3 / 79
本編
2.追う者と逃げる者
しおりを挟む
【Side.ジークフリート】
逃げた第五王子クロヴィスを捜索隊を組んで探す。
夕食のための食料を得るという目的から考えるに行き先は街か山だろうと目星をつけた。
城で殺された女がクロヴィスは草を食べていたと言っていたし、金銭を持っていない可能性は高そうだと考え、すぐさま山狩りを命じる。
これなら行き倒れていようとどこかで怯えて震えていようとすぐに見つかるはずだ。
そう思っていたのに……。
「いない…だと?」
かなり大規模に捜索隊を向かわせたにも関わらず、王子の行方は杳として知れないとはどういう事なのか。
普通に考えておかしい。
(もしや協力者でもいるのか?)
それなら街に出た可能性もあったのかも知れない。
「捜索隊を分けて街も虱潰しに探せ!」
このまま逃して誰かに利用され、担ぎ上げられても困る。
そう思いながらつぶさに街の方も捜索させたというのに、結局クロヴィスはいつまで経っても見つけることはできなかった。
***
【Side.クロヴィス】
「うわ~…。物々しいな」
街まで辿り着き、認識阻害魔法を継続させたまま身を潜める。
なんとかこのまま逃げおおして別の街に移動しておきたい。
このままでは職に就くなんて到底できないだろう。
(認識阻害してたら接客業なんて無理だしな)
向こうが俺の顔を知っているとは思えないから、高級そうな衣服で探している可能性はある。
でも絶対ではない。
俺が王族だと言うことを知っているのは当然だけど、それと同時に俺が碌な扱いを受けていないことも知っていて当然だからだ。
なら街の者達にはこう聞けばいい。
『見慣れない者が来なかったか?』
俺は山には毎日入っていたけど、街まで来るのは本当に極たまにだ。
厄介事に見舞われないよう隠密行動が常だったし、覚えてくれている人がいるとは思えない。
だからこんなタイミングでほいほい冒険者登録に行くわけにもいかないし、薬草を売りに行くのも難しそうだった。
仕方がないので商店に入ってちょっとだけ認識阻害魔法を解除し、フード付きのマントやちょっとした食料などの買い物を済ませてすぐに街を出た。
街を出る際検問とかも当然していたけど、認識阻害魔法を使いながら団体に紛れてしまえば何とでもなったし、脱出は順調。
後はのんびり歩きながら隣街へと向かうだけだ。
途中で商人を見掛けたから護衛に雇ってもらって魔物も倒し、全く怪しまれることなく隣街へと移動する。
けれどその街も当然戦争の爪後はあるわけで、ここも活気があるとはとても言えない状況だった。
仕方がないとはいえ、怒りがないと言えば嘘になる。
(本当にあいつらは自分達のことばかりだったな)
俺は隣国よりも自分の身内へと腹を立てていた。
俺があんな場所で耐えていたのはそれでもまだここにいるような庶民の生活より幾分かマシだったからだ。
そうでなければとっくの昔にあんな場所から出て行って一人で生活をしていたと思う。
戦争が続くと民も疲弊する。
物品の流通だって滞る。
作物だって奪われたりすれば市場に出回る分は限られてくるし、人々は貧しくなるばかり。
それでも俺の親兄弟は贅沢に暮らしていたのだ。
民を見返ることなく戦争を続け、大した施策をとることなく無理を押し通そうとしたからこんな風にローナ帝国に攻め滅ぼされることになったのだと思う。
民を見下し虐げてきた当然の報いだ。
「はっ!ざまあみろ」
これでこの国は戦争を終え、ローナ帝国に取り込まれることとなる。
少しは民の生活もこれからマシになっていくだろうか?
なったらいいなと言うのが今の俺の正直な気持ちだった。
(ま、だからっておとなしく捕まる気はないけど)
俺だって王族の端くれだから捕まったら殺されるに決まってる。
でも俺は俺の人生をこれからちゃんと満喫してから死にたいんだ。
だから逃げる。
(簡単に捕まったりするもんか)
そうして俺は街から街を転々と渡り歩きながら折を見て冒険者登録を行い、とうとうローナ帝国とは別の隣国ガーナードへと逃げおおせたのだった。
逃げた第五王子クロヴィスを捜索隊を組んで探す。
夕食のための食料を得るという目的から考えるに行き先は街か山だろうと目星をつけた。
城で殺された女がクロヴィスは草を食べていたと言っていたし、金銭を持っていない可能性は高そうだと考え、すぐさま山狩りを命じる。
これなら行き倒れていようとどこかで怯えて震えていようとすぐに見つかるはずだ。
そう思っていたのに……。
「いない…だと?」
かなり大規模に捜索隊を向かわせたにも関わらず、王子の行方は杳として知れないとはどういう事なのか。
普通に考えておかしい。
(もしや協力者でもいるのか?)
それなら街に出た可能性もあったのかも知れない。
「捜索隊を分けて街も虱潰しに探せ!」
このまま逃して誰かに利用され、担ぎ上げられても困る。
そう思いながらつぶさに街の方も捜索させたというのに、結局クロヴィスはいつまで経っても見つけることはできなかった。
***
【Side.クロヴィス】
「うわ~…。物々しいな」
街まで辿り着き、認識阻害魔法を継続させたまま身を潜める。
なんとかこのまま逃げおおして別の街に移動しておきたい。
このままでは職に就くなんて到底できないだろう。
(認識阻害してたら接客業なんて無理だしな)
向こうが俺の顔を知っているとは思えないから、高級そうな衣服で探している可能性はある。
でも絶対ではない。
俺が王族だと言うことを知っているのは当然だけど、それと同時に俺が碌な扱いを受けていないことも知っていて当然だからだ。
なら街の者達にはこう聞けばいい。
『見慣れない者が来なかったか?』
俺は山には毎日入っていたけど、街まで来るのは本当に極たまにだ。
厄介事に見舞われないよう隠密行動が常だったし、覚えてくれている人がいるとは思えない。
だからこんなタイミングでほいほい冒険者登録に行くわけにもいかないし、薬草を売りに行くのも難しそうだった。
仕方がないので商店に入ってちょっとだけ認識阻害魔法を解除し、フード付きのマントやちょっとした食料などの買い物を済ませてすぐに街を出た。
街を出る際検問とかも当然していたけど、認識阻害魔法を使いながら団体に紛れてしまえば何とでもなったし、脱出は順調。
後はのんびり歩きながら隣街へと向かうだけだ。
途中で商人を見掛けたから護衛に雇ってもらって魔物も倒し、全く怪しまれることなく隣街へと移動する。
けれどその街も当然戦争の爪後はあるわけで、ここも活気があるとはとても言えない状況だった。
仕方がないとはいえ、怒りがないと言えば嘘になる。
(本当にあいつらは自分達のことばかりだったな)
俺は隣国よりも自分の身内へと腹を立てていた。
俺があんな場所で耐えていたのはそれでもまだここにいるような庶民の生活より幾分かマシだったからだ。
そうでなければとっくの昔にあんな場所から出て行って一人で生活をしていたと思う。
戦争が続くと民も疲弊する。
物品の流通だって滞る。
作物だって奪われたりすれば市場に出回る分は限られてくるし、人々は貧しくなるばかり。
それでも俺の親兄弟は贅沢に暮らしていたのだ。
民を見返ることなく戦争を続け、大した施策をとることなく無理を押し通そうとしたからこんな風にローナ帝国に攻め滅ぼされることになったのだと思う。
民を見下し虐げてきた当然の報いだ。
「はっ!ざまあみろ」
これでこの国は戦争を終え、ローナ帝国に取り込まれることとなる。
少しは民の生活もこれからマシになっていくだろうか?
なったらいいなと言うのが今の俺の正直な気持ちだった。
(ま、だからっておとなしく捕まる気はないけど)
俺だって王族の端くれだから捕まったら殺されるに決まってる。
でも俺は俺の人生をこれからちゃんと満喫してから死にたいんだ。
だから逃げる。
(簡単に捕まったりするもんか)
そうして俺は街から街を転々と渡り歩きながら折を見て冒険者登録を行い、とうとうローナ帝国とは別の隣国ガーナードへと逃げおおせたのだった。
129
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。
キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、
ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。
国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚――
だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。
顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。
過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、
気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。
「それでも俺は、あなたがいいんです」
だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。
切なさとすれ違い、
それでも惹かれ合う二人の、
優しくて不器用な恋の物語。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる