魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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三性 新学期の恒例行事

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「あ、工口さん。まだ教室にいて良かったです」

 お、なるほど。みんなと一緒は恥ずかしいから時間をずらして聞きに来たのね。
 刹那君は陰キャだし、当然の判断ってとこかな。
 ふぅ~、一瞬焦った私の時間を返してほしいよ。

「あ、うん。少しゆっくりしてたの」
「そうでしたか。これ、先生が遅刻してきた時に渡し忘れていたプリントです」
「あ、ありがとう」

 それで、それで、そこからの……

「あ、あの……」

 お、これは予想通りかな?

「ん? 他に何かあるの?」

 ほれ、私の素晴らしいキラーパスだよ! こんなの滅多にないよ滅多に!
 だから、ここは刹那君があの言葉を……

「ぼ、僕は……ここで失礼します」

 え? なんて? 私の耳がおかしくなったのかな?
 仕方ないからもう一度パスをあげるよ。

「な、なんか他に用があったんじゃないの?」

 ほら、今度こそ!

「いえ、ありません。僕は帰ります」

 はい? 帰る? カエルじゃなくて帰るって言った? カエルでも驚くけど。
 そんなバカな話ある? 私と二人っきりだよ? こんなラッキーなことないよ?
 あ、本当に帰る気じゃないの! あ、ちょっと!

「せ、刹那君!」
「な、何ですか?」

 思わず、呼び止めてしまったけど、ここからどうしよう……。
 何も考えてなかったし、次の言葉が出ない。
 てか、私は何でこんな男子を……。

「用がないなら僕は帰ります」

 何で? 分からないよ、分からない。何でなの?
 刹那君は何で私を他の男子と同じような感じで見ないの?

「あ、ま、待って! そ、その私と連絡先を交換してくれないかな?」

 私は何でこんなことを言っているのだろうか? 自分でも不思議だ。
 この言葉は私じゃなくて刹那君が私に向かって言うはずなのにおかしいな。

「えっと……」

 この私が連絡先を交換しようと言っているのに戸惑うって贅沢な男子だ。
 陰キャならそこは『ぼ、僕で良ければ』でしょ! この一言でイイの!
 は、早く、早くその言葉を私に言いなさい。

「ダメかな?」
「その……僕は携帯やスマホを持ってないから連絡先がないんです」

 持ってない? 嘘でしょ? どうして生きてるの?
 今となっては人間にとってスマホは命と変わらないものだよ? それを持ってないって。

「あ、あ、あははは。みんな持ってると思ってたよ。なんかゴメンね」

 謝るのって私なのかな? あっちが悪い気がするのは私だけかな?

「こちらこそごめんなさい。じゃあ、帰ります」
「あ、うん」

 刹那君はその場から走って帰ってしまった。
 どういうこと? 本当に分からない。
 とっても、『ムラムラ』するじゃなくて『ムカムカ』する。
 なんか脳が悔しい~って叫んでるよ。こんな敗北感は初めてだ。
 あの子、私の初めて取り過ぎじゃない?
 さっきの男子に連絡先を聞くのも私は初めてなのよ? 悔しい~。
 絶対に一週間以内に惚れさせてやる!
 隣だし、友達になったし、余裕だと思うけどね!
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