【完結】逆召喚!~いつまでも黙って召喚されると思うなよ?~

オレンジペコ

文字の大きさ
61 / 77

60.恋に身を焦がして② Side.ジードリオ

しおりを挟む
「それで?わざわざ俺に相談したいことって?」

場所を移し、騎士団の中にある応接室の一室へと案内し腰を落ち着けたところで俺はマリオン王子にそう切り出した。

(何か失敗したかな?)

ここで相談されることがあるとしたら確実に自分のやらかしたことだろうし、真剣に聞く姿勢を取った。
けれどマリオン王子の口から出た言葉は意外なもので、ある意味俺のやらかしと言えなくもない内容だった。

「…その、ルルから貴方の事を聞いたので、一度話してみたくて」
「え?!」
「騎士団での遠征で魔物を討伐する事もあるんですよね?以前ルルがジードリオ王子から実戦は大事だと聞いたと教えてくれたので」
「…っ!あ、ああ!なるほど。それで俺のところへ」

なるほど。納得がいった。
そういうことなら確かに何もおかしくはない。
某カフェでうっかり素で口にしてしまったことがまさか回りまわってこうくるとは思ってもみなかったが、大事なことではあるし、マリオン王子的に気になっていたのだろう。
晩餐の席にずっと俺の姿がなかったからこれまで聞けなかったと、きっとそういうことなんだろう。

俺はホッと息を吐くと、ジードリオとしてマリオン王子に向かい合い、嬉々として自分が知っていることを話してあげた。
万が一魔物と遭遇した時の参考にしてもらえたらこれほど嬉しいことはない。
これはルルナスではなく俺にしか教えてやれないことだ。
だからこそしっかり教えてやりたい。
ついでに効率のいい鍛錬法なんかも教えてあげよう。
実際に剣を振りながら横で教えるのが本当は一番いいのだけど、あまりやり過ぎるのも良くないかもしれないし、そちらは機会があればといったところか。

「色々教えていただきありがとうございます。とても有意義な時間が過ごせました」
「参考にしてもらえたら嬉しい」
「良かったらまた教えてください」
「ああ。いつでも聞いてくれ」

そんな有意義で充実した時間はあっという間に過ぎ、ジードリオとして一緒に居られる時間は終わりを迎える。

「この後は?」
「そうですね。ルルに会って、お茶でもしながらジードリオ王子に色々教えてもらったと話したいと思ってます」

それは予想できる答えではあったし、当然と言えば当然の答えでもあった。
俺からすればまだマリオン王子との時間を堪能できる嬉しい時間。
でもそれはあくまでも弟として…だ。
その事実だけが辛かった。
けれどそんな気持ちに蓋をして、好きな人と過ごせる時間なのだからとポジティブに気持ちを切り替える。

「そ、そうか。えっと…それじゃあ俺が言っておくよ」
「では今日はテラスでと」
「わかった。伝えておく」

笑顔で去っていくマリオン王子の背を見送り、俺はギュッと胸の前で拳を握りしめた。


***


「ルル!」
「リオ」

しばらく時間を置き、テラスで待つマリオン王子の元へとやってくる。
ルルナスに会えた喜びからか、いつも通り嬉しそうに輝く笑顔。
今はそれが凄く切なくて、胸が苦しい。

「今日はどうしてたんだ?」

何か聞かれる前にと先手を打ってそう尋ねると、マリオン王子は笑顔で俺と先程あった話を口にしてきた。

「今日はジードリオ王子に会ってきた」
「そうか。えっと…珍しいな?何の用で?」

言葉が上手く見つからない。
こんな感じで大丈夫だろうか?

「この間ルルが話していた件について」

そう言いながらそっと俺の方へと手を伸ばし、そっと指先で髪をクルリと弄び始めるマリオン王子。
その瞳はとても優しいけれど、どこかこちらの反応を期待しているように見えるのは気のせいだろうか?

(もしかして嫉妬狙いか?)

いやでも兄に対して嫉妬狙いというのもおかしいだろう。
これはやっぱり『珍しいな』と笑うルルナスの表情を見たいとか?
それとも驚いた表情をするところが見たかったとかかもしれない。
きっとルルナスがどういった反応をするのか楽しみにしていたんだと思う。

でも俺は正直今、そこまで頭が回らない。
ルルナスがどんな表情をするのか考えてリアクションしないといけないのに、どんどん甘みを帯びていくマリオン王子の眼差しと、楽し気にクルクル髪を弄ってくる指先に恥ずかしさの方が勝ってしまったからだ。

「リ、リオ…」
「ん?」
「は、恥ずかしい…」

だから素直にそう言ってやめてもらおうと思ったのに、何故か幸せそうに微笑まれて、『もうちょっと』なんて言われてしまった。

(甘い!甘過ぎる!)

勝手に顔に熱が集まって、きっと今の俺は真っ赤になってしまっていることだろう。
だからなんとかこの場を切り抜けようと、俺は誤魔化すように手元のケーキへと目をやって、一口分をフォークに乗せるとそのままマリオン王子の口元へと差し出した。

「リオ。あんまり揶揄わないでくれ」
「すまない。ルルが可愛くて」

フッと笑いながら俺から手を離し、嬉しそうにパクッとケーキを食べるマリオン王子。

(キラキラキラキラ…綺麗だな)

文句なしにカッコいいマリオン王子に思わず見惚れてしまう。
白金色の髪も蜂蜜色の瞳もどちらもとても綺麗だし、端正に整った顔にも目を奪われる。
騎士に負けるとも劣らぬ鍛えられた身体もとても魅力的だ。
筋肉の付きにくい自分とは大違いで羨ましい限りでもある。
きっと国に帰ればいくらでも相手はいるのだろうし、男女問わずモテるだろう。
なのに一途にルルナスだけを想い続けているなんて本当に凄いと思う。

「ルル?」

『どうした?』と聞いてくるマリオン王子にハッと我に返り、慌てて取り繕うように言葉を口にする。

「わ、悪い!つい見惚れてっ…!いやっ、リオがカッコよくて…っ!あれっ?!」

最早墓穴に墓穴を掘りまくって収拾がつかない。
しかも何故かマリオン王子は笑ってる?!

(照れるでもなく笑うってどういうことだ?!)

もしかして俺の慌てっぷりがツボに入ったんだろうか?
頼むから忘れてほしい。

「リオは意地悪だ」
「すまない。ルルが…俺に見惚れてくれて嬉しいよ」

そう言って愛おしそうにこちらを見つめ、そのままゆっくり口づけてくるマリオン王子にうっとりしながら酔わされる。
好きだという気持ちが膨らんで、もっととねだるように舌を自分から絡めてしまう。
俺はただの身代わりで、弟が帰ってきたらお役御免になってしまう存在でしかないけれど、今だけでいいから好きな相手とキスがしたかった。

(狡い男だな。俺は)

傷心の相手を利用して、騙して、欲を優先させて…ひと時の夢に浸る。
こんな汚い自分なんて、知らなかった。

「リオ…」

キスだけじゃ足りない。

「抱きしめてくれないか?」

抱いてくれとは言わない。
でもせめてその腕の中で温もりを堪能したかった。
そんな俺の我儘をリオは笑顔で受け入れてくれる。

「ルル。おいで」

嬉しそうに俺をその腕の中へと迎え入れて、またキスをしてくれるリオ。
愛しくて切なくて…胸が苦しい。

俺は初めての恋心を持て余しながら、複雑な心境で弟の婚約者と口づけを続けたのだった。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

処理中です...