筋骨隆々お嬢様の美しき日常

ちゃめしごと

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舞踏会の日常

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 その日は舞踏会が開かれた。
 見目麗しい淑女達が華を咲かせんばかりに煌びやかなドレスを纏い、眉目秀麗な紳士達が色とりどりのダブレットを身に付けて凛とした佇まいでエスコートをする。
 美形の集団は眼にも優しく心まで清いとなればいっそ詐欺師の集団かと疑いたくなる光景だ。

 ざわめき、黄色い歓声、全ての視線を集める女性。

 そこに現れる筋骨隆々、その巨躯2mに至り未だ成長を続ける健康体。
 一歩一歩が音を響かせ、その様相は修羅か羅刹か凛々しさを超えて厳格を纏う。
 ドレスを盛り上げる胸筋はバストサイズ100cmオーバーという超巨乳、ウエストは締まりに締まり浮き出た六つの筋肉ブロック、彫りの深さは天然のタトゥーか何かか水を流せば筋肉の境目にせせらぎが生まれる程。

 その御方こそ、この舞踏会の主役でありダディア公爵家第一令嬢グルガナ=ダディアその人である。
 生まれて初めて上げるは泣き声に非ず「武を極めんとす! 武を極めんとす!」と声を張り上げ、僅か生後二日で寝返りを披露するかと思えば開脚前転を披露し、七日に至る頃には第一歩を踏み出すどころか歩法の探求に踏み出していた。

 美しき男女の多いこの国、ビケージュ皇国において最も彼女が美しいとされるは必然でもあった。
 美しさとは強さであり、強き事は美しき事、摩訶不思議な理論ではあるがこの国では美しき者は強さを得ると信じられているのだ。
 故に、多くの者にとって彼女の筋肉や巨躯は美しさを極めた者の姿に映った。

 強きを体現するが如き無双の相貌は見る物に感動を与えるのだ。

「現れたな、お命頂戴する!」
 グルガナの強きは偽りに非ず。
 故にこの舞踏会に凶刃が紛れ、その強さを妬んだ異端の者より襲撃を受けようとも――
「――おもしろい」
 その堅牢なる皮膚が刃を通す事は無く。
 響くは悲鳴では無く刃が筋肉に弾かれる金属音のみである。

「くっ――刃物など効かぬは承知の上!」
 しかして襲撃者も前例を知る者、妬まれる事の多い彼女に刃物が通じぬ事など有名であり、当然この襲撃者も次の手を用意していた。
 投げたる爆弾には多量の火薬が含まれていよう事は傍目から見ても当然であった。
 だが、その傍目たる衆人は一向に逃げ足へと変わる事は無い、ただその場に立ち見惚れているのだ。
「丁度寂しかった所だ」
 グルガナが爆弾をキャッチし、笑みを浮かべようとも焦る者は居ない。
 自らが躍る筈だった舞踏会という会場も忘れ人々はグルガナの一挙手一動足へ胸を躍らせていた。
「口の中がなぁ」
 爆音が響こうとも欠ける事の無いその歯、毎日磨いているだけの事はある。
「スパイスが足りないぐらいだ……わ」

 そして、彼女が時折忘れていたお嬢様口調を付け足す様子に紳士達は胸を撃たれ、収まらぬ拍動に夜をうなされる事になる。
 気が付けばいなくなっていた襲撃者だったが、彼もまたその現実離れした強さに夜をうなされる事になる。

 こうして舞踏会なのか武闘会なのか分からぬ珍事はお開きとなった。
 開始から僅か五分というあまりにも早い幕切れであり、挨拶も無く何を祝う為の物だったのかすら分からぬ有様であろうとも、参加者は皆一様に満足していた。

 そして参加者の中には嫉妬の炎を燃え上がらせる者もいれば、同性でありながらその剛腕強腕見事な湾曲を描いた胸筋に恋の炎を燃え上がらせる者もいた。
 それが次の舞踏会の引き金となり、金を出してでも招待したいと言われるダディア家はその都度お小遣いが入る訳だ。

 これは、古今無双の筋骨と称されたグルガナの日常である。
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