【完結】竜王は生まれ変わって恋をする

オレンジペコ

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【本編】

17.ラスターとの時間 Side.ディオン

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領地に戻ってきてから当初の予定通り積極的にラスターの側にいることにした。

竜王陛下が素敵過ぎてついつい頻繁に見惚れてしまうのは許してほしい。
その分張り切って一人の時間は勉強時間に当てた。
仕事だけじゃなく勉強と称してお茶の時間もラスターは独り占めだ。
俺がプレゼントしたカップも使ってくれているし、笑顔だって沢山見せてもらえる。
プライベートなことも言語の練習と称せば何でも聞くことができた。

ラスターの両親は街で働いていて、二人とも冒険者ギルド所属。
父親は魔物解体の仕事をしていて、ラスターにもその業は伝授されているらしい。
だから剣だけじゃなくナイフも得意なんですよと教えてくれた。
母親の方は薬師の助手ということだが、ちゃんと薬師免許の準一級を持っていて人に教えることもできるらしい。
その恩恵もラスターはちゃんと受けていて、ポーションを作ることもできるんだとか。
ラスターから『俺からのお近づきの印です』と貰った上級ポーションはそんな母親に作り方を教わって作ってくれたお手製らしく、嬉しすぎたので『一生使わず肌身離さず持ち歩きます』と言ったら驚いたように『またなくなったらいくらでも作りますから、ちゃんと使ってください』と言われてしまった。残念。
でもまた作ってくれるというなら本当に必要になったらちゃんと使おう。

他にも知ったことは沢山ある。
シフォンケーキが好きなんて知らなかったし、甘すぎないものの方が好きというのも料理長に聞くまで知らなかった。
魚よりも肉が好きで、特に肉がホロホロになるまで煮込んだビーフシチューが好きらしい。
飲み物は紅茶やコーヒーよりはハーブティーが好きで、ペパーミントティーは特に頭がすっきりするのがお気に入りなんだとか。
こうして好きな相手のことを一つ一つ知っていけるのはなんて幸せなんだろう?

ついでに自分のことも沢山伝えられたし、まさに一石二鳥だ。
俺のことも沢山知ってほしいし、共通点があったら嬉しいし、本当にいいことしかない。
態度には出さないように気をつけてはいるが、毎日が幸せ過ぎて浮かれっぱなしだ。

好きです。愛してます。一生側に居させてください。

そんな思いが漏れてしまったらきっとドン引きされるだろうし、ちゃんと気を付けておかないと。




さて、今日も楽しいティータイムが終わってしまった。
仕事も今日のところはひと段落しているし、少しだけラスターにもらったこれまでのテキストを復習してから父の仕事見学に行こうかなと思案する。
そんな中、先程受け取った皇太子からの手紙がカサリと手元でその存在を主張した。

皇太子は俺が長らく領地を離れていたのを心配して手紙を送ってくれていて、その中身は『環境が変わって体調を崩していないか?』『周囲の者に虐められてはいないか?』『王都とは違って手に入らないものも多いだろう?何か送ろうか?』というような感じだ。
『王都が恋しくなったらいつでも戻ってこい。近衛騎士の椅子はいつでも用意してやる』とも。
まあこれまでずっと一緒だったからきっと寂しいのだろう。
辞めたのも急だったし、余計にかもしれない。
でも残念ながら元竜人の中では友人よりもツガイ優先なのだ。
申し訳ないが俺が王都に帰ることは一生ないと思う。
それこそラスターが王都に住むとでも言い出さない限りは。

「さて。今日は何を書いてこられたのかな」

近況報告の可能性が高いから別に今ここで急いで読むこともないのだが、なんとなくいつもと手触りが違ったため開けてみることに。

「パーティーの招待状?」

入っていたのは今度王城で開かれる予定の国際親善パーティーの招待状だった。
学園時代の他の友人達も沢山来るから、気負わずにラスターと一緒に来てくれと書かれてある。
友人の一人として俺が好きになった相手を見てみたい気持ちがあるのだとか。
あれだけ探し続けていた俺が選んだ相手なのだから他の友人達も当然知りたいだろうとも。

(でもな…)

自慢したい気持ちはある。
でもラスターの中では俺はまだ領主様の息子でしかない。
恋愛関係にさえなっていない現状で下手に公の場に引っ張り出したら嫌がられないだろうか?

(うん。やめておこう)

サクッと決めてお断りの返事を送る。
なのに何故かそれから暫くしてラスター用と思わしき正装一式と共に皇太子からまた手紙が送られてきた。

『わかった。まだ恋仲ではないのだな。そういうことならちゃんと配慮しておくから安心してほしい。俺も国賓の相手で忙しいだろうし、少ししか会えないと思うが二人が来てくれるのを楽しみにしている。無理を言う詫びとして平民の彼用に正装一式を用意させてもらった。どうか役立ててほしい』

「…………ラスターへの服は俺が最初に贈りたかったのに」

皇太子は何をしてくれているんだろう?
俺のツガイに勝手に贈り物を用意するなんて、不快だしやめてほしい。
でもここまで用意されて行きませんとは言い難い。

「そうだ!こっちを予備に回して、もう一着仕立てよう!」

やっぱりツガイであるラスターを着飾るのは自分の役目だろう。

「楽しみだな…」

自分が選んだ服を着てくれるラスター。

(見たい!)

ある意味これはいい口実ができたと考えよう。
こんな機会でもない限り、きっとラスターは俺から服なんて受け取ってはくれないだろうから。
そうと決まったら早速父にも相談だ。
王都に行くならラスターに頼っている部分の仕事が滞らないようちゃんと調整もしておかないと。

「父上!皇太子殿下のお誘いでラスターと一緒にパーティーに行くことになったんですが、構いませんか?」
「皇太子殿下のお誘いで?」
「はい。これが招待状です」
「…………国際親善パーティーか。ラスター。皇太子殿下直々のお誘いだが、行けそうか?」
「そうですね…。時期は問題ありません。ただ服が…」
「服ならっ、もちろん俺が用意するので心配しなくても大丈夫です!」
「……ディオン」

父が呆れたように俺の名を呼んでくるけど、ここは押すに限る。

「ラスター。皇太子殿下もラスターに挨拶がしたいと言っているし、できれば同行してほしいな」

ここ最近だいぶ距離が近づいた気がするラスターに、お願いとばかりに頼んでみる。

「…………わかりました。でも社交界の流行はさっぱりわからないので、服はお任せしても構いませんか?」
「もちろん。でもやっぱり好みとかもあるだろうし、できれば一緒に見に行きたいな」

デート。竜王陛下とデートのチャンス!

期待に満ちた目で訴えたらちょっと困った顔をしながらも折れてもらえた。

「ラスター。ディオンが済まないな。金はディオンが出すからしっかりした物を買うといい」
「……すみません。かかった費用は少しずつ返させていただきますので」
「その必要はない。ディオン。そうだな?」
「はい。もちろんです」

俺の我儘で用意するのだから当然ラスターには払ってもらう気なんてなかった。
でもあまり高額過ぎると気を遣わせそうだし、ここは絶妙なラインで攻めよう。




その後馬車に乗り、お仕着せではなく私服のラスターと一緒に仕立て屋へと向かう。
いつも屋敷に呼んでいるテーラーと同じだ。
そこでデザイナーと話をして、王都の流行を伝え、デザインを考えてもらう。
その間にラスターは採寸。

最近隣国からミシンという縫う機械が入っていたらしく、これまでよりもずっと綺麗で速く縫えるようになったんですよと仕立て屋の主人が言ってくれたから、それは有り難いと思いながら最短で作って届けてほしいと伝えておいた。
ついでに普段使いの服も三着ほどお願いしておく。
王都までの移動中の着替えにと言えば受け取ってもらえないだろうか?
ダメならダメで何か考えよう。
陛下の白金の髪色なら濃い色も似合うから藍色を是非着せたい。
陛下はきっとうっとりするほど素敵だろう。
ツガイに自分の色を纏わせたいのは竜人の本能だ。
全身を自分色に染めて自分の香りも纏わせたい。
前世でできなかったことを今世では全部叶えたかった。

(あ、俺も陛下の色を纏いたいから買わないと)

その瞳の色に似たポケットチーフを探そう。
カフスやタイピンはもちろん白金で。


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