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序章
ヘラ様は女子限定
しおりを挟む……生きているのが嫌になった。
「あなた、もう死んでますわ」
だから、精神的に!
「それと、あなた、普通に喋ることができますわよ。まあ、ここでは魂だけなので、なんだろうが筒抜け?ですけれど」
「えっ……て、ほんとだ」
「では続けます。
近年の喪女に対応すると思い立ちましたが、生きている喪女に加護を送っても、効果があまりないのです。
そこで、わたくし考えました。最近日本で流行している転生で、初期から加護を与えれば違ってくるのではないかと」
この女神さま、なんか酷い。いろいろ酷い。
「酷いとはなんです。
本来なら生まれ変わるのに修行や時間が必要なところを、加護を与えて転生させるのです。
感謝しろとは言いませんが、酷くなどありません」
「いや、思いっきり実験台って本人に言うあたり……」
美香は神さまの予想外の残念ぶりに、ちょっと近親感を覚えた。
見た目とオーラ以外、けっこう人間くさい。
初手から愚痴ってたし。
あれ、結構付き合いやすいのか神さま……。
「それはそうです。わたくしを創ったのは世界にあまねくエネルギーと、ひとの思念。
わたくしをわたくしと定めたのはひとなのです。ですから、わたくしはわたくしらしく、結婚を祝福して崇めてもらわなければならないのです」
なんかいきなり飛躍した!?
「ただ、男はダメです。女性を結婚して幸せにした方なら見所はありますが、基本男は愚かです。 ですから、転生させる前に修行が必要です。
つまり、今回の転生は女性限定です」
ああ、ヘラ様って旦那が超絶浮気男のゼウスだ!
なんであんなのと結婚したのかなあヘラ様。気の迷い?
「聞こえていますよ、美香。
まあ、そうですね。迷えるものなら迷いたかったですが、選択肢が一択だったのです」
「強制で浮気男!」
「ただの浮気男だけならばまだよかったのですが、ひとにも神にも迷惑をかけ、挙げ句我が子へのあの仕打ち……!」
(注・迷惑やあの仕打ちを調べると、15禁相当だと思う)
神さまが神々しく輝きはじめた!
そして、なんだか圧力がかかっているみたいに苦しい。
気を静めてくださいとお願いするしかできなかったが、すぐにヘラ様は平静を取り戻したようだ。
「取り乱しました。昔のことを思い出すとつい……。
ですので、わたくしは女性の味方です。男は他の神とかにでも救いを求めればいいのです。ゼウスとかエロスとかに!」
いや、まだ平静じゃなかった。
「あと、男はすぐ力だとか特別な能力とか言い出しますから、そんなことはアテナとかに祈願すればいいんです」
ちょっとひがみが入ってると思うのは気のせいでしょうかヘラ様。
「女性の幸せは過ぎない美しさと心の持ちよう!」
あ、これはアフロディーテにかな。ディスってるよね?
「そして、圧倒的に女子力です!」
「え、えぇー?」
行き着く先が女子力。私には圧倒的にない女子力ですか。
というか、女子力ってなんですか。
男を落とす力(物理)ですか。
「そんな力ではありません。相手の方、死んでしまうではないですか、物理では」
「落とすって、そっちじゃなく……」
「あと、女性から夜這う風習もあったようですが、現代社会ではとても幸せになれるとは思えません。
やめておきなさい」
「いや、そうじゃなく……」
「男の矜持とは、本当に厄介なのです」
やれやれ、みたいに人間らしい仕草で首を振る神さまも、ずっと神々しく美しいが。
だめだこの女神さま。過去が酷すぎて話にならない……。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
次回、
ヘラ様の結婚相談所(強制)
です。
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