理系転生 ~人類を根絶する目的で世界平和を目指す魔王と自身の好奇心を満たす目的で世界を破滅させる勇者の物語~

卜部猫好

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第B章:何故異世界飯はうまそうに見えるのか

レベル上げとチート/3:マスコミの前で一食2000円のカレーを食べる人間は政治家にふさわしくない

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 シズクも落ち着きイルマも目を覚ましたことで、改めてループとの会談が再開する。向こうに声に行くためリクが部屋を出る際、背後から物凄い殺気を感じたのだが勘違いだと思いたい現実だった。

「改めて、申し訳ないことをしたブー」
「こちらこそごめんなさい。というか、謝ることはないと思うよ。私はあなたの意図を理解しているつもり。ただその上で、どうしても拒否せざるをえない事情があるの」
「ブーもそれはわかってるつもりだブー。ブー達が別の生き物だったことと、こういう出会いになってしまったことが本当に残念だブー」
「同じ思いだよ」
「それで、結局ブー達は戦うしかないブーね」
「そうだね。あまり戦いは得意じゃないのだけど」
「それはブーも同じだブー。もう長らく武器らしい武器を握ってないブー」

 集団生活を行う生物は不自由を強いられている。特に、その頂点に立つものには、もはや個人の意思が認められないと言っても過言ではないかもしれない。一昔前には、普通に昼食を食べていただけで批難をされた政治家も居た。ただこれに関しては、一概にマスコミを批難することもできない。立場ある職業である以上、そこでは相応の立振舞が仕事として求められる。この政治家はそれが出来ていない時点で政治家としては失格なのだろう。

 シズクもループも、本来は戦いを好む性格ではない。ただ、ハイオークとしてオークの群れを率いるだけに留まらず、七難として魔王に最も近い存在である彼には魔物を代表する責務があり、同様に既に世界に勇者としての名を轟かせてしまっているシズクには人類を代表する責務がある。それはつまるところ、どちらがどちらかを殺さなければいけないということだ。

「その上で。あなたに提案をしたい」
「どんな提案だブー。決闘の方法ブー?」
「ある意味そうかも。半年後の食神決戦。私はそれに参加したい」

 意外な提案にその場のほぼ全員が驚く中、唯一リクのみがその意図を汲み取り、背筋が震える感動を覚えていた。

「そ、それはどうしてだブー?」
「食神決戦の優勝者は、あなたが叶えられる願いがなんでも叶えられると聞いた。だから、私がこの大会で優勝したら……自害しろ、食神ループ」

 こいつは確実に成長した。ついにこの世界を異世界と理解し、異世界転生者として正しい戦い方をしようとしている。それはつまり、チートを武器に戦うということである。

 先日の食神決戦は確かにこの世界最高峰の戦いだったかもしれないが、現代の進んだ料理を知るシズクとリクにとっては今ひとつに感じてしまうものだった。そんなシズクは、チートでラーメンを出すことができる。その味は、現代人シズクが舌鼓を打つグルメ都市東京の頂点の店のラインナップをそのまま再現する。これを振る舞えば、シズクは確実に食神決戦で勝利できる。己のチートを武器に、お手軽で簡単な勝利をサクっと手にしてざまぁする。まさに理想的な異世界転生者の戦い方だ。

「……わかったブー。でも、もしも優勝できなかったらどうするブー? それだけだと対等な決闘にはならないブー」
「そんなことないでしょう。あなたの決めた食神決戦にはルールがある。敗北者はあなたの屋敷での半年の労働があり、また、そもそも参加するためにあなたに一番大切なものを預けないといけない。これはそのまま、あなたとの対等な決闘と言えるんじゃない?」
「確かに、そうかもしれないブー。なら、シズクにとって一番大切なものはなんだブー?」

 改めてシズクは一同に振り向く。

「この世界で出会った仲間たち。それは私にとってとても大切なもの。でも、私が異セカイ転生者であることを踏まえると、やはりチートこそが最も大切なものと言えるかもしれない」

 うん……うん? どうも風向きがおかしい。

「私は無限にラーメンを出せる能力がある。これを使えばおそらく食神決戦でも簡単に優勝できてしまう。それは物凄くつまらないし、なにより公平ではない」
「ちょっと待て!」
「このチート能力を預けるよ。もしもそれが出来るなら、少なくともあなたは半年間ラーメンは食べ放題なるけど、可能かな?」
「お前はバカか!? そんな異世界転生者がどこに居る!?」
「ここだけど?」

 信じられない。ありえない。バカだとは思っていたが、ここまでバカだとは思わなかった。いやせめて、チートを預けるなんてことができないと言ってくれ。頼む。

「わかったブー! では、シズクのチート能力をブーが預かるブー!」
「ちくしょぉぉおお!! バグ技だろこれぇぇええ!!」

 改めてループがシズクの目を強く見た後。ループが右腕を前に差し出し、空の皿の上にかざす。すると、ループの手から芳醇な香りを漂わせるとんこつラーメンが現れた。

「悪夢だ……」

 そういえば、とんこつラーメン屋の看板に豚のマスコットが描かれることはよくある。ことここに至ってリクにできるのは、そんな現実逃避だけだった。
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