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夫婦は只今別居中!
19.運命の時はやってきた② Side.シーファス
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長かった三か月がやっと過ぎ、『これで望まない相手との結婚期間が終わる』と感無量の気持ちになりながら離婚届にサインを入れる。
明日はきっと記念すべき日となるだろう。
そう思いながら愛するハルへのプロポーズの言葉も考えた。
明日は役所に離婚届を出しに行ったその足で花を買いに行こう。
それを持ってハルにプロポーズをするんだ。
そうと決まったら、今日の内に『明日の夕方会いたい』と伝えておかなければ。
そんなことを考えながら朝からギルドでハルを待ち構えた。
「今日はポイズンスネイクの討伐を受けてみたけど、緊張する」
「毒消しのポーションも持ってるから大丈夫だ。俺もフォローするし、気負わず挑戦したらいい」
「ありがとう」
毒持ちの魔物にソロで挑む際は確かにリスクが高いから怖いだろう。
でも俺はついててハルを危険な目に合わせるはずがない。
ここはドーンと頼ってほしい。
(ハルも最初の頃に比べて随分強くなったし、大丈夫だろう)
そうして危なげなくポイズンスネイクを倒し、ついでに別件で受けてた俺の依頼もこなしてからギルドへと帰った。
記念すべき明日に向けて幸先のいい充実した一日だったと思う。
だからご機嫌でその日の夕食をハルと食べていたんだが、そんな俺を見てハルが不思議そうに尋ねてきた。
「シーファス。随分機嫌がいいけど、何かいいことでもあったのか?」
「ああ。やっと憂いが晴れるんだ」
「憂い?」
「そう。明日、やっと妻と別れられるんだ」
そう言ったらハルは驚いたのか大きく目を瞠り、言葉をなくしていた。
「ハルに何度も妻の話を持ち出されてきたけど、これでやっとハルの心も晴れるな」
喜んでもらえるだろうか?
そんな期待を込めてハルを見つめたが、ハルは驚き過ぎたのか呆然とした表情で辛うじて言葉を返しただけだった。
「え…あ…うん?そう、だな?」
(まあまだ実感は湧かないか)
それでもいい。
どちらにしろ明日にはプロポーズするんだし、そしたら嫌でも実感が湧いてくるだろう。
「もう離婚届にもサインしたんだ」
そう言って離婚は確実だと笑顔でハルへと伝え、そのまま『明日の夕方、ここに来て欲しい』と伝えた。
でも返事がない。
何やらグルグル考え込んでいる様子。
「ハル?」
「…………」
「ハール」
ツンツンと頬をつついて意識をこちらに無理矢理戻す。
「ハル?聞いてるか?」
「え?!き、聞いてる!ちゃんと聞いてるよ!」
「そうか。ほら、これがその証拠。ちゃんとサインしてるだろう?」
そう言って実際にサイン入りの離婚届を見せて、これで安心だろうと示して見せた。
なのにハルの表情は曇ったままだ。
もしかしてまだ妻を気遣ってるんだろうか?
(やっぱり嫌だな)
最後の最後までハルの心を占める妻に嫉妬の気持ちが込み上げる。
「ハル。大丈夫だから。ほら、ロールキャベツ、美味しいぞ?」
そう言いながら俺はハルの意識を別のところへと持っていく。
(言わない方が良かったか?)
突然プロポーズの方が良かったかもしれないとチラリと思う。
でもやっぱり本当に離婚したのかが気になったら断ってくる可能性もあっただろうし、これで良かったんだと思う自分もいた。
何はともあれすべては明日だ。
初めて会う妻は俺にどんな印象を持つだろう?
結婚相手を放置して家にも帰らない冷血漢?
それとも話し合いすらしようとしないドクズな男?
なんでもいい。
どんな批難も受け止めよう。
白い結婚を成立させるため三ヶ月放置したのは事実だし、平手打ちされたってこちらは文句も言えない立場だ。
でも結果的に向こうだって傷は浅くて済むんだし、慰謝料だってもらえるんだから悪くはない話だろう。
きっと上手くいく。
そう思いながら、俺は今日も愛しのハルを抱いた。
翌朝、俺は久し振りに冒険者としてではなく、貴族としての衣服に身を包んだ。
髪も整え背筋を伸ばし、戦いに赴く時同様に気合いを入れる。
離婚届は封筒に入れて胸元へ。
そうして準備万端、屋敷へと向かった。
久しぶりに屋敷の門をくぐると、すれ違う見知った顔が驚きの表情を俺へと向けてきていた。
それはまあ当然だろう。
これまで没交渉だった相手がやっと顔を見せたのだから。
「シーファス様!お帰りなさいませ!」
家令がバタバタと駆けつけ、俺を出迎えてくれる。
「妻は?」
「奥様はお部屋の方にいらっしゃいます。二階南奥の部屋でございます」
「ああ、あそこか」
日当たりも良く、位置的にも人通りが少なくて、静かで落ち着く広々とした部屋だ。
きっと少しでも心地よく過ごせるようにとその部屋を宛がったのだろう。
「お戻りになられて本当に良かったです。どうかじっくりお話しになってください」
恐らく家令は離婚の話し合いに来たなんて夢にも思っていないのだろう。
夫婦関係がこれで真面になればとでも思っていそうだ。
だからこそここで余計なことを言うつもりはない。
猛反対に会うのが関の山だとわかり切っているからだ。
面倒事は最小限にしておかないとハルにプロポーズしに行く時間がなくなってしまう。
(さっさと終わらせよう)
そして俺は教えられた妻の部屋へと向かうべく、階段へと歩を進めた。
明日はきっと記念すべき日となるだろう。
そう思いながら愛するハルへのプロポーズの言葉も考えた。
明日は役所に離婚届を出しに行ったその足で花を買いに行こう。
それを持ってハルにプロポーズをするんだ。
そうと決まったら、今日の内に『明日の夕方会いたい』と伝えておかなければ。
そんなことを考えながら朝からギルドでハルを待ち構えた。
「今日はポイズンスネイクの討伐を受けてみたけど、緊張する」
「毒消しのポーションも持ってるから大丈夫だ。俺もフォローするし、気負わず挑戦したらいい」
「ありがとう」
毒持ちの魔物にソロで挑む際は確かにリスクが高いから怖いだろう。
でも俺はついててハルを危険な目に合わせるはずがない。
ここはドーンと頼ってほしい。
(ハルも最初の頃に比べて随分強くなったし、大丈夫だろう)
そうして危なげなくポイズンスネイクを倒し、ついでに別件で受けてた俺の依頼もこなしてからギルドへと帰った。
記念すべき明日に向けて幸先のいい充実した一日だったと思う。
だからご機嫌でその日の夕食をハルと食べていたんだが、そんな俺を見てハルが不思議そうに尋ねてきた。
「シーファス。随分機嫌がいいけど、何かいいことでもあったのか?」
「ああ。やっと憂いが晴れるんだ」
「憂い?」
「そう。明日、やっと妻と別れられるんだ」
そう言ったらハルは驚いたのか大きく目を瞠り、言葉をなくしていた。
「ハルに何度も妻の話を持ち出されてきたけど、これでやっとハルの心も晴れるな」
喜んでもらえるだろうか?
そんな期待を込めてハルを見つめたが、ハルは驚き過ぎたのか呆然とした表情で辛うじて言葉を返しただけだった。
「え…あ…うん?そう、だな?」
(まあまだ実感は湧かないか)
それでもいい。
どちらにしろ明日にはプロポーズするんだし、そしたら嫌でも実感が湧いてくるだろう。
「もう離婚届にもサインしたんだ」
そう言って離婚は確実だと笑顔でハルへと伝え、そのまま『明日の夕方、ここに来て欲しい』と伝えた。
でも返事がない。
何やらグルグル考え込んでいる様子。
「ハル?」
「…………」
「ハール」
ツンツンと頬をつついて意識をこちらに無理矢理戻す。
「ハル?聞いてるか?」
「え?!き、聞いてる!ちゃんと聞いてるよ!」
「そうか。ほら、これがその証拠。ちゃんとサインしてるだろう?」
そう言って実際にサイン入りの離婚届を見せて、これで安心だろうと示して見せた。
なのにハルの表情は曇ったままだ。
もしかしてまだ妻を気遣ってるんだろうか?
(やっぱり嫌だな)
最後の最後までハルの心を占める妻に嫉妬の気持ちが込み上げる。
「ハル。大丈夫だから。ほら、ロールキャベツ、美味しいぞ?」
そう言いながら俺はハルの意識を別のところへと持っていく。
(言わない方が良かったか?)
突然プロポーズの方が良かったかもしれないとチラリと思う。
でもやっぱり本当に離婚したのかが気になったら断ってくる可能性もあっただろうし、これで良かったんだと思う自分もいた。
何はともあれすべては明日だ。
初めて会う妻は俺にどんな印象を持つだろう?
結婚相手を放置して家にも帰らない冷血漢?
それとも話し合いすらしようとしないドクズな男?
なんでもいい。
どんな批難も受け止めよう。
白い結婚を成立させるため三ヶ月放置したのは事実だし、平手打ちされたってこちらは文句も言えない立場だ。
でも結果的に向こうだって傷は浅くて済むんだし、慰謝料だってもらえるんだから悪くはない話だろう。
きっと上手くいく。
そう思いながら、俺は今日も愛しのハルを抱いた。
翌朝、俺は久し振りに冒険者としてではなく、貴族としての衣服に身を包んだ。
髪も整え背筋を伸ばし、戦いに赴く時同様に気合いを入れる。
離婚届は封筒に入れて胸元へ。
そうして準備万端、屋敷へと向かった。
久しぶりに屋敷の門をくぐると、すれ違う見知った顔が驚きの表情を俺へと向けてきていた。
それはまあ当然だろう。
これまで没交渉だった相手がやっと顔を見せたのだから。
「シーファス様!お帰りなさいませ!」
家令がバタバタと駆けつけ、俺を出迎えてくれる。
「妻は?」
「奥様はお部屋の方にいらっしゃいます。二階南奥の部屋でございます」
「ああ、あそこか」
日当たりも良く、位置的にも人通りが少なくて、静かで落ち着く広々とした部屋だ。
きっと少しでも心地よく過ごせるようにとその部屋を宛がったのだろう。
「お戻りになられて本当に良かったです。どうかじっくりお話しになってください」
恐らく家令は離婚の話し合いに来たなんて夢にも思っていないのだろう。
夫婦関係がこれで真面になればとでも思っていそうだ。
だからこそここで余計なことを言うつもりはない。
猛反対に会うのが関の山だとわかり切っているからだ。
面倒事は最小限にしておかないとハルにプロポーズしに行く時間がなくなってしまう。
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そして俺は教えられた妻の部屋へと向かうべく、階段へと歩を進めた。
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