親戚からの電話

ジャンマルコ

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メッセージ

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それから2週間が過ぎたが、あの日から、何か毎日が、落ち着かないような気持ちになっていた。

どこか、あの文字が引っかかるのだ。

「 そいつ は ダレだ 」

なぜなのかもわからない。
ただの落書きなんだと思うが、頭から離れないのだった。

あれから、その文字をもう一度確かめたいとも思いながら、昼間に行こうとするが、
どうしても、公園に向かう途中で引き返してしまっていた。

何か不穏なものを感じるが、それが何なのか、まったくわからない。
誰かに尋ねる事もできない。

ただ、気になるばかりで、また数日を過ぎた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ある日、俺はベランダに洗濯物を干していた。

そして、すべての洗濯物を干し終わり、仏間に戻る時に、ちょっと仏壇が気になった。
俺が、実家に帰ってきた時から、仏壇はずっと閉じたままになっている。
あの日から、意味もなくモヤモヤしている自分の心を、少しでも落ち着けるために、
仏壇の掃除でもしておこうか、と考えた。
空気の入れ替えをするために、窓は開けたままで、
俺は、仏壇に手をかけて開いた。
しかし、中はからっぽだった。



どういうわけだ?
葬式の時には、母と初美の写真や位牌が飾ってあったはずだ。
中の掛け軸のような飾りなんかも、何も入っていなかった。

父が片付けたのだろうか?
でも、わざわざ、仏壇を片付けるのも変な話だが。
もし、片付けたとしたら、どこに入れたのだろう。

父の部屋かもしれないが、父がいるからあまり、探したくない。
とりあえず、俺の部屋の押入れでも探して見るか。

そう思って、自分の部屋の押入れを開けて、中を探してみる。
しかし、仏具はみつからなかった。
その時、押入れの中にあるこの前みつけた、初美のものが入った箱が目に入った。

何か気になって、その箱を取り出して、開けてみる。
しかし、前に見たものばかりだ。
仏具はなく、初美のアクセサリーや、学生の時の、文房具やノート。

その時、ノートの表紙に書かれた文字に目が止まる。

「はつみダイアリー」

俺は、自分の足の指から頭の先までを、虫が這ったような不快感に襲われた。


……この文字………「…は……つ……ダ…」…同じ字だ……ロケットの中の文字だ………


俺は、身体中を這い回り続ける虫のせいで、動けなくなっていた。

どういう事なんだ?
なぜ、初美があのロケットに文字を書いたんだ?
いつ?
子供の時か?
言葉の意味は?

考えがまとまらないまま、寒気だけが体を支配する。

どうして、こんなに俺は怯えてるんだ?
何が不安にさせてるんだ?

「 そいつ は ダレだ 」

動けないままでいる俺の頭の中で、何かが繋がる気がした。

そうだ……きっと初美は、俺に何かを伝えようとしてるんだ。

それは、なんなんだ?……初美。

そいつ……

俺のそいつは、誰だ?

……いや……それは、一人しかいない……

俺以外に、ココにいるのは、一人だけだ。

俺は、少しだけ目線をリビングの方に動かす。

すると、窓の開かれた仏間には、寝てるはずの父が……。

だが、その姿は、父ではなかった。

そこにいたのは、俺の知らない人だった。

俺は、今までずっと、この人と一緒に……。




それから、俺はどうやって家を出たのか、覚えていない。

ただ、どうにかしてその場を去り、近所の警察に駆け込んだ。
その後、警察官とともに、家に入ったが、そこには誰もいなかった。

俺はすぐに、実家を解約し、違う場所に引っ越した。

あとになってわかった事だが、父は2年前から、すでに施設に入っていた。
認知症だった。
施設に顔を出していると、たまたま父に会いにきてくれたという親戚に会う事ができたので、
「キダ アケミ」の事を聞くと、そんな人は知らないと言われた。


あれから、数年経ったが、
あの時見た人は誰だったのか、
「キダ アケミ」は、なぜ、俺に電話をかけてきたのか、
何もわからないままである。
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