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第8章 修学旅行 準備編
339 清水寺の縁起
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藤城皐月たちの班は清水寺について調べていた。
清水寺の正式名称は「音羽山清水寺」で、開創は778年。794年に平安京に遷都される6年前のことだ。
大和国の興福寺の僧で、子島寺で修行していた賢心(後に延鎮と改名)が夢のお告げで山城国の音羽山に来た。
賢心は音羽山で清らかな水が湧き出る滝を見つけ、この滝のほとりで滝行をしている老仙人、行叡居士と出会った。行叡は御年200歳だったという。
「夢のお告げって、昔話あるあるだよね。これって史実じゃなくてフィクションじゃないの?」
「伝統的なレトリックなんだと思う。由来なんて歴史っていうよりも神話だから。それに、由緒書専門のライターだっているんだし」
現実的な考え方をする栗林真理の疑問に文学少女の吉口千由紀が答えた。千由紀には由緒書が虚実入り混じった物語にしか見えない。
「行叡が200歳ってどうなの? そんなバカな話があるわけないでしょ?」
真理が突っ込み担当になってきた。その疑問に神谷秀真が自説を展開した。
「200歳はさすがに嘘だ。好意的に解釈するなら襲名かな。賢心が出会ったのは何代目かの行叡なのかもしれない。でも、ただのお爺さんを権威づけるために200歳って盛っているだけかもしれないね」
「居士ってどういう意味?」
「居士は出家をしない仏教信者、修行者の男性のこと。お坊さんじゃないのに山の中で滝行をしていたくらいだから、お坊さんというよりも修験者なのかもしれない」
「音羽山って清水寺があるところと場所が違うでしょ? 音羽山の山頂は京都と滋賀の県境の、東海道新幹線が交差するあたりにあるよ? おかしくない?」
マップを見ていた岩原比呂志が地理的な疑問を呈した。鉄道オタクの比呂志は何がどこにあったのかが気になるようだ。
清水寺があるのは清水山で、京都市東山区にある。
音羽山は京都市山科区と滋賀県大津市の境界に山頂がある。
「公式では音羽山で滝を見つけたと書いてあるね。音羽の滝で賢心と行叡が会ったって書いてあるけど、この音羽の滝が清水寺の音羽の滝とは限らないしね」
藤城皐月が音羽の滝のことを言うと、二橋絵梨花がウィキで音羽の滝のことを調べた。
「音羽の滝は3カ所あるね。賢心と行叡が会った音羽の滝は音羽山の西の中腹を流れる山科音羽川にある滝のことかな」
皐月たちはマップの投稿写真も見た。山科音羽川にある滝なら滝行ができるかもしれないと思った。
「滝行してたって書いてあったから、二人の出会いは音羽山の滝だよね。清水寺の音羽の滝じゃ修業なんて無理だ。シャワーにすらならないよ」
皐月はネットの写真を見ただけだが、なんとなくそんな気がしてきた。
絵梨花が何やら一所懸命調べていた。
「賢心は子島寺で修行していたって、清水寺のウィキに書いてあるよね。子島寺のページを見てみると、子嶋寺として今でも残っているみたいだよ。奈良県高市郡高取町だって」
「遠いな!」
土地勘があるのか、秀真が即座に反応した。皐月には高市郡高取町がどこにあるのか全くわからなかった。
「壺阪山駅か。近鉄吉野線だね。特急も停まる。子島寺と音羽の滝との位置関係は……ちょうど真北か。どれくらいで行けるんだろう。……2時間25分か。遠いな」
「ちょっと岩原君。2時間なら近いでしょ?」
「特急を乗り継いでだよ。名古屋~難波間より遠いって」
「特急? 奈良時代に電車なんて走ってるわけないでしょ! これだから鉄道オタクは……」
マップに移動時間を算出させると、子嶋寺から音羽の滝まで徒歩で15時間27分だ。距離にして66.5キロ。
「じゃあ、夢のお告げで66キロも歩いて音羽の滝まで行ったんだ。『南の地を去れ』っていう漠然とした言葉で当てもなく北へ向かって歩いたんだよな。凄いな。やっぱり賢心と行叡が出会ったのは音羽山の滝だな」
皐月は自分の直感が確かなものだと自信を得た。
清水寺の正式名称は「音羽山清水寺」で、開創は778年。794年に平安京に遷都される6年前のことだ。
大和国の興福寺の僧で、子島寺で修行していた賢心(後に延鎮と改名)が夢のお告げで山城国の音羽山に来た。
賢心は音羽山で清らかな水が湧き出る滝を見つけ、この滝のほとりで滝行をしている老仙人、行叡居士と出会った。行叡は御年200歳だったという。
「夢のお告げって、昔話あるあるだよね。これって史実じゃなくてフィクションじゃないの?」
「伝統的なレトリックなんだと思う。由来なんて歴史っていうよりも神話だから。それに、由緒書専門のライターだっているんだし」
現実的な考え方をする栗林真理の疑問に文学少女の吉口千由紀が答えた。千由紀には由緒書が虚実入り混じった物語にしか見えない。
「行叡が200歳ってどうなの? そんなバカな話があるわけないでしょ?」
真理が突っ込み担当になってきた。その疑問に神谷秀真が自説を展開した。
「200歳はさすがに嘘だ。好意的に解釈するなら襲名かな。賢心が出会ったのは何代目かの行叡なのかもしれない。でも、ただのお爺さんを権威づけるために200歳って盛っているだけかもしれないね」
「居士ってどういう意味?」
「居士は出家をしない仏教信者、修行者の男性のこと。お坊さんじゃないのに山の中で滝行をしていたくらいだから、お坊さんというよりも修験者なのかもしれない」
「音羽山って清水寺があるところと場所が違うでしょ? 音羽山の山頂は京都と滋賀の県境の、東海道新幹線が交差するあたりにあるよ? おかしくない?」
マップを見ていた岩原比呂志が地理的な疑問を呈した。鉄道オタクの比呂志は何がどこにあったのかが気になるようだ。
清水寺があるのは清水山で、京都市東山区にある。
音羽山は京都市山科区と滋賀県大津市の境界に山頂がある。
「公式では音羽山で滝を見つけたと書いてあるね。音羽の滝で賢心と行叡が会ったって書いてあるけど、この音羽の滝が清水寺の音羽の滝とは限らないしね」
藤城皐月が音羽の滝のことを言うと、二橋絵梨花がウィキで音羽の滝のことを調べた。
「音羽の滝は3カ所あるね。賢心と行叡が会った音羽の滝は音羽山の西の中腹を流れる山科音羽川にある滝のことかな」
皐月たちはマップの投稿写真も見た。山科音羽川にある滝なら滝行ができるかもしれないと思った。
「滝行してたって書いてあったから、二人の出会いは音羽山の滝だよね。清水寺の音羽の滝じゃ修業なんて無理だ。シャワーにすらならないよ」
皐月はネットの写真を見ただけだが、なんとなくそんな気がしてきた。
絵梨花が何やら一所懸命調べていた。
「賢心は子島寺で修行していたって、清水寺のウィキに書いてあるよね。子島寺のページを見てみると、子嶋寺として今でも残っているみたいだよ。奈良県高市郡高取町だって」
「遠いな!」
土地勘があるのか、秀真が即座に反応した。皐月には高市郡高取町がどこにあるのか全くわからなかった。
「壺阪山駅か。近鉄吉野線だね。特急も停まる。子島寺と音羽の滝との位置関係は……ちょうど真北か。どれくらいで行けるんだろう。……2時間25分か。遠いな」
「ちょっと岩原君。2時間なら近いでしょ?」
「特急を乗り継いでだよ。名古屋~難波間より遠いって」
「特急? 奈良時代に電車なんて走ってるわけないでしょ! これだから鉄道オタクは……」
マップに移動時間を算出させると、子嶋寺から音羽の滝まで徒歩で15時間27分だ。距離にして66.5キロ。
「じゃあ、夢のお告げで66キロも歩いて音羽の滝まで行ったんだ。『南の地を去れ』っていう漠然とした言葉で当てもなく北へ向かって歩いたんだよな。凄いな。やっぱり賢心と行叡が出会ったのは音羽山の滝だな」
皐月は自分の直感が確かなものだと自信を得た。
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