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第9章 修学旅行 京都編
359 悪い弟
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及川祐希と6年4組の男子たちの写真撮影が終わると、また男子たちが祐希に群がった。藤城皐月は栗林真理に大事な話をした。
「弁当持って来たぞ」
「ありがとう」
「今日の真理、めっちゃかわいいな」
真理はモノトーンのコーデで決めてきた。ワイドカラーの六分袖のホワイトシャツはフロントフリルがクラシックだ。黒のネクタイと黒のスカートを合わせ、黒のレギンスを履いていた。金の蝶の髪飾りと黒いスニーカーの赤い靴紐がいいアクセントになっていた。
クラスの男子の真理を見る目がいつもと違って輝いていた。それは今日の真理の姿を見れば無理のないことだ。
「どうせ他の女の子にも調子のいいこと言ってるんでしょ」
「そんなことねーよ」
皐月は真理にかわいいと言ったが、本当は格好いいと言った方が適切だと後で気がついた。よく考えないで、反射的にかわいいと言ってしまうのが皐月の悪い癖だ。
「でもさ……今日の真理のコーデ、俺とかぶってない?」
明日美に買ってもらった皐月の服もモノトーンだ。皐月の場合、紫のインナーカラーがアクセントだ。
「ネットで見たコーデを参考にしただけ。偶然だよ。あ~あ、私も祐希さんみたいにメイクして来ればよかった」
「お前がメイクして来たら、みんなに見つかっちゃうじゃん」
皐月と真理が話しているところに祐希がやって来た。祐希の浮かれた雰囲気が心なしか消えているように感じた。
「真理ちゃんと皐月ってリンクコーデだね。まるで恋人同士みたい。二人の写真も撮ってもいい? 小百合さんに見せたいな」
「また写真かよ……。いいのか? 真理」
「いいよ。私もお母さんに今の皐月を見せたいから」
祐希に真理と写った写真を見せてもらった。真理は少しはにかんで写っていた。
真理と二人の写真なんて何年ぶりだろう。皐月は真理と二人の写真をあまり持っていない。これからは真理の家に行った時に写真を撮っておくのもいいなと思った。
「真理ちゃん、藤城君、おはよ~」
同じ班の二橋絵梨花と吉口千由紀がやって来た。絵梨花は相変わらず清楚なお嬢様だ。限りなく白に近い薄ベージュのブラウスに、秋らしいブラウンのワンピースが可憐であり上品だ。
千由紀は薄花色のワンピースに紺色のベストを合わせていた。カーキー色のベレー帽がよく似合っている。
絵梨花を見た祐希が嬉しそうな顔をしていた。真理が絵梨花と話し始めたので、祐希が少し離れたところから二人を見ていた。かわいい女の子は女子から見ても目の保養になるのだろう。皐月は千由紀に話しかけた。
「今日はなんとなく文学少女っぽいんだけど」
「ベレー帽なんかかぶっちゃったからね……」
「紺色のコーデがよく似合ってる。知的に見えるけど、ベレー帽でかわいらしさもアップしてる」
珍しく千由紀が頬を染めていた。皐月と千由紀が話しているところに鉄道オタクの岩原比呂志がやって来た。
「藤城氏、おはよう。飯田線は何度乗っても楽しいね」
「豊橋駅に行く時って、テンション上がるよな」
比呂志は鉄ヲタらしいコーデだった。ジャケットを羽織ったりキャップをかぶったりして、結構ファッションを頑張っていた。
「今日は新幹線にも乗れるし、京阪にも乗れる。班のスマホ借りて、写真撮りまくってもいいのかな?」
「いいよ。枚数に制限なんてないんだから。新幹線の写真は撮れないけど、京都の鉄道の写真は撮りまくろうぜ」
オカルトマニアの神谷秀真もやって来た。ぱっと見は小学生らしい無難なファッションだが、わかる人にはオカルトの匂いがする。勾玉のペンダントをしているし、パーカーの下のTシャツにはカタカムナウタヒの第5首がプリントされていた。
「おはよう、皐月。眠いよ。昨日は遅くまで仏教とか神道のことを調べてたから睡眠不足だ」
「さすがは秀真。俺もそういうの調べようと思ってたんだけど、寝ちゃった。京都では情報注入頼むわ」
皐月たちが話をしている間、祐希は真理の傍にいながらずっと皐月たちを見て微笑んでいた。以前、班のみんなに祐希のことを話したことがあったので、皐月はみんなに祐希のことを紹介しようと思い、祐希や真理たちを集めた。
「紹介するよ。彼女が一緒に住んでいるって言った人で、祐希さんって言うんだ」
「及川祐希です。はじめまして」
真理以外の子たちはそれぞれに挨拶を返した。比呂志や秀真は照れているのか、声が小さかった。千由紀は人見知りなので伏し目がちだったが、絵梨花はしっかりと祐希の目を見ていた。
「藤城さんが祐希さんのことをお姉さんみたいな人って言ってたんですけど、藤城さんって家では祐希さんの弟みたいな感じなんですか?」
「うん。弟がいたらこんな感じなのかなって思うよ」
こんな悪い弟がいるかよ、と皐月は笑い出しそうになった。
かわいい絵梨花と話ができて、祐希は幸せそうだ。真理は祐希が皐月のことを弟だといったせいか、穏やかな顔で絵梨花と祐希が話しているのを見ていた。千由紀はいつも通りの無表情で祐希を見ていた。
「弁当持って来たぞ」
「ありがとう」
「今日の真理、めっちゃかわいいな」
真理はモノトーンのコーデで決めてきた。ワイドカラーの六分袖のホワイトシャツはフロントフリルがクラシックだ。黒のネクタイと黒のスカートを合わせ、黒のレギンスを履いていた。金の蝶の髪飾りと黒いスニーカーの赤い靴紐がいいアクセントになっていた。
クラスの男子の真理を見る目がいつもと違って輝いていた。それは今日の真理の姿を見れば無理のないことだ。
「どうせ他の女の子にも調子のいいこと言ってるんでしょ」
「そんなことねーよ」
皐月は真理にかわいいと言ったが、本当は格好いいと言った方が適切だと後で気がついた。よく考えないで、反射的にかわいいと言ってしまうのが皐月の悪い癖だ。
「でもさ……今日の真理のコーデ、俺とかぶってない?」
明日美に買ってもらった皐月の服もモノトーンだ。皐月の場合、紫のインナーカラーがアクセントだ。
「ネットで見たコーデを参考にしただけ。偶然だよ。あ~あ、私も祐希さんみたいにメイクして来ればよかった」
「お前がメイクして来たら、みんなに見つかっちゃうじゃん」
皐月と真理が話しているところに祐希がやって来た。祐希の浮かれた雰囲気が心なしか消えているように感じた。
「真理ちゃんと皐月ってリンクコーデだね。まるで恋人同士みたい。二人の写真も撮ってもいい? 小百合さんに見せたいな」
「また写真かよ……。いいのか? 真理」
「いいよ。私もお母さんに今の皐月を見せたいから」
祐希に真理と写った写真を見せてもらった。真理は少しはにかんで写っていた。
真理と二人の写真なんて何年ぶりだろう。皐月は真理と二人の写真をあまり持っていない。これからは真理の家に行った時に写真を撮っておくのもいいなと思った。
「真理ちゃん、藤城君、おはよ~」
同じ班の二橋絵梨花と吉口千由紀がやって来た。絵梨花は相変わらず清楚なお嬢様だ。限りなく白に近い薄ベージュのブラウスに、秋らしいブラウンのワンピースが可憐であり上品だ。
千由紀は薄花色のワンピースに紺色のベストを合わせていた。カーキー色のベレー帽がよく似合っている。
絵梨花を見た祐希が嬉しそうな顔をしていた。真理が絵梨花と話し始めたので、祐希が少し離れたところから二人を見ていた。かわいい女の子は女子から見ても目の保養になるのだろう。皐月は千由紀に話しかけた。
「今日はなんとなく文学少女っぽいんだけど」
「ベレー帽なんかかぶっちゃったからね……」
「紺色のコーデがよく似合ってる。知的に見えるけど、ベレー帽でかわいらしさもアップしてる」
珍しく千由紀が頬を染めていた。皐月と千由紀が話しているところに鉄道オタクの岩原比呂志がやって来た。
「藤城氏、おはよう。飯田線は何度乗っても楽しいね」
「豊橋駅に行く時って、テンション上がるよな」
比呂志は鉄ヲタらしいコーデだった。ジャケットを羽織ったりキャップをかぶったりして、結構ファッションを頑張っていた。
「今日は新幹線にも乗れるし、京阪にも乗れる。班のスマホ借りて、写真撮りまくってもいいのかな?」
「いいよ。枚数に制限なんてないんだから。新幹線の写真は撮れないけど、京都の鉄道の写真は撮りまくろうぜ」
オカルトマニアの神谷秀真もやって来た。ぱっと見は小学生らしい無難なファッションだが、わかる人にはオカルトの匂いがする。勾玉のペンダントをしているし、パーカーの下のTシャツにはカタカムナウタヒの第5首がプリントされていた。
「おはよう、皐月。眠いよ。昨日は遅くまで仏教とか神道のことを調べてたから睡眠不足だ」
「さすがは秀真。俺もそういうの調べようと思ってたんだけど、寝ちゃった。京都では情報注入頼むわ」
皐月たちが話をしている間、祐希は真理の傍にいながらずっと皐月たちを見て微笑んでいた。以前、班のみんなに祐希のことを話したことがあったので、皐月はみんなに祐希のことを紹介しようと思い、祐希や真理たちを集めた。
「紹介するよ。彼女が一緒に住んでいるって言った人で、祐希さんって言うんだ」
「及川祐希です。はじめまして」
真理以外の子たちはそれぞれに挨拶を返した。比呂志や秀真は照れているのか、声が小さかった。千由紀は人見知りなので伏し目がちだったが、絵梨花はしっかりと祐希の目を見ていた。
「藤城さんが祐希さんのことをお姉さんみたいな人って言ってたんですけど、藤城さんって家では祐希さんの弟みたいな感じなんですか?」
「うん。弟がいたらこんな感じなのかなって思うよ」
こんな悪い弟がいるかよ、と皐月は笑い出しそうになった。
かわいい絵梨花と話ができて、祐希は幸せそうだ。真理は祐希が皐月のことを弟だといったせいか、穏やかな顔で絵梨花と祐希が話しているのを見ていた。千由紀はいつも通りの無表情で祐希を見ていた。
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