【本編完結】敵国の王子は俺に惚れたらしい

オレンジペコ

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お城生活編

46.計画を立てる者と悪寒が走る者

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【Side.公爵令嬢】

「そう…。王太子妃に元Aランク冒険者の護衛がついたの」

その報告を受けて私はフッと薄く笑う。
それくらい想定の範囲内ではあった。

裏から手を回し足跡を辿れないよう二重三重に対策を立て王太子妃の命を狙ったけれど、いずれも失敗に終わってしまった。
あと一歩だったのに本当に残念でならない。
イレギュラーだった亡国の王子さえいなければ計画は完璧だったのに…。

後手後手に回っている王族がどう動こうとそう簡単に尻尾を掴ませる気はないけれど、あの亡国の王子だけは厄介だと思った。
できればそちらを排除した方が楽だろうか?
けれど報告によると彼の王子はガーナード王国で冒険者稼業に勤しみ、三年でAランク冒険者にまでなったという実力者。
下手に手を出すとこちらがやられてしまうだろう。

「やっぱりこれしかないかしら?」

王太子妃についたAランク冒険者の男は亡国の王子の元ペットらしい。
王子に捨てられたにも関わらず、しつこく付き纏っていると報告書には書かれてあった。

「利用すべきを利用し、あっさり切り捨てたクロヴィス王子は本当に腐っても王族の方ね。そこにしがみ付こうなんて、その男も無駄なことを…」

けれどだからこそその執着心を利用してやることもできるのだ。
敵の敵は味方と言うし、ここはひとつ上手く使ってやろうと思う。
まずは都合のいい駒と接触を図り、さり気なくそちらの方から顔を繋がせておこうか。

「王太子妃の護衛の男について更に詳細に調べて、望みの物を用意しておくように」
「……かしこまりました」
「うふふ。楽しくなってきたわ」



そして暫くして彼が亡国の王子を連れ去る計画を立てていることを知ってほくそ笑んだ。

「レイクウッドにいる転移魔法の使い手…ね」

わざわざレイクウッドにまで行かなくても転移魔法の使い手は探せばこの国にもいるはずだ。
その者をまずは確保しておこう。
他に用意しておくのはロマンチックな話が大好きな貴族の女性。
協力させるには最高の人材となるはず。
別にアマリリス王女でも構わないのだが、彼女は暴走しがちだから使いにくい。
もっと使いやすい駒はいくらでもいるし、王女と違って使い捨てが出来る方が便利だ。
いざという時には罪も着せやすいし、こちらにまで被害も出にくい。

「さて…。護衛の男は上手くクロヴィス様を攫って王宮内に混乱をもたらしてくれるかしら?」

まずは適当な者を使い、王太子妃を害すように見せかけた罠を仕掛け、あの男に手柄を立てさせよう。
そこであの男を暴走させてそちらに目が向いたところで本懐を遂げる。

混乱に乗じて王太子妃を害すのは簡単な話だ。
彼女付きの侍女の情報は握っているから、誰の弱みを使ってこちらの駒にするかも既に大体決めている。
侍女の実家経由でそれとなく指示を出させるから、間違ってもこちらに疑いの目が向くことはない。

(王太子妃の座…いいえ。王妃の座は私のものよ?)

そう考えながら私は艶やかに笑った。


***


【Side.クロヴィス】

「ハクシュンッ!」

急な悪寒に襲われて俺は思い切りくしゃみをしてしまった。
なんだか物凄く嫌な予感がしてたまらない。

そんな俺にジークが心配そうに声を掛けて来て、温めてやると言いながら抱き締めてきた。
すっごく温かい。
でもこれ、こいつの方が熱がないか?
熱を測ってやろうとグイッと胸元を引っ張り額をコツンと合わせると、やっぱりちょっと熱があるように思ったから、回復魔法で熱を取ってやることに。

「ジーク。風邪気味の時はちゃんと言えよ?治してやるから」

回復魔法を唱えた後、そう言って笑ったら思いっきり唇を奪われた。
なんだどうした?!

「ん…んんんっ!」

抗議の声を上げようとしても全然放してくれない。

「ジ、ジーク…」
「クロヴィス。好きだ」
「へ?!」

抱く時以外でも真っ直ぐにそう言ってくれるのはいいんだけど────。

「今日もベッドでここに沢山子種を注いでもいいか?」

昨日ベッドでした時に散々注いだのが気に入ったのか、そんなセクハラまがいの事を下腹を撫でられながら言われて俺は見事に赤面してしまった。

「そ、そういうこと言うの、やめろよな」
「相思相愛なのにツレないな」
「ぐっ…」

そう。これまで身の内に刻まれたただの婚姻の証的位置づけに過ぎなかった婚姻契約の魔法が、昨日何故か光ったからジークと一緒に詳しく文献を調べたら、互いに想い合うようになったら新しい効果が付与され、その過程で一度光るのだと書かれてあった。
その付与される効果というのは単に【どれだけ離れていようと双方の位置がわかる】というだけのものなんだけど、それよりも何よりもジークが喜んだのが【互いに想い合うようになったら】の点だった。

確かに昨日はこれまでと違って、ちょっと素直になってしまった気はした。
きっとあれが悪かったんだと思う。
でもすごく気持ちに応えたくなったんだからしょうがないじゃないか。

「お前に好きだと思ってもらえて凄く嬉しい」

俺の気持ちを知ったせいでジークがぐいぐい迫ってくるから、俺は恥ずかしくてしょうがないんだが?!

「す…好きだけど、限度っていうものはあると思う」

あんまり調子に乗られても困るし、ちゃんと言うべきことは言っておこう。
そう思って口にしたのに、ジークは俺が照れてるだけだと思ったのか、甘々な顔で幸せそうに笑うばかり。
頼むからちょっとは本気に取ってくれ。

「沢山注いだらまた光って、変化があるかもしれない。今度は孕めるようにならないか試したいな」

そんな怖いことを口にするのはやめろ。
本当にそんな効果が付与されたらどうする気だ。
どうせならもっと画期的な付与が行われて欲しいところだ。
ストーカーに襲われそうになったら弾き飛ばすとか、そんな感じで。
だから俺は素直にそれを口にしてみた。

「そういうのより、嫌いな相手を近寄らせない的な効果が欲しい」
「ああ。それは一理あるな。元々托卵防止効果で夫である俺以外中には出せないようになっているから、可能性としてはあるかもしれない」
「本当に他の奴が俺に突っ込めない仕様になればいいのに。俺、ジーク以外無理だと思うし」
「クロヴィス…」

ジークは感激したように俺を見てるけど、本当だからな?
だって元々ノーマルだし、他の男なんて無理無理。
特にラナキスなんて本気で論外だ。
ストーカー怖い。
襲われたら全力で魔法ぶっ放して逃げるからな?
それこそ最初にジークに宿屋に連れ込まれた時みたいな感じで。

その頃から考えるに、やっぱり過程って大事だと思う。
比較的好印象で知り合って仲良くしていたラナキスには今は嫌悪感しかないけど、マイナススタートのジークとは逆にこんな関係になってるし、人生何があるかわからないもんだなとしみじみ感じてしまう。

このまま幸せになれたらいいなと思いながら、俺はジークをそっと見つめたのだった。


****************

※ベッドでのあれこれは次回のジーク視点で。(R-18)

※ちなみに公爵令嬢がラナキスを元ペットと称しているのは、クロヴィスがちょっと親しみを込めて接した程度で尻尾を振って懐いてつきまとったと報告書に書いてあったからです。彼女から見ればラナキスはチョロい奴という認識。
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