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第Be章:幻の古代超科学文明都市アトランティスの都は何故滅びたのか
仁義と信頼/3:わかりにくかったかもしれないがボールというのは玉でも棺桶でもなくその人語を操るゴリラが飼っていたペットの猫の名前である
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ボタンを押すと、扉の向こうから鈍く大きな音が聞こえた。それはまるで、蓋が外れたような音。やがて、扉の向こう側で水が流れる音が聞こえる。それも1リットルや2リットルではない。大都会東京都心を守るために都心郊外に建造されたという地下神殿、首都圏外郭放水路に雨水が注がれる様を想像させるような水量だろうことが音から推測された。そのまましばらく待つと水温が途絶え、同時に扉が開いた。
「じゃ、また来てつかぁさい」
手を振って見送ってくれたヒロザに手を振り返す。やがて扉が締まり、再び聞こえてきた水音と同時に床がゆっくりと下り始めた。
「水力駆動式エレベーター、すごいね」
「あぁ、まさに超技術。元の世界でも再現できねぇ」
「うん。水の無駄遣い半端ないって」
おおよそ500mを15分かけて一同が下る一方、広大な空を一望する椅子に腰をおろしたヒロザは阿片の吸入を始めていた。そんなヒロザに、ついさっき彼の後ろで連射式弩弓を担いでいた内の1人である若者が声をかけた。
「兄貴、あの方々は」
「昔馴染みのカタギじゃぁ。間違うても手を出しんさんなや」
「わかりました」
「で。どがぁじゃ。爺さん殺した甲斐はあったか?」
「はい。こちらに」
そう言って、若者はヒロザの前に一本の木の杖を差し出した。
◇◇◇◇◇
「良かったなカイ、お前の顔の広さのお陰で、魔王城が特定できたぞ。さぁ、向かおう。世界一高い山へ!」
そう張り切るレーヌであるが、他の面々の表情は暗い。
「ど、どうしたのだ? 場所がわかったのだ。向かえば良いだろう。確かに山を登るのは大変かもしれないが……」
「そうではないよ、マイハニー。それだから君は世界一美しいゴリラなどと呼ばれてしまうのだ」
「お、お前までその名で私を呼ぶな! 何の話だ!?」
怒りをジェスチャーで表現するレーヌを尻目に、リクがつぶやく。
「世界一高い山……って、どこだ?」
これが口火を切り、人間たちによる相談が始まった。
「僕には心当たりがない。どうだ? リンネ君」
「そうですわね……いくつか心当たりはありましたが、先日シズク先生からお話を聞いて、その心当たりがすべて無意味だとわからされましたわ」
「ふむ?」
「シズク先生、いかがございましょう? このパンゲア大陸で最も高い山。想像できますか?」
「そうだね……ちょっと難しいな……プレートの配置と移動方向を考えれば、この時代で山が出来ているはずの場所はある程度絞れるけど、そのどれが一番高いかと言われると……」
「しかし、シズクさんは絞ることができるのですよね。なら少なくとも五里霧中というわけではありません」
「だから私はゴリラではない!」
イルマがはじめてその冷たい目を、リク以外に向けた瞬間だった。
と、一同が騒ぐ中、歌が聞こえてくる。
「俺が居たんじゃお家を継げぬ、わかっちゃいるんだ弟よ。いつかお前が憧れ抱くすごい兄貴になりたくて。東奔西走宛もなく、今日も涙に。今日も涙に日が沈む、日が沈む」
どこかで聞いたような歌を歌いながら、ふらふらと歩み寄って来た男が一同の前で頭を下げる。
「私、生まれも育ちもアトランティスです。第三環状水路で産湯を使い、姓はフーバ、名をリトラ、人呼んで流れ鍛冶のフートラと発します。不思議な縁持って生まれ故郷にブーツを脱ぎましての放蕩の末、今はオリハルコン煌めく幻の都に仮の住まいの鍛冶場があります。故あって、親分子分を持ちません」
何を言っているんだ。そう呆気にくれる一同の前でシズクが同じく一礼の後に言葉を返す。
「私、生国と発しますは生まれも育ちも東京目黒です。目黒不動尊で産湯を使い、異世界転生後に当地仮住まいを持たない流浪の身にあります。不思議な縁を持ちまして、知識の片親として福沢諭吉創立慶應義塾大学理工学部物理学科量子力学教室主任研究員綾崎静です。従いまして綾崎妹、継承します。今日従います親分、ウプサラ大司教創立ウプサラ大学医学教授植物学生物学主任カール・フォン・リンネです。御免被ります。加えて子分を無能無縁の馬喰陸と持ちます。姓は綾崎、名を雫、人呼んでただ飯食いのシズクと発します。面体お目にするにおかれまして、今日今万端よろしくお頼み申し上げます」
すらすらと呪文を唱えるかのように言葉を返したシズクに一同が引くも、シズクはきょとんと首を傾ける。
「ほら、相手が丁寧に自己紹介してくれたんだから、みんなも自己紹介しないと」
今の呪文は自己紹介だったのか。いや、なら自分達そんなのできないけど。一同の心はひとつだった。
「じゃ、また来てつかぁさい」
手を振って見送ってくれたヒロザに手を振り返す。やがて扉が締まり、再び聞こえてきた水音と同時に床がゆっくりと下り始めた。
「水力駆動式エレベーター、すごいね」
「あぁ、まさに超技術。元の世界でも再現できねぇ」
「うん。水の無駄遣い半端ないって」
おおよそ500mを15分かけて一同が下る一方、広大な空を一望する椅子に腰をおろしたヒロザは阿片の吸入を始めていた。そんなヒロザに、ついさっき彼の後ろで連射式弩弓を担いでいた内の1人である若者が声をかけた。
「兄貴、あの方々は」
「昔馴染みのカタギじゃぁ。間違うても手を出しんさんなや」
「わかりました」
「で。どがぁじゃ。爺さん殺した甲斐はあったか?」
「はい。こちらに」
そう言って、若者はヒロザの前に一本の木の杖を差し出した。
◇◇◇◇◇
「良かったなカイ、お前の顔の広さのお陰で、魔王城が特定できたぞ。さぁ、向かおう。世界一高い山へ!」
そう張り切るレーヌであるが、他の面々の表情は暗い。
「ど、どうしたのだ? 場所がわかったのだ。向かえば良いだろう。確かに山を登るのは大変かもしれないが……」
「そうではないよ、マイハニー。それだから君は世界一美しいゴリラなどと呼ばれてしまうのだ」
「お、お前までその名で私を呼ぶな! 何の話だ!?」
怒りをジェスチャーで表現するレーヌを尻目に、リクがつぶやく。
「世界一高い山……って、どこだ?」
これが口火を切り、人間たちによる相談が始まった。
「僕には心当たりがない。どうだ? リンネ君」
「そうですわね……いくつか心当たりはありましたが、先日シズク先生からお話を聞いて、その心当たりがすべて無意味だとわからされましたわ」
「ふむ?」
「シズク先生、いかがございましょう? このパンゲア大陸で最も高い山。想像できますか?」
「そうだね……ちょっと難しいな……プレートの配置と移動方向を考えれば、この時代で山が出来ているはずの場所はある程度絞れるけど、そのどれが一番高いかと言われると……」
「しかし、シズクさんは絞ることができるのですよね。なら少なくとも五里霧中というわけではありません」
「だから私はゴリラではない!」
イルマがはじめてその冷たい目を、リク以外に向けた瞬間だった。
と、一同が騒ぐ中、歌が聞こえてくる。
「俺が居たんじゃお家を継げぬ、わかっちゃいるんだ弟よ。いつかお前が憧れ抱くすごい兄貴になりたくて。東奔西走宛もなく、今日も涙に。今日も涙に日が沈む、日が沈む」
どこかで聞いたような歌を歌いながら、ふらふらと歩み寄って来た男が一同の前で頭を下げる。
「私、生まれも育ちもアトランティスです。第三環状水路で産湯を使い、姓はフーバ、名をリトラ、人呼んで流れ鍛冶のフートラと発します。不思議な縁持って生まれ故郷にブーツを脱ぎましての放蕩の末、今はオリハルコン煌めく幻の都に仮の住まいの鍛冶場があります。故あって、親分子分を持ちません」
何を言っているんだ。そう呆気にくれる一同の前でシズクが同じく一礼の後に言葉を返す。
「私、生国と発しますは生まれも育ちも東京目黒です。目黒不動尊で産湯を使い、異世界転生後に当地仮住まいを持たない流浪の身にあります。不思議な縁を持ちまして、知識の片親として福沢諭吉創立慶應義塾大学理工学部物理学科量子力学教室主任研究員綾崎静です。従いまして綾崎妹、継承します。今日従います親分、ウプサラ大司教創立ウプサラ大学医学教授植物学生物学主任カール・フォン・リンネです。御免被ります。加えて子分を無能無縁の馬喰陸と持ちます。姓は綾崎、名を雫、人呼んでただ飯食いのシズクと発します。面体お目にするにおかれまして、今日今万端よろしくお頼み申し上げます」
すらすらと呪文を唱えるかのように言葉を返したシズクに一同が引くも、シズクはきょとんと首を傾ける。
「ほら、相手が丁寧に自己紹介してくれたんだから、みんなも自己紹介しないと」
今の呪文は自己紹介だったのか。いや、なら自分達そんなのできないけど。一同の心はひとつだった。
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