですから」
「ありがとうございます」
「…………」
どうしてそんなにうっとりした眼差しで見てくるんだろう?
兄に『お前はまた誑し込んで!』みたいな目で睨まれるからやめてほしい。
キュリアス王子の件で凄く怒られたのに踏んだり蹴ったりだ。
あと、何故かテリーも名残惜しげな目を俺に向けてきている気がする。
クスリを持ち込んだ件を謝ろうと思ってくれてるのかな?
別にもういいのに。
何はともあれレオが全員引き取って連れて行ってくれたから、無事に見送りホッと息を吐くことができた。
サーディ卿やロッシュ卿にも笑顔で別れを告げて、次はフォルティエンヌの面々だ。
「ロキ陛下。昨夜は兄を部屋まで運んでくださったとか。ありがとうございました」
「いえ。たまたま通りかかってお手伝いしただけなので、お気になさらず」
エリザ王女が申し訳なさそうにそう言ってくれたものの、実際はキュリアス王子の策略でそうなったに等しい状況だったから何とも言えない気持ちになった。
まあ彼女はきっと何も知らないだろうし、ここは触れない方がいいだろう。
「ロキ陛下。その…昨日は醜態を晒し、申し訳なかった」
「いいえ。お加減は大丈夫ですか?」
「ああ。特には問題ない」
「よかったです。お気をつけてお帰り下さい」
「ありがとう。エリザとの縁談が頓挫したのは残念だったが、これから末永く友好的な付き合いをお願いしたい」
そう言って普通に握手を求められたので、素直に応じた。
これくらいなら大丈夫だろう。
思えば面倒臭い相手ではあったもののまだ真面な相手ではあった。
問題は解決したことだし、もらった魔道具も有難く有意義に使わせてもらおうと思う。
「さて。これでやっと全員帰せましたね」
「ああ」
やっと肩の荷が下りたと思いながら部屋に帰り息を吐いた俺だけど、何を思ったのか兄がいきなり抱きしめてきた。
「兄上?」
『お疲れ様』の抱擁かなと思っていたらそのまま背を撫で上げられて尻を撫でられた。
兄からこんな風に触れてくるのは非常に珍しい。
もしかして、おねだりだろうか?
もしそうだったら凄く嬉しい。
「兄上…それはお誘いですか?」
取り敢えず満面の笑みで聞いてみる。
「え?いや。違うぞ?」
「どう考えてもお誘いでしょう?」
それ以外に何か理由なんてあるんだろうか?
「兄上…今日は抱いてもいいですか?」
兄が求めてくれるならすぐにでも抱きたい────。
だからギュッと抱きしめ返しながらそう言ったのに、兄は真っ赤になりながら本当に違うんだと慌てていた。
可愛い顔してあそこを固くしてるのに認めないなんて…新手の焦らしプレイだろうか?
興奮して益々抱きたくなるから困ってしまう。
(兄上は煽るのが上手いな)
いつの間にそんなことを覚えたんだろう?
「昨日は俺が抱かれる側だったし、抱いてあげられませんでしたからね。沢山可愛がってあげますよ?」
「そ…それは嬉しいが、本当に誘ったわけじゃ…」
「本当に?」
「……ああ。ちょっとロキの感度が知りたくて…」
「感度?」
なんでそんなことを思ったのかわからなくて、つい首を傾げてしまう。
「な、撫で回してもいいか?」
「別に兄上ならいいですけど」
兄ならいくらでも撫で回してくれても構わないし、どうせそのままお持ち帰りするから問題はない。
「う~ん……ここか?違うな。これなら…。ダメか…」
色々試しながらそう言ってさわさわとあちこち触ってくるから、つい笑いが漏れてしまう。
(凄く可愛い…)
こんな兄を見ているとどうしても興奮してきて仕方がなかった。
「ふふっ。兄上。可愛すぎて食べちゃいたくなりますね。沢山煽ってくれていいですよ?」
「あ、煽っ?!」
「俺を煽って激しくしてもらいたいんでしょう?」
「~~~~っ!リ、リヒター!」
空気を読んで部屋の外で護衛をしようとドアノブに手を掛けたリヒターを、兄が慌てて引き止める。
「はい?」
「お前、ちょっとロキを触ってみろ」
「…え?」
「兄上?」
「いいから!検証だ、検証!」
そう言って兄は何を思ったのかリヒターに俺を撫で回させた。
「え…、あっ…!んっ」
ピクンと身を震わせ思わず飛び出た声に兄が悔しそうに舌打ちする。
「チッ…」
「兄上?」
「カーライル!お前、やってみろ!」
「俺ですか?!」
「そうだ!」
「兄上?何プレイですか?」
「えぇと…ロキ様、命令なのでちょっと失礼しますね?」
「カーク…っ、んん…っ」
「あれ?俺でもちょっと感じてくれる…?」
カークは不思議そうだけど、昨日の今日でこの二人に触られたら普通に感じるだろう。
文句があるなら昨日筆プレイで散々開発してきたリヒターに言って欲しいと思った。
「なんで俺だとダメなんだ!」
兄が悔しそうに叫ぶ。
「兄上…?結局何がしたかったんです?」
ただの公開セクハラ?
「お前が感じるかどうかを見たかったんだが?」
どうやら相手次第で変わるのかを兄は知りたかったらしい。
「キュリアス王子に尻を撫でられてた時は全然感じてなかっただろう?」
「そりゃそうですよ。あんな事があった人ですよ?ちゃんと自衛しています。触り方が上手い下手の問題じゃないんですよ?」
基本的に心と感覚を切り離してたら痛み以外だって感覚は鈍くなる。
特にあんなことがあった相手だ。
自衛でそうするに決まっている。
「じゃあ俺は?」
「兄上に触られるのは凄く嬉しくて抱きたい気持ちでいっぱいになるので、そっちに意識がいってるだけですけど?寧ろ煽られてる感が半端ないです。抱かせてください」
兄のことは大好きだから当然感覚はフルオープンだけど、抱かれたい気持ちより抱きたい気持ちの方が遥かに大きいからそこは諦めてほしい。
「…………じゃあリヒターとカーライルは?」
「普通に感じさせられてしまいますけど、何か?」
「リヒターは兎も角、カーライルは抱かれる側だろ?!」
「そんなの関係ありませんよ。感じるものは感じるんです」
信頼するこの二人には別に心を閉ざす必要はないし、感度を上げられた今なら感じてしまっても特におかしくはないと思うんだけど、兄的には理解不能らしい。
「人によって変わるっておかしいだろ?!」
「おかしくありませんよ。普通だと思います」
ちゃんと正直にそう答えたものの、兄は納得がいかないというような顔で可愛く怒っていた。
もう攫ってもいいだろうか?
***
【Side.カリン】
客人を全員送り出し、さてと思いながら気になっていたことを検証したら、まさかの結果が出て悔しい思いでいっぱいになってしまった。
感じる相手がリヒターだけだったならやっぱりライバルだと言い切ることができたのに、何故カーライルまで…!
「納得がいかない…!」
だから俺を攫っていこうとするロキを無理矢理執務室に追いやり、その隙にリヒターに胸の内を吐き出した。
「俺もロキをこれでもかと感じさせてみたい!」
リヒターより、カーライルより、自分が一番ロキを気持ちよくさせてやりたい。
それができないのはどう考えても悔し過ぎる。
「昨日感じさせていたじゃありませんか」
リヒターが慰めの言葉をくれるが、ちっとも慰めになりそうにない。
「あれはお前が底上げしてたからだろう?!」
勿論抱かれる方が好きなのは好きだが、だからと言ってこれはない。
「ロキを独り占めしたい…!」
「わざわざ宣言しなくても暫くロキ陛下はカリン陛下としか寝ませんよ」
「何故そう言い切れる?」
「昨日散々虐めてしまいましたから。多分暫くは誰にも抱かれたくないと思っているはずなので、カリン陛下が抱こうとしても上手く躱されてしまうと思いますよ?」
「……え?」
「ロキ陛下は翻弄されるより翻弄する方がお好きな方ですから。俺は絶対に抱かれる側にはなりませんし、安心して独り占めしてください」
「そ、そうか…」
なんだかやっぱり納得はいかないが、独り占めできるのなら…いい、のか?
昨日の件が特殊だっただけだし、ここは割り切ってしまった方がいいのかもしれない。
そもそもがロキを抱けるのは俺とリヒターの二人だけ。
それ以上を認めるつもりは俺には一切ないし、リヒターだって許さないだろう。
それなら必要以上に警戒などせず、今回のようなパターンで攫われないようにだけ気をつけよう。
「リヒター。今回のようなことにならないようロキ周辺はこれまで以上に気を付けてくれ」
「御意」
取り敢えず仕事を片付けつつ大臣達と諸々隣国の件で話し合いをしておこうか。
これからが大変なのだから。
そうして一通り主立った役職の者達と情報を共有し、10日ほど経ったところでメルケ国から使者がやってきたのだった。
レオがユーフェミア王女達と一緒に挨拶へとやってきた。
ユーフェミア王女とカール王子はこの後従者の三人含めてレトロンへと帰国し、レトロン王へと今回の件を直接説明しに行ってくれるのだとか。
クスリの持ち込みの件での謝罪は書状でもらったものの、その後の暗殺者への対応が心配ではある。
けれどこれについてはレオがサクッと解決してくれた。
「実は昨日悪いとは思ったんだけど、テリーを狙って入り込んだ鼠を勝手に処分させてもらったんだ。ロキやユフィにまで危害を加えられたらたまったものじゃないし」
流石レオ。こう言う時もフットワークが軽い。
シャイナーもそうだけど、行動力があるって凄いなぁと思ってしまう。
面倒臭がり屋の俺には絶対に無理だ。
「ありがとう。でもそれなら帰りは別行動で?」
「いや。折角だし皆と一緒に『ヴァレトミュラ』で帰ろうと思って。ユフィはワイバーン移動が苦手だし、俺もこれを機にしっかり乗っておきたいから」
「なるほど。じゃあ気を付けて」
因みにガヴァムからミラルカに伸びているレールを走る車両は三ヵ国で話し合って『ヴァレトミュラ』と名付けられている。
名前の由来?凄く単純だ。
ガヴァムの『ヴァドラシア』、レトロンの『レトロン』、ミラルカの『ミュラーシア』。
それら三つの国の王族の名から頭文字を取って名付けられた。
普通に国名から取ることも考えられたが、『語呂が悪い』とあれこれ意見がまとまらず、最終的にレオの思い付きでそうなった。
表向きは末永く三ヵ国が手を取り合えますようにと決められたと公表されているし、まあ問題はないだろう。
因みにレオが自分と俺の苗字が似てるのに目をつけ、『ロレラシア』でもいいよと言っていたけど、それだとレトロンが入らないから却下と言っておいた。
『レ』も『ロ』も入ってるから大丈夫と言っていたけど、絶対にあれはロキの『ロ』とレオの『レ』だと思う。
冗談でもああいうのはやめてほしい。
あんなレオの婚約者になれるなんて本当にユーフェミア王女は凄い。
だいぶ振り回されるかもしれないけど、頑張ってほしいものだ。
「ロキ陛下!またすぐにこちらに来ますので、その際はよろしくお願いします!」
カール王子が物凄く好意的な眼差しで俺にそんなことを言ってきたけれど、別に来なくていい。
ここもしっかりお断りしておこう。
「暫く情勢不安になるかもしれないので、遊びに行くならミラルカにして下さいね。安全第一ですから」
「ありがとうございます」
「…………」
どうしてそんなにうっとりした眼差しで見てくるんだろう?
兄に『お前はまた誑し込んで!』みたいな目で睨まれるからやめてほしい。
キュリアス王子の件で凄く怒られたのに踏んだり蹴ったりだ。
あと、何故かテリーも名残惜しげな目を俺に向けてきている気がする。
クスリを持ち込んだ件を謝ろうと思ってくれてるのかな?
別にもういいのに。
何はともあれレオが全員引き取って連れて行ってくれたから、無事に見送りホッと息を吐くことができた。
サーディ卿やロッシュ卿にも笑顔で別れを告げて、次はフォルティエンヌの面々だ。
「ロキ陛下。昨夜は兄を部屋まで運んでくださったとか。ありがとうございました」
「いえ。たまたま通りかかってお手伝いしただけなので、お気になさらず」
エリザ王女が申し訳なさそうにそう言ってくれたものの、実際はキュリアス王子の策略でそうなったに等しい状況だったから何とも言えない気持ちになった。
まあ彼女はきっと何も知らないだろうし、ここは触れない方がいいだろう。
「ロキ陛下。その…昨日は醜態を晒し、申し訳なかった」
「いいえ。お加減は大丈夫ですか?」
「ああ。特には問題ない」
「よかったです。お気をつけてお帰り下さい」
「ありがとう。エリザとの縁談が頓挫したのは残念だったが、これから末永く友好的な付き合いをお願いしたい」
そう言って普通に握手を求められたので、素直に応じた。
これくらいなら大丈夫だろう。
思えば面倒臭い相手ではあったもののまだ真面な相手ではあった。
問題は解決したことだし、もらった魔道具も有難く有意義に使わせてもらおうと思う。
「さて。これでやっと全員帰せましたね」
「ああ」
やっと肩の荷が下りたと思いながら部屋に帰り息を吐いた俺だけど、何を思ったのか兄がいきなり抱きしめてきた。
「兄上?」
『お疲れ様』の抱擁かなと思っていたらそのまま背を撫で上げられて尻を撫でられた。
兄からこんな風に触れてくるのは非常に珍しい。
もしかして、おねだりだろうか?
もしそうだったら凄く嬉しい。
「兄上…それはお誘いですか?」
取り敢えず満面の笑みで聞いてみる。
「え?いや。違うぞ?」
「どう考えてもお誘いでしょう?」
それ以外に何か理由なんてあるんだろうか?
「兄上…今日は抱いてもいいですか?」
兄が求めてくれるならすぐにでも抱きたい────。
だからギュッと抱きしめ返しながらそう言ったのに、兄は真っ赤になりながら本当に違うんだと慌てていた。
可愛い顔してあそこを固くしてるのに認めないなんて…新手の焦らしプレイだろうか?
興奮して益々抱きたくなるから困ってしまう。
(兄上は煽るのが上手いな)
いつの間にそんなことを覚えたんだろう?
「昨日は俺が抱かれる側だったし、抱いてあげられませんでしたからね。沢山可愛がってあげますよ?」
「そ…それは嬉しいが、本当に誘ったわけじゃ…」
「本当に?」
「……ああ。ちょっとロキの感度が知りたくて…」
「感度?」
なんでそんなことを思ったのかわからなくて、つい首を傾げてしまう。
「な、撫で回してもいいか?」
「別に兄上ならいいですけど」
兄ならいくらでも撫で回してくれても構わないし、どうせそのままお持ち帰りするから問題はない。
「う~ん……ここか?違うな。これなら…。ダメか…」
色々試しながらそう言ってさわさわとあちこち触ってくるから、つい笑いが漏れてしまう。
(凄く可愛い…)
こんな兄を見ているとどうしても興奮してきて仕方がなかった。
「ふふっ。兄上。可愛すぎて食べちゃいたくなりますね。沢山煽ってくれていいですよ?」
「あ、煽っ?!」
「俺を煽って激しくしてもらいたいんでしょう?」
「~~~~っ!リ、リヒター!」
空気を読んで部屋の外で護衛をしようとドアノブに手を掛けたリヒターを、兄が慌てて引き止める。
「はい?」
「お前、ちょっとロキを触ってみろ」
「…え?」
「兄上?」
「いいから!検証だ、検証!」
そう言って兄は何を思ったのかリヒターに俺を撫で回させた。
「え…、あっ…!んっ」
ピクンと身を震わせ思わず飛び出た声に兄が悔しそうに舌打ちする。
「チッ…」
「兄上?」
「カーライル!お前、やってみろ!」
「俺ですか?!」
「そうだ!」
「兄上?何プレイですか?」
「えぇと…ロキ様、命令なのでちょっと失礼しますね?」
「カーク…っ、んん…っ」
「あれ?俺でもちょっと感じてくれる…?」
カークは不思議そうだけど、昨日の今日でこの二人に触られたら普通に感じるだろう。
文句があるなら昨日筆プレイで散々開発してきたリヒターに言って欲しいと思った。
「なんで俺だとダメなんだ!」
兄が悔しそうに叫ぶ。
「兄上…?結局何がしたかったんです?」
ただの公開セクハラ?
「お前が感じるかどうかを見たかったんだが?」
どうやら相手次第で変わるのかを兄は知りたかったらしい。
「キュリアス王子に尻を撫でられてた時は全然感じてなかっただろう?」
「そりゃそうですよ。あんな事があった人ですよ?ちゃんと自衛しています。触り方が上手い下手の問題じゃないんですよ?」
基本的に心と感覚を切り離してたら痛み以外だって感覚は鈍くなる。
特にあんなことがあった相手だ。
自衛でそうするに決まっている。
「じゃあ俺は?」
「兄上に触られるのは凄く嬉しくて抱きたい気持ちでいっぱいになるので、そっちに意識がいってるだけですけど?寧ろ煽られてる感が半端ないです。抱かせてください」
兄のことは大好きだから当然感覚はフルオープンだけど、抱かれたい気持ちより抱きたい気持ちの方が遥かに大きいからそこは諦めてほしい。
「…………じゃあリヒターとカーライルは?」
「普通に感じさせられてしまいますけど、何か?」
「リヒターは兎も角、カーライルは抱かれる側だろ?!」
「そんなの関係ありませんよ。感じるものは感じるんです」
信頼するこの二人には別に心を閉ざす必要はないし、感度を上げられた今なら感じてしまっても特におかしくはないと思うんだけど、兄的には理解不能らしい。
「人によって変わるっておかしいだろ?!」
「おかしくありませんよ。普通だと思います」
ちゃんと正直にそう答えたものの、兄は納得がいかないというような顔で可愛く怒っていた。
もう攫ってもいいだろうか?
***
【Side.カリン】
客人を全員送り出し、さてと思いながら気になっていたことを検証したら、まさかの結果が出て悔しい思いでいっぱいになってしまった。
感じる相手がリヒターだけだったならやっぱりライバルだと言い切ることができたのに、何故カーライルまで…!
「納得がいかない…!」
だから俺を攫っていこうとするロキを無理矢理執務室に追いやり、その隙にリヒターに胸の内を吐き出した。
「俺もロキをこれでもかと感じさせてみたい!」
リヒターより、カーライルより、自分が一番ロキを気持ちよくさせてやりたい。
それができないのはどう考えても悔し過ぎる。
「昨日感じさせていたじゃありませんか」
リヒターが慰めの言葉をくれるが、ちっとも慰めになりそうにない。
「あれはお前が底上げしてたからだろう?!」
勿論抱かれる方が好きなのは好きだが、だからと言ってこれはない。
「ロキを独り占めしたい…!」
「わざわざ宣言しなくても暫くロキ陛下はカリン陛下としか寝ませんよ」
「何故そう言い切れる?」
「昨日散々虐めてしまいましたから。多分暫くは誰にも抱かれたくないと思っているはずなので、カリン陛下が抱こうとしても上手く躱されてしまうと思いますよ?」
「……え?」
「ロキ陛下は翻弄されるより翻弄する方がお好きな方ですから。俺は絶対に抱かれる側にはなりませんし、安心して独り占めしてください」
「そ、そうか…」
なんだかやっぱり納得はいかないが、独り占めできるのなら…いい、のか?
昨日の件が特殊だっただけだし、ここは割り切ってしまった方がいいのかもしれない。
そもそもがロキを抱けるのは俺とリヒターの二人だけ。
それ以上を認めるつもりは俺には一切ないし、リヒターだって許さないだろう。
それなら必要以上に警戒などせず、今回のようなパターンで攫われないようにだけ気をつけよう。
「リヒター。今回のようなことにならないようロキ周辺はこれまで以上に気を付けてくれ」
「御意」
取り敢えず仕事を片付けつつ大臣達と諸々隣国の件で話し合いをしておこうか。
これからが大変なのだから。
そうして一通り主立った役職の者達と情報を共有し、10日ほど経ったところでメルケ国から使者がやってきたのだった。
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