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第三章 コーリック王国編(只今恋愛堪能中)

55.ポーション作りをしてみた俺

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寝る前に母が部屋へと飛び込んできた時には驚いたけど、話の内容がメイビスとのことだったので包み隠さず一部始終を話すとすごく満足した様子で、俺からのお土産も受け取ってすんなりと帰ってくれた。
ここで反対されると流石に俺も困ってしまうところだったから非常に助かった。
ロマンチック万歳!

それから三日。俺は本を読んだり剣の稽古をしたり勉強をしてみたりしたけれど、正直言って暇だった。
メイビスには手紙も書いたし、追加のおすすめ本も受け取って読んだりもしたけど、やっぱり旅の日々を思い出すと少し物足りなく感じる。
学園も卒業してしまったし、やることと言ったら将来に向けた勉強くらいのもの。
それすらほとんど終えているし、外に出てギルドで依頼をこなしていた方がずっといいと思うんだけど……。

「いけません」

近衛の隊長の方が出てきて物凄くいかつい顔で外出を禁じられた。
ケインにそっと目線を向けると今は諦めろと言わんばかりに小さく頷いてくる。

「そもそもルマンド様は近衛騎士をなんだとお思いですか?王族を守るために存在する者達を撒いてまで外へと出る。これは近衛を馬鹿にしているとしか思えません」

ぐっ!正論が胸に刺さる。

「よろしいですね?冒険者ギルドの方にも既に話は通していますのでもし万が一にでも脱走なさったら……」

わかってますねとギラッと鋭い目を向けながら怖い笑みを浮かべないで欲しい。
きっとギルドから隊長に連絡が行くようになっているんだろう。
最悪だ。

(でも暇なんだよな……。そうだ!)

「じゃあ、城から出なかったらいいんだな?」
「はい。書庫でも鍛錬所でも構いませんので近衛をつけてご自由にお過ごしください」
「わかった。じゃあケインをつけて退出してくれ」
「わかりました。ケイン、ルマンド様を決して外に出さないように。わかったな」
「はい」

そしてやっと隊長が出て行ったので俺はケインにちょっとだけ頼みごとをした。

「早速で悪いんだけど、ポーションを作るための道具が欲しい」
「ああ、なるほど。それならやりがいがありますね」

ケインは俺がフォルクナーでポーション作りを見学していたのも知っているから話が非常に通りやすい。

「ついでに信頼のおける影をまた二、三人用意してもらいたいんだけど、できるか?」
「ええ。そのくらい簡単です」
「じゃあ頼んだ」

例のポーションを値上げしている大臣の周辺を更に詳しく調べさせて、俺がポーションをギルドに渡すのに邪魔が入らないかを探りたかった。
まあそれよりもまずは俺にポーションが作れるのかという話だけど。
これで作れなかったら何の意味もないし。

それから俺はケインが用意してくれた道具と薬草を使って基本のポーションを作りまくった。
魔力を込める量を試行錯誤して、一番薬草の効能を引き出せる量を模索する。
始めは失敗。二度目は半分成功。三度目は失敗。
多すぎても少なすぎても失敗に終わるからしっかりとメモを取りながら感覚を掴んでいく。

(なるほどな)

細かい魔力調整が必要だからこれは学生がバイト気分でできるようなものではない。
かなり魔力のコントロールが熟練してないと難しいのだ。

(ま、俺の得意分野だから多少難しくてもコツさえつかめば普通に量産できるけど)

一般的なポーションを作成する際は、肩を刺し貫かれた傷を治す際にヒールに込める魔力量と同量の魔力を込めるのがベストっと。
もう少し少なくても一応ポーションはできるけど、効果は当然落ちてしまう。
それを考えるとベストの量の魔力を込めるべきだろう。

「じゃあこの要領で毒消しポーションも作っていくか」

基本のポーション作りのお陰でなんとなくコツも掴めたので、ケインに頼んで追加の薬草を買ってきてもらい引き続き毒消しポーション作りに取り掛かる。
もともとヒールやディスペルの練度が高いからかポーションと毒消しポーションはすんなりと作ることが出来た。
明日はマナポーションにも挑戦してみようかな?

そんなことを思いながらベッドに入ったものの、新しいことに挑戦した反動か目が冴えて眠れなかった。

「眠れない…」

どうしたものかと思い、そっとメイビスから借りた本を手に取る。
今読んでるのは王女と別の国の姫が恋に落ちる話。
姫が国際交流で城に滞在する中、城の中でちょっとしたゴタゴタが起こるんだけどそこを王女が上手く立ち回って解決しつつ姫を助けるのだ。
女同士だとこうなるんだと思いながらちょっと知らない世界に好奇心を刺激される。
これの一つ前に読んだ話もよかったし、メイビスの本のチョイスはどうしてこんなにツボを外さないんだろう?
気づけばあっという間に読み切ってしまっていた。
最初は友情から始まってるはずなのに凄く自然な流れで恋愛が始まっているため、なんだか俺とメイビスを少しだけ重ねてしまう。

密やかな逢瀬。触れるだけの軽いキス。手を握り合い「心はずっと貴女だけのもの」と言うシーンなんかはちょっとグッときた。

(キス…か)

こんな風に友情っぽい関係でもキスはするんだな。
それに秘密の逢瀬って言うのもちょっと憧れる。
一つ前に読んだ本にも出てきたよな。あれは皇帝と騎士だったけど。割とよくある設定なのかな?
それなら俺もやってみたいな……。

(……行ったら困らせるかな?)

隊長から城から出るなと言われたけど、あっちも城だしギリギリセーフだよな?
問題はメイビスがどう思うかというだけの話だ。
交際中の相手とは言え他国の王子がいきなり自室に転移してきたらマナー違反だって怒るかもしれない。
告白の返事をするのにメイビスの部屋の居室に一度入ったからできることなんだけど、やっぱりダメかな?
一応お伺いを立ててみようか?ダメならダメで諦めよう。
そう思って俺はそっと別れ際に渡された通信石を手に取った。



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