【完結】第二王子の失恋〜傷心旅行先で出会ったのはイケメン王子でした〜

オレンジペコ

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第四章 フォルクナー帝国編Ⅱ(只今恋愛&婚約期間堪能中)

82.見当違いの噂が流れた俺

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「マズいですね……」

暑さも和らいできたある日、ケインがそんなことを言い出した。
俺とメイビスの仲は益々良くなっているのに、何故かレターニアとの噂が全く消えないらしい。

「え~…昨日もメイビスとは仲良くしてたのに……」
「どうやら仲の良い友人同士として受け取られているようですね」
「仲の良い友人同士はレターニアとで、恋人はメイビスなんだけどな…」

どうしてそんな噂になってしまったんだろう?
メイビスの視線は相変わらず甘いのに、皆どこを見ているのか。

「もう会われるのをやめられては如何ですか?」
「タニアと?」
「ええ」
「でも、多分普通に向こうからやってくると思うけど?」
「では話し合って、私経由で連絡事項のやり取りをなさるとか…」
「う~ん…それくらいしないと噂は消えないのかな。ちょっとメイビスにも相談してみようか」
「話は通しておくべきでしょうね」
「わかった。じゃあ今夜メイビスの部屋に行くのを許可してくれるよな?」
「構いませんよ」

ケインに公式に許可を取ったことだし、今日は堂々とメイビスの部屋に行こうと思い、早速侍従に伝言を頼んでおいた。

メイビスからの返事はすぐに来て、昼も一緒に食べないかと誘われた。
ついでに午後から少し仕事も手伝ってほしいらしい。
最近メイビスが少しずつ俺に回す仕事を増やしてきている。
どうやら将来皇太子の隣に立つ者として仕事を覚えていって欲しいようなのだ。
別にそれはそれで構わないので以前よりも積極的に手伝うようにしている。
ここで暮らしていくならその方が早く慣れていいだろうと思っての事だ。




「ルマンド!」

嬉しそうなメイビスに俺も片手をあげて笑顔で応える。
こんなに仲が良いのに、どうして周りには伝わらないのかな…?
食事を一緒に摂って仕事も一緒にして、たまにいつものメンバーでダンジョンに行く。
ここ最近はそんな日々だ。
ダンジョンはちょっとずつ下の層へと向かっていて、メイビスが張りきってレベル上げに励み、つい最近転移魔法もマスターした。
どうもいつも俺に転移魔法を頼むのが申し訳なかったらしい。
「ルマンドがのぼせてもいつでも運べるように」とか冗談半分に言われたけど、恥ずかしいからやめて欲しい。
せめてダンジョンに一緒に行きたかったからとか言ってくれたらいいのに。

「今日はどうしたんだ?珍しいお誘いだから嬉しくて早く顔を見たくなった」

そんなセリフを蕩けそうな顔で言わないでくれ。どうしたらいいのかわからなくなるから。

「ちょっと噂話の件で相談したかっただけだから、それは夜に。あ、そうそう。それと、忘れてたけどコーリックに一度連絡を取らないといけないんだった。もしかしたら一度帰るかもしれないからそれも伝えておこうかな」
「え?」

急な話でちょっと驚かれたけど、そう言えばもうすぐ誕生日だったと今思い出したんだよな…。

「もうすぐ19才になるから、念のため向こうで行事がないか確認しておかないと…」
「……ルマンド。誕生日って3月とかじゃないのか?」
「俺?10月生まれ。もしかして勘違いしてた?」
「ああ」
「そっか。ゴメン」

学園を卒業して成人したとか言ったかもしれないから勘違いしたのかも…。
コーリックでは王侯貴族は18才且つ学園を卒業してやっと成人になるからそう言っただけなんだ。他意はない。

「もう少し早く言って欲しかった…」
「本当にゴメン。そう言えばメイビスは誕生祭当日が誕生日なのか?」
「いや。誕生日自体は誕生祭の10日くらい前かな」
「…!そっか。じゃあその日は一緒にお祝いしよう」

やった!それならプロポーズに最適だ!
いい情報が得られたと俺は気分が上昇するのを感じる。
後はシチュエーションを整えるだけ。

やっぱりこの間ヒースクリフからレイクウッド王国の情報を仕入れておいてよかった。
恋愛至上主義の国レイクウッドは母の出身国なだけあってロマンチックな人がとっても多い国だ。
実はヒースクリフもその国出身なんだってこの間聞いて、こっそりプロポーズの相談をしたら海上クルーズとかはどうだと勧められたんだよな。
あちらの国ではポピュラーらしいけど、フォルクナーだときっと斬新だと思う。
コーリックに良い船がないかをまず調べて、なかったらレイクウッドで手配しようと今色々計画中なのだ。

(楽しみ…!)

メイビスが驚く顔を早く見てみたい。


******


その日の夜、俺は早速メイビスにレターニアの件を相談した。

「つまり、レターニアとの噂を早く一掃したいと?」
「そう。だって俺が付き合ってるのはメイビスなんだし、メイビスだって嫌だろ?」

俺だったら嫌だ。
だけどそう言った俺にメイビスはふわっと笑って、手を引き寄せてあっという間に腕の中に閉じ込めてきた。

「ルマンド…キスしてもいいか?」
「聞かなくてもいつも勝手にするくせに」
「そんなことはないだろう?ちゃんと空気は読んでるつもりだし」

メイビスが雰囲気を作るのが凄く上手いから流されてるだけなんだけどな…。

「んっ…」

ディープキスにも随分慣れて、俺から抱きついてしまうこともある今日この頃。
気持ち良過ぎるからつい夢中になってしまう。

お風呂はたまに温泉を予約して一緒に入るし、抜きあうのはまだ数えるほどだけど何度かした。
だから俺達はちゃんと恋人同士のはず。
レターニアとの噂話は早めに失くしたい。
ちなみに部屋のお風呂でしないのは万が一を考えてのことだ。
婚約前にそんなことをしてたなんてケインに知られたら絶対に監視が厳しくなるだろうし…。

「ルマンド…婚約したら抱いてもいいか?」
「え?」
「早くお前を愛したくて仕方がないんだ」
「えっ…。あ……そっか。俺がそっちなんだよな。体格的に。えっと……よ、予習しておく…な?」

恥ずかしいけどわからないことだらけだからそう口にしたのに、メイビスは予習はいらないから一緒に覚えていこうと笑顔で言ってくれた。



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