【完結】逆召喚!~いつまでも黙って召喚されると思うなよ?~

オレンジペコ

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番外編2.弟の恋 Side.エーデルト

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俺はここサレーヌ国の第一王子として生まれ、王太子として厳しく教育を受けてきた。
そんな教育に文句も言わず取り組めたのはすぐ下の弟、ジードリオのお陰だったと思っている。

俺には下に兄妹が三人いて、兄妹の中で紅一点である妹のヴァーリアはどんな我儘でも聞いてやりたくなるほど可愛く思っていたし、一番下のルルナスもその魔法に関する優秀さから将来確実に異世界に召喚されてしまうだろうという一面から殊の外可愛がった。
それは俺以外の皆にも言えることで、ある意味少々自由にのびのびと育てられたと言っても過言ではない。
それに対してすぐ下の弟であるジードリオは言ってみれば兄妹の中での調整役だ。
ヴァーリアの我儘が過ぎれば窘め、ルルナスが魔法でやらかしたらフォローをし、俺が王太子教育で一人鬱憤を溜めないようにと『自分も一緒にやりますし一緒に頑張りましょう』と言ってくれるような優しい弟だった。
ジードリオが我儘を言ったところなんて俺は一度もない。
不満があっても口に出さないだけなんじゃないかと心配になるレベルだ。
それは婚約がなくなった時に凄く思った。
浮気されても、自分の有責にされても、ジードリオは何も言わなかった。
怒ることなく『不甲斐なくてすみませんでした』と口にしただけだった。
ジードリオは婚約者の役割はしっかりと果たしていたのに…。
そう思ったのは俺だけではなかったようで、両親も凄く怒っていた。

ルルナスに頼んで魔法を作ってもらい、その元婚約者と浮気相手の二人を砂漠へと飛ばしてやった時は溜飲が下がったものだ。
両家の実家にも圧力をかけて没落寸前まで追いやってやったし、少しは反省してもらえたことだろう。
本人が何も言わないからといって、見逃してもらえると思ったら大間違いだ。
俺の大事な弟を不幸にするやつにはしっかりわからせてやらないと。

まあそんなことがあったから、ジードリオには好きな相手と幸せになってほしい気持ちが大きかったんだ。
なのに────。

「もう二度と恋なんてしません!幸せも望みません!責務を全うし、父上が決めた相手と結婚します!何も望まず全部全部諦めるからっ、俺が全部責任を取りますから、だからっ、どうかリオを許してください!!」

こんなことを言われて頭が真っ白になるかと思った。

ルルナスとマリオン王子の婚約が解消になったのはつい先頃のことだ。
ジードリオがルルナスに扮していたことがバレ、それについて謝ったとジードリオ本人から聞いていた。
恐らくその流れで失恋したマリオン王子を慰めていたんだろう。
ジードリオは優しいから、外に連れ出したりお茶の時間を共に過ごしたりと気遣っていたように思う。
弟の尻拭いをしつつ、同情から優しく接している。ただそれだけだと思っていた。
まさか本気で恋をしているなんて誰も思ってはいなかっただろう。

だから『俺がリオの傷心に付け込んでベッドに誘ったんです!リオは悪くないんです!俺が、俺が勝手に好きになったからっ…俺が全部悪いんですっ!』────必死にそう訴えるジードリオの言葉は当初マリオン王子を庇っているだけだと誰もが思った。
けれど違った。

自分の幸せを全て捨ててでも助けたいと、涙ながらに訴えたジードリオの本気の言葉に衝撃を受けたのだ。

責務を全うし、父が決めた相手と結婚する。
そこに愛も幸せも求めない。
未来に何も望んだりしない。

そんな絶望的な言葉を言われて、誰が他の相手との結婚を勧められるだろう?
俺達が求めていたのはジードリオの幸せであって、決して愛のない結婚生活などではなかったというのに…。

俺とリセル嬢の仲を応援して後押ししてくれたジードリオに、恩を仇で返す気など俺には一切ない。
だからちゃんと話を聞いた。
本心からマリオン王子が好きで抱かれたのかと。
そうしたらポツリポツリと話してくれて、ジードリオがやたらと第二王子の立場を意識し、強い義務感を抱いていることが判明した。

(俺とリセルに子供ができなかった場合なんて考え過ぎだろう?)

ルルナスはまあ腹立たしいことに例の男とくっついてしまったが、ヴァーリアだってその内結婚して子供を作るだろう。
他にも親戚はいるんだし、そこまで気にすることなど何もないというのに。

どうも話を聞いていると、ジードリオはマリオン王子との関係さえ最初はいい思い出にしようとしていた節がある。
恋をして、夢のような言葉を聞いて、キスをして抱いてもらったと恋する表情そのもので嬉しそうに語る。
なのに『もし四年後に迎えに来てもらえなかったとしても、いい思い出にできると思った』と言うのだ。
『そうなっても何一つ悔いはないくらいマリオン王子が好きだ』と変に騎士らしい潔さを発揮してくるから頭が痛くなった。
そこまで好きなら父に直談判してでも婚約を取り付けるなりなんなりすればいいのに、本当に不器用にもほどがある。
マリオン王子に迷惑が掛かるからという実にジードリオらしい言い分ではあったが、そこはもうちょっと自分の気持ちを優先してほしいと思った。

ここまで本気でマリオン王子が好きならきっと最初で最後の恋になるだろうと考え、話を聞いた面々はあっさりと二人の婚約を認めた。

「マリオン王子。ジードリオに手を出したからには必ず幸せにしてもらいたい。いいですね?」

俺がマリオン王子にしっかりと釘を刺し、絶対に裏切るなよと笑顔で圧をかけたのは言うまでもない。

その後マリオン王子が国へと帰り寂しそうにしていたジードリオだが、こまめに手紙を書いてしっかりと交流を深めているうちに元気になってきた。

(良かった)

ホッと息を吐くそんな俺を見て、クスクスと愛しいリセルが告げてくる。

「エーデルト様もヴァーリアと一緒でブラコンですね」
「大事な弟に幸せになってもらいたいと思うのはおかしなことか?」
「いいえ?とても素敵なことだと思いますわ」

花のように笑うリセルを見て俺は表情を綻ばせた。

人付き合いが苦手なわけではなく、寧ろ調整役や仲裁役を多くこなしてきたジードリオ。
そんなジードリオに幸せになってほしいと願う者達は存外数が多い。

「エーデルト兄上!俺、向こうで昨日バドと入籍してきたんですけど、こっちでやる手続きって何かあります?」
「ルルナス!またお前は勝手なことを…!」

ルルナスを見習えとは言わないが、せめてこれの半分くらいは自分勝手に行動してくれても大丈夫なんだがなと思う今日この頃。

「お兄様!何故かミヴァン公爵家から私宛に縁談が来たそうですわ!あそこのフェンナーとは犬猿の仲だったというのにおかしいと思いませんか?!絶対に嫌がらせですわ!」
「ミヴァン公爵家の令息がお前にご執心だというのは以前から言われていただろう?受ける受けないにかかわらず話し合いの席には着くべきだと思うぞ」
「絶対に嫌ですわ!セクハラが酷いんですもの!いきなり腰を引き寄せてきたかと思った『顔真っ赤だぞ?』とか揶揄うようなことしか言ってこないんですよ?!あんなのと結婚したら心臓が持たなくて一か月で死んでしまいますわ!」

『可愛い妹を助けてください』と縋ってくるヴァーリア。

(ジードリオはこういう甘え方もしてこないんだよな…)

せめてこれからはマリオン王子に少しでも甘えられればいいのだが、流石に五つも年下の相手にそれは無理だろうか?

様子だけはつぶさに観察してやって、辛いことを一人で抱え込まないようこれからも気遣ってやれたらと思う。

(幸せになれよ)

自分だけが幸せになる気はない。
兄妹皆が幸せであってほしい。
そんな思いで俺はジードリオの幸せを切に願ったのだった。


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