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第三章 コーリック王国編(只今恋愛堪能中)
閑話3.息子を落とした王子 Side.国王
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ルマンドがやっとコーリックへと帰ってきた。
ここに帰ってくるまでフォルクナーに寄ってくると言っていたから、メイビス王子と結局どうなったのか気になって気になって仕方がなかった。
そもそもあちらが勝手に惚れているだけなので、ストレートのルマンドが落とされるはずはないのではないかと冷静になった頭で何度も考えた。
だからこそ妻にも言わなかったのだが…。
ディナーの席で旅の話をしている時も、遊学の話を口にした時もルマンドの様子は以前と何ら変わらなかった。
寧ろ友情を深めてきましたという印象だ。
このあたりはケインから以前聞いた話と一致している。
やはりメイビス王子はルマンドを落とせなかったということでいいのだろうか?
試しにメイビス王子の誕生祭の話を振っても態度は何も変わらない。
友人の一人として行きたいとでも言わんばかりの態度だ。
あれからメイビス王子についての情報も集めてみた。
やはり見目麗しい王子で、女性に人気が高いらしい。
けれど自分に群がる女性達には一切靡かず、しっかりとした考えの元勉学などに励んでいたとか。
立派な為人だと誰もが絶賛する王子とのことだ。
そんな王子ならルマンドが気に入って友達になりたいと思うのも無理はない。
だがルマンドは妻に似てロマンチストで、綺麗なものにも惹かれる傾向があるから万が一というのもあり得なくはなかった。
逆ならまだしも向こうがルマンドに惚れているのなら色々手を尽くしたことだろう。
落ちてしまった可能性もなくはない。
もし二人が付き合うことになったとしたらメイビス王子の誕生祭で婚約を発表するのが一番良い時期ではある。
それまで知りませんでしたとなったら慌ただしく準備をする羽目になるのはこちらだ。
そういうこともあって二人の関係がどうなっているのかをはっきりさせておきたかった。
だから直球で尋ねたのだが────。
なんと『友達からと返事をした』と返ってきたではないか!
これは告白に対してそう返したという何よりの証拠だ。
(ルマンド…報告くらいはきちんとしてくれ)
帰ってから時間はあっただろうにどうしてこういうところは抜けているのだろう?
もしかしてすぐに別れる可能性もあるかもしれないからとかそういう変な感性が働いたのか?
それでも国と国とのことだから一言話して欲しかった。
何はともあれ二人は付き合うことになったのだ。
それならそれで一応最低限の婚約の準備は整えておかないといけない。
早速この後フォルクナーの皇帝と話し合って打ち合わせをしておかなくては…。
ああ、その前に遊学の件も話しておくべきだろう。
もうこうなっては反対なんてできる者はどこにもいないだろう。
本人は軽く考えてそうだが、一度捕まえた者を逃がす様な事は向こうだってしないはずだ。
あんな風に予め皇帝経由で話を持ってきているのだからそれだけは間違いない。
だからそう結論づけてあちらと連絡を取って詳細を詰めたその夜────妻には全てを話すことにした。
「リモーネ。ルマンドはフォルクナーの第一王子メイビス殿と来年早々婚約することになった」
それは妻には衝撃的な言葉だったらしく、蒼白な顔で肩をガクガク揺さぶられどういうことだと問い質された。
泣かれると予想していただけに思わぬ反応に対しどうしたらいいのかわからない。
政略結婚は絶対に許しませんよとまで言われたので、そうではないと伝えるのに苦労した。
「実はな……」
あちらの皇帝から事前にメイビス王子がルマンドに惚れたから猶予が欲しいと言われたこと、メイビス王子からも丁寧な手紙をもらったことを包み隠さず話した上で、ルマンドの気持ち次第だと思っていたことを伝える。
「それで、どうやらメイビス王子からの告白に対してルマンドは一先ず友達からと答えた様なのだ」
つまりは交際自体を了承したということ。
「だから今すぐという訳ではなく取り敢えず遊学に行かせて、メイビス王子の誕生祭で婚約を発表してはどうかと話がまとまってな」
そんな話をしていると、リモーネはふるふると震えながらキッと涙の溜まった目でこちらを見上げ、ルマンドに直接聞いてくると言って部屋を飛び出していった。
多分この後ルマンドに言い含められて泣きながら帰ってくるのだろう。
そうしたら精一杯慰めてやろうと思いながら妻の帰りを待った。
一時間後、帰ってきた妻は意外なことにどこかうっとりとした表情で戻ってきた。
「あれはルマンドちゃんが落ちるのも仕方がないわ。だってメイビス王子はロマンチックが何たるかを熟知しているんですもの。それに告白の言葉も押しつけがましくなくて素晴らしいの一言よ。旅の間もずっと傷心のルマンドちゃんを支えてくれていたみたいだし…とても紳士的で優しい男性だわ。しかも同性だから一緒に戦うことまでできるのよ?文句のつけようもないわね。愛情だけじゃなく友情も一緒に育めるなんて素敵だわ。政略結婚かと勘違いした自分が恥ずかしいくらいよ」
ああ…その言葉の数々だけでルマンドがどう落とされたのかが嫌でもわかる。
ルマンドはロマンチストだし、きっとそこを突かれて相当素晴らしい演出の中告白されたのだろう。
「しかもルマンドちゃんたらメイビス王子に金のイヤーカフを贈ったらしいのよ!ラブラブね!」
そしてそれを買った店で自分達にもお土産を買ってくれたのだとリモーネは揃いのブレスレットを取り出し渡してくれた。
「これが貴方の分。こちらが私よ」
そう言って見せられたブレスレットは互いの瞳色を現した石がはめられた普段使いにぴったりのもの。
「今度これをつけて城下を散策なんていかが?」
妻からの嬉しいデートの誘いに少し下降気味だった気分が一気に上昇する。
「ああ。ついでにもう一人子供を作るか?ルマンドがいなくなったら寂しいだろう?」
「まあっ!貴方ったら」
自分ももう若くはないのにと言って笑ってくるけれど妻はいつまでも可愛いし、まだまだ若い。
それに機嫌よく笑ってくれる姿は昔から自分をどこまでも癒してくれるのだ。
願わくばルマンドにとってのメイビス王子も同じようであればと思った。
「ルマンドには幸せになってもらいたいな」
そうして夫婦で仲良く微笑み合ったのだった。
ここに帰ってくるまでフォルクナーに寄ってくると言っていたから、メイビス王子と結局どうなったのか気になって気になって仕方がなかった。
そもそもあちらが勝手に惚れているだけなので、ストレートのルマンドが落とされるはずはないのではないかと冷静になった頭で何度も考えた。
だからこそ妻にも言わなかったのだが…。
ディナーの席で旅の話をしている時も、遊学の話を口にした時もルマンドの様子は以前と何ら変わらなかった。
寧ろ友情を深めてきましたという印象だ。
このあたりはケインから以前聞いた話と一致している。
やはりメイビス王子はルマンドを落とせなかったということでいいのだろうか?
試しにメイビス王子の誕生祭の話を振っても態度は何も変わらない。
友人の一人として行きたいとでも言わんばかりの態度だ。
あれからメイビス王子についての情報も集めてみた。
やはり見目麗しい王子で、女性に人気が高いらしい。
けれど自分に群がる女性達には一切靡かず、しっかりとした考えの元勉学などに励んでいたとか。
立派な為人だと誰もが絶賛する王子とのことだ。
そんな王子ならルマンドが気に入って友達になりたいと思うのも無理はない。
だがルマンドは妻に似てロマンチストで、綺麗なものにも惹かれる傾向があるから万が一というのもあり得なくはなかった。
逆ならまだしも向こうがルマンドに惚れているのなら色々手を尽くしたことだろう。
落ちてしまった可能性もなくはない。
もし二人が付き合うことになったとしたらメイビス王子の誕生祭で婚約を発表するのが一番良い時期ではある。
それまで知りませんでしたとなったら慌ただしく準備をする羽目になるのはこちらだ。
そういうこともあって二人の関係がどうなっているのかをはっきりさせておきたかった。
だから直球で尋ねたのだが────。
なんと『友達からと返事をした』と返ってきたではないか!
これは告白に対してそう返したという何よりの証拠だ。
(ルマンド…報告くらいはきちんとしてくれ)
帰ってから時間はあっただろうにどうしてこういうところは抜けているのだろう?
もしかしてすぐに別れる可能性もあるかもしれないからとかそういう変な感性が働いたのか?
それでも国と国とのことだから一言話して欲しかった。
何はともあれ二人は付き合うことになったのだ。
それならそれで一応最低限の婚約の準備は整えておかないといけない。
早速この後フォルクナーの皇帝と話し合って打ち合わせをしておかなくては…。
ああ、その前に遊学の件も話しておくべきだろう。
もうこうなっては反対なんてできる者はどこにもいないだろう。
本人は軽く考えてそうだが、一度捕まえた者を逃がす様な事は向こうだってしないはずだ。
あんな風に予め皇帝経由で話を持ってきているのだからそれだけは間違いない。
だからそう結論づけてあちらと連絡を取って詳細を詰めたその夜────妻には全てを話すことにした。
「リモーネ。ルマンドはフォルクナーの第一王子メイビス殿と来年早々婚約することになった」
それは妻には衝撃的な言葉だったらしく、蒼白な顔で肩をガクガク揺さぶられどういうことだと問い質された。
泣かれると予想していただけに思わぬ反応に対しどうしたらいいのかわからない。
政略結婚は絶対に許しませんよとまで言われたので、そうではないと伝えるのに苦労した。
「実はな……」
あちらの皇帝から事前にメイビス王子がルマンドに惚れたから猶予が欲しいと言われたこと、メイビス王子からも丁寧な手紙をもらったことを包み隠さず話した上で、ルマンドの気持ち次第だと思っていたことを伝える。
「それで、どうやらメイビス王子からの告白に対してルマンドは一先ず友達からと答えた様なのだ」
つまりは交際自体を了承したということ。
「だから今すぐという訳ではなく取り敢えず遊学に行かせて、メイビス王子の誕生祭で婚約を発表してはどうかと話がまとまってな」
そんな話をしていると、リモーネはふるふると震えながらキッと涙の溜まった目でこちらを見上げ、ルマンドに直接聞いてくると言って部屋を飛び出していった。
多分この後ルマンドに言い含められて泣きながら帰ってくるのだろう。
そうしたら精一杯慰めてやろうと思いながら妻の帰りを待った。
一時間後、帰ってきた妻は意外なことにどこかうっとりとした表情で戻ってきた。
「あれはルマンドちゃんが落ちるのも仕方がないわ。だってメイビス王子はロマンチックが何たるかを熟知しているんですもの。それに告白の言葉も押しつけがましくなくて素晴らしいの一言よ。旅の間もずっと傷心のルマンドちゃんを支えてくれていたみたいだし…とても紳士的で優しい男性だわ。しかも同性だから一緒に戦うことまでできるのよ?文句のつけようもないわね。愛情だけじゃなく友情も一緒に育めるなんて素敵だわ。政略結婚かと勘違いした自分が恥ずかしいくらいよ」
ああ…その言葉の数々だけでルマンドがどう落とされたのかが嫌でもわかる。
ルマンドはロマンチストだし、きっとそこを突かれて相当素晴らしい演出の中告白されたのだろう。
「しかもルマンドちゃんたらメイビス王子に金のイヤーカフを贈ったらしいのよ!ラブラブね!」
そしてそれを買った店で自分達にもお土産を買ってくれたのだとリモーネは揃いのブレスレットを取り出し渡してくれた。
「これが貴方の分。こちらが私よ」
そう言って見せられたブレスレットは互いの瞳色を現した石がはめられた普段使いにぴったりのもの。
「今度これをつけて城下を散策なんていかが?」
妻からの嬉しいデートの誘いに少し下降気味だった気分が一気に上昇する。
「ああ。ついでにもう一人子供を作るか?ルマンドがいなくなったら寂しいだろう?」
「まあっ!貴方ったら」
自分ももう若くはないのにと言って笑ってくるけれど妻はいつまでも可愛いし、まだまだ若い。
それに機嫌よく笑ってくれる姿は昔から自分をどこまでも癒してくれるのだ。
願わくばルマンドにとってのメイビス王子も同じようであればと思った。
「ルマンドには幸せになってもらいたいな」
そうして夫婦で仲良く微笑み合ったのだった。
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