生死のサカイ

柴王

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33、黒い瞳に映る家族

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翌日、公園の前までアオイといっしょに来たわたしは両手で自分の頬をパン! と叩いて気合を入れる。



「行こう、アオイ」



 公園に入ると、昨日と同じようにお父さんとお母さんが並んで立っていた。二人とも、心配そうな顔でこちらを見つめている。



「茜……」

「昨日はごめんなさい!」



 わたしはお母さんが何かを口に出す前に、勢いよく謝った。



「その、急に二人に会ってびっくりしちゃったっていうか…………いろいろ、頭が追い付かなくって…………」

「……いいのよ、茜。確かに考えてみれば、10年も経ってるんだものね…………」

「そうだね。むしろ僕たちが謝らなきゃいけない。茜を……長い間一人にさせてしまったんだから…………」

「お父さん、お母さん…………」



 ここで、わたしの隣に立っていたアオイが一歩前に出る。



「一応、自己紹介がまだだったからね。ボクは魂浄請負人(ソウルパージャー)のアオイだ…………そして、キミたちが今回の依頼人ということでいいのかな?」



 二人の視線がアオイに向く。



「ああ。僕は伏見虹一(こういち)。茜の父だ。そして……」

「私は伏見空(そら)。茜の母よ。よろしくね、アオイさん」



 お母さんは、「それで……」と続ける。



「どうして茜があなたと行動を共にしているの?」



 お母さんは少し不安そうな顔をする。



「それは……」



 アオイは口ごもる。



「わたしとアオイが友達だからだよ!」

「アカネ…………」

「わたしはアオイといっしょに今までこの世に未練を持った幽霊たちを成仏させてきたの!」



 お父さんとお母さんは顔を見合わせる。



「そうか……。とにかく驚いたよ。でも…………その方が話が早いかもしれない」

「やっぱり、お父さんとお母さんの未練はわたし、なんだね」



 わたしの問いかけに二人は黙ってうなずく。



 わたしは改めて二人の前にまっすぐ立つ。きっと、これからわたしが知るのは、わたしの知らない過去。正直、怖い。

 でも、わたしはもう、アオイと出会う前のわたしとは違う。いろんな人の心に触れて、楽しいこと、悲しいこと、いろんな色の感情に触れてきた。



 だからわたしは、何があってもきっと受け止めてみせる。



「場所を移して話をしよう。わたしの……いや、わたしたちの家に来て」



 ***



「懐かしいな…………10年前とほとんど変わってない」



 お父さんは部屋を見回しながら言葉を漏らす。



「…………ほら、二人とも座って」



 わたしはなんだか落ち着かなくなって二人を促す。

 わたしがお茶を用意して、テーブルをはさんでわたしとアオイ、お父さんとお母さんがそれぞれ座る。



「さっそく、話を聴いてもいい?」



 わたしは、向かいに座っている二人に尋ねる。



「ああ。でも、最初に伝えておくけど、僕たちはこれからする話で茜には大きなショックを与えてしまうだろう。もし…………茜が今、それか途中で話を聴きたくなくなったら…………」

「すぐに言ってほしいの。そうしたら、わたしたちはあなたの前には二度と現れない。未練を背負ったまま、この世にとどまり続けるわ」



「!」



 二人から、すごい覚悟を感じる。何が過去にあったのかは想像がつかない…………でも。



「うん、わかった。でも、わたしはきっと、すべてを受け入れてみせるよ。そして、二人を絶対成仏させる…………!」



 わたしがそう言うと、二人は泣きそうな顔になる。



「ありがとう、茜。じゃあさっそく、話を聞いてくれ。…………空」

「ええ。茜、最初に言っておくわ。私はあなたに、本当に許されないことをした。…………本来、こうしてあなたの前にいていい人間じゃないの」



 わたしの目の前に座っているお母さんは、わたしのことを直視できないとばかりにうつむいて話す。



「それって……どういう…………?」



「茜。これから話すことはすべて真実よ。私はあなたに、『許して』と言う資格はない。ただ、耐えて、そして、受け入れてほしい。私は、本当はあなたの母親を名乗る資格なんかない愚か者…………」



 鼓動が速まる。10年前、お母さんは、わたしは、一体…………?



「でも、それでも、茜、あなたには…………いいえ、なんでもないわ。…………今からあなたに、すべてを話します」



 まっすぐわたしを見つめるお母さんの薄茶色の瞳が、わたしの黒い瞳を映していた。
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