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第Li章:多くの美しい自然遺産を持つ異世界で何故観光産業が発展しないのか

剣と黒/2:今月は閏年なので3種類諦めて欲しい

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 ムーンシスコの様子を見たイルマは、残念そうに胸を撫で下ろした。そこでは活気の溢れる市場と暖かい人々の笑顔があったからだ。

「景気良さそうだな。良かったじゃないか」

 はい、と頷いてしまいそうになって、目を背ける。いや、市場の活気が良いということは、ここも既に魔王による経済支配が済んでいるということ。結果的に世界が魔王の手に落ちようとしていることには変わりないのだから。

「ほい、タッチ、と。目的達成。帰る前になんか食ってくか? カップ麺ばっかじゃ飽きるだろ」

 不機嫌な表情であたりを見渡したイルマの目がある一点で止まる。それに気付いたリクは、にやにやとした笑みを浮かべつつ声をかけた。

「やっぱラーメンよりスイーツだよな。ダブルでもトリプルでも、好きに重ねてもらえよ。俺の奢りだ」

 その店先に並ぶ27種類のフレーバーからどれを選ぼうかと目を輝かせるイルマであったが、その様子をにやにやと見守るリクの視線に気付いて口を尖らせた。

「か、勘違いしないでください。これは調査。街の人に、よそで魔王がなにかよからぬことを企んでいる痕跡がないかを聞くためなのです」
「はいはい。じゃ、イートインな」

 かくして、ホッピングシャワーとクッキーアンドクリーム、ベリーベリーストロベリーの三段を手にご満悦の笑みを浮かべるイルマ。無論、情報収集を忘れることもなかったのであるが、真剣な顔も頬にアイスをつけたままではどうにも締まらないなと眺めるリクだった。
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