かみさまの落とし子 ~女神様は喪女撲滅活動をはじめました~

高梨

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第一章 異世界で女子力について悩む

リゾートホテル(領主さま別宅)に住む村民

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恋愛ジャンルのつもりなのに……


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・



領主さまの別宅は、景色のいい高台に作られた。

眼下に広がる農村風景(現在建設中)。
目に優しい小麦畑(日本国産)と、丹精込められている野菜たち(JA基準)の瑞々しい輝き。
空は広く、なだらかな丘には花畑(食べられます)。


……ただのド田舎だった農村は、都会に疲れたお偉いさんには素敵なリゾートになった。

この場合、マジで不便なド田舎ではいけない。
街からある程度の離れているのはいいが、きちんと道が通り、素朴だが綺麗な宿泊施設がいる。

そして、通信ができなければいけない。

近年、ド田舎の民宿でもWi-Fiがないと客は来ない。
不便さを楽しむために田舎へ行くとしても、最低限の連絡手段がないと、何かあったときに困る。

Wi-Fiはあれば豪華、最低限は電話。

行った先で電話が通じないとか、悪夢である。
密室殺人事件が起こりそうだ。


この世界はマジで権力者に権力が集中している。そのため、偉い人はいざというとき部下に指示が出せなきゃいけないし、不測の事態にも対応しなければならないので、部下からの連絡もいる。

間諜のたぐいですまない公式な連絡も入る。

それに対応するため、このリゾートホテル(領主別邸)、でっかい街にしかない郵便業者が入っている。


領地の端に郵便業者を誘致したことにより、通信環境が激変。
田舎でも超便利になった。
イコール領民大喜び。

今まで連絡の不便さから都会に住んでいた人間が、郊外に移動し始めた。
道ができたので、荷も届く。
これで都心部の過密化が解消。

恐るべきフローラ効果である。


領軍に守られた安全な新興住宅には入りたい人が急増しているので、近隣の村を併合してある程度の大きさにする計画も立っている。
マジで、シ○シ○ィーになってしまった。

今まで村人が見たこともないような店も、誘致が決定している。
洋服屋、雑貨屋。あとお約束のギルド。

テンプレにこだわった神さまの影響か、この世界にはギルドが存在する。
まず、冒険者ギルド。これがなきゃ始まらない。
あと、傭兵、鍛冶師、薬剤師、家令、家政婦、絵画。まだまだある。

ヘラ様、仕事しすぎである。

とりあえずフローラの村ーーセス村と言うーーには、冒険者と鍛冶師、薬剤師と家令・家政婦ギルドが来ることが決定している。
こんなごり押し、普通はできないが、ディールさまの本気は凄かった。


実はディールさま、ゴリゴリの軍閥の、めっちゃお偉いさんであった。
若い頃は軍隊で生活していたこともあり、騎馬で行軍なんて発想が出たのだ。
普通の貴族はどんなに急いでも、馬車で移動する。

まあ、実際に偉かったのはディールの先代領主であるが、もう他界しているので人脈を受け継いだのだ。


誰でも強い軍隊にいざというときは守ってほしい。
だからいろいろ融通してしまう。
これ、癒着である。
しかしこのおかげで、セス村の大改造は完成した。

ーーまだ建設途中だが。



まあ、なんということでしょう。

田舎の木板一枚でできたボロ家は、立派な民家(二階建て、屋根裏・地下室付き)に大変身。

村の寄り合い所だったボロ家は、村人全員が集まってもまだ余る、素敵な市役所に。

村の至るところにできる予定のギルドは、石かレンガ造りの頑丈さ。

これまで村に建てる余裕のなかった神殿は、瀟洒な見た目でありながら、実用的な機能を備え、使う神官と村民大助かり。

そして、将来を見越して建てられたホテルの、素朴でありながら、ゆったりとした佇まい。

それらは石畳の道で、とっても行き来がしやすいように計算されています。

なにより、村にはなかったメインストリートという概念!

そこへ行けば、欲しいものはだいたい揃います。
主要な施設もほぼそこにあり、村人の暮らしやすさは以前の比ではありません。

さらに、その村を見守るように建つ領主さまのお屋敷(別宅)の、優美で重厚なデザイン。


匠の技を感じさせます。
(BGM・あの番組の曲)


ーー感動もひとしおの出来栄えである。


しかしこの感動せざるを得ない領主さま、まだ別宅の完成すら見ていない。

領軍詰め所が完成したあたりで、怒り狂った一族の猛女に連れ戻され、まだ戻ってきていないのだ。

やはり領主屋敷を放置したのはまずかった……。


そして村民。リゾートホテル並の領主別宅で、案外気楽にやっていた。
気を遣うべき屋敷の主人もいない。

田舎者は、領主さまがどんなに偉いかわからない。
ただ、訳もわからず領主は偉いとしか思っていない。

つまり、偉い領主さまが住めって言ってるんだからいいよね。あ~すげー快適。でも農地に行くのにちょっと遠いな。くらいにしか感じていなかった。

別宅内の内装も最低限しか運び込まれていないのが、その感覚に拍車をかけた。


その中で、両親ともにグレードの違う部屋で暮らす少女。
彼女はただの村民とは思えない、可愛らしい日常使いのドレスを着ていた。

みんなに大切に愛される落とし子、フローラである。

今現在、この屋敷の主人はほぼフローラであった。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

次回、

女主人フローラ

です。



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