勇者?英雄?興味無いので優雅に紅茶でもいかが?

アルガス タイター

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プロローグ

突然の閃光は目に危険なので辞めましょう

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「んぐっ!?」


 携帯で設定していた目覚ましの音で意識を覚醒するよりも前に身体に起きた衝撃で目を覚ましてしまった。カーテンの隙間から差し込んでくる太陽光で目を潰されながらも俺はお腹辺りで感じている違和感の正体を探るように揉みしだいた。あ、いや別に変な表現ではないよ?悪戯を仕掛けてきたのだからこっちも仕返しをするのは極当然のことだ。そうだ。そうでありたい。


「ひゃん!あっ、あぁん」


 なんとも艶めかしい声を出しながら俺に馬乗りなっている可憐な少女は脇腹を触られた程度で股をもじもじとさせてこの後の濡場な展開を希望するように俺を見下ろしていた。朝からセンシティブな行為をするというのは若干してみたい気持ちはあるが、それは休日に限った話で学生である俺たちが学校サボって不純に走る必要は無いだろう。


「おはよ、詩桜しおん。頼むから俺の上で腰を動かさないでくれ」

「おはよう、雄輪ゆうり。お父様が『雄輪は朝が弱い。既成事実を作るなら朝だ!』って言ってたから試して見たんだけど、やる気になった?」


 どうやらあの義父は1度死なねば分からないようだ。怜那れいなさんに後でチクって禁煙禁酒の刑に処してもらおう。


「それを試すなら休日にしなさい。今日から春休み開けて最初の学校だぞ?進級して最初の遅刻が子作りとか馬鹿げてるだろ」

「むぅ、私は遅刻するほどやらない!やるなら一日中だもん」


 あ、ダメだ。この子相当淫乱だった。頭の中8割以上エロいことしか考えてない女王様だった。


「だぁーもう。遅刻するから退いてくれ。早く飯食って学校向かうぞ」


「はぁーい」と寂しげに返事をした詩桜は劉銘十二柱りゅうめいじゅうにはしらと呼ばれる日本の魔術師を牽引する名家の1つである神咲家の令嬢であり、次期当主でもある。そんな名家の令嬢様がなんで俺を起こしに来たのかと言うと、俺─廻神雄輪えがみゆうり─の幼馴染であり、婚約者なのだ。
 廻神って苗字が有名な家名って訳じゃなく、まず俺自身にもう家族はいないが、俺の両親が詩桜の父親の神咲家現当主神咲 鄧驂どうざんの秘書と守護者ガーディアン(俗に言うSP)を務めていた。同い年ということもあり、幼稚園の頃からの付き合い─もとい、彼女の面倒を見てきたのだ。そして両親の死と共に親戚なんていない俺の親権を神咲が引き継いだ形で俺は神咲家から支援してもらっている。
 ただ詩桜は俺が神咲に名が変わってしまうと婚約できないと思ったのか鄧驂どうざんにお願いして廻神はそのままで、彼女の婚約者となった。あぁ、昔はあんなにも無邪気だったのに今ではただのビッチとは。嘆かわしい。

 俺たちは詩桜の用意してくれた朝食を済ませ誰もいなくなった家に「いってきます」と形骸化された挨拶をして俺たちの通う私立神瀬高等学校へと向かった。


「ねぇねぇ!遂に私たちに後輩ができるんだよ。楽しみだね!」


 2、3歩ほど前を歩きくるっとこちらに天使のような微笑みを向けてくる彼女は汚れ一つない制服で今日入学してくる後輩たちを心から歓迎していた。それにしても制服姿で微笑む姿は正しく天から舞い降りた女神のようでとても尊い。守りたいこの笑顔!
 女神とイチャイチャしながら登校している訳で世の中の非リアの人達からの嫉妬はもちろんのこと学校に近づけば近づくほど新入生からの視線は痛いほど浴びる。え、在校生はどうかって?彼らもう嫉妬を通り越してグラブジャムンを吐いてるね。
 学校に着くと校門では生徒会と風紀委員の人達が挨拶運動と新入生に呼び掛けをしている。あれが将来の社畜代表か。彼らの挨拶を受け、俺たちは更に収束した新入生からの視線を浴びながら自分たちのクラスへと向かった。クラスは入学してから卒業するまで同じ教室で同じクラスメイトといった少し特殊な学校なのでクラス替えなんて夢は早々打ち砕かれた。
 教室に入ると既にみんな登校してきていたのか仲の良い友人たちと喋っていたが、俺達がドアから入ってきたのを見るや否やみんなして「おはよう!」「久しぶりー!元気だった?」などと話し掛けてくる。彼らは俺ではなく詩桜に話し掛けているので俺は自分の席を確認し席に着くと同時に机に伏せて外界との繋がりを遮断した。


「雄輪、いきなりキメ顔してどうしたの?」


 俺の顔を覗き見るようにして机に顎を付けていた女神はどうやら友人たちとの挨拶は一通り終わったようだ。


「いや、こっちの話だ。あんまり気にすんな」


 今日学校である行事は新入生は入学式、3年生も入学式、俺たち2年生は大掃除らしい。帰っていいかな?そんなに重大なことなのか?お金あるんだから清掃会社にでも頼めばいいのに…。ただこの大掃除というのは魔術師としての俺にとってはだいぶ助かる。朝とは矛盾するようだが、昨日鄧驂から連絡が無ければこんな面倒臭い行事に参加しようとは思わなかった。

──────────────────────

昨夜、廻神家において魔術の研究に没頭していた時、鄧驂から雄輪に繋げて欲しいと言われた詩桜に現実に戻され鄧驂からのテレビ電話を受けた。


「どうやら邪魔をしてしまったようだな。申し訳ない」

「いえ、別に構いません。それでこんな夜更け…でもないですが一体なんの用でしょうか?」


 魔術師にとって研究の邪魔をされるというのは充分癪に障ることで名家の神咲家もそれは十分承知のはず。通話越しでならと思っていたが、緊急の用事かつテレビ通話でと言われ雄輪は表面上では気にしてない素振りを見せるも語気に少し苛立ちをみせていた。


「廻神雄輪特尉、注意したまえ。どうやらが貴殿の周辺を嗅ぎ回っているようだ。貴殿にまた1年前同様何かしらのちょっかいをしてくるやもしれん。充分警戒を怠らないように」


 特尉─日本軍において彼の為に作られた階級。日本で唯一根源に接続した彼をただの一般人にしておくことは出来ないと国と劉銘十二柱が彼を軍に属することで戦力の増加を測った。ただ彼はまだ子供ということで特尉という特殊な階級を態々作り彼に授与した。特尉となった彼は日本魔導軍特殊戦術独立魔導部隊─通称『月詠ツクヨミ』の隊長も務めている。
 普段彼のことを雄輪や義息子と呼ぶ鄧驂が特尉と呼ぶというのは仕事の話ということ。雄輪は先程の不機嫌な態度をスっと無くし、元々姿勢正しく立っていたがより一層気を引き締める為に身体を正した。


「その情報は確信たりうるものがあるのでしょうか?彼女がこんなにも早く私にちょっかいを?それも隠の者たちにも勘づかれるような動きを見せたと?」

「貴殿の言い分は最もだ。しかし、現に我々の方でその確認は既に取れている。貴殿の通う学校周辺で彼女の目撃をしている」


 この時期でアリストクライスの目撃なんて考えられるのは明日の入学式…か。新入生に扮して襲撃でもしてくるのか?いや、それだと目的もわからん。態々衆目の場でそんなことをするメリットが分からない。


「明日の式典。充分気をつけたまえ。もし始祖が暴れるなんてことがあれば、衆目の場とはいえ魔術の使用を許可する。我々の方でも軍を動かすが、存外相手は魔神。娘の命は最優先事項ということは忘れるな」


───────────────────────

 鄧驂からの連絡が無かったら俺も詩桜も一般人を見捨てるなんてことがあったかもしれないな。それにしても襲撃してくるって言ってもその確信は無い。学校の敷地内に既に魔力探知を行ったがあの女らしき反応はなかった。いや、単純に俺の能力の性能が下がって反応できていないだけかもしれないが…。
 俺は1年前、中学の卒業式が終わったその日の夜に自身の能力の半分以上をキュレべー・R・アリストクライス、本名神谷 明日香によって封印された。そのせいで軍はしばらくの間『月詠』は営業停止並に一時的解散を行っている。
 俺が感知出来ていなくても詩桜がそれを無視するはずがない。目の前の彼女は五感が俺限定だがよく効く。俺に向けてる視線が一体誰が送っているのかを第三者である詩桜は感じ取りその人物の特定ができるほど馬鹿げている。だから始祖の目的が俺であるなら詩桜がそれに勘づかないのはおかしい。詩桜は昨日俺と一緒に鄧驂からの連絡を聞いていた。だが、目の前の俺を見て顔を綻ばせている彼女は単純に気づいてないだけかもしれないが、気配など感じとれていないかのように抱きついてくる。


「?」


 僅かだが俺の探知に反応を示した個体があった。それも微々たるもので弱々しく直ぐに掻き消えてしまうような反応があった。詩桜は気づいたのか、抱き着くような姿勢の彼女が直ぐに立ち上がり周りを警戒するようにキョロキョロと挙動不審に気配の正体を探っていた。気配を感じ取って1秒もしないうちに変化は訪れた。
 この教室全体に魔術の結界が張られたのを感知したと同時に教室のドアが勢いよく音を立てるようにひとりでに閉まった。教室の中にいたクラスメイトたちや廊下を歩いていた生徒や教師、朝のHRの為に教室にやってきた担任はこの異常事態に酷く驚いていた。気を取り直した担任が教室に入るためにドアを開けようとした所、鈍重な金属でガチガチに固められたかのようにドアが微動だにしなかった。誰かが鍵を掛けるなんて小学生の悪戯じみたことを高校生にもなってするはずがない。クラスメイトたちも不信に思ったのかドアを中から開けようとしても動かない。ついでに確認するために窓も開けようとしたが開かない。恐怖体験を進行形で味わっている彼らはまともな思考回路をしていなかったのだろう。

 どうにかしてこじ開けようと椅子や机を使って窓を割ろうとするも強化ガラスに変わったかのようにガラスが固く表面に傷一つ付いてなかった。
 みんなが混乱に陥る中、現実は実に非情でその混乱を更に加速させるように教室の地面が光りだした。俺も詩桜も恐らくここで初めて動揺しただろう。何せ地面に浮かぶ魔術陣があり、そしてその魔術陣は俺達が今まで見たことの無い魔術陣で教室全体を埋めつくしていた。魔術陣と表してもいいのか疑問だったが、俺の目はその存在を知っていたようだ。
 俺の持つ魔眼は不都合な過去を消し去ることもできるし、起こりうる未来を限定出来る力を保有している。だからただの魔術であれば、『魔術が発動した』なんて事実を『魔術は発動したが成功しなかった』と改変することが出来る。本来であれば、この眼使えば摩訶不思議な現象だったねと出来るはずがこの眼を持ってしても不可能となれば考えられるのは、魔術ではなく魔法。即ち根源魔法ということだ。そして俺はこれの似たような魔zy…魔法陣を知っている。


「魔神の異空間転移魔法…か」


 喧騒とする教室の中ボソッと独り言を呟くと詩桜は聞き取れていたのか繋いでいた手を強く握ってきた。彼女の表情から不安な思いがヒシヒシと伝わってくる。彼女を安心させるように俺も握り返すと彼女は少しはにかんだ。


「大丈夫だ。俺はお前の傍から離れない」


 彼女に言葉を発した直後、地面に描かれた魔法陣が浮かんでいき教室内にいる生徒たちを包むようにドーム状に形成された。チラッと廊下を見てみるとこの現象を携帯で撮影する生徒や教師の数が増えていた。そんなことを考えていると教室に眩い光が差し込み、白光が俺たちを包み込むと俺は意識を失った。


 その日2155年4月13日私立神瀬高等学校で集団失踪事件が起きたことにより世界は急激に変化していく。
 非科学的な現象が関与し、当時の実際の映像が残っていたことやその現象が魔術に起因していたこと、神咲家の令嬢並びに特尉も巻き込まれたことに世界の首脳陣は魔術の存在を世界へと発信した。そしてこの2年後、世界政府相手に国際犯罪魔術組織『メシアム』が戦争を仕掛けた。
 





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