【完結】逆召喚!~いつまでも黙って召喚されると思うなよ?~

オレンジペコ

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42.話し合い

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バドの部屋に入って念のためもう一度キスで魔力を補給し、ソファに腰を落ち着けた後で朝食をここに手配してもらう。
よく考えたら二人で朝食なんて初めてだなと思いつつ用意されたそれを食べ始めようと思ったら、何故かバドがこっちをチラッと見て、ポツリと言った。

「ルース。食べさせてもいいか?」
「何を?」
「なんでもいい。ルースが食べたいものでいいから」

その姿にクスッと笑って、じゃあこっちに来いよと言って隣をポンポンと叩き、バドを正面の席から俺の隣へと誘導する。
そして俺はスクランブルエッグをフォークで掬い、バドの口元へと揶揄うように運んでやった。

「ほらバド。あ~ん」
「なっ?!」
「してみたかったんだろ?」
「ち、違う!そうじゃなくて、俺が…っ!」
「いいからいいから。ほら。朝から魔力を使って疲れただろうし、俺が食べさせてやるって」

『魔法を使ったのは俺のせいだしな』と笑って言ってやったら、物凄く複雑そうな顔をしたものの、バドは大人しく口を開けて食べ始めた。
そんな素直なところも可愛いなと思いながら料理を口へと運んでやり、バドが咀嚼している間に俺は俺の考えを口にする。

「俺がバドの国に行くのはリオだけじゃなく親兄弟全員反対っぽくて、全員を説得するのは難しそうなんだ」
「……っ!むぐっ」

何か言いそうだったバドだけど、取り敢えず黙って聞いて欲しくて、すかさず口へものを突っ込む俺。

「でも俺がそっちに行きたい気持ちは変わらないから、兎に角打てる手を全部打とうと思ってるんだ」
「…………」
「手始めに、この後父上のところに行って、リオとの婚約期間を三年~四年にしてもらうつもりだ。それならその間に俺にも恋愛がわかるようになって、結論が出しやすくなるかなって」
「……っ!」
「あと、姉上の友人が去年召喚されて向こうにいるから、その件を使って上手く説得して姉上を味方にできたらなと思ってて…」
「…………」
「取り敢えず先にバドを向こうに送り返して、皆がホッと安心して気が緩んだタイミングで姉上に後のフォローを任せて、俺が後追いでバドの国に行くのがベストだと思うんだけど、どう思う?」

一生懸命話を聞きながら必死に咀嚼を繰り返すバドが口の中の物を飲み込むのを待ってそう尋ねると、怒ったように怒鳴りつけられた。

「どう思うも何も、もう決めてるくせに!!」

確かにその通りだけど、一応何か問題があっても困るから意見を聞きたいと思ったんだけど何かダメだっただろうか?

「聞かずに実行した方が良かったか?」
「~~~~っ!取り敢えず、ルースは勝手だというのだけはよくわかった!」

俺としては話し合いのつもりだったけど、バド曰く『これは話し合いではなくただの報告』とのこと。
でも何も言われないよりは言ってもらった方が安心するから、ちゃんとこうして言ってくれたことに関しては良かったと思うとも言われた。
何でそう言われたのかは不明だけど、結局言ってよかったってことだよな?
特に意見もないようだし、その方向で話を進めてしまおう。




さて。バドとの話し合い?が終わったところで次は父のところへ行かないとと、足取り軽く執務室へと向かう。
俺が顔を出すとすぐに気づいてもらえて、少しだけ時間を貰うことができた。
そこで話すことはリオとの婚約期間の事。
まだリオの国に書面を送っていなかったようだし、父はそれについては案外あっさりと許してくれた。
どうやらそれをすることによって、俺がリオ以外の相手(ご令嬢)と結婚できる可能性を残しておきたい様子。

「そうかそうか。そうだな。お前達は二人ともまだ子供だものな。お互い気が変わることもあるだろう。その辺りも含めてしっかり書面にまとめておくから安心しておくといい」

どこか満足げににこやかにそう言ってくる父に礼を述べ『では宜しくお願いします』と返し、俺は執務室を後にする。
これでこちらは大丈夫だ。

次は姉のところに行かないと。
そう思っていたら庭で物思いに耽る姉の姿を発見した。
見る限り一人のようだし、なかなか幸先がいい。

「姉上」
「ルルナス」
「朝の散策ですか?」
「そうね…」

そう答えながらも憂うような顔を見せる姉。
そんな姉が見ていた花を見てふと思う。

「リセル嬢を思い出していたんですか?」
「…………悪いかしら?」
「いいえ」

そう言うと姉はそっと顔を上げて俺の方へと目を向けてきた。

「私は貴方が好きよ」
「リセル嬢よりも?」
「……酷い質問ね。どちらがより好きだなんて比べられるはずもないのに」

姉は辛そうにそっと一輪の花を手折る。

「貴方のことは弟して可愛がってきたのよ?大事に決まっているわ」
「リセル嬢は?」
「彼女は私の大切な大親友よ」

『だから』と姉は口にして、暫くギュッと目を閉じたかと思うと、何かを決めたかのような顔で俺の方を見つめてきた。

「私があちらに行くわ」
「…………は?」

これには正直驚いた。
まさかそんなことを言われるなんて思いもしなかったから。

「姉上」
「皆が貴方を行かせたくない気持ちは痛いほどわかっているつもりよ。私も当然そうだわ。でも…私はリセルも大事なの」

だから自分が行くと姉は言った。

でもよく考えてほしい。
姉は別に俺ほど魔法に精通しているわけでもなんでもない。
仮に向こうに行ったとして、調整役はできても問題が起こった際は咄嗟に対応なんてできないだろう。
それならやっぱり俺が向こうに行くのが一番だ。
効率を考えてほしい。

「姉上。それについてちょっと提案があるんですが、ちょっとしっかりお話しませんか?」

そして俺は姉を連れて研究室へと移動し、召喚された者達の詳細な情報が書かれた書類を提示しながら説明を行った。
その上で俺が向こうでやるべきことと、現在考えている立ち回り方なども詳細にプレゼンしてみる。
ついでに『身の安全を図るためにこうしてみようと思うんだけど』という持論も口にしてみると、やがて溜息を吐きながら渋々認めてくれた。

「はぁ…。貴方は本当に我儘な末っ子の典型ね」

そう言いつつもその眼差しには諦めが滲んでいる。

「取り敢えずこうして話してくれただけでも良かったわ。貴方が突然行方不明になったら大騒ぎになってしまうところだったもの」
「まあそうですね」

それは容易に想像がつく。
そして俺が引かないとわかったからか、姉は気持ちを切り替えしっかりと釘を刺してきた。

「行くなら行くできちんと計画書を提出してから行きなさい。日程が分かっていれば不測の事態が起こったのかどうかの目安にもなるわ」
「なるほど」
「あとは危なくなったら貴方だけでも帰ってくるとしっかり約束してちょうだい。あのバドという男の後を追って一人で異世界に行くと言うからには、貴方が一人でこちらに戻ることもできるのよね?」
「そうですね。検証できないので何とも言えないですけど、恐らくは?」
「…………念のため魔石を持っていきなさい。万が一貴方が向こうで魔素摂取障害になったら魔力が足りずに戻れなくなるかもしれないでしょう?」
「わかりました」

治療にはならなくてもその魔力でこちらに帰ってくるくらいはできるだろうと姉は言う。
確かにそれは保険的に持って行っても損はないだろう。

「では姉上。万事整えてちょっと行ってきますので」
「必ず無事に帰ってきなさい。わかったわね?」
「はい」

そして俺は姉も味方につけることに成功し、その他諸々の手筈もテキパキと迅速に整えたのだった。


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