エニグマ(王道ファンタジーを目指した小説です。)

sirosai

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第8話 別離

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「クレセントブレイズ!!(三日月の蒼火炎)」

 黒フードは剣を勢い良く振り払い、イグニスが飛ばした蒼い斬撃を斬りはらった。

 その瞬間、イグニスは黒フードの目の前に立っていた。イグニスは斬撃を出した瞬間に自身も飛び、斬撃に身を隠していたのだ。イグニスは黒フードの横を一瞬で通り抜け、剣を振り下ろした。

「慈悲を受け取れ。フレム・クロス!!(蒼炎の十字架)」

 イグニスによって黒フードへ蒼い斬撃が繰り出され、一秒遅れて蒼炎が十字架の形で現れる。

「ぐはあっ!!」

 黒フードの口、目、鼻から蒼炎が吹き出した。イグニスが黒フードを倒したと思われた次の瞬間、黒フードはイグニスの目の前に現れ言葉を発した。

「なるほど。あやつらでは荷が重かったな。」

 黒フードは左手でイグニスの頭を鷲掴みにし、左手につけている紫色の指輪の名前を叫んだ。

「レーヴァテイン!!」

 指輪に紫色の光が灯り、手の周りには黒い稲妻が走った。

「バリバリッ!!」

「くううっ!! 」

 イグニスの全身に黒い稲妻が移り、イグニスの体に痺れと激痛を与えた。

「馬鹿な!障壁を展開している私に、ここまでのダメージを与えるだと!!!」

 “蒼炎の衣”という障壁を纏っていたイグニスには、大抵の攻撃は通らない。しかし、黒フードの攻撃は、そのとてつもない力によって障壁を貫通し、イグニスに対して直接ダメージを与えた。

 四人が散らばった後、面の少年とベヒモスは対面に向かい合った。

「外は久方ぶりだな……。相手をしてやろう。坊主」

 鎧を纏った者はベヒモスの仮の姿である。高位の存在であれば己の形を変えることは、さほど難しいことではなかった。
 とてつもない力を持つベヒモスに対して、面の少年は動じることなく、そこに立っていた。ベヒモスは左手の手のひらを、少年に向けて突き出した。

「あれ。」

 ベヒモスが発した一声は、部屋に反響し鳴り響いた。
 ベヒモスの手の平からは蒼い魔法陣が現れ、そこから発生した蒼炎の攻撃が、幾度となく少年を襲った。
少年はその攻撃を上手くかわし、長いロングソードを右手に持ちかえ、刃を肩に乗せながら高くジャンプした。ジャンプの衝撃で天井でしゃがむ状態になった面の少年は、横に剣を一度振り回す。そこから発せられた黒い渦のようなものは、やがて球体となってベヒモスに向けて放たれた。ベヒモスが蒼炎を放つも、その黒球は炎のことごとくを吸収してしまった。それに気づいたベヒモスは、すぐに回避行動をとりイグニスの方を見る。イグニスを見たベヒモスは、左手を開き黒フードに向けて再び声を発する。

「あれ。」

 ベヒモスの手の平から、再び蒼炎が放たれた。それは勢い良く黒フードに向かっていった。

「んっ!!?」

 黒フードは蒼炎をかわす為に、イグニスの頭から手を離し後ろに跳んだ。再び二対二の形となった四人は、相手の出方を窺う形となった。

「ぐっ、助かった!」

 イグニスはベヒモスに礼をいう。

「ふん。世話がやける。」

「やるものだな。さすが陸の王と言われるだけのことはある。」

 黒フードは暗闇の中から、ベヒモスの存在を改めて認識した。

「ほう。私のことを知っているのか?」

「知らないでいる方が難しいと思うが?」

 黒フードはベヒモスの問いに対して、半笑いになりながら答える。

「団長!!」

 ニケ達はイグニスに追いつき、その場を見回して状況を確認した。ニケ達一向に気づいた面の少年は、ピクっと反応し、そっとため息をつく。

「ほう。これはこれはお姫様ではないか。」

 ベヒモスは珍しいものを見るようにナインを見つめ、喋り掛けた。

「そろそろではないか?」

 面の少年は、黒フードに向けて合図を送った。

「そうだな。」

 黒フードの言葉に疑問を持ったイグニスは、敵を刺激しないように質問を投げかけた。

「そろそろとはどういうことだ?!」

「そのままの意味さ。」

「ドオオオオオオオオオン!!!」

 城内で爆発音か鳴ると同時に、騎士が伝令を伝える。

「伝令!現在、城内の至るところで火災が発生し、敵兵と思われる黒装束の者達が、勢い良く攻め込んで来ております!!」

「くっ!!姫様を危険に晒すわけにもいかぬか!!」

 イグニス達は一刻の猶予もない選択を迫られていた。

「せいぜい抗ってみせてくれ。」

 黒フードが指をパチンと鳴らした瞬間、黒い渦が足元に現れ、黒フードと仮面の少年は黒い渦の中に消えていった。

「待てっ!!」

「トッ……。」

 人が膝から地面に崩れ落ちる音が鳴った。それは部屋で倒れている国王の身体を見つけてしまった、ナインによるものだった。

「魔術師よ!!早く国王のもとへ!!回復魔術を!!!」

「お父様あああ!!!」

 ナインは震える足で近くの者たちの間をくぐり抜け、国王のもとに全速力で駆け寄った。
国王は娘であるサーガの声が聞こえたことによって、奇跡的に自我を取り戻した。国王は力を振り絞り、娘に向けて話し始めた。

「おおお…。私のかわいいサーガよ……。最後に会えたことが……何よりも幸福である……。これは……神に感謝してもしきれんな……。」

「いや!そんなことを言わないで下さい!!まだ!まだ……。お父様に教えて頂きたい事や一緒にしたい事がたくさんあるのに!!……私は……お父様が……。お父様が…大好きなのです!!」

 サーガは大量の涙を流しながら、必死に父アーガイルに向けて言葉を発した。

「あああ、嬉しいよ。私にとって、世界の何よりも大事なサーガに……そんな事を言ってもらえるなんて……。」

「そうです!!だから!!まだっ、お父様は死ねないのです!今、皆が……直してくれています!!だから!そんな弱気な事を言わないで!!」

 サーガは父親アーガイルに向けて、弱気にならない様に懸命に話しかけ続ける。

「いいかいサーガ。お前にはかけがえのない母、マーレや仲間達がいる……。これからの人生は、大変なことも多いかもしれない……。けれど、決して……それだけでは、ないことを覚えておくんだ……。お前を信じるものを信じ続ければ、お前の未来は明るい。彼女も道を指し示してくれるだろう……。ゴフッ!!」

 国王の口から血が吹き荒れた。魔術師達が懸命に回復をさせようとしている事は、そこにいる誰でもわかる事であった。しかし、そこにいる皆は国王から流れる血の量を見て、どこかで諦めてしまっていたのだった。

「お願い!!私にできる事なら何でもするから!お父様を助けて!!」

 サーガの願いも虚しくアーガイルの身体からは血が流れ続けた。

「サーガ……。私は……。お前を……。」

「わかったから!もう喋らないで!!あとでゆっくり聞くから!!」

「ありがとう。愛しているよ……。」

 アーガイルは自分の残り時間を悟り、イグニスを呼びつけ合図を送る。

「イグニス!!」

「姫様……。申し訳ございません!!」

「ドッ!」

「うっ!」

 イグニスはサーガの首もとに衝撃を加え、サーガを気絶させた。

「イグニスよ……。」

「はっ!!」

「あれを……行う……。」

「っ!!……かしこまりました!」

 イグニスは拳に力を入れ、顔を隠すように地面だけをずっと見ていた。国王アーガイルはイグニスとベヒモスに話しかける。

「イグニス…ベヒモス…。マーレとサーガ、この国のこと……頼んだぞ……。」

「はっ!!!」

「ああ……。さらばだ。なかなかに楽しめたぞ。」

 アーガイルと親交の深いベヒモスも、別れを告げる。その言葉を聞いたアーガイルは、少し安心したように微笑んだ。

 イグニスはそこにいるすべての者に、部屋から退出するよう促す。アーガイルは姫の方を向いて、そこにいる何かに声をかけた。

「頼んだぞ……。」

 皆が部屋を出た後に、イグニスがドアを閉めた。そのタイミングで王のいる場所から大きな魔法陣が出現し、王の頭上で何者かの影が浮かび上がった。現れた影はアーガイルに話しかける。

「もう、良いのか?」

「ああ。もう……十分だ……。」

 魔法陣が床一面に広がり、光りが部屋を満たした。

 イグニスが率いる者達は、急ぎ抜け道に向かい始めた。

「くっ!あいつらは一体何者なんだ……。ヘキサグラムに匹敵する強さ……。只者じゃないぞ……。」

 イグニスは黒フード達の存在に、これまでにない危機感を覚えていた。

「またどこかで会うことになろう。」

 イグニスの中にいるベヒモスも、敵の強さを認めていた。

「とにかく、姫様には一刻も早く、安全な場所へ移動して頂かねば!急ぎ城を出るぞ!」

 ニケは静かに拳を握り締め、歯をくいしばっていた。何も出来なかった自分への未熟さに、何とも言えない辛い感情を募らせていた。
アギトと共に行ってきた訓練は、ただの遊びだったのだと思いしらされていた。

「強く……。強くなりたい……。」

 ニケのささやきを聞いていないふりをするメル。ニケをじっと見つめるアギト。三人はただただ走るしかなかった。

「あれだ。」

 イグニスの指示で、一行は書斎に入る。皆に合図を送り、本棚に並べられた一冊の本を引き抜く。

「みな下がれ。」

「ドドドドドド。」

 騎士三人で本棚をずらすと、そこには隠し扉があり、扉を開けると大人二人が同時にギリギリ入れるくらいの通路があらわれた。一行はナインを中間にして、順番に入っていく。

「ドスッ!!!」

「ぐああああ!!」

 人数が残りわずかにになった時、矢が人間の身体に突き刺さる音と、騎士の悲鳴が鳴った。

「きゃああああ!!」

 ニケ達が振り返ると、メルの真横にいた騎士が矢で射抜かれていた。

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読んでいただきありがとうございます。

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