【完結】竜王は生まれ変わって恋をする

オレンジペコ

文字の大きさ
51 / 84
【本編】

47.その後のダンジョン

しおりを挟む
ダンジョンの一件があってすぐヴィクターさんの件があったから、領主様やディオンが俺に心労をかけないようにとその後のギルドからの情報は耳に入らないようにしていたのだけど、流石に心配になって実家に顔を出しがてらギルドへと情報を聞きに行った。

「お、ラスター!」

顔見知りの冒険者達が次々と声を掛けてくれる。

「お前、死にかけたんだって?」
「ワイバーンと刺し違えたって聞いたぜ?もう大丈夫なのか?」

どうやらすっかり噂になっているらしい。

「もう大丈夫。それより今ダンジョンは?」
「ああ、すっかり落ち着いたようだ」

スタンピードの兆候は収まって、ダンジョン内部が完成して安定したようだと冒険者達は教えてくれる。

「まあ城から来た兵達も見回りを手伝ってくれてるし、暫く様子見はするが、このまま問題なく終わるはずだ」

それと共にダンジョンの内部調査も入ったようで、そこでは薬草や鉱石などの資源が多く確認されたらしい。

「これまでこの領地で確認されず、輸入に頼っていた薬草なんかも生えてたらしくてな、薬師達が大喜びしたぞ」

それはいい。
ダンジョン探索は命がけだろうし、ポーション類の需要がどうしても高まる。
良くも悪くもダンジョンと冒険者達は長い付き合いになっていくことだろう。




そんな風に色々情報を仕入れて屋敷へと帰ると、皇太子殿下が領主様と何やら話しているところに出くわした。
立ち聞きするわけにもいかないし、そっと離れようと思った俺を領主様が呼び止める。

「ああ、ラスター。ちょうどよかった。実はな、皇太子殿下が二か月後に誕生日を迎えるにあたって城でパーティーが開かれるらしい。準備などの関係上、ひと月後に城に戻ると仰せなんだが…」

なるほど。納得の理由だ。
それは帰らなくてはならないだろう。

「それでな?ディオンとラスターもそのパーティーに参加してほしいとのことなんだが…どうだろう?」
「それはもちろんお祝いしたく思いますが…、俺なんかが参加してもいいんでしょうか?」

前回のパーティーでのディオンの友人達の様子を見る限り、場を乱すことにしかならないんじゃないかと思えて仕方がなかった。
参加しない方がいいような気がする。
だから素直に皇太子殿下へと訊いてみる。

「その…俺の参加はご迷惑になるだけでは?」
「もしかして以前会った令嬢達を気にしているのか?もしそうなら気にしなくていい。お前にワインをかけたあの者を呼ぶ気はないからな」

彼女は確か侯爵令嬢ではなかっただろうか?
あっさりと『彼女は呼ばない』と口にする皇太子殿下に驚いて目を丸くしていると、何故かクスリと笑われた。

「ラスター。お前はディオンの恋人だろう?堂々と隣に立てばいい。その方が俺も『お前だからディオンを譲った』と胸を張って言えるだろう」

優しい眼差し。
この人は本当に俺達を認めてくれている。
それがわかって胸が温かくなった。

「それに辺境伯家の養子になったと発表するにはもってこいの場だ。貴族の仲間入りをしたのだと周知させるためにも是非前向きに考えてくれ」

その言葉に俺は笑顔で礼を述べ、素直に受け入れる。

「勿体ないお言葉ありがとうございます。謹んでお受けいたします」
「そうか。では俺達が王都に戻るタイミングで一緒に移動しよう。ゆっくり話すいい機会だ。ディオンにも伝えておいてくれ」
「はい。お伝えしておきます」

そうして一礼すると満足そうに頷いて皇太子殿下は戻っていく。
領主様はそんなやり取りを優しく見守って、『ディオンをよろしく頼む』と言って頭を撫でてくれた。

「今回はヴィクターがいないし、他の従者が必要ならまた言ってくれ」

そう言えばヴィクターさんはどうなったんだろう?
その後が全く伝わってこないからちょっと気になり尋ねてみた。

「領主様。その…ヴィクターさんは今どこに?」
「ヴィクターか?最初は牢に入れていたんだが、殿下の側近のリック様が殿下に媚薬を盛った件を城に報告したら審議にかけることになってな、実は王都送りになったんだ。会うことはないと思うが、一応気を付けてくれ」

どうやらヴィクターさんは皇太子殿下とディオンをくっつけたいがためにやってはいけないことをやってしまったらしい。
これは庇いようがない。

「わかりました。心に留めておきます」

そう答えて、俺は自室へと戻った。


***


【Side.ヴォルフガング】

辺境伯領に滞在してまだひと月も経っていないのに、ダンジョンの件があったせいで早く帰城をと言い出す貴族が多々出たと手紙が届いた。

(もっと長く滞在してもっと色々学びたかったのに…)

彼ら曰く、危険なことをするなら先に婚約者を決めて結婚式を早々に行い、子作りをしろとのこと。
きっと帰ったらこれ幸いと花嫁候補が笑顔で待ち構えているんだろう。
こっちは気持ちの整理をしつつ立派な王になるために学びに来ているのに、後継さえ残せば死んで結構と言われたようで腹が立った。
帰城を言い出した輩達は俺が上に立ったら即閑職に回してやろうか?

怒っていたらリックがちょっと考えた後でグイッと引き寄せて、宥めるように抱き込んできたから少しだけ落ち着いた。
いいな。
こういうのはちょっと恋人っぽいかもしれない。

「お前のことも公言したいな」
「冗談はやめてください。刺されでもしたらどうするんです?」
「ヴィクターみたいな奴がいるかもしれないと言いたいのか?」
「ええ。普通にいると思いますよ?皆貴方とディオン様を応援していたので」
「そうか…そうだな。それにしても…お前がヴィクターの件を城に報告するとは思っていなかったな」

ヴィクターの名を口に出したことでふと思い出しリックへと尋ねてみれば、溜息交じりに答えてくる。

「最初はまあ…知らない仲でもないので反省してくれたらそれでいいかと思っていたんですが、ラスターを刺し殺しに行ったと聞いて危険人物を放置する方が危険だと考え直したんです。きっちり裁いてもらった方が逆恨みにも合わなくて良いかと」
「なるほどな」

リックの言い分は尤もだ。
逆恨みでラスターだけではなくディオンまで狙われたらたまったものではない。

「それよりリック。城に帰るまでにちゃんと俺に手は出せよ?」
「……はい?」
「抱いていいと言っている。帰ったら花嫁候補が列をなしていそうだし、そっちの対処で忙しくなって早々かまえなくなるしな」
「またそんなことを…」

呆れたように溜息を吐くリック。
でももうリックが俺をどれだけ好きか知ってるから、この先に進んでもいいんじゃないかと思っているんだ。
きっとそうしたらディオンへの想いも完全に吹っ切ることができる────そんな気がした。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

処理中です...