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序章
ヘラ様の結婚相談所(強制)
しおりを挟む「と、いうわけで、あなたには女子力をかんすとまで授けます」
「はっ?」
女子力をカンスト?
いったいどうなるのだろう。
さっきのヘラ様の言いようでは、物理力ではないようだが……。
「まず、容姿は愛嬌のあるかわいらしい美人になります。過去にあなたが美女よりかわいい美人になりたいと思ったからですね。
わたくしも概ね同意します。美しすぎると高嶺の花扱いされたり、権力者に狙われかねません……ウチの駄神みたいなね……」
お、おぉう。ヘラ様、背後が黒いです。
あと寒い。
さっきまで玉虫色に光ってたのが、今は真っ黒ですよ。
「玉虫色って……あなた、本当に女子力がないわねぇ」
いや、そんなこと言われても。女子力がない喪女だから今ここに私はいるのでは?
「そうね。今さらでした。
それで、あとは家事能力が全て完璧になります」
それはそれで有り難いです。
美人で家事能力最高。これで結婚できなかったら呪われてるな……。
「いえ、あなた、現世では愛嬌もあって小器用で、そう不足なかったではありませんか。それでも喪女だったのです。すでに呪われているのです」
「え、えぇえ!? じゃあ来世もダメじゃないですか!」
「ですから、女子力です。
まず男性と関わると好感度が上がります。幸運値も上がるので、周囲から愛されることでしょう」
「むやみやたらに上がると怖いんですが」
「そこは程よく調整してください。あなたの心がけ次第です」
心がけで調整できる……じゃあ大丈夫なのか?
「ただ、わたくしの神性から、既婚者や婚約者のいる男性の好感度はある程度から操作できません。あと、将来を考えている思い会うふたりもできません。ただ、告白などしていない、将来を考えていない相手なら大丈夫です」
「ふえっ」
大丈夫じゃない!それ、全く大丈夫じゃない!
略奪愛だよ!?
「これくらい、略奪にはなりませんよ。けれど気になるのなら、そうでない方を選べばいいのです」
こちらに選択肢があるのなら、大丈夫かな?
「ただ、先ほども言ったように、あなたは呪われているほどに喪女なのです。自分から異性に愛情を向けられないかもしれません」
「そ、そんなことないですよ……」
「いえ、きっとそうです。現世であなたが喪女だった最大の理由は、趣味に生きたから。それと無気力です」
冷静に自分のことを指摘される悲哀に打ちひしがれていると、そんなことには構わない神さまは言い渡す。
「ですので、あなたが適齢期を過ぎても思う方がいない場合、わたくしの独断と偏見により、結婚相手を斡旋いたします」
「ひえっ! ま、待ってくださいヘラ様」
「いえ、待ちません。決定事項です。
ここまで厚遇して結婚しないなど、契約違反とみなします」
いやいや勝手に連れてきて勝手に転生させて、契約違反って。契約に納得してませんから!
「勝手と言っても、魂は死んだらいずれ転生します。得を積んだり神に見初められない限り、選択肢などないのです。
わたくしはただその転生先を示して、女性に生まれるとして能力を授けているのです。厚遇以外のなにものでもありません」
そうなのかなぁ?
死んだら結婚を強要される……なんかすごいな。
いやでも好きで喪女だったわけでも、結婚しなかったわけじゃないのに。
たまたま死んだ喪女だからって、強制はないでしょう。
「いいえ、あなたは結婚メンドクサッと思っていました。選んで喪女だったのです。
わたくしも、根っからの喪女以外は普通に転生していただこうと思っています。彼女たちは次の世で結婚してくれるからです。
つまり、わたくしが声をかけているあなたは、魂からの喪女なのです」
そんな完全防備な喪女がいるのか!?
それが私!?
「昔は良かったのです。そんな喪女でもそう瑕疵がなければ、必ず結婚を斡旋する方がいました。しかし、今の世ではなかなか難しい……そこで、死んだ喪女の中から真の喪女を選び出し、女子力を与えて転生していただく。
こうして根っからの喪女の数を減らしていくのです」
そこまでしないと私は延々喪女なのか。
確かに結婚して配偶者を気にしながら生きるのはメンドいから、結婚はいいかなぁと思ってた。
けど、そんな私でも熱烈に求められたりとか、一応夢は見てたのにな……。
「あなたは異性といい雰囲気になる前に逃げていました。だからこその喪女です。
結婚したくてたまらないのに結婚できない女性もいるのですよ」
ヘラ様、容赦ないなあ。
へーへーすいませんねぇ、根っからの喪女で。
私が大人げなく唇を尖らせていても、ヘラ様は構わない。
「拗ねていないで、もっと前向きになってください」
いや、死んでるんで、前向きって……。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
次回、
続・ヘラ様の結婚相談所(条件付き)
です。
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