エニグマ(王道ファンタジーを目指した小説です。)

sirosai

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第23話 魔法

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「ガサガサッ!」

「チャン!」

 森で待機していたフェルトは、近くから聞こえた物音に対して即座に反応し、剣に手を置いた。

「お待たせしました!」

 茂みから現れたのは、偵察から戻ったニケとエディであった。すでに夜11時を回っていた時の事である。

「はあ。お前達か。」

 露骨に気の抜けた顔を見せるフェルトは、剣を持つ力すらもったいないと言いたげに剣を鞘にしまう。

「なんだなんだ、その言い方は。もっと喜んでもいいんだぜ!」

 目を細めてぷいっと顔を背け、再び街の方を監視するフェルトに、エディは不服だと言いたげな顔でちょっかいを出す。

「ニケー。ブンブンうるさいハエがいるから退治しておいてくれ。これも修行だからな。しっかりやっておくんだぞ~。」

 フェルトの言葉を聞いたニケとエディの二人は、黙って顔を見合わせた。

「なんだよ!」

 目が合うニケに、エディは少し顔をしかめてボソっと呟いた。二人が街から戻って少し時間が経った頃、アルバートがいつもいつもお前達はと言わんばかりな顔で会話に入りはじめる。

「二人共、ご苦労だったな。ニケ、偵察はどうだった?上手くやれたか?」

「はいっ!色々とありましたが、多少の情報は得られました!」

 アルバートの労いの言葉に、ニケは人懐っこいウサギのような顔で答えた。
エディは、酒場で聞いた暗殺者達の会話から彼らとの間で起きた戦闘の事まで、アルバート達に余す事なく話した。

「なるほどな。確かに、エルミナス王国とリンフォード商会は深い仲だった記憶がある。彼らと会えば何らか有益な情報、もしくはこの状況の打開策が見つかるかもな。」

「そうですね。リンフォード商会ともなれば、保有している財力や物資も他の商会とは比べものになりません。たしか小国並みの軍事力も持ち合わせているはずです。」

 アルバートとフェルトの話し合いから、翌日の行動予定が決まろうとしていた時、エディがニケに声をかける。

「よしっ!そろそろやるかっ!ニケっ!」

 エディの言葉を聞いたニケは、ポカンとした表情でエディの事を見ていた。ニケはおそるおそるこれから何をするのかエディに尋ねる。

「えっ?……。なっ何をですか?…やる?」

「決まってるだろ?魔法だよ。」

 ニケは、やっとの思いで帰って来たと思った束の間、ヘトヘトの身体を休める事が出来ないと悟り、身体の力が一気に抜け、スライムのように地面に座り込んだ。

「ほっ……本当にやるんですか?!ここ、これから?」

「大丈夫大丈夫。説明するだけだからさ。」

 エディは、脱力して朦朧としているニケの隣に座り、魔法に関する説明を始めた。

「いいか?まず魔法とは、個々に秘められた内なる力、"魔力''を媒体に発生させる力のことを言う。個々の魔力には、蓄積量が決まっており、その蓄積量は人それぞれだ。それは成長によって増えたり、変わらなかったり、それもまた人それぞれだ。そして人の持つ魔力量には、遺伝的要素が強い。親の魔力量が多ければ多い程、その子もまた魔力量を多く持つ確率が高くなる。ある家系が常に位の高い地位にいる事が少なくないのは、この事に由来する。親が優秀であれば、子もまた優秀になりやすいからな。」

「なるほど……。」

 エディの説明に、ニケは頷きながら耳を傾けていた。

――父さんは、どのくらいの魔力量を持っていたのだろうか……。魔法が使えたのだから、最低限の魔力はありそうだけど……。

「そして、魔法の属性には五つの種類がある。火、水、風、土、雷の五つだ。
心理の火、治癒の水、幻想の風、創生の土、激成の雷と言った方が理解がしやすいかもな。
まず、魔法の技には二種類ある。直接攻撃と間接攻撃だ。
直接攻撃とは言わずともわかるかもしれないが、その属性による物質の攻撃だ。敵を燃やしたり、きりさいたりと肉体的なダメージを与える事ができる。そして間接攻撃とは属性の本質から来るものだ。

 火属性は心理。すなわち心を操作するものだ。宗教等でも火が使われたりするだろ?
相手の心に直接干渉して、攻撃をする事等が可能だ。

 水属性は治癒。何らかの攻撃で受けたダメージを、回復する事等が可能だ。仲間にいればとても心強い力となる。

 風属性は幻想。空間に対して干渉する事等が出来る。音や空間を変化させられる。さっき戦った敵が使っていたのがこれだ。

 土属性は創生。アルバートさんが得意とする魔法がこれだ。アルバートさんは奇跡と土属性の魔法を掛け合わせることで、超高難度の
召喚魔法も難なく出来る。まあ、召喚魔法は土属性だけに限らないがな。相性が重要なのは確かだ。

 雷属性は激成。これは硬さや速さ、そして威力の支援等を得意とする。武器に雷属性の魔法を使えば、刃の強度を上げる事ができたり、人に使えば動きの速さを上げる事もできる。

 俺たちはこれらの技術を応用して、魔法を用いた戦闘を行っているんだ。」

「は、はあ……。」

 エディの説明を聞くニケは、頭の中で整理をしながら話を聞くが、理解が全く追いつかず、ひたすら頭を抱えていた。

「そしてこれらの属性には、似て非なる属性が存在する。
それが、火は闇、水は海、風は空、土は地、雷は聖。これも後に大事なポイントとなってくる。まあ、ここまで理解出来れば基礎の基礎は把握出来たと言っても問題ないだろう……。なっ?簡単だろ?」

「は、はあ……。」

 ニケが混乱しながらエディの話を聞いているその横で、アルバートとフェルトはお土産のハンバーガーに舌つづみをうっていた。

「あれ、まだやらせます?」

 フェルトは、エディを指差しながらアルバートに指示を仰いだ。

「ははは。エディ、そのくらいにしておいたらどうだ。詰め込みすぎは良くないだろ。」

「うっ。まあ、そうですね。」

「ニケ、魔法というのはな、とても奥深いモノなんだ。魔法の強さは決して血統だけで決まるわけではないし、奇跡との組み合わせだってある。明日、街に行った時にでもまた話してやろう。少しずつ学んでいけばよいのだ。」

「はっ、はい!」

 ニケの返事を聞いたアルバートは、エディとフェルトにこれからの指示を出す。

「よしっ!今日はもう寝て、明日に備えよう。エディ、フェルト、三人で交代しながら見張りをしよう。」

 アルバートはいつものように、ニケを除く三人で見張りをするよう指示を出す。負担の大きい事はなるべくニケにさせないようにするというのが、アルバートの考えであった。

「あっ!アルバートさん!僕も……。」

 ニケは、一人だけしっかりと休憩を取っている事が申し訳ないという思いから、アルバートに毎回声をかけていた。

「アルバート様、私達だけで大丈夫ですよ。」

「ええ。俺達に任せてお休み下さい。」

 フェルトやエディも、気を使いアルバートに休むよう伝えるが、アルバートが聞き入れた事はなかった。

「エディ達は戦闘もあったんだ。先に休め、これは命令だ。明日は街に行って宿をとるからな。それまでは我慢して欲しい。」

「はっ!」

 エディ、フェルト、ニケはアルバートの指示に強く返事をした。三人は、アルバートの性格に完全に惚れていたのだった。三人は、上に立つ者とはこういう人間なんだという事を、日々学んでいたのだった。

※∮※⌘※∞※⁂※§※∮※⌘※⁂※

 リンフォード商会本部。暗殺者に命を狙われた商人の男は、執務室で事務作業を行なっていた。

「ニケ……。」

 商人の男は事件が起きた時から、自分を救ってくれた少年の事をずっと考えていた。男が物思いにふけっていると、男が一人でいる部屋に勢いよく一人の女が入ってきた。

「ガチャッ!!」

「ケイン!!」

 名前を呼ばれた商人は、心ここにあらずと言った顔で正面を向く。そこには商会の従業員である女が立っていた。

「おお……。ナディアか……。どうした?」

「どうしたではない!命を狙われたと聞いたぞ!大丈夫だったのか!?」

 ケインは考え事に夢中で、身の安全を心配してくれているナディアの言う事すらも、上の空で聞いているような状況であった。

「ああ、何とかな。二人の通りすがりの者に助けられたよ……。」

「……はああ、お前ってやつは!少しは用心をしろ!自身の立場をわかっているのか?!まったく!」

 ナディアは激怒しながら、ケインを叱りつける。勿論、それはケインの容態を気遣ってのことであった。

「ああ、すまない。心配をかけたな。」

「今お前がいなくなったらリンフォードがどうなるのか!わかっているのか!?……まったく……頼むから……会長としての自覚をもっと持ってくれ!」

「わかったわかった。でもな、もし私がやられたとしてもお前がいるじゃないか。私の仕事を全て理解している補佐役のお前なら、気兼ねなく後を任せられるというものだ。」

「バカ者が!」

 安心しきった顔でナディアを見るケインに、ナディアは話にならんという顔で一蹴した。

「正直な話、お前に後を任せる事において、業務を理解しているとかしていないとかなんてものはどうでもいい事なのだ。古くからの友人であるお前だから頼みたいのだ。」

「はあ……。もういい、わかったからそんな仮定の話はもうやめよう。そんな事より……どうせ明日も街に行くのだろ?」

 長年、ケインの補佐役を務めるナディアにとって、街へ行くなと言う助言は、何の意味も持たないという事をわかっていた。

「ああ。明日は大事な会議があるのだ。」

「はあ……。もう止めないよ。ちゃんと護衛の者を付けて行くんだぞ。それに、刺客にも気をつけるんだ。」

 頭を抱えるナディアは、気疲れからか倒れる様にして椅子に座り込む。ケインが命を狙われたと聞かされ、猛スピードで走って来たのは誰の目から見ても一目瞭然であった。

「ああ。すまない。」

「反省する気があるのかないのか……。まったく……。」

 静かに部屋を出て行くケインは、疲れて休んでいるナディアに気を使い、静かに部屋のドアを閉めた。廊下を歩くケインは、何かを決意した様な眼差しで、自身の部屋に戻っていった。

「忘れ形見かもしれないのだ……。今行かねば……。」

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読んでいただきありがとうございます。

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