【本編完結】敵国の王子は俺に惚れたらしい

オレンジペコ

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本編

11.探る者と探られる者

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【Side.ジークフリート】

クロヴィスと二人になり、馬を調達して城へと向かうことに。
当然だがクロヴィスに逃げられたくはないから一頭に二人で乗ることにした。
クロヴィスからは凄く抵抗されたが、別々がいいなら逃げられないよう国境の兵士に声を掛けて、周囲を囲ませての移動になるぞと言ってやったら大人しくなった。
そこまでされるくらいなら相乗りの方がずっとマシだと思ったのだろう。
すっぽりと腕の中に収まるクロヴィスの存在が嬉しくて仕方がない。
城には連絡を入れておいたし、ゆっくり帰っても大丈夫だからその間に沢山愛でよう。

ここに来るまででクロヴィスの為人ひととなりを見てきたが、クロヴィスは良くも悪くも真っ直ぐな男だった。
魔物が出れば進んで倒しに向かい、怪我人が出れば無償で癒し、危険なものから乗客達を守っていた。
本人は雇われた者の義務だからと言うが、明らかに報酬以上の働きをしていたように思う。
そんなクロヴィスに、俺は気づけばすっかり心奪われてしまっていた。
ずっと写真でしか知らなかった相手が、俺の中で鮮やかに色づいて目が離せなくなったのだ。

馬車の旅は終わり、今日からは二人きり。
婚約者にと望む気持ちは強いが、父から了承を得るにはそれなりに既成事実を作っておく必要がある。
現状ではクロヴィスは俺との結婚よりも幽閉になる可能性の方が高いと言えた。
だからこそ確実な手を打つ必要があり、それにはまずクロヴィスの意識改革が必要だと思った。

俺はクロヴィスにとって全く知らない敵国の王子でしかない。
その分クロヴィスの警戒心は強いから、なんとかその警戒を解く必要がある。
だからまずは積極的にクロヴィスとの会話に時間を割くことにした。

冒険者としての活動はどんな感じで、どんな魔物と戦ったのか。
これまで食べてきた料理でどういったものが気に入ったのか。
三年の間、どんな風に暮らしてきたのか。
好きなもの嫌いなもの、なんでも聞いてみた。
答えが返ってくるものも返ってこないものもあったが、概ね答えてもらえたように思う。

まあ比較的スムーズに話してもらえたのは、初っ端に反抗的な態度を取られた際にキスマークをつけてやったからだろう。
反抗的な態度を取るということは、この先逃げる可能性は十分あるなと思って魔力で再度マーキングしただけなのだが、思いのほか素直にさせることができた。
意外と押しに弱いな。
もしかしたらそのせいで余計にあのストーカーに勘違いをさせたのかもしれない。

取り敢えず今はもっともっとクロヴィスのことを知りたい。
それと同じくらい俺のことも知ってもらいたい。
純粋にそう思った。


***


【Side.クロヴィス】

ローナ帝国に到着し、ジークフリートと行動を共にすることになった。
大人しくついて行くことを決めたのは俺だけど、馬に相乗りなんて聞いてない。
敵国の王子と一緒に同じ馬に相乗りなんて断固拒否だろうと思ったけど、馬を別々にするなら兵に周囲を囲ませるなんて言われたから、そうなるくらいならと諦めることに。
大きめの軍馬みたいな馬だから男二人で乗っても平気だと言うが、そういう問題ではないと思う。
いくら逃げられたくないからと言ってちょっとこれはどうなんだろう?
すっぽり抱きかかえられるように乗せられて、恥ずかしくて仕方がなかった。

正直俺はジークフリートが何を考えているのかさっぱりわからないんだ。
ついて行くことを決めたのは俺だけど、よく考えたら色々おかしい気がする。
ほぼ初対面の俺と形ばかりの結婚を提案することに何か意味があるんだろうか?
普通敵国の王子を見つけたら問答無用で連行して牢屋に放り込むものなんじゃ…?
自由が欲しい俺へのせめてもの慈悲なのかもしれないけど、どれくらい信用していいのかさっぱり読めなかった。

そんな俺にジークフリートは移動中、色々探りを入れてきた。
主には俺のこれまでの逃亡生活中の冒険者活動についてだ。
当然このあたりを知りたい気持ちはわかる。
だって次に俺に逃げられた時の探す場所の参考になるだろうから。
だから本当は言いたくなかったんだ。
でも言葉を濁して口を噤もうとした途端、こいつはいきなり俺の首筋に吸い付いてきた。
いきなりだったから本気でびっくりして、思わず叫んでしまう。

「なっ?!何すんだよ?!」

でもジークフリートは意味深に笑うばかり。
何を考えているかわからないからこそ、その笑みが怖かった。
だから仕方なく俺は素直に答えることにしたのだ。
どうせ俺が冒険者だったってことはもうバレてるんだし、当り障りのない質問にくらいは答えても大丈夫だろうと割り切ることに。
するとジークフリートもそんな俺に気を良くして、自分のことも話してくれた。
年はやっぱり俺と同じ年で、第二王子ではあるけど今は軍部の統括なんかもこなしているらしい。
他国への牽制や視察、魔物対策などもしているらしく、今回旧ブラッドリアの港町に来ていたのも視察が目的だったのだとか。

そんなタイミングに行きあたるなんて本当に俺はツイていない。
でもそこでハッと俺は我に返り、店が自分の持ち物だと言うことと、それを放置してきてしまったから何とかしたい旨を伝えてみた。
そうしたらジークフリートはまだ港町に滞在している者もいるから対処してやると言って、魔法で連絡を取ってすぐに対応してくれた。
その姿に『ちゃんと話を聞いてくれて、即対応までしてくれるなんて、実は結構いい奴なのでは?』とちょっと考え、すぐさまブンブンと頭を振って否定する。

(こいつは敵国の王子だぞ?!こんな簡単に心を許すな、俺!)

でも有難かったのは事実なので、一応ちゃんと礼は伝えておいた。

「その…ありがとう」
「どういたしまして」

その笑みは、小憎らしいほど何故か眩しく映った。


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