生死のサカイ

柴王

文字の大きさ
32 / 54

32、白い画用紙、黒いクレヨン

しおりを挟む
 それからわたしはアオイに、気を失っていた時に見た夢で思い出した両親との思い出を話した。そして、10年の時が経って、わたしは二人にどうやって接すればいいのかわからなくなっていることも…………。

「そうか。話を聞いている限りでは、いい両親のようだね」

「うん。そうなんだけど…………わたし、二人にどんな顔して向き合えばいいのかわからなくって…………。アオイはどう思う? そういえば、アオイのご両親は…………?」

 わたしが聞くと、アオイはなにか辛いことを思い出したように、目を逸らす。

「あ……ごめんね! 話したくなかったら全然いいんだけど…………」

「すまない…………。だが、ひとつだけ言えることは、ボクには親との接し方はわからない…………」

 アオイはパンッ、と手を叩く。

「とにかくだ。やはり、彼らと話してみないことには何も進まないだろう。だから、アカネ…………」

「うん、わかってる。明日また、お父さんとお母さんに会いに行こう。二人に会うのはちょっと怖い気持ちもあるけど、話したいこともたくさんあるから……!」

「ああ。それに…………ボクがキミの隣にいるから、安心してくれ」

 アオイは照れてわたしと目を合わせないようにしながら言う。

「うん。ありがとう」

「じゃあ、ボクは風呂に入ってくるから」

「うん」

 まだ会って一ヵ月も経ってないのに、なんだかアオイがいる日常を当たり前のように感じる。…………10年前のわたしにとっての当たり前の日常は、お父さんとお母さんだったんだろうか。

「そうだ……」

 ふと思い出して、朝出かける前に勉強机の上に置いたままだった「かたたたきけん」を手に取って、じっと見つめる。

「…………思い出した!」

 ―――

 その日は休日で、わたしの誕生日でもあった。

「「茜、お誕生日おめでとう!」」

「わあ、ありがとう!」

 わたしはその日お母さんと買い物をしていて、ダダをこねて買ってもらった大きなホールケーキを頬張り、ご満悦だった。

「茜にパパとママから誕生日プレゼントがあるんだ」

「え? なになに!?」

 わたしは自分の部屋に目を閉じて誘導されるがまま入る。

「目を開けてごらん」

 開いたわたしの目には、今朝は無かった勉強机が置いてあった。

「わあ!これ、わたしの机?」

「そうだよ!」

 わたしはお父さんが買い物についてこなかったのが気になっていたけど、それはわたしが外にいる間に机を用意するためだったのだ。

「ありがとう、パパ、ママ! …………そうだ!」

 わたしは画用紙をちぎって、黒いクレヨンを手にとって文字を書く。

「はい! パパとママにお返し! いつでも使ってね!」

「肩たたき券か! ありがとう茜!」

「茜、ありがとう! とっても嬉しいわ!」

 ―――

 結局、それから一回も肩たたき券が使われることはなかった。

「お父さん、お母さん……!」

 わたしは肩たたき券を握り締めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...