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第九章 未来へ
第99話 解き放たれたユメっ!!
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街は、もはや別の街のようになっていた。 これまでも変化し続けてきたが、さらに大きく様変わりしている。
空中にはモノレールのように電車が動いていて、縦に斜めに、自由自在に動いているのが見える。
街の広い道を歩けば、巨大な建物の壁がドカンと横に見える。 どこからか新しくて未来的な音楽が流れてきて、色んな機械の音が聞こえてくる。
街の地面は空中へものびていき、高いところへと進出しているようだ。 宙に浮いたような構造物まで作っているらしい。 建築が進んでいて、金属の軽やかな音が聞こえてくる。
目の前に広がっている景色は、もはや未来とも違うような不思議な街の姿だった。
街の地図作りは、そんな景色の中で行われていた。
今は街の一角で集まって、みんなで地図作りを進めているようだ。
歌子が巨大な建物の間の道に立って、辺りの景色を眺めながら作業している。 手元には地図の紙を持っていて、他の人と話しながら地図を描きこんでいっている。
そばにはイトがくっつくようにして、作業する歌子を手取り足取りサポートしているようだ。
少し過剰なサポートに見えるし、歌子がときおり嫌がっているように見えるが、イトは気づいていないらしい。
病院から解放されたアキラと、一族のハナも、一緒になって地図作りをしているようだ。 まわりの景色を指しながら、笑って話している。
ハナは松葉づえをついているが、動きは健康的なようだ。 街の医療はさらに発達しているし、ひどい怪我だっただろうが何とかなったんだろう。
アキラも黒々とした髪の毛をしていて、相変わらずはつらつと動いている。
前に病院にいた時間がどれだけだったかは分からないが、これからは体を気にせず色んなところに行ける。
そういうこともあってか、地図作りをしながら話すアキラは、生き生きとしていて楽しそうだ。
そんな地図作りを真面目にしている人たちの近くでは、別の人たちが遊んでいるようだった。
噴水のような水がたまっている場所で、見慣れた人たちがはしゃぎまわっているのが見える。
小春やスズネが、噴水の中でバシャバシャと水をかけ合って、服を濡らしながら遊んでいる。 『いくわよスズネっ!』『やったなー! あははっ!』と言って、すごく楽しそうだ。
第3病院の元気の良すぎる弥生ちゃんや、そこにさらにミツバなんかも加わってきて、みんなで一緒に水をかけ合いまくっている。
そばでクールに座っているマツリに水がかかりまくっているが、誰も気にしていないみたいだ。
どうやらたいていの人は、地図作りを放り出して遊んでいるだけらしい。
噴水のふちのところにはソラが腰を下ろしていて、シャボン玉のようなものを吹いている。
ふーっとストローに息を吹くと、泡のようなものが次々に飛び出している。
出てきた泡は、水なのか火なのか、よく分からないようなものだ。 不思議な色に染まりながら、形をぐにゃぐにゃに変えながら、風に乗って飛んでいっている。
そばの道端には、別の地方出身のススキと、街の長のハルの姿などもあった。
いま2人は道のわきでしゃがんで、何かを話しているようだ。
ススキの手元には、真っ黒な本のようなものがあった。 しかし中身にページはなく、中は空洞になっている。
その中には、紙のページの代わりに、文字の形をした光のようなものがたくさん浮いていた。 不思議な光を発しながら、文字は本の中から勝手に流れ出している。
それを見ながら、2人はなにやら楽しそうに話している。
少し離れたところに、ユメがいた。 みんなからは一人外れて、静かに背を向けて立っている。
ここは街の高い場所で、目の前には街の景色がきれいに見えている。
ユメは何を考えているのか、静かにその景色を見つめていた。
いつものように落ち着いているが、でも今までには見たことのないような表情をしている。 冒険心を抱いているような、ワクワクした気持ちを隠し切れないような感じだ。
ふと近くに、文字の形をした光が流れてきた。 赤や黄の色を帯びながら、小さくキラキラと輝いている。 そのまま顔の横を通り過ぎ、ゆるやかに水のように空中を流れていく。
火や水のような不安定な形の粒々も、同じようにして辺りを舞っていた。 丸い形から四角の形、そしてぐにゃぐにゃの形へと、絶えずとどまらずに変化していく。
気づけば近くには、不思議な形や文字がたくさん舞っていた。 ひとりでに遊ぶように、踊るようにして別の場所へと流れていっている。
「ユメっ!」
景色をぼんやりと眺めていると、ふと背後から声をかけられた。 カラッと乾いていて、元気な声だ。
見ると、声をかけてきたのはソラだった。
2人が話すのはほとんど初めてだが、不思議とどこか親しげな雰囲気を感じる。
憶え屋の中でたくさん情報をやり取りしたし、知り合いかどうかは、もう今更なのかもしれない。
「あぁ、ソラ」
声をかけられて、ユメは気づいたように振り返っていく。
会話を始めるユメの顔は、どこか満ち足りた表情だ。 落ち着いていて、気分が充実しているように見える。
ソラは風に服をなびかせながら、軽い足取りで近づいてきてきた。 都市伝説のことについて気になっていたことがあるらしく、気さくに話しかけてくる。
「ユメ、夢見酒っての、見つけた? 探してたんだろっ?」
そう聞かれて、ユメは小さくうつむく。
夢見酒……。 かつて追いかけていた、伝説のお酒。 夢と現実が混ざるという、不思議なお酒。
私がいちばん苦しんでいた時、悩みを話してソラに相談に乗ってもらったことがあった。 どうやらソラは、その時のことを気にかけてくれていたらしい。
……そうだ、私は今まで夢見酒を探してきた。
実際には、夢見酒の都市伝説は300年前の睡眠薬のことで、伝説のお酒でもなんでもなかったんだけど。
私は今まで、自由な世界を求めてきた。
全ての形が決まっていなくて、ぐにゃぐにゃで、ヘンテコな世界。 自由な可能性に満ちていて、自分の想像のままにいられる世界……。
そんな世界を、私はいつも心のどこかで求めていた。
この世はあまりに不自由で、窮屈だと思っていた。
体は1つで、2つ以上にはならない。 今ここにいるなら、別のところに瞬時に行くことはできない。 明日には行けないし、明後日にも行けない。
そんな可能性の広がりのなさに、息苦しくて、飽き飽きしていた。
夢見酒の噂は、本当は最初から疑っていた。 どうせこれも、ただのつまらない都市伝説の一つなんだろうって。
自分で正直馬鹿げていると思ってたし、こんなもので楽になれるとも思ってなかったんだ。
ユメは景色のほうへと目を向けていった。 ふたたび街の姿を見つめながら、身体をゆっくりと動かして、一歩ふみ出して話しだす。
「お酒は、見つからなかったよ」
景色を向いて、ユメは背中を見せたまま答える。
しかし、声は軽やかだ。 未練はなく、不思議と清々しさが漂っているように感じられる。 そのまま、楽な調子で話し続けた。
「でも、もういいんだ。 私、自由だったの」
そういって、ユメはふわりと振り返った。
ユメの表情は、弾けるように笑っていた。 ありとあらゆるものから解き放たれたような、爽やかな顔だ。
着ている服装は、奇妙な模様や新しい形で、ぐちゃぐちゃに溢れていた。 もはや未来とも思えないような、変な格好だ。
笑うユメの背後には、ヘンテコな動きであふれている街があった。
空へとのびていく街の構造、縦や斜めに動く電車、道を歩いていく機械、空中を浮いている文字……。
ありとあらゆるものが不思議で、そして自由な気持ちにあふれている。
かつての街はなく、生まれ変わった自由な街の姿があった。
地上に縛られていたのは消えて、物質にも縛られていない。 全てに自由で、可能性に開けている街の姿だ。
もう何も、私の気持ちを遮るものはないんだ。
ユメはワクワクしたような顔で楽しそうにしながら、笑顔で続ける。
「自分で、気づかなかった、だけなんだ。 ……相談に乗ってくれて、ありがとう、ソラ」
思えばソラは、いつも自由だった。
いつどこで生きているのかも、どんな人なのかも分からない。
生きているのか、死んでいるのかすらも分からず、はたまた存在しているのかすらも曖昧だった。
でもそれは、ソラが解き放たれた人だったからなんだ。 この世界の理に縛られない、自由な人だったんだ。
私は今まで、自分で自分を縛っていた。
存在しないものを目の前に作ることは出来ないと、空を飛ぶことは出来ないと、無意識のうちに自分に言い聞かせていた。
ものの形はこうだと、動き方には制約があるのだと、何度も確かめるように頭の中で呟いていた。
現実には可能なことと、不可能なことがあるんだと勝手に決めつけていた。
息苦しい現実に、地面に、この体に私の存在を押しとどめていたのは、他でもない私だったんだ。
ユメはそう言うと、悪戯っぽく、ニッと笑った。 目の前の可能性に、心底ワクワクしている顔だ。
ソラもなぜだか嬉しそうにして、同じように、ニッと笑い返した。 満足そうな顔をして、ふらっとどこかへ去っていく。
空中にはモノレールのように電車が動いていて、縦に斜めに、自由自在に動いているのが見える。
街の広い道を歩けば、巨大な建物の壁がドカンと横に見える。 どこからか新しくて未来的な音楽が流れてきて、色んな機械の音が聞こえてくる。
街の地面は空中へものびていき、高いところへと進出しているようだ。 宙に浮いたような構造物まで作っているらしい。 建築が進んでいて、金属の軽やかな音が聞こえてくる。
目の前に広がっている景色は、もはや未来とも違うような不思議な街の姿だった。
街の地図作りは、そんな景色の中で行われていた。
今は街の一角で集まって、みんなで地図作りを進めているようだ。
歌子が巨大な建物の間の道に立って、辺りの景色を眺めながら作業している。 手元には地図の紙を持っていて、他の人と話しながら地図を描きこんでいっている。
そばにはイトがくっつくようにして、作業する歌子を手取り足取りサポートしているようだ。
少し過剰なサポートに見えるし、歌子がときおり嫌がっているように見えるが、イトは気づいていないらしい。
病院から解放されたアキラと、一族のハナも、一緒になって地図作りをしているようだ。 まわりの景色を指しながら、笑って話している。
ハナは松葉づえをついているが、動きは健康的なようだ。 街の医療はさらに発達しているし、ひどい怪我だっただろうが何とかなったんだろう。
アキラも黒々とした髪の毛をしていて、相変わらずはつらつと動いている。
前に病院にいた時間がどれだけだったかは分からないが、これからは体を気にせず色んなところに行ける。
そういうこともあってか、地図作りをしながら話すアキラは、生き生きとしていて楽しそうだ。
そんな地図作りを真面目にしている人たちの近くでは、別の人たちが遊んでいるようだった。
噴水のような水がたまっている場所で、見慣れた人たちがはしゃぎまわっているのが見える。
小春やスズネが、噴水の中でバシャバシャと水をかけ合って、服を濡らしながら遊んでいる。 『いくわよスズネっ!』『やったなー! あははっ!』と言って、すごく楽しそうだ。
第3病院の元気の良すぎる弥生ちゃんや、そこにさらにミツバなんかも加わってきて、みんなで一緒に水をかけ合いまくっている。
そばでクールに座っているマツリに水がかかりまくっているが、誰も気にしていないみたいだ。
どうやらたいていの人は、地図作りを放り出して遊んでいるだけらしい。
噴水のふちのところにはソラが腰を下ろしていて、シャボン玉のようなものを吹いている。
ふーっとストローに息を吹くと、泡のようなものが次々に飛び出している。
出てきた泡は、水なのか火なのか、よく分からないようなものだ。 不思議な色に染まりながら、形をぐにゃぐにゃに変えながら、風に乗って飛んでいっている。
そばの道端には、別の地方出身のススキと、街の長のハルの姿などもあった。
いま2人は道のわきでしゃがんで、何かを話しているようだ。
ススキの手元には、真っ黒な本のようなものがあった。 しかし中身にページはなく、中は空洞になっている。
その中には、紙のページの代わりに、文字の形をした光のようなものがたくさん浮いていた。 不思議な光を発しながら、文字は本の中から勝手に流れ出している。
それを見ながら、2人はなにやら楽しそうに話している。
少し離れたところに、ユメがいた。 みんなからは一人外れて、静かに背を向けて立っている。
ここは街の高い場所で、目の前には街の景色がきれいに見えている。
ユメは何を考えているのか、静かにその景色を見つめていた。
いつものように落ち着いているが、でも今までには見たことのないような表情をしている。 冒険心を抱いているような、ワクワクした気持ちを隠し切れないような感じだ。
ふと近くに、文字の形をした光が流れてきた。 赤や黄の色を帯びながら、小さくキラキラと輝いている。 そのまま顔の横を通り過ぎ、ゆるやかに水のように空中を流れていく。
火や水のような不安定な形の粒々も、同じようにして辺りを舞っていた。 丸い形から四角の形、そしてぐにゃぐにゃの形へと、絶えずとどまらずに変化していく。
気づけば近くには、不思議な形や文字がたくさん舞っていた。 ひとりでに遊ぶように、踊るようにして別の場所へと流れていっている。
「ユメっ!」
景色をぼんやりと眺めていると、ふと背後から声をかけられた。 カラッと乾いていて、元気な声だ。
見ると、声をかけてきたのはソラだった。
2人が話すのはほとんど初めてだが、不思議とどこか親しげな雰囲気を感じる。
憶え屋の中でたくさん情報をやり取りしたし、知り合いかどうかは、もう今更なのかもしれない。
「あぁ、ソラ」
声をかけられて、ユメは気づいたように振り返っていく。
会話を始めるユメの顔は、どこか満ち足りた表情だ。 落ち着いていて、気分が充実しているように見える。
ソラは風に服をなびかせながら、軽い足取りで近づいてきてきた。 都市伝説のことについて気になっていたことがあるらしく、気さくに話しかけてくる。
「ユメ、夢見酒っての、見つけた? 探してたんだろっ?」
そう聞かれて、ユメは小さくうつむく。
夢見酒……。 かつて追いかけていた、伝説のお酒。 夢と現実が混ざるという、不思議なお酒。
私がいちばん苦しんでいた時、悩みを話してソラに相談に乗ってもらったことがあった。 どうやらソラは、その時のことを気にかけてくれていたらしい。
……そうだ、私は今まで夢見酒を探してきた。
実際には、夢見酒の都市伝説は300年前の睡眠薬のことで、伝説のお酒でもなんでもなかったんだけど。
私は今まで、自由な世界を求めてきた。
全ての形が決まっていなくて、ぐにゃぐにゃで、ヘンテコな世界。 自由な可能性に満ちていて、自分の想像のままにいられる世界……。
そんな世界を、私はいつも心のどこかで求めていた。
この世はあまりに不自由で、窮屈だと思っていた。
体は1つで、2つ以上にはならない。 今ここにいるなら、別のところに瞬時に行くことはできない。 明日には行けないし、明後日にも行けない。
そんな可能性の広がりのなさに、息苦しくて、飽き飽きしていた。
夢見酒の噂は、本当は最初から疑っていた。 どうせこれも、ただのつまらない都市伝説の一つなんだろうって。
自分で正直馬鹿げていると思ってたし、こんなもので楽になれるとも思ってなかったんだ。
ユメは景色のほうへと目を向けていった。 ふたたび街の姿を見つめながら、身体をゆっくりと動かして、一歩ふみ出して話しだす。
「お酒は、見つからなかったよ」
景色を向いて、ユメは背中を見せたまま答える。
しかし、声は軽やかだ。 未練はなく、不思議と清々しさが漂っているように感じられる。 そのまま、楽な調子で話し続けた。
「でも、もういいんだ。 私、自由だったの」
そういって、ユメはふわりと振り返った。
ユメの表情は、弾けるように笑っていた。 ありとあらゆるものから解き放たれたような、爽やかな顔だ。
着ている服装は、奇妙な模様や新しい形で、ぐちゃぐちゃに溢れていた。 もはや未来とも思えないような、変な格好だ。
笑うユメの背後には、ヘンテコな動きであふれている街があった。
空へとのびていく街の構造、縦や斜めに動く電車、道を歩いていく機械、空中を浮いている文字……。
ありとあらゆるものが不思議で、そして自由な気持ちにあふれている。
かつての街はなく、生まれ変わった自由な街の姿があった。
地上に縛られていたのは消えて、物質にも縛られていない。 全てに自由で、可能性に開けている街の姿だ。
もう何も、私の気持ちを遮るものはないんだ。
ユメはワクワクしたような顔で楽しそうにしながら、笑顔で続ける。
「自分で、気づかなかった、だけなんだ。 ……相談に乗ってくれて、ありがとう、ソラ」
思えばソラは、いつも自由だった。
いつどこで生きているのかも、どんな人なのかも分からない。
生きているのか、死んでいるのかすらも分からず、はたまた存在しているのかすらも曖昧だった。
でもそれは、ソラが解き放たれた人だったからなんだ。 この世界の理に縛られない、自由な人だったんだ。
私は今まで、自分で自分を縛っていた。
存在しないものを目の前に作ることは出来ないと、空を飛ぶことは出来ないと、無意識のうちに自分に言い聞かせていた。
ものの形はこうだと、動き方には制約があるのだと、何度も確かめるように頭の中で呟いていた。
現実には可能なことと、不可能なことがあるんだと勝手に決めつけていた。
息苦しい現実に、地面に、この体に私の存在を押しとどめていたのは、他でもない私だったんだ。
ユメはそう言うと、悪戯っぽく、ニッと笑った。 目の前の可能性に、心底ワクワクしている顔だ。
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