かみさまの落とし子 ~女神様は喪女撲滅活動をはじめました~

高梨

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第一章 異世界で女子力について悩む

まだまだ貢ぐ領主さま(シム○ティ○)

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フローラがしゃべるのはいつかな……


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


領主さまの本気は凄かった。

地方の一領主と侮るなかれ。領主はその地域の支配者だ。
ヘタを打っていない限り、領民と金と資材は一存で動く。

しかもディールさまは愛され領主。

その彼が、落とし子のために領地の端に街道を通すと決めたのだ。
領民も地域が発展するのに反対しない。

この際、金の徴収・資材の徴発などをしなければ、領民にマイナスはない。
そして、噂の落とし子に会いに行きやすくなる。
メリットしかない。


領主さまはフローラのために道を通したい。
村人は領軍が来やすくなって、フローラは安全。
地域の人は経済が発展する。

まさにWin―Winの関係である。


と、いうわけで、まず派遣されている領軍の指揮官が領主さまのもとへ呼び出された。

ぼっろい民家(大きめ)にボロボロの領主ーー膝には幼女。
これを見ても表情を変えずに耐えた指揮官は、当然出世していく。


「まず、村の防備に力を入れてほしい。この村には街道を通す。
いずれ村の手前で、ここに立ち入るのはきちんとした人間か調べねばならなくなるだろう。そのための用意だ」

領主が幼女のために街道を造ると言っても、指揮官は当然のように頷いた。

それもそのはず。領主さまは信心深く、地域の教育にも熱心だった。
教え所と呼ばれる子供向けの教育機関を神殿に併設している。つまり、領民みな信者計画である。
幼少期から自然と染み込まされる信仰に、指揮官も染まっていた。


フローラたん万歳の心境である。


誰も止めるもののいない大事業は、トントン拍子に進んでいく。

まず、簡単な天幕を広げて村の周囲を守っていた兵士に、後追いをしてきた荷が届いた。
馬車も荷馬車もある程度の速度で、慎重になら来られるのだ。

そこからが早かった。

村に柵が作られ、絞られた出入り口には兵士が立番。
兵士が交代し、食料や材木・金属も到着する。
道を整備するための資材も。

道を作り出すと、途中の村に人が来てお金を落としていく。

フローラの村にも道を作るための人間が来て、寝泊まりした。

土地だけは山ほどある田舎だ。そこで、いっそ新しく建物建てるか、となった。
最近は領主さま一行も、兵士もいるし。建てて損はないだろう。

でも領主さまに使っていただくなら、どんなふうにすればいいのか。

結局、村人は領主さまにお伺いをたてた。

したら、領主さま、もう手配済みだと言う。


「建材が届くのに、最低限の道がいるでな。もう少しかかる」

そう言う領主さま、まだ一度も帰っていない。

領主屋敷を放置する領主。
住んでいるのは相変わらずボロい寄り合い所(臣下含め)。
お膝にはフローラを乗せている。

初孫にデレるおじいちゃんみたいである。

しかし仕事はできるディールさま。
村人を寄り合い所に集めて、説明会をしてくれた。


「これからこの村に、私の別宅を建てる。
それができたら、村のものはしばらくこの別邸で暮らしてほしい。
その間に、村の家などを建て替える」


驚異の村中リフォーム計画(強制)が発動された!

突っ込みたい所満載だが、言い出したのはこの地の支配者。

野っ原の農村では、立派な木材などほぼないので、家を建てるには物凄く金がかかる。というより、木材集めるのに村長の号令がいる。
村の一大事である。

つまり、たいへん有り難い申し出である。
受けるしかないのだが。

こんな計画、ふつうの領主なら立てないが、ディールは信心深く、理性的で、合理主義であった。

まず、フローラに嫌われたくない。
そして彼女をしかるべき場所へ連れて行くには彼女は幼すぎるし、まだしばらく手元にいてほしい。
なら安全がいる。
で、兵士を手配。村も囲んだ。

次は健康に、安全に過ごせる場所がいる。
で、村の再開発決定。

再開発するなら村民の住む場所がいるーー別宅建てるつもりだし、そこで。


誰一人損はしていない。
ただ、領主さまの威厳とかは一切ない。

あと領主さまのお屋敷で暮らすことになった村民が感じるであろうストレスだけが、問題であった。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

次回、

リゾートホテル(領主さま別宅)に住む村民

です。
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