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一章
6、交渉
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レイリアはアルと共に宿ヘ戻り、部屋へ入ると、コートを脱ぐ。
さらさらとこぼれ落ちる金糸のような髪が、はらりと肩にかかるが、それを振り払わず、ベッドに座って何かを考えていた。
1時間もしただろうか、コンコンとノックをする音が聞こえて、レイリアは考え事から一旦頭を切り替えた。
「レイ、入っていいか?」
アルベルトの声が聞こえたので、入室を促すと、ドアが開いて……閉まった。
「いやいやいや、なんで閉める?」
レイリアは慌ててドアを開ける。すると、そこには何やらワタワタしているアルベルトがいた。
「お~い、アル、どうした?」
「え、え? お前、レイか?」
「それ以外の誰だって言うんだよ。いいから入れ。」
部屋に入ったアルベルトはレイリアを穴があくほど見つめている。
「どうした? 何か変か?」
「い、いや、レイの姿が予想外で…」
流石にそんなに見つめられたら居心地が悪いし、男性との骨格の違いを見つけられても困る。
早々に本題に入る事にして、レイリアはアルベルトに椅子を勧める。
「それで、相談…というより、これは交渉何だが、いいか?」
「おう。交渉ってことは俺にも利益はあるんだな?」
「そう思いたいけど。まあ、どうするかは僕の話を聞いてから決めてくれていい。そんなに急ぐ必要も無いからな。」
それからレイリアが提案したのは、レイリアが知識を提供し、相談に乗る代わりに、アルベルトはレイリアを従業員として雇い、給料を与える、という事だった。
「アルは知識が欠けている為に商売に成功出来てないんじゃ無いかと思うんだ。
僕は自分で言うのもなんだけど、この歳にしてはかなりの知識量と経験があると思う。
不利益は被らせない。どうだろうか?」
しばらく顎に手を当て、アルベルトはウンウン唸りながら考え込んでいる。
「いくつか聞きたい。いいか?」
「もちろん。けど、答えられる範囲内になる。こっちにも事情があるもんで。」
「その事情ってのは、ギルドに登録出来ない事に関係してんのか?」
そう言ったアルベルトの目は鋭かった。何かを疑い、定める目だ。
レイリアはそれに圧力を覚えながらも、余裕に見える態度を保ち続ける。
「ああ、その通りだ。」
「登録できねぇって事は、要するに犯罪だよな? それで従業員としてなら確認される事もないだろうと目をつけて、俺に犯罪者を雇わせようとしたと。
だが、なんで俺にそのことを話した? 事実を話さずに俺にレイを雇わせるっていう手もあっただろう?」
レイリアが、目の前に悠然たる態度で座る少年が、所謂犯罪者であることを認めたからだろう、アルベルトの視線は刺すように鋭い。
先程までとは比べるまでもない。
だが同時に、何故正直に言ったのかという困惑が瞳の中に浮かんでいた。
「確かに言わなくても良かった。そっちの方が楽だしな。でも言った理由は3つ。
1つは、単に後からバレた方が面倒だと思ったから。
2つ目は、最初に打ち明けた方が、後々アルからの信頼を勝ち取れると思ったから。まあ、打算だな。犯罪者に信頼もなにもないとは思うが。
3つ目は、これが1番大きな理由だが、僕は自分が間違った事をしたと思ってない。精霊に誓ってもいい。犯罪は犯罪だが、僕は過去に戻れてもきっと同じ行動をとる。」
レイリアの強い眼差しを見て、アルベルトは思わずたじろいだ。
『精霊に誓う』と言うのは、この世界においてほぼ最上位の誓いである。ほぼ、というのは、そこに真名を付け加えたものが最上位のものだからだ。
それを口にしたことからも、レイリアの言葉が本心である事が伺える。
だからこそ、思わず口にしてしまった。
「お前…一体何をしたんだよ。」
レイリアはそれに答えなかった。
ただ、にっこり笑って、人差し指を口元に持っていっただけだった。
さらさらとこぼれ落ちる金糸のような髪が、はらりと肩にかかるが、それを振り払わず、ベッドに座って何かを考えていた。
1時間もしただろうか、コンコンとノックをする音が聞こえて、レイリアは考え事から一旦頭を切り替えた。
「レイ、入っていいか?」
アルベルトの声が聞こえたので、入室を促すと、ドアが開いて……閉まった。
「いやいやいや、なんで閉める?」
レイリアは慌ててドアを開ける。すると、そこには何やらワタワタしているアルベルトがいた。
「お~い、アル、どうした?」
「え、え? お前、レイか?」
「それ以外の誰だって言うんだよ。いいから入れ。」
部屋に入ったアルベルトはレイリアを穴があくほど見つめている。
「どうした? 何か変か?」
「い、いや、レイの姿が予想外で…」
流石にそんなに見つめられたら居心地が悪いし、男性との骨格の違いを見つけられても困る。
早々に本題に入る事にして、レイリアはアルベルトに椅子を勧める。
「それで、相談…というより、これは交渉何だが、いいか?」
「おう。交渉ってことは俺にも利益はあるんだな?」
「そう思いたいけど。まあ、どうするかは僕の話を聞いてから決めてくれていい。そんなに急ぐ必要も無いからな。」
それからレイリアが提案したのは、レイリアが知識を提供し、相談に乗る代わりに、アルベルトはレイリアを従業員として雇い、給料を与える、という事だった。
「アルは知識が欠けている為に商売に成功出来てないんじゃ無いかと思うんだ。
僕は自分で言うのもなんだけど、この歳にしてはかなりの知識量と経験があると思う。
不利益は被らせない。どうだろうか?」
しばらく顎に手を当て、アルベルトはウンウン唸りながら考え込んでいる。
「いくつか聞きたい。いいか?」
「もちろん。けど、答えられる範囲内になる。こっちにも事情があるもんで。」
「その事情ってのは、ギルドに登録出来ない事に関係してんのか?」
そう言ったアルベルトの目は鋭かった。何かを疑い、定める目だ。
レイリアはそれに圧力を覚えながらも、余裕に見える態度を保ち続ける。
「ああ、その通りだ。」
「登録できねぇって事は、要するに犯罪だよな? それで従業員としてなら確認される事もないだろうと目をつけて、俺に犯罪者を雇わせようとしたと。
だが、なんで俺にそのことを話した? 事実を話さずに俺にレイを雇わせるっていう手もあっただろう?」
レイリアが、目の前に悠然たる態度で座る少年が、所謂犯罪者であることを認めたからだろう、アルベルトの視線は刺すように鋭い。
先程までとは比べるまでもない。
だが同時に、何故正直に言ったのかという困惑が瞳の中に浮かんでいた。
「確かに言わなくても良かった。そっちの方が楽だしな。でも言った理由は3つ。
1つは、単に後からバレた方が面倒だと思ったから。
2つ目は、最初に打ち明けた方が、後々アルからの信頼を勝ち取れると思ったから。まあ、打算だな。犯罪者に信頼もなにもないとは思うが。
3つ目は、これが1番大きな理由だが、僕は自分が間違った事をしたと思ってない。精霊に誓ってもいい。犯罪は犯罪だが、僕は過去に戻れてもきっと同じ行動をとる。」
レイリアの強い眼差しを見て、アルベルトは思わずたじろいだ。
『精霊に誓う』と言うのは、この世界においてほぼ最上位の誓いである。ほぼ、というのは、そこに真名を付け加えたものが最上位のものだからだ。
それを口にしたことからも、レイリアの言葉が本心である事が伺える。
だからこそ、思わず口にしてしまった。
「お前…一体何をしたんだよ。」
レイリアはそれに答えなかった。
ただ、にっこり笑って、人差し指を口元に持っていっただけだった。
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