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63.叱責とノート
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朝起きて普通に朝食の席へ向かおうとしたら物凄く大騒ぎになった。
「ル、ルルナス王子!いつの間にお帰りに?!」
「昨日の夜だけど」
「ちょ、し、暫くお待ちを!」
そのあまりの動揺激しい姿に『ああ、そうか』と思い至った。
多分昨日リオが言っていたように、ジードリオ兄上が俺の代わりに朝食の席に着いてくれていたんだろう。
このまま俺がそこに行ってしまったら『ルルナスが二人いる』というおかしな状況になってしまうから困ると。
(それじゃあ仕方ないな)
一旦兄を引っ込めてジードリオ本人として座り直すのが無難なところだろうけど、状況把握できていないはずの俺がおかしなことを言い出したらたまらないと思われてしまった場合は部屋で食べろと言われてしまうかもしれない。
さて。どうなるだろう?
「ルルナス!!」
いち早く俺のところへやってきたのは長男であるエーデルト兄上だ。
「戻ったなら早く言え!」
「申し訳ありません」
「まあいい。取り敢えず話を聞きたい。俺の部屋で二人で食べよう」
どうやらそう言うことになったらしい。
「わかりました」
そして兄と部屋で食事をとりながら向こうであったことを詳細に話していく。
「と、こんな感じで一応全員に手紙も渡し終え、帰還魔法でこちらに戻れると話してきました」
すると姉の友人であるリセル嬢のことが気にかかったのか、『元気そうだったか?』と尋ねられた。
「元気も元気。バドを睨みつけて怒り狂ってましたよ?」
「そ、そうか」
「ええ。姉上の手紙を読んで恋しそうに泣いてましたし、帰ってきたら真っ先に姉上の胸に飛び込んでいくでしょうね」
「こ、恋しそう…?!」
「親友に会いたがってる感じでしたよ?」
「そ、そうか…。あちらでの生活は辛いものだろうし、帰ってきたら沢山励ましてやりたいな」
「…え?」
思いがけない兄の様子に俺は思わず固まってしまう。
以前の自分ならまず気づかなかったと思うけど、この表情はもしかしてもしかするんだろうか?
「えっと…兄上?もしかして……」
「ルルナス?リセル嬢が帰ってきたら、絶対にいらないことを口にして邪魔をするなよ?」
「はい」
確かに以前の自分なら兄がリセル嬢を励ましたいとか言い出したら『そんなの姉上に任せたらいいじゃないですか』とか普通に口にしていたと思うし、何だったら『兄上、空気を読んでください。女性同士で仲良く買い物に行きたいのに兄上が邪魔をするなんて最悪ですよ』とか言っちゃってたかもしれない。
つまりはそういうことは一切言ってくるなというのが今の言葉だ。
うん。大丈夫。ちゃんとわかってる。
邪魔じゃなく、応援すればいいんだよな?
(俺も大人になったな…)
思わずそんなことを思いながら俺は食事を終えた。
エーデルト兄上との食事が終わったら今度はジードリオ兄上に呼び出された。
しかも顔を合わせるや否や、いきなりの叱責。
「ルルナス!一体どれだけ皆が心配したと思っている?!勝手が過ぎるぞ!」
空気がビリビリ震えるほどの本気の怒気を向けられてちょっと泣きそうになった。怖い。
ジードリオ兄上は普段は穏やかで優しいけど、怒らせたら兄弟一怖いんじゃないだろうか?
エーデルト兄上の震えあがるような静かな怒り方と違って、ジードリオ兄上の怒り方は騎士特有の覇気が混じるから泣きたくなる。
未だかつて兄をここまで怒らせたことなんてなかったから余計に怖かった。
「す、すみません」
だから即謝罪し潔く頭を下げたのだけど、兄の怒りは相当の様子。
これは暫く許してもらえそうにない。
そんな俺の前に一冊のノートが差し出された。
「これは?」
「俺がまとめておいたマリオン王子についての資料だ」
そう言って兄は俺が不在の間のリオの様子を事細かに教えてくれる。
魔力暴走から始まり、情緒不安定な様子だったことなど諸々のことを。
リオは昨夜平気そうに話していたけど、実際はかなり心配になるレベルだったらしい。
「お前に扮していたことについては悪かったとは思うが、もとはと言えばお前が引き起こしたことだ。しっかりこのノートを読み込んで、マリオン王子にきっちり向き合え。それと、もっとしっかり婚約者としての自覚をもって、相手のことを知る努力をしないとダメだ。お前はそう言うところが足りなさすぎる」
(な、長い…)
でもここで話を遮って『実は昨夜リオと話してバドを選んだので、婚約は近いうちに解消されると思います』とか言ってしまったら更に怒らせることになるだろう。
今は何も言わず、口にチャックだ。
取り敢えずこのノートがリオが欲しがっていたもののようだし、素直に受け取って後で渡してやろう。
「さあ、反省をしたらその内容に今すぐ目を通してもらうぞ」
「え?いや。これは後で…」
「後でなんて言ってたらお前はやらないだろう?今すぐこの場で目を通せ」
「えぇ……」
確かに今ここで見なかったらそのままリオに渡しておしまいにしてただろうけど、これは俺が見ても大丈夫なものなんだろうか?
そう思い兄の顔色を窺うと、眉間に皺を寄せながら早くしろと促された。
仕方がない。
ここはちゃんと目を通そう。
そう思いながらパラリとページを開くと、そこにはこの数週間でリオと接した中で得た情報と思しき内容が事細かに書き込まれていて驚いた。
「あ、兄上?」
「なんだ」
「これ、全部覚えるんですか?」
「そうだ」
「流石にちょっと多過ぎな気が…」
「別に多くはない。俺は全部覚えている」
魔法の事ならいくらでも覚える気はあるけど、一個人のことを短時間で覚えろというのはとっても辛い。
できれば勘弁してもらいたいのだが…。
「きっと今日も午後にはマリオン王子とのお茶の時間があるだろう。つべこべ言わずに午前中に全部覚えて午後に備えるんだ」
「そんな…」
リオが好きな剣の型なんて俺は興味なんてないし、習ったのがどこそこの誰それでなんて深い話だって全く興味はない。
幼い頃の話とか得意魔法の話とかは読んでて楽しいけど、他のジャンルの本の話とか政治の話とかそう言うのもちっとも興味がそそられないから読む気がしないし覚える気力も湧かない。
(なんでこんなに幅広く色んな事聞き出してるんだよぉおっ!)
俺なら絶対にこんな話、リオとはしない。
これはリオじゃなくても一緒に居るのが俺じゃないって即わかると思う。
誰が見ても別人だろう。
「俺、リオとは魔法の話くらいしかしてなかったんですけど?!」
「好きになったから興味が湧いたとか適当に言って誤魔化せばいいだろう?そもそも婚約者に興味を持つのは別におかしなことではない。ちゃんとしろ」
「でも…っ」
「でもも何もない。勝手なことをした報いだと考えて真摯に反省し、しっかり覚え込むように」
そこからは本当に覚えるまで兄は許してくれなかった。
こうして俺は心底反省し、重い溜息を吐いたのだった。
「ル、ルルナス王子!いつの間にお帰りに?!」
「昨日の夜だけど」
「ちょ、し、暫くお待ちを!」
そのあまりの動揺激しい姿に『ああ、そうか』と思い至った。
多分昨日リオが言っていたように、ジードリオ兄上が俺の代わりに朝食の席に着いてくれていたんだろう。
このまま俺がそこに行ってしまったら『ルルナスが二人いる』というおかしな状況になってしまうから困ると。
(それじゃあ仕方ないな)
一旦兄を引っ込めてジードリオ本人として座り直すのが無難なところだろうけど、状況把握できていないはずの俺がおかしなことを言い出したらたまらないと思われてしまった場合は部屋で食べろと言われてしまうかもしれない。
さて。どうなるだろう?
「ルルナス!!」
いち早く俺のところへやってきたのは長男であるエーデルト兄上だ。
「戻ったなら早く言え!」
「申し訳ありません」
「まあいい。取り敢えず話を聞きたい。俺の部屋で二人で食べよう」
どうやらそう言うことになったらしい。
「わかりました」
そして兄と部屋で食事をとりながら向こうであったことを詳細に話していく。
「と、こんな感じで一応全員に手紙も渡し終え、帰還魔法でこちらに戻れると話してきました」
すると姉の友人であるリセル嬢のことが気にかかったのか、『元気そうだったか?』と尋ねられた。
「元気も元気。バドを睨みつけて怒り狂ってましたよ?」
「そ、そうか」
「ええ。姉上の手紙を読んで恋しそうに泣いてましたし、帰ってきたら真っ先に姉上の胸に飛び込んでいくでしょうね」
「こ、恋しそう…?!」
「親友に会いたがってる感じでしたよ?」
「そ、そうか…。あちらでの生活は辛いものだろうし、帰ってきたら沢山励ましてやりたいな」
「…え?」
思いがけない兄の様子に俺は思わず固まってしまう。
以前の自分ならまず気づかなかったと思うけど、この表情はもしかしてもしかするんだろうか?
「えっと…兄上?もしかして……」
「ルルナス?リセル嬢が帰ってきたら、絶対にいらないことを口にして邪魔をするなよ?」
「はい」
確かに以前の自分なら兄がリセル嬢を励ましたいとか言い出したら『そんなの姉上に任せたらいいじゃないですか』とか普通に口にしていたと思うし、何だったら『兄上、空気を読んでください。女性同士で仲良く買い物に行きたいのに兄上が邪魔をするなんて最悪ですよ』とか言っちゃってたかもしれない。
つまりはそういうことは一切言ってくるなというのが今の言葉だ。
うん。大丈夫。ちゃんとわかってる。
邪魔じゃなく、応援すればいいんだよな?
(俺も大人になったな…)
思わずそんなことを思いながら俺は食事を終えた。
エーデルト兄上との食事が終わったら今度はジードリオ兄上に呼び出された。
しかも顔を合わせるや否や、いきなりの叱責。
「ルルナス!一体どれだけ皆が心配したと思っている?!勝手が過ぎるぞ!」
空気がビリビリ震えるほどの本気の怒気を向けられてちょっと泣きそうになった。怖い。
ジードリオ兄上は普段は穏やかで優しいけど、怒らせたら兄弟一怖いんじゃないだろうか?
エーデルト兄上の震えあがるような静かな怒り方と違って、ジードリオ兄上の怒り方は騎士特有の覇気が混じるから泣きたくなる。
未だかつて兄をここまで怒らせたことなんてなかったから余計に怖かった。
「す、すみません」
だから即謝罪し潔く頭を下げたのだけど、兄の怒りは相当の様子。
これは暫く許してもらえそうにない。
そんな俺の前に一冊のノートが差し出された。
「これは?」
「俺がまとめておいたマリオン王子についての資料だ」
そう言って兄は俺が不在の間のリオの様子を事細かに教えてくれる。
魔力暴走から始まり、情緒不安定な様子だったことなど諸々のことを。
リオは昨夜平気そうに話していたけど、実際はかなり心配になるレベルだったらしい。
「お前に扮していたことについては悪かったとは思うが、もとはと言えばお前が引き起こしたことだ。しっかりこのノートを読み込んで、マリオン王子にきっちり向き合え。それと、もっとしっかり婚約者としての自覚をもって、相手のことを知る努力をしないとダメだ。お前はそう言うところが足りなさすぎる」
(な、長い…)
でもここで話を遮って『実は昨夜リオと話してバドを選んだので、婚約は近いうちに解消されると思います』とか言ってしまったら更に怒らせることになるだろう。
今は何も言わず、口にチャックだ。
取り敢えずこのノートがリオが欲しがっていたもののようだし、素直に受け取って後で渡してやろう。
「さあ、反省をしたらその内容に今すぐ目を通してもらうぞ」
「え?いや。これは後で…」
「後でなんて言ってたらお前はやらないだろう?今すぐこの場で目を通せ」
「えぇ……」
確かに今ここで見なかったらそのままリオに渡しておしまいにしてただろうけど、これは俺が見ても大丈夫なものなんだろうか?
そう思い兄の顔色を窺うと、眉間に皺を寄せながら早くしろと促された。
仕方がない。
ここはちゃんと目を通そう。
そう思いながらパラリとページを開くと、そこにはこの数週間でリオと接した中で得た情報と思しき内容が事細かに書き込まれていて驚いた。
「あ、兄上?」
「なんだ」
「これ、全部覚えるんですか?」
「そうだ」
「流石にちょっと多過ぎな気が…」
「別に多くはない。俺は全部覚えている」
魔法の事ならいくらでも覚える気はあるけど、一個人のことを短時間で覚えろというのはとっても辛い。
できれば勘弁してもらいたいのだが…。
「きっと今日も午後にはマリオン王子とのお茶の時間があるだろう。つべこべ言わずに午前中に全部覚えて午後に備えるんだ」
「そんな…」
リオが好きな剣の型なんて俺は興味なんてないし、習ったのがどこそこの誰それでなんて深い話だって全く興味はない。
幼い頃の話とか得意魔法の話とかは読んでて楽しいけど、他のジャンルの本の話とか政治の話とかそう言うのもちっとも興味がそそられないから読む気がしないし覚える気力も湧かない。
(なんでこんなに幅広く色んな事聞き出してるんだよぉおっ!)
俺なら絶対にこんな話、リオとはしない。
これはリオじゃなくても一緒に居るのが俺じゃないって即わかると思う。
誰が見ても別人だろう。
「俺、リオとは魔法の話くらいしかしてなかったんですけど?!」
「好きになったから興味が湧いたとか適当に言って誤魔化せばいいだろう?そもそも婚約者に興味を持つのは別におかしなことではない。ちゃんとしろ」
「でも…っ」
「でもも何もない。勝手なことをした報いだと考えて真摯に反省し、しっかり覚え込むように」
そこからは本当に覚えるまで兄は許してくれなかった。
こうして俺は心底反省し、重い溜息を吐いたのだった。
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