異世界転生してきた勇者が異常なまでのチャクラム好きで気持ち悪いんだけど!?

柴王

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「……………………」



「……………………」



 外に出た私たちは、しばし無言で歩く。



 どうしよう……気まずくなってしまった……。



 わかってる。元はと言えばチュートリアルをちゃんと読んでなかった私が悪いんだ。私から謝ろう、うん。……せーの!



「リミア、その…………」



「あい!?」



 謝ろうとした矢先に急に話しかけられたので、変な声が漏れてしまう。



「さっきは悪かった! ローブに手を突っ込んだことも、それと、『サポート役失格』と言ったことも……!」



 キリヤは私に向かって勢いよく頭を下げる。…………先に謝られてしまった。



「ううん。私の方こそごめん。私がサポート役としての事前準備をちゃんとしてなかったのは事実だし……。元はと言えば私が悪いから……。」



 私の方も頭を下げる。



「あ、でも……二度とローブの中に手を突っ込むようなことはしないでね。今度やったら憲兵呼ぶから」



「あ、ああ…………」



 さすがに勇者も免罪特権は無いだろう。いや、チュートリアル見てないからわからないけど。



「まあ、お互い謝ったし、これで仲直りだ。それでいいな?」



 キリヤは目を背けて照れくさそうに言う。



「……うん。仲直り、ね。」



 …………まだ、1時間にも満たない付き合いだけど、キリヤが悪いやつじゃないってことはなんとなくわかっってきた、気がする。……変態だけど。



「さて!」



 キリヤはパン、と手のひらに拳を合わせる。



「それじゃあお待ちかね! チャクラムとの対面と行こうじゃないか!」



「別に私は待ちかねてないけどね」



「いやいや、リミアも待ちかねているはずだ。これだけチャクラムチャクラム言ってるんだから、そろそろチャクラムをその目で拝みたくなってきただろう! 単純接触効果ってやつだ!」



「いや、むしろチャクラムチャクラム言われてチャクラム嫌いになりそうなんだけど!」



「好きの反対は無関心と言うだろう。無関心から嫌いになったなら、やがて好きになっていくはずだ!」



「なんであんたはチャクラムに関してはそんなにポジティブなの!?」



 くだらないやりとりを続けながらも、私たちは二人並んで次の目的地、武器屋を目指して歩く。



***



「チャクラム? うちには置いてねえな」



「なん……だと……?」



 たどり着いた矢先の武器屋の一言に、キリヤは稲妻が走ったような衝撃を受けていた。



「すまねえな、最近はチャクラムを買う客なんてまったく見なくなったもんで、数年前からチャクラムの仕入れはしてねえんだ」



「チャクラムを置いてない武器屋が武器屋を名乗るな! チャクラムは店頭にきれいに陳列しておくべき品だろう! むしろチャクラムだけ置いておけ!」



 あー。また始まっちゃった。この勇者、情緒がアンバランスすぎない?



「いや、そんな武器屋は無いと思うが……。とにかく、ねえもんはねえんだ。悪いな」



 でも、これは参った……。この街で武器屋はここしかないはずだし、品揃えもいい方なのに、それでも置いてないなんて……。これじゃあ魔王軍と戦うどころか冒険すら始められない……!



「チャクラムを仕入れることはできないの? それか、私たちが直接鍛冶屋に言って…………」



「それがなあ。需要が無いもんだから、この街でチャクラムをつくれる鍛冶屋は今いないんだよなあ……。他の街や村に行かねえとチャクラムはねえと思うぞ」



「……くそっ、なんてことだ! …………いや、ここで立ち止まっていても仕方ない、行くぞリミア!」



「え? 行くぞ……って、もしかして他の街に? むりむり! 私たち二人じゃ魔物に襲われたら終わりだもん!」



 私、攻撃手段が「杖で殴る」しか無いし。



「ええい、何かチュートリアルに書いてないのか!」



「!」



 ばっ! と一瞬さっきのトラウマが蘇ってきて身体をガードする。…………けど、さっきの件からチュートリアルはずっとキリヤが持ってるんだった。 



「魔族に襲われることなく他の街に移動する方法…………ん?」



 何かを見つけた様子で手を止めるキリヤ。



「何かいい方法、見つけたの?」



 横からひょいっ、と覗いてみる。



「このページ……装備を整えた勇者は『始まりの村』に飛び、そこから冒険を始める、と書いてある。そのためにキメラの羽根という道具が一枚、サポート役に渡されているともな。リミア、持っているか?」



「え? 持ってるけど、これは装備が揃ってから使うもので…………ってまさか!」



 キリヤはにやりと笑う。



「ああ、そのまさかだ。そいつを使って『始まりの村』に飛ぶ。そこにチャクラムがあるかどうか。行ってみなければわからないが、ここでじっとしているよりかはましだろう…………イチかバチかだ!」



「ええ? うーん…………たしかにここにいてもチャクラムは手に入らないけど、『始まりの村』でここより品揃えのいい武器屋があるかなあ?」



 だって、村だよ? 村。「盾」って言いながら「鍋の蓋」を売っててもおかしくない。



「だったら傭兵でも雇うか? そんな手持ちは無いだろう。それとも見ず知らずの俺たちをタダで護衛してくれる奇特な冒険者を探すか? いつまで待てば現れるかわからないがな」



「うう……それは、そうだけど…………」



「それに俺は、一刻も早くチャクラムに会いたいんだ! このままでは抑えきれなくなった衝動で全裸で街を全力ダッシュしてしまう!」



「ああもう、わかった! わかったから! 向こうでチャクラム無くても知らないからね!」



 公然わいせつ勇者のサポート役なんていう後世まで残る汚名は絶対に避けなければならない。



「ではさっそく行こうじゃないか、『始まりの村』へ! レッツ……」



「ゴー!」



「…………と、その前に、ここで防具だけでも揃えておこう」



 ズコー! という今日日きょうび聞かない擬音とともにずっこける私。



「せっかく合わせてあげたんだから『ゴー!』しなさいよ! 一人で『ゴー!』してめちゃくちゃ恥ずかしいじゃない! 私の『ゴー!』を返せ!」



 そんなこんなで武器屋で防具一式を揃えた私たちは、チャクラムを求めて「始まりの村」に飛び立つのだった。
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