【本編完結】敵国の王子は俺に惚れたらしい

オレンジペコ

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本編

2.追う者と逃げる者

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【Side.ジークフリート】

逃げた第五王子クロヴィスを捜索隊を組んで探す。
夕食のための食料を得るという目的から考えるに行き先は街か山だろうと目星をつけた。
城で殺された女がクロヴィスは草を食べていたと言っていたし、金銭を持っていない可能性は高そうだと考え、すぐさま山狩りを命じる。
これなら行き倒れていようとどこかで怯えて震えていようとすぐに見つかるはずだ。
そう思っていたのに……。

「いない…だと?」

かなり大規模に捜索隊を向かわせたにも関わらず、王子の行方は杳として知れないとはどういう事なのか。
普通に考えておかしい。

(もしや協力者でもいるのか?)

それなら街に出た可能性もあったのかも知れない。

「捜索隊を分けて街も虱潰しらみつぶしに探せ!」

このまま逃して誰かに利用され、担ぎ上げられても困る。

そう思いながらつぶさに街の方も捜索させたというのに、結局クロヴィスはいつまで経っても見つけることはできなかった。


***


【Side.クロヴィス】

「うわ~…。物々しいな」

街まで辿り着き、認識阻害魔法を継続させたまま身を潜める。
なんとかこのまま逃げおおして別の街に移動しておきたい。
このままでは職に就くなんて到底できないだろう。

(認識阻害してたら接客業なんて無理だしな)

向こうが俺の顔を知っているとは思えないから、高級そうな衣服で探している可能性はある。
でも絶対ではない。
俺が王族だと言うことを知っているのは当然だけど、それと同時に俺が碌な扱いを受けていないことも知っていて当然だからだ。
なら街の者達にはこう聞けばいい。

『見慣れない者が来なかったか?』

俺は山には毎日入っていたけど、街まで来るのは本当に極たまにだ。
厄介事に見舞われないよう隠密行動が常だったし、覚えてくれている人がいるとは思えない。
だからこんなタイミングでほいほい冒険者登録に行くわけにもいかないし、薬草を売りに行くのも難しそうだった。
仕方がないので商店に入ってちょっとだけ認識阻害魔法を解除し、フード付きのマントやちょっとした食料などの買い物を済ませてすぐに街を出た。

街を出る際検問とかも当然していたけど、認識阻害魔法を使いながら団体に紛れてしまえば何とでもなったし、脱出は順調。
後はのんびり歩きながら隣街へと向かうだけだ。

途中で商人を見掛けたから護衛に雇ってもらって魔物も倒し、全く怪しまれることなく隣街へと移動する。
けれどその街も当然戦争の爪後はあるわけで、ここも活気があるとはとても言えない状況だった。
仕方がないとはいえ、怒りがないと言えば嘘になる。

(本当にあいつらは自分達のことばかりだったな)

俺は隣国よりも自分の身内へと腹を立てていた。
俺があんな場所で耐えていたのはそれでもまだここにいるような庶民の生活より幾分かマシだったからだ。
そうでなければとっくの昔にあんな場所から出て行って一人で生活をしていたと思う。

戦争が続くと民も疲弊する。
物品の流通だって滞る。
作物だって奪われたりすれば市場に出回る分は限られてくるし、人々は貧しくなるばかり。

それでも俺の親兄弟は贅沢に暮らしていたのだ。
民を見返ることなく戦争を続け、大した施策をとることなく無理を押し通そうとしたからこんな風にローナ帝国に攻め滅ぼされることになったのだと思う。
民を見下し虐げてきた当然の報いだ。

「はっ!ざまあみろ」

これでこの国は戦争を終え、ローナ帝国に取り込まれることとなる。
少しは民の生活もこれからマシになっていくだろうか?
なったらいいなと言うのが今の俺の正直な気持ちだった。

(ま、だからっておとなしく捕まる気はないけど)

俺だって王族の端くれだから捕まったら殺されるに決まってる。
でも俺は俺の人生をこれからちゃんと満喫してから死にたいんだ。
だから逃げる。

(簡単に捕まったりするもんか)

そうして俺は街から街を転々と渡り歩きながら折を見て冒険者登録を行い、とうとうローナ帝国とは別の隣国ガーナードへと逃げおおせたのだった。


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